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アイリスの同僚と
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パーティー当日ーー
磨き上げられ灯りで乱反射するシャンデリア。絵画に影響を与えすぎないよう、灯りの強さは調整されている。外の月明かりで、窓辺のステンドグラスは綺麗に光を放ち、ひとつの絵として完成をしている。
ブリューワー派の絵画以外では、教会のステンドグラス技術は進んでおりモザイク画のようなガラスを砕いてつくられたステンドグラスから細かなガラスを繋ぎ色鮮やかな絵画へと変貌しつつある。
広間の壁一面には、王宮画家たちの新作の絵画が飾られている。日常の一部の、非日常の絵画。そのひとつに、ブリューワー派の王道とは違う描き方の絵もあった。気がついている貴族は、いないに等しい。
実のところ、トーナル自身も飾ることで気がついた貴族たちに物議を与えないか? ひとつの試みでもあった。今までなら、王宮画家長として全体をとりまとめる彼はその様な事をしてみようとは思えなかった。ただ、ひとつの変化をこれ以上とめるのは無理だと……思えている。
「よく許してくれたよな?」
「んっ? あぁ、アレか……正直、会場にきて自分が一番驚いている」
「何も、聞かされてなかったのか? 珍しいな。トーナル様にしては……」
「そう、だな……それにし……」
「どうした?」
「……あっ、あぁ……前に話した、例の侍女……」
「居たのか? この会場に?」
「あぁ、あの奥の侍女控えのカーテン近く」
「……よくわかったな……お前、なんか違う才能持ってないか?」
彼女は通常の侍女服ではなく、パーティー用のドレス使用服を着ている。パーティー会場に関わる侍女たちは全て。しかし、彼女は同じ服を着ているのに雰囲気が違っている。
周りを寄せ付けない、そういった雰囲気。そして、なにか……ちょこちょこと動いている小動物的な侍女が横で見え隠れしていた。
小動物のリスのような侍女は、何かとアイリスと仕事をせっせとしている。侍女たちをとりまとめるマーブル侍女長が、てきぱきと段取りを進めている。他の侍女たちもパーティーの華やかさに見惚れつつ仕事していたり、緊張の面持ちで取り組んでいたりと様々だ。
貴族の1人が、モーネスたちのところへ挨拶にやってきた。本来ならば、王宮画家たちも積極的に挨拶に回らなければならないのだろうが。それは、【ムキになってはならない】というところもあった。
ここは、相手方から来るのを待っていたというのが正しい。
モーネスたちの所へやってきたのは、以前、自分のチューリップ絵画を買った貴族だった。久し振りの挨拶は、相変わらず天気に始まる。
「今宵は良い月ですね」
「えぇ、そうですね。わたしはこの位の月明かりが好きですよ」
「そうでしたか? パーティーには久し振りではないですか?」
「そうなんですよ。モーネスさん。貴方の絵画を手入れしてくれた侍女がいなくなりましてね」
「その侍女は、どちらか別の場所へ?」
「えぇ、でも意外と近くに居ました。やぁ、彼女の仕事はいつもながら見事ですよ」
「絵画の手入れを今でも続けて……あぁ、それは良かったです。こちらとしても助かりますよ」
自然とモーネスは美術倉庫に居た、例の侍女。アイリスが浮かんだ。そして、トーナル氏からも絵画の手入れの指南を受けている唯一の侍女だ。
【なぞなぞ】による会話から、モーネスは貴族の所で働いていた侍女の次の働き口が分かり。その侍女が、名前は出さずとも王宮画家たちの居住区で絵画の手入れをしているという会話を成り立たせた。
プライバシーを重んじる、ところもあり勝手に名前は出さないところもあったり深くどの所属とも言わず。
ソンラル王国周辺諸国の貴族たちは、当たり前の会話でもあるが。貴族以外、国民の間でも、挨拶は天気から始まるというのは同じ。
モーネスの会場に飾られている絵画の話しに、貴族は不器用ながらも質問してきた。
