異世界騎士の忠誠恋

中村湊

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あなたを……

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 「いかがですかぁ? 新発売です!!」
 
 商店街で、試飲を勧められ飲んだ。フルーツの甘み、シュワッとした感覚。
 
 「むぅ……これは、ひとつ幾らになる?」
 「こちらのボトルですと……」

 ボトルを5本買った。
 帰ってから、風呂に入り飲んだ。2本、空にした。
 ふわふわと気持ち良くなった。さらに、飲んでいく。今夜は、カノンの帰りが遅く先に夕飯を食べて飲んだ。飲んで、飲んで……買ったボトル5本空にした。
 
 「カノンはまだ、だろうか?」

 気持ち良くなったハロルド。買ったのは、スパークリングワインだった。
 以前いた世界で呑んだことは、数えるくらいしかない。呑んだあと、記憶が曖昧で……フリードに、「お前、呑みすぎるし。やめたほうがいい!!」と言われていた。
 もう、呑まずしていられないくらいだった。
 彼女の笑顔を取り戻せず、挙げ句に、彼女の寝顔で昂ぶりすぎてベッドの傍で見ながらシタ。
 もう、俺は……。

 「ただいま」
 「ぁあ、カノン!! 遅いではないですか?」
 「ハロルドさん? その瓶は……」
 「カノン~~。キスしましょう、ベッド行きましょう?」

 彼女を抱き上げ、キスをしながらベッドに運ぶ。
 ベッドでキスをしながら、彼女に言う。

 「好きです、カノン。俺は、あなたが好きです」
 「ほん、とう?」
 「ほんっとうです!! キスしたいし、いっぱい、いっぱい……あなたを、カノンを愛したいです!!」

 甘えた声で、彼が言う。彼が自分をみて、優しく撫でる。抱き締めて、キスをする。
 「好きです」「愛してます」と言う。
 ほんのり紅い顔の彼。キスにどんどん溺れる。
 キスに、互いのぬくもりを求め、服を脱ぐ。
 彼といたい。彼が好き。私も、好き。愛してる。

 「んっ、はぁ。気持ちいいですか? もっと、触れ合いたい」
 「ハロルドさん。私も好き……もっと、あなたが……」
 「愛し合いたい」
 「……ハロルドさん……」

 彼の愛撫に身を任せていく。優しく身体中にキスをし、手も指も……。彼女の気持ちいいところを探し、キスを深めていく。 蕩けた瞳が見つめて、甘い声が少しずつ彼の脳内を支配する。
 蜜の溢れた場所。
 刺激し、声が漏れる。

 ハロルドは、彼女と愛しあった。
 彼は、彼女を抱き締めて眠った。夢心地で、気持ちよく。満たされた心。あたたかい、ぬくもり。
 離したくない。
 彼女が達した後、自分を見つめた瞳は色が戻っていた。

 「ハロルドさん……好き。愛してる」
 「カノン……あい、して……」

 ハロルドは、言い切る前に眠りについた。

 翌朝、歌音は彼の満ち足りた寝顔をみた。嬉しくなった。好きな彼は、愛している彼になった。
 彼と愛し合えて、気持ちが通じ合えた。

 「ハロルドさん……愛してる……」

 目を醒ました彼に、おはようのキスをした。
 彼は、まばたきをして……固まった。

 「ハロルドさん、おはよう」
 「……あっ、おはようございます……」
 「敬語、いらないよ?」
 「えっ、あ……俺……」

 ダイレクトに伝わる彼女の温もり。感触。
 昨夜は、ボトルを5本……酒を呑んだ。そのあと、帰ってきた彼女を、彼女を……抱いた……。
 酒の勢いで、彼女を……。

 「ハロルドさん、今日はお休みだから。ゆっくりしよう?」
 「っ、あの、その、俺……俺は……貴女を……」
 「どうしたの?」
 「あっ、あっ……俺、俺、おっ、おれは……取り返しのつかないことを!!」
 「えっ? ハロルド、さん?」
 「すみません!! 酔った勢いで……すみません!!」

 正座して謝ってくる彼。昨夜の、あの言葉は……嘘、だったの? ただ、お酒を飲んで、女の人を抱きたくて、手近だから?
 ずっと、ずっと謝ってる。そんなに、謝らないで……私は、わたしは……あなたと気持ちが通じ合えたって。好きで。愛していて。
 ボロボロと涙が溢れる。

 「すみません!! なかった事にはなりませんし、もういたしません!! このような、このような事は……誓っていたしません!!」

 誠心誠意。謝っているつもりだった。本当なら、酒の力を借りずに、彼女に気持ちを伝えて結ばれたいと……なのに、酒を浴びるように呑んで。
 目の前の彼女が、涙を流し続けている。
 涙を拭おうと、ティッシュをとり、手を近づけたが。拒まれた。手を払った以上に。心まで、拒んだ。
 
 俺は……また、とりかえしのないことをして……。彼女の笑顔を奪っただけでなく、彼女をけがして……。
 傍にいては、いけない。彼女を穢してしまう。彼女を傷付けるばかりに。

 歌音は、彼に謝れたショックを強くうけた。
 一緒にいられると、思った。愛している人と一緒に……。

 彼は、寝室から出て行ってしまった。
 呆然とした彼女を残して。
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