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聖騎士団に追われる?
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数日ワルバーン家で過ごしてから、フィリップお兄様とお父様が迎えに着てくれた。
社交界では、アレの一件以降、私はリヒャルト様の嫁確定された。パーティーで「可愛い俺の嫁」発言が会場に響いたから。恥ずかしい。
手紙は連日届いている。聖騎士団の所属試験の手紙が……。う、受けたくない。行きたくない。けれど、1ヶ月近く手紙を無視していたら、「頼む、1度だけでいいから!!」とお兄様が。
お兄様のために、受けることにしたけど。
王宮の敷地にある聖騎士団の訓練場の近くで、【与える者】の所属試験が行われる。
教会の人が、試験をすることになっていて、聖騎士団の副団長・アルバルト様も立ち会う。
「大丈夫、俺も立ち会っているから」
「アリガトウゴザイマス」
「ははっ、よっぽどなんだね? マリア嬢は」
「……なら、今から帰っていいですか?」
「それは、無理かな」
覚悟を決めて、試験を受ける。
教会の人は、魔法で判定すると説明してくれた。私の足元から、魔方陣が浮かび全身を包む。
パンッ!!
「……これは……マリア嬢、最近誰かに祝福を与えましたか?」
「祝福? いえ、誰……えっ、えっ、えぇぇぇ!!」
「マリア嬢、もしかして……」
ヤバイ、何か、ヤバイ気がする!! この場合、どうすべき? 言うべき? 確定じゃない事項だけど。
【言う】
【言わない】
【笑ってごまかす】
「えぇっと……祝福って」
「キスでも与えられますから、最近、誰かと交わしましたか?」
「教会長、不躾な言い方は令嬢に失礼かと」
教会長、って。すんごく偉い人でしょ? 所属試験でくることないよね? なんで?
アルバルトさんと教会長さん、顔を見合わせてるけど……。
「マリア嬢、ここから帰る道は俺が同行します」
「あの、試験は……」
「コレで終わりですよ、マリア嬢。お疲れ様です」
「はい。えっと、アルバルト様? 私は1人でも……」
「アルバルト殿に送って貰った方がいいでしょう」
教会長の強い念押しをされて、アルバルトさんと一緒に歩く。訓練場を抜けたところで、なんだか黒いモノが背中をゾクリと走る。
「いいですか? 後ろは見ずに、俺が合図したら全速力で走ってください」
「……っ……」
背中を軽くポンと押され、全速力で走る。後ろから、男の怒号がする。剣のぶつかり合う音、魔法がぶつかり合ってビシビシと背中から振動が伝わる。
脂汗、冷や汗が一気にわき上がる。黒い霧が見えかけた。
「い、いやっ!!」
思わず、足を止めてしまう。黒い霧が少しずつ黒くなる。
「っ、い……やっ、やだ!!」
「マリア!!」
その声の後、翠色の光がはなたれて黒い霧が薄くなっていく。ぐっと身体を引き寄せられ、その人は、私をマントに隠し抱きかかえる。
マントの外から、剣の音が響いている。片手で剣を扱い、追ってきている者から護ってくれている。
「遅いぞ!!」
「すまない!!」
「「はっあぁぁぁ!!」」
ドォーーーーン!!
地響きを鳴らすような大きな音。2つの魔法が重なり、迎え撃った。
「後は頼んだ」とマントの男が言って、私を抱きかかえていた。
「大丈夫か? マリア」
心配そうな顔をした彼がいた。
「ふふっ、傷だらけ。ですね? リヒャルト様」
「このくらい」
「ダメ……です……」
「君は?」
彼の頬を撫でた。あぁ、彼がいる。夢でも彼といたい。
チュッ……。
「ま、マリア? なに、を……」
「リヒャルト様……好き、です」
「っ?!」
「……す、き……」
答えない彼に、私はキスをした。彼は、きっと……。
眠りについた彼女の頬に触れる。
答えられなかった。「好き」と言ってくれた。彼女は……。護るだけなのに、そのための婚約の申し出なのに。
この俺を、好き?
俺は……彼女をどうしたら……ロイには、正直にとは言われたが。無理だ。俺には、無理だ!!
