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スピンオフ 反撃のダンデリオン
第十話 切り落とされた右腕
しおりを挟むシエンとユウトは互角の戦いのように見えたが徐々にシエンが間を詰め出して来ていた。
その脇でノクトは襲い掛かってくるダマール兵達をエマとダイナムと隊員達と共に戦っていた。
このままでは埒があかないとユウトは捨て身の攻撃でシエンに渾身の一撃を与えるべくトマホークを投げた。
シエンは足捌きが早くトマホークを上手く避けながらユウトの懐に入った。
シエン:遅いですよ。吹け、ダマールの風。
ユウトの目の前に一陣の風が現れたと思いきやトマホークを持つ右腕が竹を割ったようにスパッと切られた。
そしてユウトの体から離れたの右手は無機質な物となりゴロンと地面に転がり落ちた。
ユウト:ぬおおおお・・・。
ユウトが失った右手を見て声にもならない雄叫びをあげた。
ノクト:兄者!!!!よくも!!!
切り落とされた兄の右打て見たノクトは怒りに任せシエンに矢継ぎ早に攻撃を当て始めた。
シエン:小うるさい弟くんですね。ダマールラッシュ。
ノクトの攻撃をかわすとシエンが高くジャンプし、ノクトが標的と言わんばかりに円を描くように短剣を刺した。
ノクト:俺の攻撃が効かないなんて・・・。
シエン:では、次は弟くんを調理しましょうかね。
シエンは目を細め笑いながら舌舐めずりした。
ユウト:まだだ!トマホーク爆裂!!弟には一本も手を触れさせるものか!
ユウトは右肘から血を流しながらも左手に持っていたトマホークを渾身の力でシエンに投げた。
シエン:諦めが悪いですねぇ。ダマールの突風!
するとシエンの周りで凄い勢いで風が巻き起こるとトマホークの軌道が変わり、目標を失ったトマホークは落ち葉のように地面に落ちてしまった。
そしてシエンの手元のダマール短剣が緑に光り勢いよく飛び出すとユウトの心臓を一気に貫いた。
ノクト:やめろおおおおおお!!!
ノクトの声も虚しくユウトは重力に負けたかのように大の字のまま地面に仰向けに倒れ込んでしまった。
シエン:だから言ったのに。
体についたホコリを払いながらノクトに徐々に歩み寄るシエンだった。
近づいて来るシエンを見定めながらノクトは死の覚悟を決めレイピアを構えた。
すると里の入り口の方からダマール兵達の悲鳴が聞こえ始め黒い霧になるのが見え始めた。
シエン:おや。加勢が来たようですね。これはさすがに相手するのは厄介。情報とはちょっと違ったようだ。そろそろ撤退させて頂きます。
ノクト:なんだと!俺と戦え!!!逃げるなんて許さん!!兄の仇!!
シエン:ハッシュタルトで待ってるよ。では、ご機嫌よう。
シエンはノクトにお辞儀をするとサッと走り出しダマール兵達の中に紛れ消えて行った。
里の入り口の方から白狼に乗ったニコラがノクトの元へと急いでやって来た。
ニコラ:ノクト‼︎ 大丈夫か?
ノクト:ニコラ・・・来てくれたか。だが一足遅かった・・。
ニコラがノクトの目線の方を追うと地面に寝転んだユウトがいた。
ニコラ:ユウト!!!おい!大丈夫か!おい!しっかりしろ。
ニコラはユウトに駆け寄り、肩を何度も揺さぶったがユウトは目を開ける事はなかった。
ノクト:兄者・・・俺の為に・・・。
ノクトは落ちていたユウトの右腕を拾い上げた。
後から追いついたルチカは右手を握り締めたノクトの姿を見て呆然とした。
ルチカ:あんなに頑丈な体の・・・ユウトとが・・どうして・・・。
ニコラ:ユウトがこの街を救ってくれたんだ。手厚く葬ってやろう。な、ノクト。
ノクト:・・う、ううう。
泣きじゃくるノクトを優しく両脇から抱きしめるルチカとニコラだった。
ダマール兵がいなくなった後、里の中の片付けにエマ達は追われていた。
そんな中、里の中心ではノクトを火葬するのにトマホーク特攻隊は薪をくべ、夜に里を身をもって助けてくれたユウトをみんなで周りを取り囲み弔った。
コーネリア:ユウトよ・・お前は本当に強い男だった。
ニコラ:あたい達がもっと早く着けば・・。
セラ:自分を攻めてはダメよニコラ。
エマ:ですが、ニコラとルチカが戻って来たお陰でシエンが撤退したのですから。
ダイナム:そうですね。でも、ユウト様とノクト様がいなかったら私達は生きてここに立っていないでしょう。
ルチカ:・・ユウト・・。
サクラ:ユウトさん、あなたの事は忘れません。
ノクト:兄者・・。
その晩は薪の火が消えユウトが灰になってもノクトはその場を離れる事はなかった。
翌日に会議室ではシエンが言っていた情報漏れについて話し合っていた。
ダイナム:ダークウォーカー特攻隊がダマール側に回るとは・・それにしてもシエンはかなりの手練れですね。
ノクト:あいつ・・・兄者の仇、必ず討つ!
エマ:ルチカとニコラを時間差で里に戻させたのは正解でした。トーマ様達が不在の時に必ず来ると思ってましたから。
セラ:私はその作戦知りませんでした。知っていたのは誰と誰なんですか?
ダイナム:私も聞いておりませんでした。
エマ:私とトーマ様のみ。
ノクト:となると怪しいのは・・・グーナント城主の時、俺達が駆けつけなければヴァルキリー特攻隊は全滅するとこだったし・・・そうだ!ツバキなら諜報部隊だし情報操作しやすいんじゃないだろうか?
ノクトはどうしてもっと早く気が付かなかったのかと怒りを抑えきれずにいた。
つづく
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