「あぁ、モーネスさん。あの今回の絵画……いつもとは、こう違っているとは思うのですが」
「えぇ、そうでしょうか?」
「気のせいならいいのですが。こう、私は気になりまして」
「そうでしたか? 館のチューリップとどうでしょう?」
「そうですね。今回のは、いえ、今回のも気に入っていますよ」
「いやいや、そんなに良くできた絵画とは言えません」
内心、モーネスはこの会話を早くきりをつけたい一方で気に入ってくれているのが本心か? 建前か? 見分けを同時にしていた。表情や不器用ながらも、彼はちらちらと絵画とモーネスを交互に見やっている。どうやら、今回のチューリップの絵画も気に入ったようだ。
チューリップの絵画には、仕掛けのような描き方があり背景に溶け込んでいるが人物の痕がある。まるで、花瓶にチューリップを生けた人物が陰からその様子を伺うような……人物が1人。灰色に近い背景に塗り込めているが、描いた痕の人物像は背景に紛れ光の反射と角度で見え隠れしていた。
モーネスは、絵画に人物を描きたい。その想いはあり試みたが王宮画家としての職を失うにはまだ勇気がなく、一石を投じるような動きまではしていない。このやり方が、精一杯なのだから。
共にアトリエで絵画を描いているヴォルフは良く知っていて、その事に理解も示している。ただ、トーナルとの喧嘩は控えて欲しいと……巻き添えを貰っている当人としては。
飲み物を載せたトレーを持ち1人の侍女がやってきて、受け取るとヴォルフの瞳にだけは……その侍女がとても愛らしく見えていた。一緒に軽く摘まめるクラッカーのトレイはもう一人の侍女、アイリスが横に控えて持っていた。王宮に勤める侍女の立ち居振る舞いなどの指導は侍女長たちが、王宮に入った当初から徹底的に行う。
このパーティー会場に入れる侍女は、王宮侍女の中でもマーブル侍女長とトーナル王宮画家長により選ばれている。
控えのところで小動物のように動いていた侍女は、しっかり給仕を行っている。その違いもまた、ヴォルフは好ましく思えた。愛らしい姿と、侍女としての仕事はきちんとこなすという姿勢。横にいる侍女は、始終同じ表情で飲み物と合う食べ物を軽くお盆を前に出し取り終えたタイミングで小さくお辞儀をして下がる。次の場所へと2人は、ゆっくりと足を運んでいく。
彼女のゆったりとした動きは、何かのダンスのステップを踏んでいるかのように軽やかだった。モーネスは、彼女の動きを瞳に焼き付けスケッチを描くように指先が少し動いた。小さな指先のスケッチは、絵筆をとり、カンヴァスに色を塗りこんでいく。花瓶に花を活けた後に去って行くような、そんな絵が彼の中で1つ出来上がった。
今回のパーティーは、夜遅くまで行われるため侍女たち始め会場で給仕などする者だけでなく。警備にあたる騎士隊も、交代で休憩をとる。アイリスは、最近、同室になってパーティーの給仕も一緒に組んでいるハル・マーモットと休憩に入った。
侍女の休憩場所は、控えのカーテンから入り奥の扉を出て一旦廊下を歩き王宮画家居住地区の近くに用意されている。そこに用意されているのは、王宮画家の世話にも入る可能性もある。休憩室の近くには、警備の騎士が配置されている。パーティー会場の近くには、大廊下を歩いていくと招待された貴族たちの休憩場所や宿泊できる部屋も用意されている。貴族の対応は、王宮侍女や侍従の仕事と割り振られている。
王宮画家は、王国の雇われ画家という立ち位置と身分、生活の保障がある。それゆえに、王家や貴族の望む絵画、つまりブリューワー派以外の絵画はもっての外とされる。トーナルが頭を抱えているのは、そこにモーネスが人物という試みをしているという現実だった。
アイリスは、画家たちのそういう事情までは分かっているようでいて実のところ理解はしていない。ただ、黙々と絵画の手入れをしている。同室のハルからすると、アイリスの絵画の手入れの仕方や知識は目を見張り驚きを隠せず一緒に仕事をしていて楽しく感じている。それは、彼女だけの反応なのだが……。
