狼さんのごはん

中村湊

文字の大きさ
上 下
10 / 22

狼さんのはじまり

しおりを挟む
 その日、雅和は絵里とは一緒に帰らずに理人りひとの家に来ていた。
 理人は、楓と結婚して新婚生活を満喫中。ぶーぶー文句を言いながらも、楓は雅和にお茶と茶請けを用意してくれた。「勝手に話してれば? 私は部屋にいるから!!」と言いながら、気を遣ってくれたようだ。

 「で、やっぱり……アレか? 我慢できなくなって……」
 「……ない……」
 「えっ、まだシテないの?!」
 「んっ」
 「うっわぁぁぁ!! ほんっとうに? 辛いだろ?」
 「……んっ……その……」

 会話の成り立つ理由。もう、分からないが……この雅和の口数の少なさというか、理解出来る者の方が珍しいのだ。なにせ、幼い頃から大きな屋敷に会話という会話をする相手がいなかったのだ。雅和には。
 たまに来る、弟のともと理人くらい。ばあやが、「坊ちゃんのためです!!」とか言いながら、人を選び話す相手も選び続けたためだ。
 坂口家の家のため。というのを、はき違えて教育をしてきた。というのが、本当の理由だったのだが。
 
 理人は自身の経験を踏まえて話したが……驚愕きょうがくに値するように思えてきた。
 つまり、坂口の血が濃い男はオスとしての力も強く自分の子孫を強く残すための力も強く……超絶倫だ、そうだ。まぁ、持久力に、激しさ、どれもこれもが……らしい。
 何故、そうなのか? というのは、家の逸話いつわに由来するとわれている。

 「お前も坂口の人間なら、ニホンオオカミの存在は分かるだろ?」
 「……あぁ……」
 「ニホンオオカミとにえささげられた村姫巫女むらひめみこが結ばれて、子をたくさん為したのが始まり」
 「んっ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 昔、むかし。あるところの小さな村。村姫巫女さまが住まうやしろ。村の周りの大災があり、姫巫女さまは毎日まいにち祈祷をされていました。
 村人たちは、それはそれは姫巫女さまに大災を何とかしずめて欲しいと願うばかり。彼女自身も、村人たちを救いたいと身を粉にして働き、捧げ物は村人たちの貧しいものにも分け与えていました。
 ある日、村の権力者が村人たちに云うのです。
 
 『われわれが苦しいのは、捧げ物が足らぬのでは?』
 『ささげもの?』
 『そう、この村周りを護ってくださっている神に捧げるモノが……ヒメミコさま自身が我々を救ってくださるはず』
 『ささげる……ヒメミコさま』

 そして、社の周りには多くのひとびとが集まり。姫巫女さまに云うのです。

 『大災を鎮めるため、我々を助けるため、捧げものになってください!!』
 『捧げものに!!』

 毎日、毎晩、1日中。何日も、なんにちも……。そして、姫巫女さまは涙しました。このままでは、村人たちが大切な社さえも壊してしまう。村人たちの心までも……嘆き哀しみ、暗い涙を流していました。
 ある夜、動物の咆哮ほうこうがします。社の裏山から。
 大きなニホンオオカミ。神の大神おおかみ
 
 『タイサイをしずめてほしいか? ムラビトたちよ?』
 『しずめてください!!』
 『では、ムラのなかからヒトリ。キムスメをわがヨメとして。ツガイとしてむかえいれよう!!』
 『よめ? つがい?』

 ザワザワと騒ぐ村人の前にでたのは、姫巫女さま。

 『わたしが、あなた様のツガイとなります』
 
 そのひと言で、姫巫女さまは裏山へと行き。大神の嫁として、つがいとなり子を多く為していきます。
 それから、その村では大災はなくなりました。しかし、姫巫女さまのいなくなった社は廃れて寂れていき存在を忘れられていき……大神は別の土地へと姫巫女さまと、子どもたちと行かれてしまいました。
 子ども達は、強く逞しい綺麗な姿をしており。オスは女を魅了し、メスは男を魅了する。しかし、番を持つのは難しく大神と姫巫女さまは、厳しく云うのです。

