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彼の光魔法

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 あぁ、社交界デビュー以来の王宮。
 シャンデリアも立派な回廊が続いて、タペストリーも素敵。リヒャルト様のエスコートと、アルバルト様とロイ公爵が付いてくれている。
 通りがけに、他の貴族の令嬢とか婦人とかが。そりゃぁ、羨望せんぼう眼差まなざしという嫉妬の目で。
 私、サブキャラですもんね? 忘れていました。本来なら、へのへのもへじの方と婚約が決まって、花嫁修業していたんだろうなぁ……。

 「リヒャルト・ワルバーン公爵がお着きになりました!!」
 「入れ」

 おっもーい雰囲気で、とっても難しい顔をした国王様。素敵なイケオジが、勿体ないです。
 後ろの控えの者を下がらせると、私たちと国王様。そして、王子様に王妃様。
 なんでしょう? 王室の重要人物が、雁首がんくびそろえてます。あっ、勢揃いです。

 「言ったよね?」
 「わたくしも言いましたわ!!」
 「そうだな……妻をめとるのが決まったら、我々に一番に言う。と」
 「「「こんなに可愛いなんて聞いてない!!」」」
 「「「…………」」」

 えっ、なに?! 可愛いって誰? キョロキョロと周りを見て、誰なんだろう? って探してみる。
 いない……首をかしげたまま考えてしまう。

 「マリア? 君のことだよ」
 「へっあ?」

 なに? 私? 

 「わたしーーー?!」
 「俺の可愛い嫁は、君だけだろう?」
 「……えぇっと、いつ、あなたの奥さんに?」
 「君とアレだけしているのにか?」

 あっ、みんな、スゴイ。誤解です、しているのはキスくらいです!!
 オネエちゃぁぁぁん!! 

 その場で何とか、ロイ公爵とアルバルト様が納めてくれました。リヒャルト様は、王室の皆様にとてつもなぁーーーく言われていました。
 あんなに可愛がっていたのに!! とまで、王妃様はなげいていたし。
 王子は「もう、兄上と呼べない」って。

 「家族の縁は切りたくない!! 可愛い娘が出来るのだから」
 「そうよ!! ねぇ、マリアちゃんを王女にしましょう!!」
 「そしたら、俺の妹になるし。ねぇ、マリア嬢、王室にこない?」
 「ダメです!! 父上、母上!!」
 「んっ? リヒャルト様? 今、なんと?」
 「この、バカ親がどうかしたか?」
 「……お、や?……えぇぇぇぇ!!」

 リヒャルト様が騎士を辞めて、いきなり公爵位っておかしいとは思ったけど……王族だったの?!
 背中にダラダラと汗がでてくる感覚。口が少しぱくぱくして、リヒャルト様を見ていたら……。
 
 「んっ、ぁ……だぁめ……らっ……ぁん」
 「可愛い……んっ……マリア」 
 「ぁん……んんっ……っふぁ……」
 「マリア、最後までしたい」
 「っ!! ダ、ダメーーー!! ソレは、今はお預け!!」
 「……わかった……今は、やめておく」
 
 危ない!! 流され始めてた……視線……あぁぁぁぁ!!ここは王宮で、しかも、国王様たちの御前おんまえぇぇぇ!!
 
 「申し訳ありません、国王様!! このようなはしたないことを……」
 「うーん、マリアちゃんはいいの。私がいっっちばん怒りたいのは……このアホ息子だ!!」
 「なんです? バカ親父。可愛い嫁をでて、何がいけないんですか?」
 「ほら、リヒャルト様。謝ろう?」
 「俺は悪くない!!」
 「マリアちゃん、本当にコイツでいいの?」
 「何も悪いことはしていない!!」
 「リヒャルト様? お預け、延長です」
 
 結局は、リヒャルト様。国王さま達、もとい、ご家族に謝りました。
 本来の話しをロイ公爵がしてくれたので、助かりました。あぁ、こういう時、仕切りのプロって助かる!!

