満月に吼える狼

パピコ吉田

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第三章 現る!過去の亡霊

第一話 あの日の出来事

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???:サクラおばさん起きてだす。

???:サクラおばさーん。朝だよ。

 男の子と女の子が布団に潜り込んで来てサクラを起こし始めた。

サクラ:もう朝なのね。小夏こなつ頼電らいでん、おはよう。
 
小夏:おばさん、またうなされてただす。

頼電:俺たちがついてるから大丈夫だよ。それよりお腹すいちゃった。朝ごはん作って。

サクラ:はいはい、学校行く準備しなさい。その間に作るから。

 小夏と頼電が「はーい!」と言って自分の部屋に着替えに戻って行った。

 たまに夢に出て来るのは太陽フレアが最高潮に達した日の出来事だった。

 あの日、ギア子が作ったバリアのお陰で大半の人は助かったが、予想より太陽が接近していた為にかなりの人達が犠牲になった。

 バリアが完全に出来上がると地球は太陽の電磁波から守られ安定した生活が出来る様になっていった。
 
 そして時間と共に太陽との距離が徐々に地球から離れて行くと少しずつバリアもなくなっていった。

 だが、そのバリアを作る為にギア子はかなりの体力を使い果たしたのであった。

 サクラは朝食を作りながらその日の事を思い出していた。

 ギア子がバリアを作ると太陽光と接触した瞬間に衝撃で周りにいた人達は意識を失った。
 
 もちろんサクラも意識を失ってしまった。

 どれくらい時間が経ったのか分からないままサクラが意識を取り戻すとぺんちゃんの側で顔面半分が焼き爛れたセラがいた。
 
 手元を見るとセラの手からぺんちゃんにパワーを送っているようだった。
 
 セラがサクラに気がつくとよろよろしながら近寄って来た。

セラ:私は力を使いすぎてもうダメだわ。
 
 サクラの横に座りこんだかと思ったらそのまま横に倒れた。

サクラ:力って? しっかりしてセラちゃん。

セラ:この黒いダイヤのリングの力は生命なの。ギア子さんとぺんちゃんとあなたにこの力を使ったのよ。
 
サクラ:そうだったのね。セラちゃんありがとう。
 
セラ:残りの力をあなたに託すわ。

 セラはそう言ってサクラの指にリングをはめた。

サクラ:どうして。

セラ:もう私には残された時間がないわ。よく聞いて。このトルキエの弓は片時も離してはダメよ。
 
サクラ:分かった。
 
セラ:二人に力を注いだけど足りないようだわ。サクラさんリングの力で彼女達を回復してあげて。みんなの為にこの力を・・・。

 サクラの頬を撫でていたセラの手が徐々に黒い霧へと変わり目の前からセラはいなくなってしまった。

 サクラは泣きながらまだ起きないギア子とぺんちゃんにセラに言われたままリングを体に押し当てて見た。

 するとギア子とぺんちゃんが目を覚ました。

 そして辺りを見回すと自分達以外に生存してる者はいなかった。
 
 サクラ達は立ち上がり愛する人々を無くした喪失感からか自然と涙が溢れていた。

 会場は半分焼け焦げていてそこから覗く光景は燃やし尽くされた大地が覗いていた。

 泣いてばかりもいられないと三人は会場から出て誰かいないか探しながら歩いた。

 色んな場所に行ってみたが、みんなどこかに避難したのか店を覗いても車の中を見ても人を見かける事はなかった。

 とりあえず誰かに会えるまで三人でひたすら歩いたが長時間歩いたせいか気がつくと三人とも空腹と疲れの為か途中で気を失ってしまった。

 サクラが気がついた時には目の前に白い天井があり、横にはギア子とぺんちゃんがベッドに寝ていた。

サクラ:ここは・・・病院?

 サクラが起き上がると丁度通りすがりの看護婦がサクラが目が覚めた事に気がついた。

看護婦:お目覚めですか、今すぐ先生呼んできますね。

 看護婦がいなくなり数分後にギア子とぺんちゃんも目が覚めた。

ギア:ここは・・・。

ぺん:あいたたた、体のあちこちが痛いだす。

 ギア子はまだ力が入らないようで起き上がれないようだった。
 
 その横でぺんちゃんは筋肉痛で悶えていた。

 そこへドクターがカルテを持って三人の部屋に入ってきたのであった。

つづく
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