13 / 23
甘えられて、望まれて……
しおりを挟む
久し振りに会社の人たちと、歌音はお酒を飲んだ。自分にしては、結構呑んでしまった。
なんとか自宅マンションに辿り着いて、部屋に入る。
彼には、遅くなると連絡をしていた。フリードさんに頼んで、夕食を一緒に食べて貰うこともした。
「どうして、伝わらないんだろう?」
暗い部屋に小さな灯り。ソファの近くのテーブルのランプがついている。
大きな体躯の彼が、ソファで横たわっているのが見えた。
彼女の焦り。彼への想い。伝えたいのに、言葉が見つからない。彼の髪をそっと撫でる。とても綺麗な髪で、撫でたら気持ちよさそうにしている。
「めが、み、さまぁ」
甘えるような、彼の声。こんな時でも、女神様としか呼ばれない。
「寂しいよ、ハロルドさん」
お酒の入った歌音は、ハロルドの頬をゆっくり撫でる。小さな身体で彼のぬくもりを感じる。
彼がピクリとして、瞳が、こちらを見ている。何かが信じられないというような表情をしている。
歌音は彼の頬を撫でながら、頬にキスをする。ビクンと男の身体が跳ね上がる。心臓の高鳴りが、鼓動が早鐘を打っている。
「めっ、めが、めがっ、女神さ、ま?」
「ハロルドさん? ダメ」
「えっ、あの、ダメ……と……んんっ!!」
彼が聞き返している時、彼女の柔らかいものを感じた。眠っている夢の中、彼女の笑っている笑顔を見たのに。今の彼女は、俺の、俺に……キス……して、いる。
キスが触れる程度だったのが、少しずつ深くなり始めて焦りと混乱してきた。
「んんっ、んーーーーー!! はっ、はぁはぁ!!」
「ハロルドさん?」
「だ、だめ、です!! いけま、んっんんっ!!」
「んっ、んっぁ……おねがい……んっぁん」
お願い、お願い。と言い、何度も何度もキスをしてくる。
わからない、どうしてだ?! 何度もキスをされていくうちに、彼女の唇の気持ちよさが勝っていく。
男として、彼女が女であることを感じている。
ーーダメだっ!! コレは、きっと女神様からの試練かもしれない!!ーー
「んっ、ハロルドさん……ぁっ、んっんんっ」
「んっ、はぁ……めが、んんっ……ダ、メ、です!!」
「……ダメ?……お願いでも?」
「えっ、あの……おねがい、ですか?」
「ハロルドさんとキス、したい」
「し、しかし……その、こういうのは如何なものかと……恋人同士がするモノです!! いけません!!」
「ハロルドさんは、私のこと。キライ?」
彼女が潤んだ瞳で見つめて、答えを求めてくる。
キライ? 女神様を? そんなことは、あり得ない。ハロルドは、必死に頭をふり「キライではないです!! お慕いしています!!」と全力で言った。
「良かったぁ。ねぇ、おねがい、キスして? ハロルドさん」
「えっ? いや、ですから……それと、コレは……」
「やっぱり、私のことキライなんだ」
「っあ、いや、あぁ……します、いま、いたします!!」
女神様のお願いなのだ!! 女神様が欲しいモノなのだ!! そうだ!!
彼は、彼女の欲しいモノを与えることができると、頭で必死に言い聞かせてキスをした。
蕩けるキスで、彼は男として彼女の唇の甘さと柔らかさ。香しい花の匂いが甘いものへと変わるのを感じ、男の本能を揺さぶられる。身体中がどんどん熱くなり、下腹部はもう滾り始めていた。
「こ、これで……っは、はぁ……よろしい、でしょうか?」
「……ヤダ……」
「っ?! め、女神様? あの、キスをご所望で……んんっーーー!!」
さらに彼女からキスをされ尽くされる。どのくらい時間がだったのか? ほんの数分だったのか? もう、ハロルドは訳が分からない。
息は荒くなり、身体中熱く、心臓の鼓動は激しい。
キスの心地よさに負けてきている。女神様に忠誠している騎士としての、誇りだけをたよりに何とか踏ん張っている。
彼女は……「ダメ」「お願い」と何度もいい、キスをしようとしてくるのを、かわしている。
「~~~っ!! ハロルドさんなんて、ハロルドさんの嘘つき!!」
「嘘つ、き……俺が? あの、それは……」
「キライ、キライ、キライ!! 慕ってくれてるって、言ったのに!! 嘘つき、だいきらーい!!」
「あっ、あの。お慕いしています!! 本当です!! 心より、お慕いしています!!」
「じゃぁ、呼んで? 歌音って、呼んで?」
「あっ、いや……そ、それは……」
彼女が涙を浮かべて今にも泣きそうになっている。
「カノン様!! 好きです!! 大好きです!!」
「ヤダ」
「カノン殿!! 好きです!!」
「……ヤダ……」
「っ……俺は、あっ、あの……カノン、好きです」
ガバッ!!
