おまけ娘の異世界チート生活〜君がいるこの世界を愛し続ける〜

蓮条緋月

文字の大きさ
上 下
52 / 68
壱 出会いの章

46話 久しぶりの王都

しおりを挟む
 ーー???

「あ~あ、遂に裏切っちゃったね」
「呑気にしている場合じゃねえよ! あの野郎っ……!」
「落ち着きなさいな。もう過ぎたことなのですわよ」
「だがこのまま野放しにはできんだろう。如何する?」

 その場に集った十二人が口々に言い合う中、一人の男が笑みを浮かべた。

「何をそんなに気にする必要がある? あれは俺たちから外れたんだ。裏切り者に対する制裁などひとつしかないだろう」

男はもういない同胞を想い残酷に嗤う。

「我らが主に永遠の真愛を」


      ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 クリサンセマムでのあれこれが終わり、新たに加わったメディセインと共に王都へと戻ってきた緋夜達は王都で宿泊していた宿を訪れる。宿の女将・リンダは緋夜達を見て目を見開いた。

「おやヒヨにガイじゃないか! クリサンセマムから帰ってきたんだね。……そっちのえーっと、男? はなんだい?」
「「プッ……」」
「……疑問を抱いていただかなくとも男ですよ」

性別不詳の中性的な容姿をしているメディセインはめでたくリンダに誤認され顔を引き攣らせる。緋夜とガイはその様子にひっそりと横を向いて肩を震わせた。

「……お二人とも楽しそうですね」
「ごめんごめん」
「もう少し筋肉つけりゃいいだろ」
「私は特異体質でこれ以上肉がつかないんです」
「なんか羨ましい……」
「私は嬉しくないんですけどね」

気安く会話をする三人にリンダは驚きを隠せないかのように訊ねた。

「あんた達……」
「ん? ああ彼はメディセイン。この度パーティに加わった蛇の獣人です」
「はじめまして、メディセインと申します。以後お見知りおきを」
「し、新メンバーだって!? あんたたちにかい!?」

リンダの驚愕の声は宿中に響き渡り、周囲にいた者達の視線を集めた。緋夜達を知っている者達とそうでない者達とでは反応が異なるが、リンダが驚愕したということで何かを感じ取った者もいるようだ。

「そんなに驚きますか」
「そんなって……あんたやっぱりなんかズレている気がするねえ」
「いいではないですか。それよりも部屋は空いていますか?」
「ああ、空いてるよ。二部屋だけだけど」
「ヒヨさんは一人で使ってください。私はガイさんと同室で結構ですから」
「……ふん」

メディセインの言葉にガイは不機嫌そうにするものの文句は言わなかったため同意ということだろう。そんなメディセインにリンダは若干目を見開く。

「へえ……意外と紳士的じゃないか。普通の冒険者は女性って方面で気を遣ったりしないのに」
「? そういうものなんですか?」
「まあね。ゼノンのところには顔出したのかい?」
「いえ、これからですよ」
「そうかい。じゃあ部屋に案内するよ」
「ありがとうございます」

案内された部屋で軽く荷解きを終えた三人はその足でギルドへと向かった。季節の変わり目だからなのか以前と比べて雰囲気やお店の品揃えが変わっていた。

「品揃えとか変わってるね」
「まあ、季節が変わるからな」
「肌寒くなってきましたよね」
「そうかな」
「もともと私の種族は空気に敏感なんですよ。なので些細な温度変化でも感じ取れるんです」
「へえ、さすがヘビってところかな」
「そう言っていただけると嬉しいです」

時々買い食いをしながらギルドへ向かっていると前方に見覚えのある後ろ姿を見つける。

「シュライヤさん」

見覚えのある金髪の男性ーーシュライヤはゆっくり振り向くと緋夜達を見て目を輝かせながら駆け寄ってくる。

「あ~ら~久しぶりじゃない! クリサンセマムに行ってたんですってね? どうだった~?」
「楽しかったですよ」
「そう? よかったわ~ガイちゃんも久しぶり」
「うぜえ」
「もう! 相変わらず辛辣なんだからん! あんまりツンケンしてると恋人ができないわよ」
「余計なお世話だ。カマ野郎」
「ウフフ~」

相変わらずの口調で喋っていたシュライヤはメディセインに視線を止めると首を傾げた。

「あ、あら? どちら様かしら?」
「新しいパーティメンバーのメディセインです」
「新メンバー!? アンタ達に!? これ以上戦力を増やしてどうするの!」
「普通に冒険者活動するだけですけど」
「……普通って……まあいいわ。でもそうなると彼の装備はアタシのお店で作るのかしら?」
「……そうですね。そうなるでしょう。何せガイが案内する店ですから」
「そうよね。アタシってばガイちゃんを虜にするくらい腕利きだもの」
「誰が虜になってんだよ」

速攻でガイの否定が入るもののシュライヤは柳に風で流していた。仲良さげな様子にメディセインは緋夜達とシュライヤを見比べる。

「ヒヨさん、あの」
「ああ、ごめん。彼は道具屋を営むシュライヤさん」
「シュライヤよ。よろしくね~」
「これはご丁寧に。メディセインと申します。こちらこそよろしくお願いします」
「それにしてもあなた白いわね~ガイちゃんと正反対だわ」
「面白いですよね。ヒヨさんは赤いですし」
「三人並ぶとすっごく目立つわ。これならどこにいても見つけられそう」
「おや、それはいいですね。……ところで私の装備がどうのと仰っていましたが」
「うん。シュライヤさんに頼もうと思ってる。私の装備もシュライヤさんの製作だし」
「それはありがたいですね。是非お願いしたいです」
「任せてちょうだい。色は……白でいいかしら?」
「ええ。構いませんよ」
「わかったわ。他に何か希望はあるかしら?」
「そうですね。できれば暗器やナイフを隠せるような仕様にしてもらいたいです。あとは特に希望はありません」
「は~い、素材は……ガイちゃんのもの?」
「あー……素材は、どうしようか」
「私はできればガイさんに素材提供をお願いしたいのですが」
「ああ」
「……はい?」

