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私、社交界デビューします。

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タリアとゆっくり話をした日からあっという間に社交界デビューの日がやってきてしまったの。
私たちの婚約については身内のみでお披露目パーティをしたのでまだ知らない人も多いそうだから、多少囲まれてしまうかもしれない事は覚悟しておくようにとお母様にはこっそり教えてもらったのだけれども、クリス様もお父様も俺たちで護るから私には心配させなくていいと言っていたみたいなの。
「男たちは楽観的なのよ!」
とお母様はプンプンしていらしたわ。
お母様には元夫と遭遇する心配についてはクリス様から注意して見ていて欲しいと伝えてくださっていたからそちらは離れないように気をつけるしか無いわねとお母様も言っていたわ。


「リディ!!綺麗だよ。」
お兄様の瞳の色のドレスはお母様としても婚約してくれたら良いなと言う想いもあり勧めてくれたみたいだけれども社交界デビューで婚約者の色を纏うのは一般的なので結果としてこの色を選んでおいて良かったわ。
「ふふ、クリス様もとっても素敵です。」
シェーングレン公爵家のみんなは美形揃いで私だけ浮いて無い?とタリアに聞いたらむしろ溶け込んで絵に残したいほどと言われてしまったの。
「あぁ、リディを他の男に見せたくない……」
「まだこの子はそんなことを言って。でもリディ、とっても素敵よ。」
「お母様、ありがとうございます。」
初めは褒めてもらったりする事が無かったからお店でも社交辞令だと思っていたのだけれど、ここまで言われると私って美人だったの?とは思うようになってきたわ。
だからといってどうかなるとか考えたりはしないわ。
クリス様のそばにいて見劣りしなくて良かったくらい。

「本当に綺麗だよリディ、さぁそろそろ時間だから行こうか。」
お父様もとっても素敵だわ、クリス様がお父様位のお歳になられたらこんな感じなのかしら?と思ってしまったら、
「リディ?父上をそんな目でみてはいけないよ?」
「え?」
「こらこらクリス、父親に嫉妬とはみっともないぞ。」
ふふ、こんなやり取りができる幸せって素敵よね。

「男どもはほっておいて行きましょう。」
そろそろ馬車に乗らないといけない頃合だったのでお母様と先に馬車に向かおうとするとクリス様とお父様も急いでエスコートしてくれたわ。

「ふぁぁ、、」
「リディ、行くよ。」
王宮の夜会ということで夜会専用ホールの前で馬車を降りその門構えと後ろに見える王城に圧倒されるわ。

「クリフォード様よ!」
「今日も素敵ですわ、でもあの女性は?」
「クリフォード様のエスコートなんて羨ましい。」
「どこのご令嬢だ?」
「儚げな美人だなーあんな令嬢いたか?」
「相手がシェーングレンの嫡男だと勝ち目が無いな。」


そこかしこからクリス様のエスコートに対する嫉妬や、私の事?を話しているのが聞こえてくるわ。
陛下の挨拶の後参加者のダンスタイムに2曲連続で踊り、休憩をしていると突然、

「リディ、帰ろう!」
「どうしたのですか?」
「リディこのままふりかえってはいけないよ……」
急にクリス様の雰囲気が変わり真剣な表情で私の肩を引き寄せる。

「やぁクリス、君が女性をエスコートするなんて珍しいね。」
「サウスリンド、悪いがそれ以上近寄らないでくれ。」
「おいおい、いくら美人といるからってそんなに警戒しなくてもいいじゃない、か……」
牽制というか忠告したのに近づいてくるなんて、
横顔を見られているのが視線で分かるが目を合わせたくないわ。
「リリー?髪の色が違うがリリーだよね?」
「サウスリンド、もう一度言う、彼女に近寄るな。」
「クリス、なんでリリーと一緒に居るんだ?」
恋する男は惚れた女の顔は間違えないってことなのかしら?

「サウスリンド、なにをしている。」
少し興奮気味の元夫を後ろから殿下が怖い顔で肩を掴んだ。
「えっ、あ、いやクリスとリリーが一緒に居たので驚いただけで。」
殿下とは一緒に会いに来たことが有るからそれで伝わるかもしれませんが。

「まさかと思っていたが、まだ気づいていなかったのか?」
殿下、知ってましたよね?気づいていないことに。呆れた顔を装ってますが企んでいる顔にも見えますわ。
「気づいていない?」
この方本当に他人に興味が無かったのですね。
「済まないリディア嬢、この男は二度と近づかないよう再度言い聞かせておく。」
「まったくです、私たちはコレで失礼します。」
殿下が私の名前を読んだ瞬間、ようやく理解したのかその場で固まるが、殿下の護衛で以前お会いしたチェルニーヒ様に半ば引きずられるように会場から出ていかれた。

「リディ、大丈夫かい?」
「ええ、ちゃんと約束通り守ってくれましたから。」
「注目も浴びてしまったしそろそろ帰ろう。あとは殿下に任せておけば大丈夫だし。」
覚悟していたとはいえやっぱり少し疲れてしまったので素直に帰ることにしたわ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
再会しましたねー
リディ側から見たら呆然と固まっているようにしか見えませんがきっと本人は愕然としている事でしょう。
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