満月に吼える狼

パピコ吉田

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第二章 迫る!ダンデリオンの影

第十七話 ダンデリオン一族

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 ギア子は観客席を見渡し銃口の数を見て「やりすぎじゃ無いの?」と思っていた。
 
 だが、一兄は手を緩める気もないようで手を大きく振り上げた。
 
朱美:今です。私のように地面に伏せて下さい。
 
 ギア子達はその場で朱美と同じように腹這いになり頭を抱えた。

一兄:さすがにこれだけの数なら避けきれないだろう。打てええええええ‼︎

 一兄がの号令と共に激しい銃声が一斉に会場に響き渡った。

 耳をつん裂くような銃声にギア子は怖くなり目をぎゅっと瞑り身を硬くしていた。

 数分間の銃声音が鳴り響き、さすがにステージ上は蜂の巣になってると誰もが思っていた。
 
一兄:打ち方やめ。
 
 一兄の合図で銃声が聞こえなくなるとギア子はそっと目を開けステーを見た。

 激しい銃撃のせいかステージ周辺に白煙が朦々と広がりトーマやセラの姿が見て取れなかった。

一兄:さすがにこれでは生きていないだろう。そろそろ太陽フレアが最高潮に達する。危険だみんなヘリコプターに乗って避難を。

 一兄がギア子達にヘリコプターに来るように手招きした時だった、目の前にいる朱美が顔を青ざめ呆然と立ち尽くしていた。

 白煙が徐々に消えそこには白い大きな丸い羽の塊のような物が見えた。
 
 目をよく凝らして見ると白い丸く見えた物は大きな翼が重なりあっているようだった。
 
 ギア:な、何あれ・・・。

 すると二つに折り重なっていた翼がパッと開くと受けた銃弾が翼から一気に放たれ観客席にいる全員に跳ね返りドミノ倒しのようにバタバタと倒れていった。

一兄:バカな・・・。

トーマ:ふう。これはさすがにちょっと痛かったですね。

 肩のホコリを払うかのように翼をバサバサとはためかせた。

 そしてトーマの傍にはセラと瑳呂紋達が無傷で立っていたのであった。

 観客席一帯がシーンと静まり返り、平然と立っているトーマの姿を見て一兄は戦慄いていた。
 
 トーマの近くに無防備に座っていた旧月は弾丸を浴び、地面に血まみれになり横たわっていた。
 
 ギア子は旧月の姿を見て一気に頭に血が上りトーマに噛みつき始めた。

ギア:ちょっと、人の命を何だと思ってんの⁉︎ あなた達一体何者なのよ。

トーマ:私とセラはアリュバス星から来たダンデリオン一族で私は王子、セラは王女だ。お前は母親から何も聞いてないのか?
 
ギア:え、お母さんから何も。
 
セラ:ギア子、あなたは実は私達の腹違いの妹なのよ。
 
  「
  
 この場にいる地球人達は皆そう思ったに違いない。
 
 そしてギア子本人でさえ初耳で困惑しいた。
 
ギア:何をいきなり言い出したのよ。そんなわけないじゃい。私は一人っ子のはず。
 
トーマ:壱乃(いちの)は何も言ってなかったのか。
 
ギア:お母さんの名前を何で知ってるの。それに私が妹だとしても何故こんな事するの。
 
一兄:そうだ。それにギア子さんが本当に妹だという証明はあるのかそもそも。
 
トーマ:弓は持って来たと言ったな。それに弟から受け取った力があるはず。ダンデリオン一族のみしか継承出来ない力がな。
 
セラ:ギア子、弓を持ってみれば分かるわ。
 
 一兄が澄玲に目配せするとヘリコプターの中からトルキエの弓を持って来てギア子に渡した。
 
澄玲:ギア子さんどうぞ。
 
 ギア子は半信半疑だったが弓を持った瞬間に体の奥底から熱いものが腕を伝い光の球体が弓へと移動するのが見えた。
 
 弓は一回り大きくなり赤く光出した。
 
トーマ:我が一族の印だ。試しに他の者が持ってみれば分かる。
 
 ギア子は隣いるサクラに渡すと弓は一回り小さくなり光も消えた。

サクラ:ギア子・・・知ってたの?
 
ギア:し、知らなかった・・・本当よ。
 
一兄:ギア子さんの事は分かった。いや、よく分からない部分もあるが。だとしても何故こんな事する必要があったんだ。
 
トーマ:俺たちは父を殺した地球人に復讐する為に何年もかけて計画してきたんだ。
 
セラ:そうなの・・。
 
 セラが言うには小さい頃に病気で母を亡くし、妻を亡くた父のヴェルフ王は悲しみに暮れ何年も伏せていたそうだ。
 
 そんな姿を見た従者が気分転換に他の星に遊びに行ってはどうかと提案した。
 
 ヴェルフ王は皆を心配させるのも忍びないとたまたま選んだ地球に降り立った。
 
 するとそこには運命の出会いが待っていた。
 
 ギア子の母の壱乃に出会いヴェルフ王は恋をしてしまったのだ。
 
 それからは地球にいる事が増え数年後にギア子が生まれた。

トーマ:父が他の星の女にうつつを抜かし、更には子供まで作るなんて。穢らわしい。
 
ぺん:妹になんて事を言うだすか。部外者の私でもギアっちの事を悪く言うのは許せないいいいい。
 
 ぺんちゃんが暴れ出すと危ないと思ったあれっくすは慌ててぺんちゃんの両腕を掴んだ。
 
トーマ:随分と威勢が良いな。まあ話を最後まで聞け。
 
ぺん:しょうがない、聞いてやるだす。
 
 ぺんちゃんはその場でふんぞり返って腕組みをし、それを見たギア子は乾いた笑いしか出てこなかった。
 
ギア:はは・・・それでその後に何が起きたの?
 
トーマ:ギア子が生まれてすぐの事だ。久々に帰って来た父は何者かに襲われたようで満身創痍だった。
 
セラ:父は息も絶え絶えで言葉を発する事も困難だったわ・・。
 
 セラは当時の事を思い出したのか苦痛な表情を浮かべた。
 
トーマ:父はどんな治療を施しても手遅れで数時間後には亡くなった。
 
ギア:地球で一体何が。
 
 ギア子には物心ついた頃には父はおらず、母の実家に祖母と三人で暮らしていた記憶しかない。
 
 父は一体どんな人だったのか改めて知る事になった。

つづく
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