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【閑話】甘い蜜は辞められない

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私はクスマウェル侯爵家本邸の家令、ダダン・アーヴェン。
クスマウェル侯爵の嫡男のサウスリンド様が先日ご結婚されたが、相手の女性はなんと言うか侯爵家にくる行儀見習いの侍女よりみすぼらしい女だった。
女嫌いのサウスリンド様が風よけとして婚姻されただけで見向きもしない女なら何をしてもバレないだろうと別邸では無く先代まで使っていた庭師小屋に平民侍女を1人つけ放り込んで侍女が月々の給金を取りに来るついでにサウスリンド様からのお手当てを形ばかり渡す。
本来の額ですら次期侯爵夫人ととしては少し少ない額だった事から軽んじてもバレなさそうだと魔が差したのだ。

かねてより付き合っていた男爵令嬢の行儀見習いの侍女に奥様の髪色に染めさせて別邸でお手当ての半分程を使って優雅な生活を享受していたのだが、結婚から1年ほどした頃奥様が失踪された。
平民侍女がいるならと庭師小屋に出入りしていた下働きのモノが辞めた時に引き続きをさせずに食料も届けなくし、手当も渡す分を減らしていったら侍女が辞めた。
そのまま亡くなればこっそり埋葬して恋人を奥様と偽りサウスリンド様を酔わせ奥様と閨を共にしたと錯覚させ私の子を侯爵家の跡取りにしてしまおうなんて事を考えてしまったのがいけなかったのだ。
今私は侯爵家騎士団が管理する牢にいる。

昨日先触れもなく第2王子殿下が来訪されさすがに王族が来たことで奥様にもてなしをするように指示を受けほとんど私の采配で彼女を奥様に仕立て上げ出迎えの準備をして待っていると、サウスリンド様だけが恐ろしい形相で戻られその場で私と彼女を拘束したのだ。

第2王子殿下は私の奥様のお手当てに手を付けたこと、彼女を奥様と偽ったことを把握されておりサウスリンド様に苦言を呈されたそう。
しかも辞めた平民侍女はこの街では2大商会の片方の娘で帳簿をきちんとつけていたそう。
奥様がお手当てを取りに来ないので念の為見に行った庭師小屋で置き手紙を見てそれを隠蔽して満足していたが、あの女は別の場所に侍女がつけていた帳簿や約1年の結婚生活の待遇について書いた手紙を隠していた。

こんなことになるのならばあの女が逃げ出した時にサウスリンド様に報告して大人しくしていればと後悔してもしきれない……

「ダダン!なぜこんなことした!」
取り調べ室でサウスリンド様に詰め寄られるが、
「貴方には言われたくありませんね。都合のいい女を嫁にして放置した人がね。あのみすぼらしい女が病気だと本気で思っているおめでたい方にはね。」
そう、あの女はどう見てもスラムのような食べ物をろくに食べてないような不健康さが目に付いた。
それを気付かずに冷遇したのだから使用人一同主人の意向に沿ったまで。
私の罪は横領と恋人を奥様と偽ったことだろう。
「なっ……」
「まさか本気で気づいてなかったんですか?人のことは言えませんがサウスリンド様も奥様からしたらクズ男ですね。」
どうせ罪人になるのだろうし言いたいいことをぶちまける。
「貴方はそんなつもりなくてもそれが現実ですよ。」
バカバカしい、そんなに落ち込むなら最初から最低限の交流を持てばいいのだ。
貴族は政略結婚が当たり前でもここまでの冷遇はそうそうない。
私が罪を犯した原因は自分に有るのだと自覚して後悔すればいい。
「そうそう、下町のカフェの女に入れ上げているんでしたっけ?有名ですよ。きっと奥様はあなたを恨んでいるでしょうね。」
「くそっ!」
何も反論出来なかったらしく騎士団に任せ足音荒く出ていったがせいぜい後悔するといい、私だけが罪を被る気は無いからな。

唯一の心残りは恋人くらいか、まぁあいつはしっかりしてるし俺に騙されたとか上手く言い逃れしているだろう。
別にそれはそれでいい、ここまでバレたのだから罪が重くなったところで大して差がないしな。

サウスリンド様は別だ、王族からの情報だ、無駄なあがきをしても意味はないが、嫌がらせ位はいいだろ。
せいぜい後悔しろ。
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