満月に吼える狼

パピコ吉田

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第三章 現る!過去の亡霊

第四話 赤い扉の向こう

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 生徒会長の選挙応援の為に同級生達が連日お菓子や飲み物などそれぞれ持ち寄りポスター作りに励んでいた。

 サクラは挨拶代わりに子供達がいる居間に様子を見に行こうと思った時だった。

 廊下の突き当たりにある赤い扉の前にメランが立っていた。

サクラ:こんにちわ。メランくんどうかした?

 まじまじと向かい合って顔を見るのは初めてだったが転校してきた時より大人びたせいか余計にメガ男に似てきた気がした。

メラン:いえ、この扉の奥に何があるのかちょっと気になりまして。

サクラ:私もよく知らないのよね、それよりみんな集まってるわよ。がんばってね選挙。

メラン:はい。ありがとうございます。

 メランは会釈すると杖をつきながら居間の方へと消えて行った。

 実はサクラも赤い扉は前から気になっていた。

 ぺんちゃんからはここは倉庫になっていて前の住人の遺品があるので入らないようにと釘を刺されていた。

 その赤い扉にメランが気にしている事に対しサクラは嫌な予感しかしなかった。

小夏:よーし。ポスターも出来ただす。

頼電:おお。カッコいい。サクラおばさん見てよ‼︎

 連日全員で色々と試行錯誤して作ったポスターが出来上がったようだった。

 サクラはそのポスターを見て目を疑った。

サクラ:公約は世界征服ってどういう事⁉︎

小夏:面白いだす。

頼電:公約を聞いて面白そうだから応援する事にしたんだよ。

小夏:争いもない平和な世界にするって事らしいだす。このスローガンの方がインパクトあるっす。

 ふと、あの日、代々木国立競技場での出来事がサクラの脳裏に過ぎった。

 とてもじゃないがあの日の悲惨さをこの子達に話すのはあまりにも酷ではないかと思い一度も話した事はなかった。

 無邪気に喜んでいる二人を見るとサクラは何も言えずに見守るしかなかった。

 そしてサクラの不安は的中する事になるのであった。

 ある日の晩に頼電と小夏が食事が終わった後にサクラに神妙な面持ちで話しかけて来た。

頼電:ねえ、サクラおばさん。僕たちのお母さんが死んだ時の話は詳しく教えてくれないよねいつも。

小夏:太陽が近づいて地球が大変な時期だったのは知ってるだす。それともしかして関係あるだすか?

頼電:本当の事を知りたいんだ僕たち。

 サクラはどこから話すべきなのかいつも悩んでいた。

 今でもあの日の事はよく夢に出てきてうなされる事もしばしばだった。

頼電:おばさんが夢でうなされてる事と関係あるんだよね?

小夏:もう私達も高校生だす。私たちそんなに頼りないだすか?

 二人の真摯な目を向けられサクラは困り果てていた。

サクラ:もう少し大人になったらね。心配してくれてありがとうね。

頼電:わかった・・。大人になったら必ず教えてくれよ。

小夏:だすだす。

サクラ:もちろんよ。明日投票で朝早いんだからもう寝なさい。

 二人納得いかないようだったが「おやすみなさい」と二階に上がって行ったのであった。

 そして投票日当日に即日開票が行われメランは生徒会長になり応援していたみんなで祝賀会をやる事になった。

 その日は子供達はサクラの家に集まりみんなで盛り上がり気がつくと夜の八時を過ぎていた
 
 遅くなると親御さんが心配するという事で解散する事になった。

 後片付けの際には隣に住む葉太郎が残って手伝ってくれていた。

サクラ:葉太郎くんお手伝いありがとう。後は頼電と小夏でやるからもう帰って大丈夫よ。

葉太郎:わかりました。お邪魔しました。頼電と小夏にまた明日って伝えて下さい。
 
サクラ:いつも仲良くしてくれてありがとうね。伝えておくね。

 サクラは葉太郎を見送り一息をついた時だった。

 よく見るとまだメランの靴が玄関にある事に気がついた。

  「三人で何かしてるのかしら?」

 サクラが居間に戻ろうとしたその時に奥の赤い扉が開いてる事に気がついた。

サクラ:まさかあの子達‼︎

 サクラは慌てて走って赤い扉の奥を見ると地下に降りる階段があった。
 
 階段を降りると両開きの扉が見え入り口に頼電と小夏とメランが立っていたのであった。

つづく
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