離れていた彼女が抱きつき、嬉しそうに笑った。
久し振りの彼女の笑った笑顔。あぁ、この笑顔が見たかった。女神様が望むなら……。
「お部屋で、もっとキス……したいの? 名前も呼んで?」
「あっ、あの……わかりました」
彼女に手を引かれて、寝室へと向かう。
そこで、ハロルドは気がついた。彼女から、お酒の匂いがしていたのを。
女神様はお酒の勢いで言われたのだろう、と。
寝室で、彼女が眠りにつくまで、彼女の気の済むまで名前を呼びキスをたくさんした。
ハロルドにとっては、理性の限界をギリギリまで保ち続ける苦行になった。
翌朝、歌音はお酒の勢いを借りたとは言え、彼に甘えてキスしたりしたのをしっかり覚えていた。名前を呼んで貰えたのは嬉しかった……。
そう、この後、彼が起きた時に「うれしかった、昨日の夜は」と言った後。
彼が、酷く青ざめた表情になったのを見てしまった。
「申し訳ございません!! とんでもないご無礼の数々!! 俺の失態です!! 女神様!!」
そうか、彼にとっては酔っ払いの私が忘れているだろうって考えたんだ。私は、私は……。
許しを乞う彼が顔を上げ、彼女を見ると……今まで感じたことがない、見たことがない、酷く寂しく辛い表情になっていた。
なんとか自宅マンションに辿り着いて、部屋に入る。
彼には、遅くなると連絡をしていた。フリードさんに頼んで、夕食を一緒に食べて貰うこともした。
「どうして、伝わらないんだろう?」
暗い部屋に小さな灯り。ソファの近くのテーブルのランプがついている。
大きな体躯の彼が、ソファで横たわっているのが見えた。
彼女の焦り。彼への想い。伝えたいのに、言葉が見つからない。彼の髪をそっと撫でる。とても綺麗な髪で、撫でたら気持ちよさそうにしている。
「めが、み、さまぁ」
甘えるような、彼の声。こんな時でも、女神様としか呼ばれない。
「寂しいよ、ハロルドさん」
お酒の入った歌音は、ハロルドの頬をゆっくり撫でる。小さな身体で彼のぬくもりを感じる。
彼がピクリとして、瞳が、こちらを見ている。何かが信じられないというような表情をしている。
歌音は彼の頬を撫でながら、頬にキスをする。ビクンと男の身体が跳ね上がる。心臓の高鳴りが、鼓動が早鐘を打っている。
「めっ、めが、めがっ、女神さ、ま?」
「ハロルドさん? ダメ」
「えっ、あの、ダメ……と……んんっ!!」
彼が聞き返している時、彼女の柔らかいものを感じた。眠っている夢の中、彼女の笑っている笑顔を見たのに。今の彼女は、俺の、俺に……キス……して、いる。
キスが触れる程度だったのが、少しずつ深くなり始めて焦りと混乱してきた。
「んんっ、んーーーーー!! はっ、はぁはぁ!!」
「ハロルドさん?」
「だ、だめ、です!! いけま、んっんんっ!!」
「んっ、んっぁ……おねがい……んっぁん」
お願い、お願い。と言い、何度も何度もキスをしてくる。
わからない、どうしてだ?! 何度もキスをされていくうちに、彼女の唇の気持ちよさが勝っていく。
男として、彼女が女であることを感じている。
ーーダメだっ!! コレは、きっと女神様からの試練かもしれない!!ーー
「んっ、ハロルドさん……ぁっ、んっんんっ」
「んっ、はぁ……めが、んんっ……ダ、メ、です!!」
「……ダメ?……お願いでも?」
「えっ、あの……おねがい、ですか?」
「ハロルドさんとキス、したい」
「し、しかし……その、こういうのは如何なものかと……恋人同士がするモノです!! いけません!!」
「ハロルドさんは、私のこと。キライ?」
彼女が潤んだ瞳で見つめて、答えを求めてくる。
キライ? 女神様を? そんなことは、あり得ない。ハロルドは、必死に頭をふり「キライではないです!! お慕いしています!!」と全力で言った。
「良かったぁ。ねぇ、おねがい、キスして? ハロルドさん」
「えっ? いや、ですから……それと、コレは……」
「やっぱり、私のことキライなんだ」
「っあ、いや、あぁ……します、いま、いたします!!」
女神様のお願いなのだ!! 女神様が欲しいモノなのだ!! そうだ!!
