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第三章 現る!過去の亡霊
第三話 転校生メラン
しおりを挟む半年前から何度かぺんちゃんの家を訪れていたサクラは勝手知ったる他人の家とばかりに持って来た荷物を片付け新しい生活を頼電と小夏の三人でスタートし始めた。
だが、慣れない子育てにサクラは悪戦苦闘を強いられていた。
前から隣に住んでいた鈴谷の嫁の水蓮がそれを見兼ねてたまに手伝いに来てくれるようになっていった。
その日は鈴谷と水蓮と息子の葉太郎も遊びに来ていた。
水蓮:まさかあの若さで死ぬとは・・・サクラさん困った時はお互い様よ。私に出来る事があれば言ってね?
サクラ:ありがとうございます。本当に助かります。
鈴谷:サクラさんうちにも同じ年の息子がいますから良かったら一緒に遊ばせてあげて下さい。それにしてもぺんちゃんにはよく似てるけどあれっくすの面影がないねえ。
水蓮:そんな事を言ったら失礼よ。サクラさんうちの息子とも仲良くしてね。
サクラ:はい。それにしても葉太郎くんって大きいですね。
鈴谷:僕に似たのかもしれないね。
サクラは水蓮達の何気ない会話に救われていた。
あの日から壮絶な経験をしたせいで精神的にもかなり疲弊をしていた。
だがここに引っ越してきた事で環境が変わり心機一転、頑張ろうと心に決めたのであった。
そして何事もなく十数年の時が流れた。
頼電と小夏が中学二年になった年の事だった。
同じクラスに転校生がやってきたらしく二人とも興奮していた。
頼電:サクラおばさん、うちの中学に転校生が来たんだよ。
小夏:それでね、いつもメガネかけてるんだ。
頼電:メランって名前なんだよ。足がちょっと不自由で杖をついてるけどね。
小夏:写真を撮ったから見てだす。
小夏がスマートウォッチで操作すると壁に写真を投影させた。
サクラはその転校生の顔を見て驚愕したのであった。
サクラはその晩に頼電と小夏が寝た後、居間で転校生の写真の事を思い出していた。
顔はメガ男の面影があり持っていた杖はトーマが持っていた物にそっくりだった。
「あの日、トーマはギア子が作ったバリアに吹き飛ばされたはずなのに・・・どうして」
三人で会場内を見た時にメガ男の遺体はなく燃え尽きたとのばかり思っていた。
もし、トーマが吹き飛ぶ際にメガ男も一緒にバリア圏外に出た可能性がある。
サクラは一つの仮説を立てた。
メランという転校生がトーマとメガ男と関わりがあるとするならば、吹き飛んだ際にメガ男はトーマに攫われたのではないかと。
ただ、サクラにはどういうカラクリがあるのか分からなかったが、写真のメランはどう見ても中学生にしか見えなかった。
そして頼電と小夏がメランと仲良くなる事はとても心配でもあった。
かといって、転校生に興味津々で二人に注意したところで分かって貰えないだろうとも思っていた。
それにトーマの事は今となってはサクラ以外は誰も知る由もなく、もし鈴谷夫婦に話しても信じて貰えそうにもなかった。
数年後、サクラの心配は杞憂かのように頼電と小夏とメランは何事もなく同じ高校へと進学したのであった。
高校二年になった年にサクラが心配していた事が起きようとしていた。
学校から帰って来た頼電と小夏がサクラにお願いがあるようでそわそわしてるのが見てとれた。
サクラ:どうしたの二人とも、何か言いたい事あるなら言いなさいよ。
頼電:実はね、メランくんが生徒会長に立候補したんだよ。
小夏:そそ。それで私達も応援しようかと思っただす。
サクラ:それは良い事だね。
頼電:でね、葉太郎も一緒に僕たちの家で作戦会議をしようって話になって。
小夏:メランくんと応援する人達を家に呼んでも良いだすか?
メランが何度か遊びに来た事はあるが特に問題もなかったのでサクラは気にせず了承した。
サクラ:良いわよ。
サクラの返事に頼電と小夏は喜び「やった~‼︎」とジャンプしながらハイタッチをした。
学園生活を満喫している二人を見てサクラは微笑ましくなった。
「ギア子、ぺんちゃん、素直で良い子に育ってるわよ」
心の中で呟くサクラだった。
そして早速、翌日からメランを生徒会長にするべく連日クラスメイトが集まるようになっていった。
つづく
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