 『番になれるとしても、相手次第』

 と、2人はたまたまの出逢いで一緒になりましたが。そこからは互いの関係を築き子をなしたと。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「叔父上が、よく云っていた話し。覚えてるだろ? 雅?」
 「……んっ……たぶん……」
 「いやいや、ソレ。叔父上が聞いたら泣くよ? あの叔父上、結構涙もろいし」
 「?」
 「まぁ、お前はよく知らないだろうから。朝に聞いてみるといいよ? 自分の父親の面白い話し」
 「んっ」

 最後の一口のコーヒーを飲みほし、理人に礼を言う。結局のところ……雅和のさかりに盛った、絵里に対する性欲というか、欲とか、ヨクとか、よくとか、ありとあらゆるのは。
 解決、しなかった。
 ひとつ言えるのは……超絶絶倫だろう、と。わかったこと。絵里とキスだけで、このまま我慢……できるだろうか?
 悶々とした気持ちで、大好きな赤ずきんちゃんのいる部屋へと帰る。
 隣の部屋で聞いてしまった楓は、理人に抱き締められながら自分の毎晩の状況を考えると……絵里のことがいたたまれなくなってくる。

 「あの、理人? あの……アレは、ほんっとうに大変なんですが……」
 「んー? あっ、今日は回数プラス濃厚にイキたい?」
 「いやいやいや!! そういう話し、でもなくもなくて……じゃなくて!!」
 「濃厚度数を増やす? それとも……もっと、激しさも加えよっか?」

 瞳の奥の深いところから楓をとらえて離さない。ドクドクと全身が熱くなり、きゅぅっと下腹部が疼く。
 流されたら終わりでもないが、もう、楓には理人から離れられない理由もある。本能がもう、離して欲しくないと叫んでいるし。なにより、楓は理人を愛している。
 暴力的だとか、散々な言われをしてきた楓の本質をみて、受け止めてくれた理人。彼にも色々と育ってきた事情も抱えていたり。互いに一緒に居たい、と。
 
 楓は、絵里のことをとても可愛がっている。だけど、大切な人の家族の雅和のこともキライという訳でもなかった。この理人たちの関係を知っているし、不器用な男たちの関係も。

 「……と、いいなぁ……」
 「楓ちゃんは心配性だなぁ」
 「んっ、だ、だめ!!」
 「だめ? いいでしょ? ほぉら、楓?」
 「理人、手加減……して、くれる?」
 「んーーっ、それは。どうかな?」

 その日の夜。翌日が週末だと、すっかり忘れていた楓は。喉が枯れに枯れてしまうほどに理人に……ハードで濃厚度数MAXの激しい愛され方を、久々に味あわされた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません

如月 そら
恋愛
旧題:隠れドS上司はTL作家を所望する! 【書籍化】 2023/5/17 『隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません』としてエタニティブックス様より書籍化❤️ たくさんの応援のお陰です❣️✨感謝です(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 🍀WEB小説作家の小島陽菜乃はいわゆるTL作家だ。  けれど、最近はある理由から評価が低迷していた。それは未経験ゆえのリアリティのなさ。  さまざまな資料を駆使し執筆してきたものの、評価が辛いのは否定できない。 そんな時、陽菜乃は会社の倉庫で上司が同僚といたしているのを見てしまう。 「隠れて覗き見なんてしてたら、興奮しないか?」  真面目そうな上司だと思っていたのに︎!! ……でもちょっと待って。 こんなに慣れているのなら教えてもらえばいいんじゃないの!?  けれど上司の森野英は慣れているなんてもんじゃなくて……!? ※普段より、ややえちえち多めです。苦手な方は避けてくださいね。(えちえち多めなんですけど、可愛くてきゅんなえちを目指しました✨) ※くれぐれも!くれぐれもフィクションです‼️( •̀ω•́ )✧ ※感想欄がネタバレありとなっておりますので注意⚠️です。感想は大歓迎です❣️ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)💕

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...