「彼女を帰そう」
クロイツ家に手紙を出した。マリア嬢をクロイツ家に帰すと。
アルバルトから手紙が届く。襲ってきた騎士たちは、聖騎士団の見習い騎士含め、一般の騎士団の見習いばかりだったと。
どこかで、騎士たちは狂い始めている。
やはり、あの、特別寮だろうか?
これ以上、マリアを、彼女を危険な場所に置きたくはない。一番護りやすいと考えたが、逆だったかもしれない。
「……最後に……」
眠っている彼女にキスをする。1度のはずが、何度も何度も。彼女が目覚めている時にできないから……。
「……マリア……」
先月、デビュタンとで社交界デビューしたばかりの17歳の令嬢は。少しずつ大人の女性になってきていた。
もう、触れることができない。俺は、彼女に相応しくないのだから……。
「マリア、愛している」
最後のキスを彼女にした。
何度か見た天蓋が見えた。隣は、誰もいない。ゆっくりと身体を起こした。
部屋にも、私以外、誰もいない。
ワルバーン家のメイドが、着替えなど手伝ってくれた。が、彼は私を避けているみたいで……食堂にも、部屋にも顔を出さない。ギルバートさんは、「旦那様は執務が忙しく」と言っていた。
お父様から手紙が届いて、「落ちついたら迎えに行く」と。
手慰みに刺繍をした。リヒャルト様を想って。
ワルバーン家を出る日。彼は、見送れないらしく玄関に来なかった。
「リヒャルト様に……渡して頂けますか?」
「マリア様……必ず」
出来上がった刺繍小物をギルバートさんに託す。
玄関には、お父様がいた。
執務室の方を見上げると、リヒャルト様がいた……気がする。あの高い背に、鍛えられた体躯。黒い髪に、黒い瞳。
帰ってくることがない挨拶に、小さく手を振った。
「マリア……大丈夫かい?」
「行きましょう、お父様」
たぶん、無理矢理笑顔になっている顔だ。今、すごく泣きたい。けれど、そんな顔をここで見せられない。
馬車に乗って、門を出て。窓越しに、屋敷を見る。
きっと彼は、眠っている時だけ私に寄り添ってくれたと思う。ベッドは、少しあたたかみを感じる日もあったから……。
「っく、ひっく……りひゃる、と、さ、ま」
彼の名前をどんなに呼んでも、届かない。傍にいないから。でも、彼に言いたかった。好き、だと。
社交界では、アレの一件以降、私はリヒャルト様の嫁確定された。パーティーで「可愛い俺の嫁」発言が会場に響いたから。恥ずかしい。
手紙は連日届いている。聖騎士団の所属試験の手紙が……。う、受けたくない。行きたくない。けれど、1ヶ月近く手紙を無視していたら、「頼む、1度だけでいいから!!」とお兄様が。
お兄様のために、受けることにしたけど。
王宮の敷地にある聖騎士団の訓練場の近くで、【与える者】の所属試験が行われる。
教会の人が、試験をすることになっていて、聖騎士団の副団長・アルバルト様も立ち会う。
「大丈夫、俺も立ち会っているから」
「アリガトウゴザイマス」
「ははっ、よっぽどなんだね? マリア嬢は」
「……なら、今から帰っていいですか?」
「それは、無理かな」
覚悟を決めて、試験を受ける。
教会の人は、魔法で判定すると説明してくれた。私の足元から、魔方陣が浮かび全身を包む。
パンッ!!
「……これは……マリア嬢、最近誰かに祝福を与えましたか?」
「祝福? いえ、誰……えっ、えっ、えぇぇぇ!!」
「マリア嬢、もしかして……」
ヤバイ、何か、ヤバイ気がする!! この場合、どうすべき? 言うべき? 確定じゃない事項だけど。
【言う】
【言わない】
【笑ってごまかす】
「えぇっと……祝福って」
「キスでも与えられますから、最近、誰かと交わしましたか?」
「教会長、不躾な言い方は令嬢に失礼かと」
教会長、って。すんごく偉い人でしょ? 所属試験でくることないよね? なんで?