「アイリス、今夜の絵画の配置や手入れもトーナル様と行ったのでしょう?」
「はい」
「今回の絵画は、アイリスから観てどれが一番好き?」
「……どれも……」
「気になったのがあったの?」
ハルは、アイリスと同室となって日が浅いのだが彼女の小さい反応でも気が付く。他の侍女は気が付かない。気が付くのは、マーブル侍女長とトーナル氏。そして、ハル。
ハルは、茶色い髪に鼻にそばかすがあり、愛らしい丸い瞳は茶色い。酷いくせ毛に毎日苦労してまとめている。王宮画家の侍女として働くようになり、1年だが働きぶりは良くマーブル侍女長も様々な仕事を頼んでいる。アイリスとは違った箇所ではあるが、王宮画家たちのアトリエ掃除はとても良く覚えもめでたい。
トーナル氏からは、ハルの動作を見て『リスみたいにちょこちょこ動いている』と言われ、『リズ』と言われている。
「分かったわ!! あの給仕をしていた時の画家の方の絵かしら?」
「そう、なのかも知れない」
「アイリスは、こう、曖昧だけれど……わたしはその絵画を気に入っているように見えたわ」
「そう」
「この後の仕事もしっかりやらないといけないから、今のうちに少し食べておきましょう!!」
「…………」
そういいつつ、ハルはパクパクと小さな口にサンドウィッチを既に運び食べていた。本当に美味しそうに、食べている。アイリスは、ただ口に運んで喉から胃に流し込んでいる状態が抜けない。幼い頃から、ずっと……教会に保護された時には、食事はすべてそうだった。「このタマゴサンド美味しいわよ」と言う、ハルの言葉で口にするも解からない。
ハルと同じ部屋で過ごし、一緒に仕事をし、今日もパーティーの仕事に携わり。今、一緒に休憩をとっていて……アイリスは、自分は他のひととは何かが違う。何かが欠けている? と、感じるようになった。
自分の気が付かない感情のような、靄が少し薄れていく。しかし、また靄は濃くなり何も周りが見えない。
あの日、自分の両親があの状態に居た時から……アイリスは周りが分からない、感じられない、それを避けているかのように……。
磨き上げられ灯りで乱反射するシャンデリア。絵画に影響を与えすぎないよう、灯りの強さは調整されている。外の月明かりで、窓辺のステンドグラスは綺麗に光を放ち、ひとつの絵として完成をしている。
ブリューワー派の絵画以外では、教会のステンドグラス技術は進んでおりモザイク画のようなガラスを砕いてつくられたステンドグラスから細かなガラスを繋ぎ色鮮やかな絵画へと変貌しつつある。
広間の壁一面には、王宮画家たちの新作の絵画が飾られている。日常の一部の、非日常の絵画。そのひとつに、ブリューワー派の王道とは違う描き方の絵もあった。気がついている貴族は、いないに等しい。
実のところ、トーナル自身も飾ることで気がついた貴族たちに物議を与えないか? ひとつの試みでもあった。今までなら、王宮画家長として全体をとりまとめる彼はその様な事をしてみようとは思えなかった。ただ、ひとつの変化をこれ以上とめるのは無理だと……思えている。
「よく許してくれたよな?」
「んっ? あぁ、アレか……正直、会場にきて自分が一番驚いている」
「何も、聞かされてなかったのか? 珍しいな。トーナル様にしては……」
「そう、だな……それにし……」
「どうした?」
「……あっ、あぁ……前に話した、例の侍女……」
「居たのか? この会場に?」
「あぁ、あの奥の侍女控えのカーテン近く」
「……よくわかったな……お前、なんか違う才能持ってないか?」
彼女は通常の侍女服ではなく、パーティー用のドレス使用服を着ている。パーティー会場に関わる侍女たちは全て。しかし、彼女は同じ服を着ているのに雰囲気が違っている。
周りを寄せ付けない、そういった雰囲気。そして、なにか……ちょこちょこと動いている小動物的な侍女が横で見え隠れしていた。
小動物のリスのような侍女は、何かとアイリスと仕事をせっせとしている。侍女たちをとりまとめるマーブル侍女長が、てきぱきと段取りを進めている。他の侍女たちもパーティーの華やかさに見惚れつつ仕事していたり、緊張の面持ちで取り組んでいたりと様々だ。
