君と出会えて、幸せだった

2006年3月、僕は松戸市横須賀一丁目の一番地に生まれた…猫。

 名前はニャン太、と言っても生まれた時に名前なんて無い。
 後々、僕を飼ってくれた飼い主が名付けてくれた。

 僕は普通のどこにでもいるオス猫。
 ひょんなことから三十代前半の男に飼われることとなる。

 男の名前は剛と言った。

 剛はペットを飼ってはいけないおんぼろアパートに住んでいて、僕を飼い始めたのはいいものの大家さんにバレないように苦難続きだった。

 剛との思い出はと言うと、沢山ある。

 家出をして剛を困らせたり、ペット禁止のアパートで大家さんに僕を飼ってることがバレて大変だったこともあった。剛のくつろぐ部屋にスズメバチが侵入して来た時、剛が必死に僕を守ってくれたこともあった。 
 剛の車で芝生の生い茂る公園に連れて行ってもらったこともあった。

 剛のたった一人の兄弟である弟が亡くなった時、辛そうに泣いていた剛を慰めてあげたこともあった。

【剛…剛は一人ぼっちなんかじゃない。
 剛には僕がいて、僕には剛がいるから…】

 嫌なこともあったけど、楽しい思い出の方が沢山ある。

 しかし、2020年の夏くらいから、僕はたまらない吐き気に襲われ、二日に一度は吐いてしまうほど体調を崩した。

 2021年8月21日、僕は剛に動物病院へ連れて行かれ何とそこで告げられた病名はリンパ腫とのことだ。
 獣医さんが告げた僕の余命は残り1〜2ヶ月だと言う。

 いきなり告げられたガンと言う事実と余命宣告に僕は唖然とした。
 獣医さんにそう告げられた剛は泣きじゃくっていた。

【まさかこんなことって嘘だろ】

 そう思いつつ、最悪の事態も覚悟し僕は検査入院するためのゲージに入れられた。

 治療すればまだまだ長く生きられるかもしれない。
 しかし、これが最後になるかもしれない。
 
 そんな状況で僕は今こうして剛との15年間を振り返って見みた。

 そして、改めて思う。

【剛…君と出会えて、僕は幸せだった】

 …と。

 
 私とニャン太とのほぼ実話の物語です。 

 エブリスタにて、2021年10月17日の特集「心を揺さぶる物語」に掲載されイチオシ作品にもなりました。
 また、日間トレンド・ヒューマンドラマ最高22位獲得作品です。

 ぜひご拝読いただければ嬉しい限りです。
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