冗談で言ったつもりだったのか、メディセインはガイの即答に一瞬固まり、緋夜もガイに視線を向ける一方シュライヤは目を輝かせた。ガイの素材を使用できるという理由だろう。

「ですが、貴重なものばかりでしょう? そう簡単に渡してしまっていいのですか?」
「欲しけりゃまた取ってくる」
「「……」」

こともな気にさらりと言ったガイに緋夜とメディセインは無言になった。ガイの素材の中には伝説に近いレベルのものもあるのだが、それを取るには冒険者のランクは最低でもA以上でなければ不可能一瞬で全滅するほど困難なのだが……それを取って来ればいい、とあっさり言えば無言にもなろうというものである。

「……まあ、ガイさんがいいのなら。あ、代金は私が払いますから大丈夫です」
「あらそう? まあ私はガイちゃんの素材使って製作できるのは嬉しいしお金さえちゃんと払ってくれれば文句はないわ」

その後、細かいところを話し終えた緋夜達がギルドの扉を開けると一気に視線が集中した。緋夜達が戻ってきたことが既に知れているのだろう。そんな視線の海を平然と渡り、お目当ての人物……ゼノンの前で立ち止まる。

「おお、お前ら戻ってきたのか!」
「うん。ついさっきね」
「クリサンセマムはどうだった?」
「楽しかったよ」
「そいつはよかった! なんかクリサンセマムで変なこと起こってるって聞いてよ。心配してたんだが、元気そうでよかった」

どうやらクリサンセマムの騒動は王都でも耳に入っていたらしく心配してくれていたようだ。ゼノン目には安堵の色が浮かんでいる。

「心配ありがとう」
「まあ、ガイもいるしよっぽど変なことにならねえ限り大丈夫だろうがな」
「そうだね」
「今日戻ってきたってことは、依頼は受けねえんだろ?」
「うん。依頼は受けないけど、用事があってね。早い方がいいから」
「あ?」

用事という言葉に一瞬首を傾げたゼノンはふと全身白い中性的な容姿の人物に目を向ける。

「用事ってのは……そっちの白い奴のことか?」
「うん」
「新人の付き添いか?」
「いや、パーティの更新」
「……は?」

緋夜の言葉にゼノンは呆けた顔をした。一瞬なにを言ったのか理解できなかったのだろう。首をぎこちなく動かし、ずっと笑みを浮かべている線の細い怪しい雰囲気の人物へと顔を向けた。

「嬢ちゃん……パーティ更新ってのは」
「メディセインを新たに加えることにした」
「……誰を?」
「この人を」
「誰のパーティに?」
「私達」
「……」
「……」

ゼノンはしばし無言になり、そして。

「はあああああああっ!!!???」

ギルド内にいる者達の耳を壊しかねないほど絶叫した。











しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。

三月べに
恋愛
 聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。  帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!  衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?  何故、逆ハーが出来上がったの?

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!

金峯蓮華
恋愛
「聖女だ! 聖女様だ!」 「成功だ! 召喚は成功したぞ!」 聖女? 召喚? 何のことだ。私はスーパーで閉店時間の寸前に値引きした食料品を買おうとしていたのよ。 あっ、そうか、あの魔法陣……。 まさか私、召喚されたの? 突然、召喚され、見知らぬ世界に連れて行かれたようだ。 まったく。転生の次は召喚? 私には前世の記憶があった。どこかの国の公爵令嬢だった記憶だ。 また、同じような世界に来たとは。 聖女として召喚されたからには、何か仕事があるのだろう。さっさと済ませ早く元の世界に戻りたい。 こんな理不尽許してなるものか。 私は元の世界に帰るぞ!! さて、愛梨は元の世界に戻れるのでしょうか? 作者独自のファンタジーの世界が舞台です。 緩いご都合主義なお話です。 誤字脱字多いです。 大きな気持ちで教えてもらえると助かります。 R15は保険です。

追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路
ファンタジー
 王国の四男坊ディートヘルム・ボニファティウス王子は、 「冒険者志望なら結婚したくないです」  と、婚約者の王女殿下から婚約破棄されてしまった。 (実際は、家族ともども自由を尊重される)    親族の顔を立てるため、一応「追放」という名目で、追い出してもらう。  僻地の開拓を命じられた体で、冒険者ディータとしての道を進む。  王族はディータに危害は加えないが、資金援助もしない。できない。  わずかな金と武具を持って、たったひとりでの開拓が始まると思っていた。  だが、そこには悪役令嬢が先客として、冒険をしていた。  リユという令嬢は、デカい魔剣を片手に並み居る魔物たちをバッタバッタとやっつけている。 「一人でさみしい」  そんな彼女の独り言を聞いてしまったディータは、命を助けてもらう代わりにリユに食事を振る舞う。  すぐに意気投合した二人は、交際しつつも冒険する。  思っていたより広大な土地を開拓しつつ、二人の領地拡大冒険が始まった。  作物の育たない近隣の土地を活性化し、隣接する王都の騎士団を立て直す。  魔物の攻撃を受け続ける中、ディータはリユがドラゴン族の末裔だと知った。  しかし、彼は恐れることなく、ただのリユとして接する。  お互いの人柄に惚れて、二人は本当の夫婦になっていく。

処理中です...