貴族の1人が、モーネスたちのところへ挨拶にやってきた。本来ならば、王宮画家たちも積極的に挨拶に回らなければならないのだろうが。それは、【ムキになってはならない】というところもあった。
ここは、相手方から来るのを待っていたというのが正しい。
モーネスたちの所へやってきたのは、以前、自分のチューリップ絵画を買った貴族だった。久し振りの挨拶は、相変わらず天気に始まる。
「今宵は良い月ですね」
「えぇ、そうですね。わたしはこの位の月明かりが好きですよ」
「そうでしたか? パーティーには久し振りではないですか?」
「そうなんですよ。モーネスさん。貴方の絵画を手入れしてくれた侍女がいなくなりましてね」
「その侍女は、どちらか別の場所へ?」
「えぇ、でも意外と近くに居ました。やぁ、彼女の仕事はいつもながら見事ですよ」
「絵画の手入れを今でも続けて……あぁ、それは良かったです。こちらとしても助かりますよ」
自然とモーネスは美術倉庫に居た、例の侍女。アイリスが浮かんだ。そして、トーナル氏からも絵画の手入れの指南を受けている唯一の侍女だ。
【なぞなぞ】による会話から、モーネスは貴族の所で働いていた侍女の次の働き口が分かり。その侍女が、名前は出さずとも王宮画家たちの居住区で絵画の手入れをしているという会話を成り立たせた。
プライバシーを重んじる、ところもあり勝手に名前は出さないところもあったり深くどの所属とも言わず。
ソンラル王国周辺諸国の貴族たちは、当たり前の会話でもあるが。貴族以外、国民の間でも、挨拶は天気から始まるというのは同じ。
モーネスの会場に飾られている絵画の話しに、貴族は不器用ながらも質問してきた。
「あぁ、モーネスさん。あの今回の絵画……いつもとは、こう違っているとは思うのですが」
「えぇ、そうでしょうか?」
「気のせいならいいのですが。こう、私は気になりまして」
「そうでしたか? 館のチューリップとどうでしょう?」
「そうですね。今回のは、いえ、今回のも気に入っていますよ」
「いやいや、そんなに良くできた絵画とは言えません」
内心、モーネスはこの会話を早くきりをつけたい一方で気に入ってくれているのが本心か? 建前か? 見分けを同時にしていた。表情や不器用ながらも、彼はちらちらと絵画とモーネスを交互に見やっている。どうやら、今回のチューリップの絵画も気に入ったようだ。
チューリップの絵画には、仕掛けのような描き方があり背景に溶け込んでいるが人物の痕がある。まるで、花瓶にチューリップを生けた人物が陰からその様子を伺うような……人物が1人。灰色に近い背景に塗り込めているが、描いた痕の人物像は背景に紛れ光の反射と角度で見え隠れしていた。
モーネスは、絵画に人物を描きたい。その想いはあり試みたが王宮画家としての職を失うにはまだ勇気がなく、一石を投じるような動きまではしていない。このやり方が、精一杯なのだから。
共にアトリエで絵画を描いているヴォルフは良く知っていて、その事に理解も示している。ただ、トーナルとの喧嘩は控えて欲しいと……巻き添えを貰っている当人としては。
飲み物を載せたトレーを持ち1人の侍女がやってきて、受け取るとヴォルフの瞳にだけは……その侍女がとても愛らしく見えていた。一緒に軽く摘まめるクラッカーのトレイはもう一人の侍女、アイリスが横に控えて持っていた。王宮に勤める侍女の立ち居振る舞いなどの指導は侍女長たちが、王宮に入った当初から徹底的に行う。
このパーティー会場に入れる侍女は、王宮侍女の中でもマーブル侍女長とトーナル王宮画家長により選ばれている。
控えのところで小動物のように動いていた侍女は、しっかり給仕を行っている。その違いもまた、ヴォルフは好ましく思えた。愛らしい姿と、侍女としての仕事はきちんとこなすという姿勢。横にいる侍女は、始終同じ表情で飲み物と合う食べ物を軽くお盆を前に出し取り終えたタイミングで小さくお辞儀をして下がる。次の場所へと2人は、ゆっくりと足を運んでいく。