彼は、彼女の欲しいモノを与えることができると、頭で必死に言い聞かせてキスをした。
蕩けるキスで、彼は男として彼女の唇の甘さと柔らかさ。香しい花の匂いが甘いものへと変わるのを感じ、男の本能を揺さぶられる。身体中がどんどん熱くなり、下腹部はもう滾り始めていた。
「こ、これで……っは、はぁ……よろしい、でしょうか?」
「……ヤダ……」
「っ?! め、女神様? あの、キスをご所望で……んんっーーー!!」
さらに彼女からキスをされ尽くされる。どのくらい時間がだったのか? ほんの数分だったのか? もう、ハロルドは訳が分からない。
息は荒くなり、身体中熱く、心臓の鼓動は激しい。
キスの心地よさに負けてきている。女神様に忠誠している騎士としての、誇りだけをたよりに何とか踏ん張っている。
彼女は……「ダメ」「お願い」と何度もいい、キスをしようとしてくるのを、かわしている。
「~~~っ!! ハロルドさんなんて、ハロルドさんの嘘つき!!」
「嘘つ、き……俺が? あの、それは……」
「キライ、キライ、キライ!! 慕ってくれてるって、言ったのに!! 嘘つき、だいきらーい!!」
「あっ、あの。お慕いしています!! 本当です!! 心より、お慕いしています!!」
「じゃぁ、呼んで? 歌音って、呼んで?」
「あっ、いや……そ、それは……」
彼女が涙を浮かべて今にも泣きそうになっている。
「カノン様!! 好きです!! 大好きです!!」
「ヤダ」
「カノン殿!! 好きです!!」
「……ヤダ……」
「っ……俺は、あっ、あの……カノン、好きです」
ガバッ!!
離れていた彼女が抱きつき、嬉しそうに笑った。
久し振りの彼女の笑った笑顔。あぁ、この笑顔が見たかった。女神様が望むなら……。
「お部屋で、もっとキス……したいの? 名前も呼んで?」
「あっ、あの……わかりました」
彼女に手を引かれて、寝室へと向かう。
そこで、ハロルドは気がついた。彼女から、お酒の匂いがしていたのを。
女神様はお酒の勢いで言われたのだろう、と。
寝室で、彼女が眠りにつくまで、彼女の気の済むまで名前を呼びキスをたくさんした。
ハロルドにとっては、理性の限界をギリギリまで保ち続ける苦行になった。
翌朝、歌音はお酒の勢いを借りたとは言え、彼に甘えてキスしたりしたのをしっかり覚えていた。名前を呼んで貰えたのは嬉しかった……。
そう、この後、彼が起きた時に「うれしかった、昨日の夜は」と言った後。
彼が、酷く青ざめた表情になったのを見てしまった。
「申し訳ございません!! とんでもないご無礼の数々!! 俺の失態です!! 女神様!!」
そうか、彼にとっては酔っ払いの私が忘れているだろうって考えたんだ。私は、私は……。
許しを乞う彼が顔を上げ、彼女を見ると……今まで感じたことがない、見たことがない、酷く寂しく辛い表情になっていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる