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始点『地獄』〜中継『アリス』〜終点『地獄』
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「姫様、この狡猾な人族の言うことを信用してはなりません。」
アルダスも気まずそうに弁解をする。
「こいつは三日前に魔界に誤って入ったのです。新薬の実験台にしていたのですが、何故か今日の全てのポーションが彼には効かなくなったのです。私が黒色ポーションを調合していた時に事故が起きて、逃げられてしまいました。」
『姫様』、小沼はやっと何故この少女が護衛に止められないのかが分かった。これで彼らのアリスに対するあの恭しい態度も納得がいく。
しかし、小沼はアルダスに狡猾と言われたものの、彼はそれを認めるつもりは全くなかった。アリスと比べて見れば彼は純白の心を持ち主に違いないのだから。
「全てのポーションが効力を失った?」
アリスは両目をキラキラさせて、まるで面白いオモチャを見つけたようだった。
「今度シナフィと『イナの森』に行ってきたけど、丁度面白い物を持って帰って来たのよ。これへ『ダカの花』、これは『ウェゼの実』……この人族で効力を試してみない?」
アリスが腕に持っていたバスケットの中に入っているのは綺麗な花やフルーツ。但し普通の代物ではなく、アリスが『面白い物』に分類するような危険物。
小沼は抗議する暇も時間を与えられることもなくスリに縄でクルンクルンにされて実験室に連れ戻された。
一時間後。
アルダスの顔色は優れなかった。『イナの森』の薬草の毒性はかなり強いが、依然として小沼には効かなかった。
今のスタートアップ進度は20.6%に達していたが、小沼は素直に喜べなかった。『コスプレイヤー』だけでも十分怖い、それに『腹黒ロリ』を出してしまったら、威力は恐らく1+1=2には止まらない。
微毒などを使ったイタズラをよくしている為に、アリスはずっとポーション学にとても興味がある。強いて言うのならアルダスの生徒と言えなくもない。
「アルダス師、使っているのは全部ディスポーションなのだから、バフポーションを使っていない?」
ディスポーションは小沼が今まで飲んで来た使用者に悪い影響を与えるポーションのことで、バフポーションその逆の良い影響を与えるポーションのことである。
アルダスもこの提案を聞いて、なんてその発想がなかったのかと思った。これまで開けていない棚から青いポーションを取り出す。
「まずはこの『膂力増強ポーション』を試してみようか。」
スリは恭しく瓶を受け取って、小沼の口をこじ開けてそのまま喉に流す。小沼は身体が熱くなり、息が荒くなる。力が恐ろしく増強されて、腕を縛っていた縄一瞬で引き千切られた。
アルダスとアリスは縄を引き千切った小沼を冷静に観察していた。慌てる様子は全くない。小沼も自分の力が多少増強されたところでこの二方に勝てるとは微塵も思っていない。
変なことに、スマホ様はこのバフの効果を吸収するつもりはないらしい。進度がほんの僅か進んで20.7%になった。
アルダスとアリスは動く気なんてないが、スリは違っていた。彼はアリスの前でいい働きをして評価されたかった。アリスは正真正銘の王族であり、彼女に評価されることはかなりのプラスになる。
だから彼は小沼に向かって縄を持って突進していった。しかし、小沼は丁度ポーションのお陰で力の発散に困っていた。『眠い時に枕』、一人と一魔が取っ組み合いになった。
本来ならいくら『膂力増強ポーション』を飲んでいようとも、小沼は増強される元が凄まじく弱いからスリに勝つのは困難である。
だが、両者は前提条件が違っていた。小沼は命懸けでなりふり構わずの闘い方、スリは小沼の命どころか過分な傷をつけるのも厳禁である。逆にスリの方が小沼に押されて反撃出来ずにいた。
そろそろスリが命からがらの瀕死状態になった時、アルダスは小沼を観察して驚愕よ色を浮かべる。
「確かに『膂力増強ポーション』は力を大幅に増幅してくれるが、効力が切れた後は副作用で極度の虚弱状態になる筈だ。何故こいつはなんともないのだ……」
「まさか、アルダス師は遂に副作用のないポーションに配合に成功したので?」
「いえ、ありえません。そのレシピは既に失われたものです。伝説の薬剤師ならいざ知らず、私それを持っていません。完璧の『膂力増強ポーション』も、魔界をくまなく探したところで一本出てくれば奇跡でしょう。」
(副作用?スマホ様がさっきちょっとだけ進度が進んだのはそれを吸収したからかな。有益な成分だけ残して悪害の成分を全て吸収してくれるというのならチートだな。)
小沼は今度こそ大丈夫だと素直に喜ぼうとして、ハッとなった。
(これって、新しい実験のフラグじゃね?)