彼女のゆったりとした動きは、何かのダンスのステップを踏んでいるかのように軽やかだった。モーネスは、彼女の動きを瞳に焼き付けスケッチを描くように指先が少し動いた。小さな指先のスケッチは、絵筆をとり、カンヴァスに色を塗りこんでいく。花瓶に花を活けた後に去って行くような、そんな絵が彼の中で1つ出来上がった。
今回のパーティーは、夜遅くまで行われるため侍女たち始め会場で給仕などする者だけでなく。警備にあたる騎士隊も、交代で休憩をとる。アイリスは、最近、同室になってパーティーの給仕も一緒に組んでいるハル・マーモットと休憩に入った。
侍女の休憩場所は、控えのカーテンから入り奥の扉を出て一旦廊下を歩き王宮画家居住地区の近くに用意されている。そこに用意されているのは、王宮画家の世話にも入る可能性もある。休憩室の近くには、警備の騎士が配置されている。パーティー会場の近くには、大廊下を歩いていくと招待された貴族たちの休憩場所や宿泊できる部屋も用意されている。貴族の対応は、王宮侍女や侍従の仕事と割り振られている。
王宮画家は、王国の雇われ画家という立ち位置と身分、生活の保障がある。それゆえに、王家や貴族の望む絵画、つまりブリューワー派以外の絵画はもっての外とされる。トーナルが頭を抱えているのは、そこにモーネスが人物という試みをしているという現実だった。
アイリスは、画家たちのそういう事情までは分かっているようでいて実のところ理解はしていない。ただ、黙々と絵画の手入れをしている。同室のハルからすると、アイリスの絵画の手入れの仕方や知識は目を見張り驚きを隠せず一緒に仕事をしていて楽しく感じている。それは、彼女だけの反応なのだが……。
「アイリス、今夜の絵画の配置や手入れもトーナル様と行ったのでしょう?」
「はい」
「今回の絵画は、アイリスから観てどれが一番好き?」
「……どれも……」
「気になったのがあったの?」
ハルは、アイリスと同室となって日が浅いのだが彼女の小さい反応でも気が付く。他の侍女は気が付かない。気が付くのは、マーブル侍女長とトーナル氏。そして、ハル。
ハルは、茶色い髪に鼻にそばかすがあり、愛らしい丸い瞳は茶色い。酷いくせ毛に毎日苦労してまとめている。王宮画家の侍女として働くようになり、1年だが働きぶりは良くマーブル侍女長も様々な仕事を頼んでいる。アイリスとは違った箇所ではあるが、王宮画家たちのアトリエ掃除はとても良く覚えもめでたい。
トーナル氏からは、ハルの動作を見て『リスみたいにちょこちょこ動いている』と言われ、『リズ』と言われている。
「分かったわ!! あの給仕をしていた時の画家の方の絵かしら?」
「そう、なのかも知れない」
「アイリスは、こう、曖昧だけれど……わたしはその絵画を気に入っているように見えたわ」
「そう」
「この後の仕事もしっかりやらないといけないから、今のうちに少し食べておきましょう!!」
「…………」
そういいつつ、ハルはパクパクと小さな口にサンドウィッチを既に運び食べていた。本当に美味しそうに、食べている。アイリスは、ただ口に運んで喉から胃に流し込んでいる状態が抜けない。幼い頃から、ずっと……教会に保護された時には、食事はすべてそうだった。「このタマゴサンド美味しいわよ」と言う、ハルの言葉で口にするも解からない。
ハルと同じ部屋で過ごし、一緒に仕事をし、今日もパーティーの仕事に携わり。今、一緒に休憩をとっていて……アイリスは、自分は他のひととは何かが違う。何かが欠けている? と、感じるようになった。
自分の気が付かない感情のような、靄が少し薄れていく。しかし、また靄は濃くなり何も周りが見えない。
あの日、自分の両親があの状態に居た時から……アイリスは周りが分からない、感じられない、それを避けているかのように……。
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