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壱 出会いの章
14話 装備の完成と秘密
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小鳥のさえずりが快晴の空を涼やかに彩る時間帯、それは突然やってきた。
緋夜はまだ微睡の中にいる時、窓を叩く音が響いた。
「……ん……朝?……」
何度も叩く音に緋夜が寝ぼけ眼を窓に向けるとーー
「……へ?」
そこには翼を生やしたシュライヤが笑顔で手を振っていた。
「はぁ~いヒヨちゃん! ようやくお目覚めかしら~?」
「……」
「ちょっと! また寝るんじゃないわよ!」
窓の外からギャンギャンと騒ぐシュライヤに勘弁してくれ、と思いながらも再びベッドから起き上がる。
「何ですか……」
「眠り姫じゃあるまいし……もっとシャキッとしなさいよ」
「……」
「……しょうがないわね~もう! 朝食が済んだらアタシのお店に来てちょうだい」
その言葉に緋夜がシュライヤに視線を向けると、その艶やかな唇が弧を描く。
「できたわよ。ヒヨちゃんの装備」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
シュライヤの知らせを受けた緋夜はすぐさまガイに報告し朝食後、シュライヤの店へと向かった。
「……ったく、あの野郎」
「ガイさん、シュライヤさんってもしかして」
「ああ、アイツは鳥人族だ」
「……鳥人……族」
「この辺りだとレヴリー山脈に住んでいる。あれみてえによっぽどの物好きじゃねえと降りてこねえよ」
「どうしてです?」
「さあな。だが地上よりは空のほうが空気も澄んでいるし障害がほとんどないから動きやすいんだろ」
「なるほど」
地球から来た緋夜からすれば初めて見る空想上の存在はそれこそ普通に町中を歩いている。獣人やエルフ、ドワーフ、小人。あげればキリがないが、共通しているのはこの世界に存在してる生物だということだ。
(なんかちょっと寂しくなるな)
そんなことを考えている間にシュライヤの工房に到着した二人は、店内から聞こえて来る謎の轟音を聞きながら扉に手を添えたまま立ち止まっていた。
(朝からなにやってるんだろうあの人)
(相変わらず朝から晩までうるせえ奴だな)
とそれぞれ思いながら、ガイがドアを開けて店内に入ると奥に続く扉から素材らしき残骸が溢れ出ていた。
「あら、来たわね。こっちよ」
足元に転がる残骸など眼中にないかのようにシュライヤが緋夜達を手招く。しかしものが散乱している床を歩くのは容易ではなく、時々蹴躓きながらシュライヤの元へ辿り着いた。
「ごめんなさいね~散らかってて」
「いえ。それにしてもこれは一体……」
「ああ、依頼が何件も来ている時は片付ける余裕なくっていっつもこうなっちゃうの。ほら、アタシって凄腕だから」
「ご自分でおっしゃいますか」
「だぁって事実ですもの」
つい最近、似たようなセリフを聞いた記憶のある緋夜はガイに視線を向ける。
「なんだ」
「いえ、つい先日似たような言葉を聞いたな、と思いまして」
「……うるせえよ」
「これは失礼」
「こ~らそこ、いちゃついてないで、さっさと確認してちょうだい」
「あ、はい」
シュライヤに呼ばれてカウンターに行くとそこにはーー
「わあ……」
「まあ腕は確かだからな」
真紅のケープレット、フレンチスリープの膝上プリンセスラインワンピースとセットになっている漆黒のワスピーと黒と銀のベルト、膝下までのハーネスブーツが置かれていた。
「どう? 結構可愛くできたと思うんだけど」
「はい、すごく可愛いです」
「でしょ~? ヒヨちゃんの雰囲気に合わせて作ってみたのよ~。ガイちゃんから貰った素材で防御力も段違い。これならたとえゴーレムの集団に襲われても無傷でいられるわ。特に拘ったのはーー」
「長え」
「とりあえず着てみてもいいですか?」
「……ちょ、二人揃って話を遮らないでよ」
「長くなりそうだったので」
「テメエの変態的な拘りなんざ興味ねえよ」
二人に容赦なく切り捨てられどんよりしながら緋夜を別室に案内したシュライヤは、ガイの傍に戻ると表情を変えた。
