満月に吼える狼

パピコ吉田

文字の大きさ
上 下
89 / 182
スピンオフ 騎士団への道

第十一話 ワイズ大農場

しおりを挟む

 城主のはからいで幌付きの馬車を用意して貰い多く荷物が積めるようになった。
 
 それと元気な馬に変わりトーマ達の元まで快適に乗れるようになっていた。

テル:これなら旅も楽しくなりそうだぜ!

 テルは早速馬車に乗ってはしゃいでいた。

ロンジ:大きくなった分、細い道とか通れねえし目立ちやすい。メルさん護衛頼んだ。

メル:はい。この身に変えても皆さんを守ってみます。

 メルは動きやすいよう槍と盾を軽めの物に変え甲冑を脱ぎ軽装な服装に着替えていた。

晴:ありがとうございます。私たちも戦えれば良いのに・・・。

ミミ:晴様を戦わせるなんてとんでもない。私達に戦闘はおまかせを。

テル:俺は父ちゃんのように立派な騎士になりたいから、いつかはちゃんとみんなと戦えるようになりたい。

メル:ほう良い心構えだ。テルの父上は騎士団の中でもかなり強者だった。お前もさぞ強くなるだろう。だがその前に身長がもう少し欲しいところだな。

テル:う、うるせえ! これから伸びるんだよ‼︎

 テルは肩を怒らせながら馬車の中でふんぞりかえった。

 それから数日かけて無事にナルビン関門を抜けワイズ大農場に着いた一行だった。

農場主:ようこそ。グーナント城主から連絡が来てます。ここにいる間は自分の家と思って休んで行って下さい。
 
ロンジ:馬はどこに置くべさ。
 
農場主:召使いがご案内します。ほら、こちらの方々を案内しておくれ。

 農場主の合図で召使がぞろぞろとやって来て馬の世話や馬車の荷物を下ろす為にロンジとマサが一緒に厩舎へと行ってしまった。

メル:ありがとう。助かる。

召使:では、女性はこちらに。男性は後ほど案内しますのでここでお待ち下さい。

 女性陣が部屋に案内され入ると晴とミミとメルと三人でも充分なくらいの広さだった。

召使:部屋は広いですが建物自体は古くて床が軋んだりしますので多少隙間風が吹きます。その代わり寒くないように暖炉もありますのでくついで頂けると思います。

晴:素敵な部屋です。家に帰って来たみたいにのんびり出来そうです。
 
メル:うむ、充分だ。

 召使いはほっとした表情を見せ夕方の食事になったらまた来ると言い残し出て行った。

ミミ:ずっと馬車に揺られる旅でお疲れでしょう。晴様は休んでて下さい。私はマサの手伝いに行ってきます。メル様はいかがなさいますか?
 
メル:私は周辺の様子を見に行こう。
 
晴:じゃあ、私も。
 
メル:いや、お前には体力を温存しておいて欲しい。この先に何が起こるか分からんからな。
 
晴:分かりました。でも、私でも何か出来る事があればいつでも言ってください。
 
メル:分かった。では、ミミ行くか。
 
ミミ:はい。

 メルとミミが部屋からいなくなると晴は久しぶりのふかふかのベッドに寝転び気がつくと自然と睡魔に誘なわれたのであった。

 召使いに起こされた晴は食堂へと移動していた。
 
あれっくす:どう? 少しは休憩は取れた?
 
 後ろからあれっくすが声をかけて来た。
 
晴:うん、久しぶりにゆっくり昼寝が出来たよ。
 
あれっくす:良かった。まだ先は長そうだからここでゆっくり出来ると良いなあ。
 
メル:あれっくすここにいたか。飯を食いながら今後の事で相談があるんだが。
 
あれっくす:分かりました。晴さん、また後でね。
 
晴:う、うん。
 
 告白したあの日からあれっくすはいつ通りに接してくれている。
 
 それは晴にとってはとても助かってはいるが、メルが現れてからは一緒にいる事も減り最近は喋る事も減って来てしまっている。 
 
 あれっくすは自分の為に色々世話を焼いてくれるのは重々分かってはいたが、遠くでメルと話してるのを見るとまだ複雑な気持ちだった。
 
 だが、その事を知ってか知らずかテルが何かと晴に声をかけて来てくれるのは唯一の救いだった。
 
つづく
しおりを挟む

処理中です...