アルダスも気まずそうに弁解をする。
「こいつは三日前に魔界に誤って入ったのです。新薬の実験台にしていたのですが、何故か今日の全てのポーションが彼には効かなくなったのです。私が黒色ポーションを調合していた時に事故が起きて、逃げられてしまいました。」
『姫様』、小沼はやっと何故この少女が護衛に止められないのかが分かった。これで彼らのアリスに対するあの恭しい態度も納得がいく。
しかし、小沼はアルダスに狡猾と言われたものの、彼はそれを認めるつもりは全くなかった。アリスと比べて見れば彼は純白の心を持ち主に違いないのだから。
「全てのポーションが効力を失った?」
アリスは両目をキラキラさせて、まるで面白いオモチャを見つけたようだった。
「今度シナフィと『イナの森』に行ってきたけど、丁度面白い物を持って帰って来たのよ。これへ『ダカの花』、これは『ウェゼの実』……この人族で効力を試してみない?」
アリスが腕に持っていたバスケットの中に入っているのは綺麗な花やフルーツ。但し普通の代物ではなく、アリスが『面白い物』に分類するような危険物。
小沼は抗議する暇も時間を与えられることもなくスリに縄でクルンクルンにされて実験室に連れ戻された。
一時間後。
アルダスの顔色は優れなかった。『イナの森』の薬草の毒性はかなり強いが、依然として小沼には効かなかった。
今のスタートアップ進度は20.6%に達していたが、小沼は素直に喜べなかった。『コスプレイヤー』だけでも十分怖い、それに『腹黒ロリ』を出してしまったら、威力は恐らく1+1=2には止まらない。
微毒などを使ったイタズラをよくしている為に、アリスはずっとポーション学にとても興味がある。強いて言うのならアルダスの生徒と言えなくもない。
「アルダス師、使っているのは全部ディスポーションなのだから、バフポーションを使っていない?」
ディスポーションは小沼が今まで飲んで来た使用者に悪い影響を与えるポーションのことで、バフポーションその逆の良い影響を与えるポーションのことである。
アルダスもこの提案を聞いて、なんてその発想がなかったのかと思った。これまで開けていない棚から青いポーションを取り出す。
「まずはこの『膂力増強ポーション』を試してみようか。」
スリは恭しく瓶を受け取って、小沼の口をこじ開けてそのまま喉に流す。小沼は身体が熱くなり、息が荒くなる。力が恐ろしく増強されて、腕を縛っていた縄一瞬で引き千切られた。
アルダスとアリスは縄を引き千切った小沼を冷静に観察していた。慌てる様子は全くない。小沼も自分の力が多少増強されたところでこの二方に勝てるとは微塵も思っていない。
変なことに、スマホ様はこのバフの効果を吸収するつもりはないらしい。進度がほんの僅か進んで20.7%になった。
アルダスとアリスは動く気なんてないが、スリは違っていた。彼はアリスの前でいい働きをして評価されたかった。アリスは正真正銘の王族であり、彼女に評価されることはかなりのプラスになる。
だから彼は小沼に向かって縄を持って突進していった。しかし、小沼は丁度ポーションのお陰で力の発散に困っていた。『眠い時に枕』、一人と一魔が取っ組み合いになった。
本来ならいくら『膂力増強ポーション』を飲んでいようとも、小沼は増強される元が凄まじく弱いからスリに勝つのは困難である。
だが、両者は前提条件が違っていた。小沼は命懸けでなりふり構わずの闘い方、スリは小沼の命どころか過分な傷をつけるのも厳禁である。逆にスリの方が小沼に押されて反撃出来ずにいた。
そろそろスリが命からがらの瀕死状態になった時、アルダスは小沼を観察して驚愕よ色を浮かべる。
「確かに『膂力増強ポーション』は力を大幅に増幅してくれるが、効力が切れた後は副作用で極度の虚弱状態になる筈だ。何故こいつはなんともないのだ……」
「まさか、アルダス師は遂に副作用のないポーションに配合に成功したので?」
「いえ、ありえません。そのレシピは既に失われたものです。伝説の薬剤師ならいざ知らず、私それを持っていません。完璧の『膂力増強ポーション』も、魔界をくまなく探したところで一本出てくれば奇跡でしょう。」
(副作用?スマホ様がさっきちょっとだけ進度が進んだのはそれを吸収したからかな。有益な成分だけ残して悪害の成分を全て吸収してくれるというのならチートだな。)
小沼は今度こそ大丈夫だと素直に喜ぼうとして、ハッとなった。
(これって、新しい実験のフラグじゃね?)
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