「……本当にどういう風の吹き回しなの?」
「……なんのことだ」
「とぼけないでちょうだい。あのコのことよ。ガイちゃんが誰かに……女の子に肩入れするなんて」
「……ただの成り行きだ」
「ふうん? あまり深く聞くつもりはないけど、せいぜい後悔しないようにね」
「俺が後悔だと? はっ! くだらねえ」
「そう? ならいいんだけど。けどあんまりあのコには深入りしない方がいいわよ」
「あ?」
シュライヤは低い声でガイに囁く。この声になる時は真面目な話題の時だ。本人は気づいているかは知らないが。そしてその話題が外れたことはこれまで一度もない。
「……何か嫌な予感がするんだよ。絶対になんかあるぞ。それこそ、関わったが最後災厄の渦中に飛び込むことになるほどの、何かがな」
「災厄の渦中……ね」
「ああ、冒険者の付き添いが終わったら、離れた方がいい。面倒なことになる前に」
シュライヤがここまで真剣な忠告をしたのは今回が初めてだ。いつになく険しい表情でガイを見つめるシュライヤをガイは鼻で笑う。
「テメエの忠告なんざ気色悪いな。まあでも頭の片隅くらいには入れといてやる」
「あ、そう。ならいいんだけど」
シュライヤはいつもの飄々とした態度に戻ると、ガイの背中を思いきり叩く。
「痛っ!」
「まあせいぜい、頑張んなさい! ガイちゃん!」
「うっせえよこのカマ野郎!」
「お待たせしました」
男二人が仲良く(?)しているところに着替えを終え、戻ってきた緋夜を見てガイとシュライヤが動きを止めた。
「あら……」
「……」
「……何か変でしたか?」
「変じゃないわよ~! とっても素敵よ~ヒヨちゃん」
「ありがとうございます。普段こういった服装をすることがないのですごく新鮮です」
「気に入ってもらえてよかったわ~。ほらガイも! なんか言ってあげなさいよ」
「…………悪くねえんじゃねえの?」
「ありがとうございます、ガイさん」
「ふん」
「あら~ガイちゃん照れてるわね。すごく可愛いわ~」
「うっせえ」
賑やかな会話の後、ガイは装備の代金を支払い、緋夜を連れてさっさと店を出た。シュライヤが残念そうにしていたが、ガイに睨まれて慌てて店の奥へと引っ込んだ。
「あんなに睨む必要ありました?」
「いいんだ。じゃねえといつまで経っても帰れやしねえ」
「まあ、それは想像できますが……」
「ならいいだろ」
「……はは」
ガイの言葉に苦笑しながらも、緋夜は着心地抜群の装備を堪能していた。
(すごく軽くて動きやすい。伸縮性もあるし、普段着ている服と全然違うのにむしろこっちの方がいい)
見た目のかわいさも相まって緋夜はすっかり気に入っていた。
「ガイさん」
「あ?」
「ありがとうございます」
「……言ったろ。これは投資みてえなもんだって。だから礼を言われる筋合いはねえよ」
「それでもありがとうございます」
「……ふん。まあせいぜい頑張るんだな」
「はい、勿論ですよ」
装備を手に入れた緋夜は内心ワクワクしながら、穏やかな午後の大通りを歩いていくのだった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
人々が寝静まる時間、いつもの酒場を後にしたガイは宿に戻る途中、本来ならば見かけない人物が歩いているのが見えた。今日の昼間に装備を揃え、強烈な真紅のケープレットを身に着けた緋夜である。
「あいつ、またこんな時間に外出か?」
すぐに追いかけて面倒事になる前に宿に連れ帰ろうとしたが、ふと出会ってからずっと夜中に気配が動いていたことを思い出す。すぐに戻ってくるだろうと思い普通に流したが、しばらく待っても帰って来る気配はなかった。契約関係である以上何かあってはたまらないと思い探しに行こうとしたが、入れ違いになっても面倒なので結局宿で待つことになり、緋夜が帰ってきたのはそれから日が登る二時間ほど前だった。それが毎日続いている。そのことについて訊ねようと思ったが、今の今まで訊けずにいる。
「……」
毎日人が寝ている時間にこっそり抜け出して何をしているのか気になっていたガイは気配を消して緋夜の尾行をすることに。