アルバルトさんと教会長さん、顔を見合わせてるけど……。
「マリア嬢、ここから帰る道は俺が同行します」
「あの、試験は……」
「コレで終わりですよ、マリア嬢。お疲れ様です」
「はい。えっと、アルバルト様? 私は1人でも……」
「アルバルト殿に送って貰った方がいいでしょう」
教会長の強い念押しをされて、アルバルトさんと一緒に歩く。訓練場を抜けたところで、なんだか黒いモノが背中をゾクリと走る。
「いいですか? 後ろは見ずに、俺が合図したら全速力で走ってください」
「……っ……」
背中を軽くポンと押され、全速力で走る。後ろから、男の怒号がする。剣のぶつかり合う音、魔法がぶつかり合ってビシビシと背中から振動が伝わる。
脂汗、冷や汗が一気にわき上がる。黒い霧が見えかけた。
「い、いやっ!!」
思わず、足を止めてしまう。黒い霧が少しずつ黒くなる。
「っ、い……やっ、やだ!!」
「マリア!!」
その声の後、翠色の光がはなたれて黒い霧が薄くなっていく。ぐっと身体を引き寄せられ、その人は、私をマントに隠し抱きかかえる。
マントの外から、剣の音が響いている。片手で剣を扱い、追ってきている者から護ってくれている。
「遅いぞ!!」
「すまない!!」
「「はっあぁぁぁ!!」」
ドォーーーーン!!
地響きを鳴らすような大きな音。2つの魔法が重なり、迎え撃った。
「後は頼んだ」とマントの男が言って、私を抱きかかえていた。
「大丈夫か? マリア」
心配そうな顔をした彼がいた。
「ふふっ、傷だらけ。ですね? リヒャルト様」
「このくらい」
「ダメ……です……」
「君は?」
彼の頬を撫でた。あぁ、彼がいる。夢でも彼といたい。
チュッ……。
「ま、マリア? なに、を……」
「リヒャルト様……好き、です」
「っ?!」
「……す、き……」
答えない彼に、私はキスをした。彼は、きっと……。
眠りについた彼女の頬に触れる。
答えられなかった。「好き」と言ってくれた。彼女は……。護るだけなのに、そのための婚約の申し出なのに。
この俺を、好き?
俺は……彼女をどうしたら……ロイには、正直にとは言われたが。無理だ。俺には、無理だ!!
「彼女を帰そう」
クロイツ家に手紙を出した。マリア嬢をクロイツ家に帰すと。
アルバルトから手紙が届く。襲ってきた騎士たちは、聖騎士団の見習い騎士含め、一般の騎士団の見習いばかりだったと。
どこかで、騎士たちは狂い始めている。
やはり、あの、特別寮だろうか?
これ以上、マリアを、彼女を危険な場所に置きたくはない。一番護りやすいと考えたが、逆だったかもしれない。
「……最後に……」
眠っている彼女にキスをする。1度のはずが、何度も何度も。彼女が目覚めている時にできないから……。
「……マリア……」
先月、デビュタンとで社交界デビューしたばかりの17歳の令嬢は。少しずつ大人の女性になってきていた。
もう、触れることができない。俺は、彼女に相応しくないのだから……。
「マリア、愛している」
最後のキスを彼女にした。
何度か見た天蓋が見えた。隣は、誰もいない。ゆっくりと身体を起こした。
部屋にも、私以外、誰もいない。
ワルバーン家のメイドが、着替えなど手伝ってくれた。が、彼は私を避けているみたいで……食堂にも、部屋にも顔を出さない。ギルバートさんは、「旦那様は執務が忙しく」と言っていた。
お父様から手紙が届いて、「落ちついたら迎えに行く」と。
手慰みに刺繍をした。リヒャルト様を想って。
ワルバーン家を出る日。彼は、見送れないらしく玄関に来なかった。
「リヒャルト様に……渡して頂けますか?」
「マリア様……必ず」
出来上がった刺繍小物をギルバートさんに託す。
玄関には、お父様がいた。
執務室の方を見上げると、リヒャルト様がいた……気がする。あの高い背に、鍛えられた体躯。黒い髪に、黒い瞳。
帰ってくることがない挨拶に、小さく手を振った。
「マリア……大丈夫かい?」
「行きましょう、お父様」
たぶん、無理矢理笑顔になっている顔だ。今、すごく泣きたい。けれど、そんな顔をここで見せられない。
馬車に乗って、門を出て。窓越しに、屋敷を見る。
きっと彼は、眠っている時だけ私に寄り添ってくれたと思う。ベッドは、少しあたたかみを感じる日もあったから……。
「っく、ひっく……りひゃる、と、さ、ま」
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