満月に吼える狼

パピコ吉田

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第一章 叩け!釈迦頭金貨財団

第九話 ゆきの事情

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 夕食に招待されたゆきはその日の夜にギア子の家にやって来た。
 
ゆき:こんばんわ。ギア子さん今日はお招きありがとうございます。
 
メガ:こんばんわ。ゆきさんはじめまして。どうぞゆっくりして行ってください。
 
ギア:ゆきさん来てくれてありがとう。食事は出来てるからどうぞ上がって下さい。
 
ゆき:お邪魔します。
 
 部屋の中に入って来たゆきは昼間に比べると少しは血色が良く見えてギア子は少しホッとしていた。
 
 そして三人は夕食を済ませ、食後のお茶を入れながらギア子は他愛もない会話をしたついでにゆきの事を聞いてみた。

ギア:ゆきさん昼間はかなり体調が悪そうに見えたけど何か持病をお持ちなんですか?

ゆき:いいえ・・・特には何も・・・。
 
ギア:そうですか。でもお隣さんになったのも何かの縁ですし、大変な事があればいつでも相談して下さいね。
 
ゆき:ありがとうございます。ですが、会って間もないお二人にいきなり相談するのもどうかと・・・。
 
メガ:話を聞くだけならタダですからどうぞどうぞ。
 
ギア:うんうん。何か悩みがあるなら話してゆきさん。
 
 ゆきは最初は口が重かったが申し訳なさそうにゆっくりと話しはじめた。
 
ゆき:実は私には夫と四人の息子がいるんです。

 ギア子はゆきが引っ越して来る前に大家から女性一人が引っ越して来ると聞いていたが結婚してるとは思っていなかった。

ギア:でも、ゆきさん一人で住まわれてるようですが。

ゆき:ええ、今は一人です。主人と息子はある団体の施設にいまして私だけここに住む事になりまして。

 色々と話を聞いてみるとその団体の活動に旦那さんがいたく気に入ったようで、ある日突然、団体が運営する施設に移住すると言って息子達を連れて家を出て行ったらしい。

 ゆきも一緒に行かないかと旦那さんに言われたものの、近くで一人で住んでいる介護が必要な母を放っておく訳にもいかず自宅に残ったのだという。

 でもそうなると何故ここに引越して来たのか疑問に思ったメガ男が理由を聞いてみた。
 
 するとゆきが思い出すと辛いのか涙で声を詰まらせながら続きを話し出した。
 
 旦那と息子達が家から居なくなって何日か経った頃、団体の人達が押し寄せて来て『この家は団体の活動拠点になる』と言われ無理やり追い出されたようであった。

 そしてゆきはくしゃくしゃになった一枚の冊子をバッグからとり出し「これが団体のパンフレットです」とテーブルに置いた。
 
メガ:あれ、この団体って・・・ホテルで警備する事になってるところと同じ名前だ。

ギア:一週間前に行ったホテルの催し物って言ってたやつ?

メガ:そうそう、かなりの人数呼ぶような感じだったが。

 ギア子はいきなり立ち上がり「ならば、私が参加してどんな団体なのか見てきてやるわ」と謎の正義感を湧き上がらせ、メガ男に無理やりニ人分の席を用意して貰うように頼み三日後に開かれる団体の講演会に行く事になった。

 当日メガ男に貰った講演会のチケットを二枚握りしめギア子はぺんちゃんを誘い会場に来ていた。
 
 入場する前に警備についていたメガ男に無理しないようにと何度も念を押されたのを思い出し一つ深呼吸をした。

ぺん:それにしてもすごい人だすね‼︎

 ホテルのロビーにもかなり人がいたが会場の入り口もかなり混雑していた。

 指定された席に座ると司会の人がマイクをトントンとすると、徐々に喋る人もいなくなり静かになって来た。

光人:今回司会を務めさせて頂きます光人らいとと申します。本日は皆様よろしくお願いします。

 光人は舞台上にあるテレビジョンの画面を操作しながら話し出した。
 
光人:それでは釈迦頭しゃかとう金貨財団の説明します。

 釈迦頭金貨財団では講演会に友達を誘ったり徳をする行いや、施設での活動をする際に財団が発行している金貨が貰え、その金貨の枚数によってご利益があるアイテムと交換できるという話だった。

ぺん:ご利益があるアイテムってなんだすかね?

ギア:さあ?運が良くなって宝くじが当たったりとか?

ぺん:宝くじ当たるですか⁉︎

 静まり返っている会場にぺんちゃんの声が響き渡り、光人はこちらを一瞥して『お静かに。』と注意される羽目になった。

 周りにすみませんと小声で謝りギア子はぺんちゃんをすぐ座らせたのであった。

光人:では、ここで釈迦頭金貨財団の代表をご紹介させて頂きます。どうか皆様、拍手でお迎え下さい。

 すると舞台の中央にスポットライトが当たり、パーカーにジーンズとスニーカーとラフな格好の男性が左手の袖からイヤホンマイクをつけて現れた。

リョウ:みなさん釈迦頭金貨財団の講演会にようこそ。代表のリョウです。

 リョウが登場すると割れんばかりの拍手が始まりギア子とぺんにゃんはつられるように手を叩いた。

 そしてニ人は異様な熱気に包まれた会場に違和感を覚えるのであった。

つづく
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