満月に吼える狼

パピコ吉田

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第四章 いざ!第二の故郷へ

第十七話 裏切り者の末路

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 次に晴とあれっくすが門の前に立った。

晴:私達もそろそろ。楽しい時間をありがとうございました。

あれっくす:楽しかったです。お土産は一兄と瑳呂紋とぺんちゃんも気に入るよと思うよ。
 
タカ:うむ。みんなによろしくな。

セラ:二人ともまた遊びに来て下さい。次はお兄さんも連れて。

晴:ありがとうございます。

ギア:私達もそろそろ。頼電、元気でね。また来るから頑張ってね。

頼電:うん・・・。

メガ:しつこいようですが、うちの息子の事をよろしくお願いします。

 ギア子とメガ男はエマとタカールに深々とお辞儀をすると何故かリョウが返事をした。

リョウ:任せておけ。
 
トーマ:お前じゃ頼りないけどな。
 
セラ:ほんと。
 
タカ:話はまた次回に。門もあと少しで閉じるから早く行くんだ。
  
あれっくす:じゃ行こうか晴さん。
 
晴:うん。それじゃ。

 あれっくすと晴がルーチェの門をくぐり始めた時だった。

 ダダダダンと四本の弓矢が門に突き刺さった。

リョウ:あぶない‼︎

 リョウが叫んだ瞬間にギア子の目の前に弓矢が飛んできた。

 ギア子は避けきれずに咄嗟に目を閉じ屈む事しか出来なかった。

 避けれたと思っていたが目の前で弓矢が突き刺さる鈍い音がした。

 ギア子が目を開けると目の前でリョウが身を呈して手を広げていた。

リョウ:・・・ぐっ・・・。

 リョウが呻き声をあげながらギア子の前で崩れ落ちると無残にも胸に矢が三本刺さっていた。

セラ:リョウ‼︎

 セラがすぐにリョウの側に駆け寄ったが胸から致命傷とも思えるほどの血が流れていた。

リョウ:ギア子は無事か・・・。

ギア:私なら大丈夫よ・・・それよりも早く手当を‼︎

タカ:その前にこの弓矢を打った犯人がそこにいる。出てこい誰だかわかっているぞ!

 タカールが入り口の人影に叫んだ。

 するとスライドが飛び込んでタカールのネックレスを一瞬で掠め取った。

スライド:タカール様、隙がありすぎますよ。

 スライドはニヤリと笑いながらネックレスのルーチェのペンダントトップを手で握り潰すとこれ見よがしに粉々になった欠けらを床に落とした。

ダイナム:ルーチェの証が⁈ スライド、どういうつもりだ‼︎

タカ:妃の弟して宮殿に仕えていたお前が何故こんな事を。

セラ:そんな事よりもリョウの出血が・・・早く手当しないくては。

トーマ:スライドそこをどけ‼︎ 手当しなければ弟が死んでしまう。

スライド:死んで当然だ。姉さんがリョウを生んだせいで亡くなった。そのせいで母上は体調を崩し最近ではうわ言のように姉さんの名前ばかり・・・。

タカ:お前の姉は自分が病弱だと分かっていて王の元へと嫁いだのだ。リョウのせいではない。分かってるだろお前も。

 タカールはスライドの説得を試みようとしながらリョウの方を見ると手当てが間に合わないと言わんばかりにセラがタカールの方を見て首を振った。

リョウ:誰も教えてくれなかったけど宮殿に仕えていた侍女が教えてくれたよ。僕を産んで死んだって・・・。

ギア:喋ってはダメ・・・どうしよう血が止まらない・・・。

 その後ろでエマが静かに呪文を唱え始めていた。

スライド:これでギア子達も地球に帰れまい。

 後ろを振り返るとルーチェの門が変形しきっていた。

メガ:門が・・・何の恨みが。

スライド:姉さんが死んだと思ったらすぐに地球人との間に子供を作るなんて許せなかった。お前に私の気持ちがわからぬだろう・・ぐぁっ・・・なんだこれは?!

 スライドが部屋の壁に体が飛ばされると十字架に張り付けられたように固定され、身動きが出来ない状態になり悶えているようだった。

エマ:忘れたのですか。宮殿に入る前に一族と交わした契りを。裏切り者は闇の力に飲み込まれて塵と化すのです。

 スライドはかなり苦しいはずなのに最後の力を振り絞るかのようにギア子達に向けて不適に笑みを浮かべながら話を続けた。

スライド:私は・・死んでも・・・くっくっくっ・・・構わない。来る前に母上・・・も楽にして・・差し上げたしな。それにあの人が・・・きっと・・や・・り・・と・・げ・・る。おま・・え達・・には・・未来は・・な・・い。

 スライドはエマの呪文により体中の皮膚が紫になり喋り終わる頃には足元から塵となり言葉も木霊のようにリフレインしながら消えていった。

つづく
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