 公爵邸に戻る途中、馬車の中でリヒャルト様が何やら身体に異変を覚え始め酷い汗も出始めて……。
 御者ぎょしゃに急いで貰い、邸宅に戻るやギルバートさん達が手際てぎわよくベッドへと運んでくれて。
 その夜、彼に付き添って汗を拭うことしか出来ない自分が辛くなった。

 「リヒャルト様」

 少し、瞳を開けた彼が私を見つけて柔らかな笑みを返してくれて。自然と彼にキスが出来た。
 温かな翠色の光が虹の様に入り交じっていく。キスを再びする。また、光が包んでいる。分からないけれど、今の彼には私からのキスが必要だと思えた。
 頬、額、手の甲。唇へとキスをする。

 「っん……ま、り、あ……あいして、る」
 「ぁ、んんっ……ぁん……っあ」

 何度も何度もキスをして、彼は眠りについた。うなされることなく、汗がおさまって。穏やかな寝顔。

 

 身体になにか、なくなったモノが戻っている。そういう感覚だった。手のひらに意識を集中する。
 ほわっと、綺麗な翠色の光が現れる。
 昔、失った力。しかし、昔とは違う光の色。

 『貴方様の本来の光は、違うのでしょうな』
 『この、紅ではないのか?』
 『えぇ……わたしめには、そう思えるのです』
 『しかし、もう、光はもうじきなくなる』
 
 力を遣う度に、紅髪あかがみは、黒い色へと変わり。瞳の色も漆黒の闇の黒へと。
 聖騎士団の騎士になってから、力の減りは激しく。祝福すら、食べ物を受け付けないように拒否反応が激しかった。嘔吐したり、全身に発疹や痛みが生じた。高熱が続いたこともあった。以来、祝福は受けずに必死に剣を磨いた。
 剣豪と言われるようになったが、光魔法は完全に失った。
 聖騎士団にいられず、騎士も辞めた。父である国王にすら言わず。そのとばっちりをアルバルトとロイが受けた。
 
 『騎士として動かないのならば……国の均衡をまもる騎士となれ』
 『わかりました』
 『あぁ、あと、妻をめとる時はきちんと言いなさい。絶対に』
 『~~~っ、わかりました!!』

 ベッドで小さくなっている可愛いマリア。俺のマリア。可愛いアカネ。
 可愛い吐息をしながら、「リヒャルトさん、お預けです」と寝言を言う。

 「あぁ、お預けされてる」
 「んー、好きです」
 「アカネも好きだ。マリアも好きだ」
 「ロイさん、ダメですよぉ」
 「? なぜ、ロイ?」

 目を醒ましたマリアに、アノ男の名前が出たのを追求してしまった。アカネが言うには、夢の中で、アルとロイが自分の目の前で萌えになっていたらしい……。
 いや、待て!! アカネの中では、あの2人は萌えだというのか?

 寝言に気をとられて大事なコトを忘れていた。

 「マリア、これを見て欲しい」
 「わぁ、綺麗ですね」
 「どういうことか、分かるか?」
 「……アレ? リヒャルト様は、魔法は……」
 「あぁ、力はなくなっていた……」
 
 急ぎ手紙を書いて、ギルバートさんの魔法で特殊な手紙を送り出して貰った。
 返事の手紙は3通。
 教会長、ロイ&アルバルト連名、国王様。
 どれも特殊な方法での返信。開封し、読んだ後は本人の記憶の奥へと残り、手紙本体は消滅。
 特殊な魔法なだけに、使いこなせる人も少ない。密書のように遣う魔法の手紙。リヒャルト様から届いた私への恋文。全てその仕組みでしたが……ギルバートさん、読んでました?

 お茶を運んできたギルバートさんをさりげなく見る。
 あぁ、とても清々すがすがしくにこやかな、満面の笑みをたたえていました。
 信じます!! あなたがあるじの秘密は、墓場にもっていってくれるのを!!


 教会長がリヒャルト様の力の確認に訪れてくれた。
 光魔法の幾つかを試していくうちに、とてつもないスキルが発動した。

 「っ!! 無力化です」
 「教会長さま、それはどのような魔法なのですか?」
 「マリア、無力化は。光魔法では最大スキルになる」
 「リヒャルト様、それでは足りません!! 全ての魔法の力をなかったコトにしてしまうのです!!」
 「なかった、コト? それって、とてつもない事じゃないですか!!」
 「今までは持っていなかったが……マリアのお陰だな」

 教会長さまは、お陰じゃすまないという表情。私の方を見て、少し嬉しそうにしている。
 私、なにかやってしまったのだろうか? えぇっと、キス。んっ?! 所属試験で……えっ、アレ?! えぇぇぇ!!
 思わず、声出てました。
 2人が瞳を白黒させてます。

 「あの、もしかして、もしかして……私、ですか?」
 「はい、マリア嬢のお陰です」
 「マリアは俺の可愛い嫁だ」
 「嫁は、まだです」
 「婚姻の際は、私が証人になりますよ」

 教会長、まだ、と言いましたよ。私……。嫁確定していくばかり……リヒャルト様好きだけど。
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