満月に吼える狼

パピコ吉田

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第一章 叩け!釈迦頭金貨財団

プロローグ

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 ギア子はキッチンでため息を吐いていた。

ギア:(また焦がしちゃった、私って料理の才能ないのかも・・・・。)

 火加減を間違え焦がした野菜炒めを見つめるこの女性は最近結婚したばかりだ。

 そこへサクラが入って来た。

サクラ:お邪魔しまーす!あれれれ、なんだか焦げ臭い。おや、まーた失敗したのギア子?

 我が物顔でキッチンに入って来たサクラの手元には綺麗な断面の出汁巻卵が皿に乗っていた。

 サクラは数年前に引っ越して来たお隣さんだ。

 ギア子は背が小さくこじんまりした顔立ちなのに対し、サクラはというとモデル体系で目鼻立ちがハッキリして花がある感じだ。

 そんなサクラは商社の受付嬢で出会いも多く引くて数多ではあるが、その反面恋愛下手でいつも失敗ばかりの日々だった。

 愚痴を聞くのはいつもギア子の役目だったが、最終的にはギア子の旦那様のメガ男の方が親身に話を聞くようになっていた。

 長時間の愚痴など嫌な顔をせずに聞いてくれるメガ男にいつかしか好意を抱くようになっていったサクラだった。

 だが、その時には既にメガ男はギア子と付き合っていて誰から見ても理想的なカップルでサクラが二人の間に入るスペースは一ミリもない状態であった。

 二人が結婚しても諦めきれないサクラは新婚だと分かっていてもお構いなしに毎晩やって来ていた。

 一件迷惑そうな話でもあるが、サクラは料理上手で料理下手なギア子からすると一品まともなおかずが増えるのは有難い話だった。

 そしてメガ男の方だが、名前から想像する通り子供の頃から眼鏡をかけてるせいでいつしかあだ名がメガ男になっていた。

 メガ男が大学を卒業して就職して少しすると弟が予想外の授かり婚をし経済的な理由で実家に嫁と住み始めた。

 手狭な実家に人が増え自然とメガ男の居場所がなくなり家を出る事になった。
 
 メガ男は住む場所を探す為に仕事帰りにポッと入った不動産屋にギア子が住んでいるアパートを勧められて引っ越し来た。

 そしてニ人はこのアパートで運命の出会い果たし結婚したというわけだ。
  
 そこへタイミングよくメガ男が帰宅した。
 
メガ:ただいま。なんか焦げ臭い匂いと何故か美味しそうな匂いが入り混じってるな。

 メガ男が鼻をクンクンとさせながら匂いがする方へと行くとキッチンにはしょんぼりしてるギア子と満面な笑みのサクラが出迎えた。

 そんな姿を見たメガ男はまたかと天を仰いだ。

 結婚してから数ヶ月いつもこのパターンだったからだ。

 メガ男は腕捲りをして「よし、俺が何か作る。二人とも座ってて。」とギア子とサクラをキッチンから追い出した。

ギア:メガたんありがとう!むむ、この卵焼き出汁が効いてて美味しいわね。

 ギア子はサクラが作ってきた出汁巻卵を一つ摘んだ。

サクラ:ふふ、一から出汁取ってるからね。

 そんなこんなで結局はメインのおかずを作るのはメガ男の役目で、ギア子とサクラは毎晩女子トークをするのが新婚生活の日課になっていた。

つづく
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