緋夜は王都を抜け、そのまま更に滅多に人の通らない場所までやってきた。
「なんでこんな場所に……」
気配を消したガイが木陰に隠れ、緋夜の様子を伺っているとしばらくしてーー
「……は?」
緋夜はまだ微睡の中にいる時、窓を叩く音が響いた。
「……ん……朝?……」
何度も叩く音に緋夜が寝ぼけ眼を窓に向けるとーー
「……へ?」
そこには翼を生やしたシュライヤが笑顔で手を振っていた。
「はぁ~いヒヨちゃん! ようやくお目覚めかしら~?」
「……」
「ちょっと! また寝るんじゃないわよ!」
窓の外からギャンギャンと騒ぐシュライヤに勘弁してくれ、と思いながらも再びベッドから起き上がる。
「何ですか……」
「眠り姫じゃあるまいし……もっとシャキッとしなさいよ」
「……」
「……しょうがないわね~もう! 朝食が済んだらアタシのお店に来てちょうだい」
その言葉に緋夜がシュライヤに視線を向けると、その艶やかな唇が弧を描く。
「できたわよ。ヒヨちゃんの装備」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
シュライヤの知らせを受けた緋夜はすぐさまガイに報告し朝食後、シュライヤの店へと向かった。
「……ったく、あの野郎」
「ガイさん、シュライヤさんってもしかして」
「ああ、アイツは鳥人族だ」
「……鳥人……族」
「この辺りだとレヴリー山脈に住んでいる。あれみてえによっぽどの物好きじゃねえと降りてこねえよ」
「どうしてです?」
「さあな。だが地上よりは空のほうが空気も澄んでいるし障害がほとんどないから動きやすいんだろ」
「なるほど」
地球から来た緋夜からすれば初めて見る空想上の存在はそれこそ普通に町中を歩いている。獣人やエルフ、ドワーフ、小人。あげればキリがないが、共通しているのはこの世界に存在してる生物だということだ。
(なんかちょっと寂しくなるな)
そんなことを考えている間にシュライヤの工房に到着した二人は、店内から聞こえて来る謎の轟音を聞きながら扉に手を添えたまま立ち止まっていた。
(朝からなにやってるんだろうあの人)
(相変わらず朝から晩までうるせえ奴だな)
とそれぞれ思いながら、ガイがドアを開けて店内に入ると奥に続く扉から素材らしき残骸が溢れ出ていた。
「あら、来たわね。こっちよ」
足元に転がる残骸など眼中にないかのようにシュライヤが緋夜達を手招く。しかしものが散乱している床を歩くのは容易ではなく、時々蹴躓きながらシュライヤの元へ辿り着いた。
「ごめんなさいね~散らかってて」
「いえ。それにしてもこれは一体……」
「ああ、依頼が何件も来ている時は片付ける余裕なくっていっつもこうなっちゃうの。ほら、アタシって凄腕だから」
「ご自分でおっしゃいますか」
「だぁって事実ですもの」
つい最近、似たようなセリフを聞いた記憶のある緋夜はガイに視線を向ける。
「なんだ」
「いえ、つい先日似たような言葉を聞いたな、と思いまして」
「……うるせえよ」
「これは失礼」
「こ~らそこ、いちゃついてないで、さっさと確認してちょうだい」
「あ、はい」
シュライヤに呼ばれてカウンターに行くとそこにはーー
「わあ……」
「まあ腕は確かだからな」
真紅のケープレット、フレンチスリープの膝上プリンセスラインワンピースとセットになっている漆黒のワスピーと黒と銀のベルト、膝下までのハーネスブーツが置かれていた。
「どう? 結構可愛くできたと思うんだけど」
「はい、すごく可愛いです」
「でしょ~? ヒヨちゃんの雰囲気に合わせて作ってみたのよ~。ガイちゃんから貰った素材で防御力も段違い。これならたとえゴーレムの集団に襲われても無傷でいられるわ。特に拘ったのはーー」
「長え」
「とりあえず着てみてもいいですか?」
「……ちょ、二人揃って話を遮らないでよ」
「長くなりそうだったので」
「テメエの変態的な拘りなんざ興味ねえよ」
二人に容赦なく切り捨てられどんよりしながら緋夜を別室に案内したシュライヤは、ガイの傍に戻ると表情を変えた。
「……本当にどういう風の吹き回しなの?」
「……なんのことだ」
「とぼけないでちょうだい。あのコのことよ。ガイちゃんが誰かに……女の子に肩入れするなんて」
