満月に吼える狼

パピコ吉田

文字の大きさ
上 下
109 / 182
第五章 衝撃!母との再会

第十四話 現れた五人

しおりを挟む

 母の話を聞いたギア子はおかしな点がいくつかある事に気がついた。

ギア:お母さん・・・グレイさんの話と違う点が。お父さんは誘拐された日に死んでるわ。それにお父さんがアリュバス星に戻った理由も別の事だし・・・。

壱乃:嘘よ!今でもアリュバス星で元気だっていつもグレイさんが写真を見せてくれたのよ?

ギア:私つい数ヶ月前にアリュバス星に行ったわ。父さんのお墓もあった。

壱乃:ほ、本当なの?
 
 ギア子の言葉に壱乃は動揺を隠せないでいた。
 
ギア:本当よ。それに兄さん達が言うには誘拐された日、私を救う為に怪我をしてやっとの思いでアリュバス星に戻ったけど力尽きて死んだとも聞いたわ。

壱乃:・・・それが本当だとしても誘拐を企てたのがタカールなのは間違いないのわ。

ギア:その日に起きた事をタカール様に確認してみれば分かるわ。一緒に今度アリュバス星に行ってみよ、母さん。
 
壱乃:タカールさん・・。アリュバス星・・おおかみ。
 
 壱乃は海を見つめながら当時の事を思い出しているのか目が潤んでいるようだった。

壱乃:当時の私は裏切られた気持ちでいっぱいになって復讐の鬼と化してたわ。おおかみがもう死んでるなんて私は何の為にここまで・・・。

ギア:お母さん・・・。

 ギア子は壱乃の手を強く握りしめ、人の運命を弄ぶグレイに激しく憤りを感じていた。

グレイ:とうとうばれちゃいましたか。

 後ろを振り向くとグレイが立っていて、ギア子がグレイの肩に白い羽がついてるのを見逃さなかった。

ギア:・・・グレイさんあなたダンデリオン一族なの?

グレイ:だとしたら何だって言うんですか?
 
壱乃:グレイさん、ギア子がおおかみは死んでるって言うんです、嘘ですよね?
 
 壱乃はまだ信じられないのかグレイに詰め寄った。
 
 だが、グレイは壱乃を冷ややかな目で見つめるだけで無言のままだった。

ギア:お母さんまだその人の言う事を信じてるの?

壱乃:どうして。どうして嘘をついたの。

グレイ:王が生きてるって事にしないと壱乃さん協力してくれないでしょう?

壱乃:よくも私を騙したわね!

 グレイに壱乃が掴みかかったが払い退けられ、勢いで壱乃は地面に倒れこんだ。

グレイ:あのまま待ってるだけの生活であなたは幸せでしたか?それに生きる目的を与えたのは私ですよ。

 当時の壱乃はおおかみをひたすら待つだけの生活で、周りから見ても抜け殻のようにしか見えなかったのは事実だった。

 壱乃はいつか白い翼でおおかみが自分を迎えに来てくれると信じて待っていたのだから。

グレイ:壱乃さんあなたの役目は今日で終わりです。今までありがとうございました。

 グレイの言葉に壱乃は急に震えだした。

ギア:お母さん大丈夫?

グレイ:実はあなたにかけた術はまだ未完成でしてね。
 
 壱乃の手が大きく震え指先から徐々に墨汁のようにシミが広がると、顔が見る間にしわくちゃに干からびだした。

壱乃:若いままおおかみに会えるって約束したじゃない・・・。ギア子・・・お母さんを許して・・・。

 壱乃は許しを乞うようにギア子に泣きながら抱きついた。

 だが、見る間に壱乃は骨と皮になり脆くなった体は己を支えきれず地面に崩れ落ち砂となり風に流されてしまった。

ギア:お母さん・・・私もいっその事殺しなさいよ!

 ギア子は砂となった母の骸を握りながら涙していた。

グレイ:あなたには大事な役目があるので死なれては困るのです。

ギア:早くメガたんに会いたい・・。

グレイ:そろそろ来るはずです。

 ギア子は辺りを見渡したがグレイの姿しか見えず、周辺からは波の音しか聞こえなかった。

ギア:さっきから何を待ってるの?

 その時、グレイの背後から光が差し込むとルーチェの門が現れた。

グレイ:やっと来ましたね。

 門から真っ先に出て来たのはトーマとタカールだった。

トーマ:待たせたなギア子!

 その後ろから行方不明だった晴おあれっくすと見知らぬ男性が門から出て来たのであった。

第五章 完
しおりを挟む

処理中です...