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壱 出会いの章

閑話③ 求めるもの、望むままに (メディセイン目線)

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 私はメディセインといいます。南部出身の蛇の獣人です。十歳頃まで南部の蛇人の村で暮らしていたのですが少々飽きてしまいまして村を飛び出しました。私は先祖返りというものらしく他の者に比べて強かったのもありますが。外に出たいと言ったら村の者達に止められましたが……まあ少々説得したら許可をくださいました。寛容ですよね。もともと蛇は臆病ですのでそういった要因もあるのでしょう。

 掃除屋に入ろうと思ったのはただの気紛れです。普通に冒険者や傭兵、薬師でもよかったのですが……なんとなく興味を惹かれたんですよ。裏社会というのは蛇の習性にどことなく似ている気がして、ね。
掃除屋に入り依頼をこなしていく日々を過ごしていたのですが……ここ最近はあまり気の引かれる依頼がありません。そろそろ足洗って表の世界で生きるのも楽しいかもしれません。
 そう思っていた矢先、とある伯爵家からの潜入依頼が入りました。この依頼を受けるか受けないか、それがある意味では最大のターニングポイントだったのだと今ならわかります。

 依頼者のレイーブ伯爵から事情を説明され、モルドール侯爵邸に待従として潜入した途端に何を思ったのかモルドール侯爵は私に裏工作などの仕事ばかりをさせたのです。ですので私の依頼はとてつもなく簡単にこなすことができました。非常の感謝しておりますよ。まあ、監視が鬱陶しいという以外は特に問題もなく進められたかと思います。ご子息の一人であるガゼス様も密かに協力してくださいましたし。
 それから伯爵の指示通りにモルドールのやることなすことにモルドール侯爵へと辿り着くよういろいろ手を施しましたが……そのうちの一つ、いえ二つでしょうか。それがとても楽しいものを招いたのです。

 モルドール侯爵の指示で実行した誘拐事件がとある二人の冒険者によって淘汰されました。しかもそこから誘拐犯の人質達を救出してしまったのです。
 そして、人質が救出された翌日、私は冒険者のうち、女の方と事を構えました。

ーーまさか

この私の不意をつける女性がいるとは思いませんでしたよ。久しぶりに良い玩具を見つけました。このまま壊してもいいのですが、それではまた退屈になりそうですし、見逃すことにしました。去り際に意味深な言葉を呟くと驚いたような表情をしたので、意味が伝わったのでしょう。また会えますよ。


 満月の日、彼らは本当にやってきました。実は結構賭けの部分があったのですが。
 珍しく嬉しくなり、ついつい遊んでしまいました。まあ女性の方は加わってこないので、おそらく私達の戦闘に追いつけないのでしょう。どんなに魔法に優れていようが目で追えなければ意味がない。うっかり味方を攻撃……などということにもなりかねませんからね。ですが、正直ガッカリしたのも事実でして。どのような形であれ加わってほしいものです。
 ……などと思っていたら、女性の魔法であっという間に水の中に叩き込まれてしまいましたが。見た目に反して非常に乱暴な方だったようですね彼女。

 まあ最終的にはヒヨさんとガイさんを協力者にすることはできたのでよしとしましょう。まあパーティー参加してほしいなどというお願いを聞いてくるとは思っていませんでしたけど。大変嫌そうな顔をなさっていましたが。わけを聞いたら彼女達巻き込まれていたようで、クリフォード侯爵令嬢の代わりに動くと同時にお礼参りをしたいとのこと。

……。
本当にヒヨさんは外見と中身がまるで一致しない方ですね。うっかり嘗めて掛かろものなら、あっさりと掌で転がされそうです。

 そんな彼女でもやはり生まれ持った容姿が優れていることは事実でして……パーティー当日身支度を整えた彼女はーー素直に美しいと思ってしまいました。一切飾り気のない単語を思うほどに彼女は輝いていました。

 ……それに、彼女はしっかりとご自分の役割を果たしてくださいまして。

 レイーブ伯爵と会話をしながら視線を向けるとモルドール侯爵令嬢ミラノとやり合っていました。……実に楽しそうです。やはり見た目に似合わずいい性格の持ち主のようで。ガイさんも絡まれていますが、まああちらは本当に面倒くさがっているのが伝わってきますね。後で一発入れられそうです。盾になってくださいヒヨさん。

 それから、モルドール侯爵と令嬢の行いを洗いざらい暴露するとモルドール侯爵は発狂し、令嬢の方はヒヨさんに八つ当たりをしたものの、ヒヨさんに鼻で笑われた挙句オニキス殿下にあっさり振られて撃沈しました。何がしたかったのやら……。

その後、パーティー会場から別室へと移動した先で『いろいろ』あり、大騒ぎになりましたが。

 
 ……ですが、私はそんな時間が楽しいと感じたのはいつぶりだったでしょうね。少なくとも村を出てからは私が『楽しい』を感じる時は戦ってる時だった気がします。ほんの気紛れで受けた依頼で出会った変わり者の二人組。彼らといれば、私は別の『楽しい』を見れるかもしれない。ならば……彼らと共に行くしかないでしょう。別に服従するわけではありませんよ。私が、『楽しい』を見たいのですから。だから彼らといたい。面白いもの、楽しいもの全部見てみたい。枷になる裏ギルドから足を洗ったら……言いましょうか。私を仲間に入れて欲しいと。断られても、何度でも頼みましょう。他の誰でもない、私自身のために。

 私はーー強欲ですから。



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