「……ただの成り行きだ」
「ふうん? あまり深く聞くつもりはないけど、せいぜい後悔しないようにね」
「俺が後悔だと? はっ! くだらねえ」
「そう? ならいいんだけど。けどあんまりあのコには深入りしない方がいいわよ」
「あ?」
シュライヤは低い声でガイに囁く。この声になる時は真面目な話題の時だ。本人は気づいているかは知らないが。そしてその話題が外れたことはこれまで一度もない。
「……何か嫌な予感がするんだよ。絶対になんかあるぞ。それこそ、関わったが最後災厄の渦中に飛び込むことになるほどの、何かがな」
「災厄の渦中……ね」
「ああ、冒険者の付き添いが終わったら、離れた方がいい。面倒なことになる前に」
シュライヤがここまで真剣な忠告をしたのは今回が初めてだ。いつになく険しい表情でガイを見つめるシュライヤをガイは鼻で笑う。
「テメエの忠告なんざ気色悪いな。まあでも頭の片隅くらいには入れといてやる」
「あ、そう。ならいいんだけど」
シュライヤはいつもの飄々とした態度に戻ると、ガイの背中を思いきり叩く。
「痛っ!」
「まあせいぜい、頑張んなさい! ガイちゃん!」
「うっせえよこのカマ野郎!」
「お待たせしました」
男二人が仲良く(?)しているところに着替えを終え、戻ってきた緋夜を見てガイとシュライヤが動きを止めた。
「あら……」
「……」
「……何か変でしたか?」
「変じゃないわよ~! とっても素敵よ~ヒヨちゃん」
「ありがとうございます。普段こういった服装をすることがないのですごく新鮮です」
「気に入ってもらえてよかったわ~。ほらガイも! なんか言ってあげなさいよ」
「…………悪くねえんじゃねえの?」
「ありがとうございます、ガイさん」
「ふん」
「あら~ガイちゃん照れてるわね。すごく可愛いわ~」
「うっせえ」
賑やかな会話の後、ガイは装備の代金を支払い、緋夜を連れてさっさと店を出た。シュライヤが残念そうにしていたが、ガイに睨まれて慌てて店の奥へと引っ込んだ。
「あんなに睨む必要ありました?」
「いいんだ。じゃねえといつまで経っても帰れやしねえ」
「まあ、それは想像できますが……」
「ならいいだろ」
「……はは」
ガイの言葉に苦笑しながらも、緋夜は着心地抜群の装備を堪能していた。
(すごく軽くて動きやすい。伸縮性もあるし、普段着ている服と全然違うのにむしろこっちの方がいい)
見た目のかわいさも相まって緋夜はすっかり気に入っていた。
「ガイさん」
「あ?」
「ありがとうございます」
「……言ったろ。これは投資みてえなもんだって。だから礼を言われる筋合いはねえよ」
「それでもありがとうございます」
「……ふん。まあせいぜい頑張るんだな」
「はい、勿論ですよ」
装備を手に入れた緋夜は内心ワクワクしながら、穏やかな午後の大通りを歩いていくのだった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
人々が寝静まる時間、いつもの酒場を後にしたガイは宿に戻る途中、本来ならば見かけない人物が歩いているのが見えた。今日の昼間に装備を揃え、強烈な真紅のケープレットを身に着けた緋夜である。
「あいつ、またこんな時間に外出か?」
すぐに追いかけて面倒事になる前に宿に連れ帰ろうとしたが、ふと出会ってからずっと夜中に気配が動いていたことを思い出す。すぐに戻ってくるだろうと思い普通に流したが、しばらく待っても帰って来る気配はなかった。契約関係である以上何かあってはたまらないと思い探しに行こうとしたが、入れ違いになっても面倒なので結局宿で待つことになり、緋夜が帰ってきたのはそれから日が登る二時間ほど前だった。それが毎日続いている。そのことについて訊ねようと思ったが、今の今まで訊けずにいる。
「……」
毎日人が寝ている時間にこっそり抜け出して何をしているのか気になっていたガイは気配を消して緋夜の尾行をすることに。
緋夜は王都を抜け、そのまま更に滅多に人の通らない場所までやってきた。
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