77 / 107
五頁 孤立したホオズキ
73話 真の嘘つきは
しおりを挟む
心の底からの嘲弄を浮かべた。
「何笑っているわけ? そんな状態でまだ何かあるっていうの?」
それではみなさんお待ちかね! ネタばらしといこうか。
「君の計画を知ったとき、私とオルニス公子で阻止するための算段を立てた」
「はあ?」
「君の標的は私と町だ。暗殺するなら町が混乱しているときが一番動きやすいだろうことは明白。それならば私自身を囮にしている間に魔法術式を書き換えればいい。場所は手伝いをしたときにおおよその検討はつけられた。術式の書き換えはそれほど難しいものでもないからな」
「嘘だ! そんなにうまくいくものか! ほんとうに術式を書き換えたのならなんで燃えているんだよ!」
「それは魔術師に頼んだのだ。彼にこのことを話したら真っ青になりながら協力してくれてな。だが魔術師はその際、施した魔術が書き換えられた痕跡があると言っていた」
「術式を元に戻し、音と光の魔術を追加させた。……君が上手くいったと勝手に思い違いをしてくれるように。もちろんそれなりに時間が必要になる。だからあえて君の手に堕ち、意識を向けさせたということだ」
あり得ないものを見るような目で俺とアウルを交互に目を動かした。
「はあぁぁぁっ!!??? 自ら囮になったわけ? 馬鹿じゃねえの!?」
「俺も囮になる作戦は反対したんだが、アクナイト公子は意見を変えなかったものでな」
そのほうが手間が省けるんだからいいじゃん。刃物向けられるのは怖いけど町が燃えるのはごめんだし、なによりもホオズキをそんなことに使われるのは我慢ならない。どうせ狙われているんだ。ホオズキを守るためなら多少の不利益くらいなんてことないんだよ。ついでに町にも被害を出すのも後が面倒だしね。町のためとか国のためとか、そんなもの現代日本の一般市民の意識が強く残っている人間に期待されても困る。
俺とアウルの解説という名の刃にヌカヅキの顔色が面白いくらい変わった。
「じゃあ、町は…………」
「傷一つついていないし怪我人一人いない」
途端ヌカヅキは傷を負うのも気に留めずアウルに体当たりを食らわせ一瞬の隙をついて俺たちから距離を取った。その顔は憤怒と憎悪に染まっている。
「ほんっとに………………ムカつくなぁアンタらは! この程度で勝った気でいるんじゃねえよ!」
感情に呼応するようにヌカヅキの体から膨大な魔力が膨れ上がるのを感じた。あ~まずいな、暴走しかけているのかもしれない。魔力は自然エネルギーそのものだ。たとえ生物に宿っていようとそれは変わらない。そして人間の体はそのエネルギーに耐えられるほどの強度はない。だから制御する方法を学ぶ必要があるのだ。人間が生存本能によって無意識に力を制限しているのと同じように魔力も無意識にリミッターをかけている。魔力量と属性には個人差があるけど魔力量が多い人ほど制御が難しい。そして魔力の暴走はそのリミッターが外れることを意味する。その先に迎える末路は——死。
だけどこの段階ならほんの少し意識を逸らしてやれば制圧は可能だ。この状況で意識を逸らす一番手っ取り早い方法は、一発殴ること。脳筋と思われるかもしれないが呑気な事言っていられない……っていうか早いところ手当てしないと俺の傷口が大変なことになるし、さっさと終わらせましょうか。
「俺が相手をしよう。君はそこにいてくれ。そんな状態で動いてはいけない」
あ、はーい。今の自分では役立たずであることは百も承知です。それに今この中で一番体力残っているのはおそらくアウルだろう。
ヌカヅキから奪った武器をちゃっかり俺に預けてさっさとヌカヅキを制圧しに行った。多分相手が丸腰だからっていう理由だと思うけど向こうは暴走しかかっているんだから武器持っていても問題ないと思うけど……律儀なことで。
暴走する魔力を自分の魔法で相殺しながらあっさりとヌカヅキの間合いに入り込み奴の腹に躊躇いなく拳を叩きこんだ。ヌカヅキはまたもや木にぶつかり、暴走はあっさりと収まる。だけどやっぱアウルって強いよね。ちょっとばかり嫉妬してしまいそうだ。
「ぐはっ……!? ゲホゴホッ……! はあっ……はあっ……アンタ、ほんとに手加減なさすぎでしょ」
「生憎とあのまま暴走させて死なせるわけにはいかないからな」
「君にはまだ吐いてもらわないといけないこともある。それに暴走しかけた以上しばらく動けないのだから大人しくしていろ」
「ちっ……わかったよ。めっちゃ体重いし指一本まともに動かせないわ。これじゃあ反撃したくてもできないからなぁ。大人しくしておくよ」
本当に動けないのか地面に仰向けになった。ヌカヅキが動かないとわかったらなんか俺も気が抜けてきた。でもまた倒れるわけにはいかない。肝心な情報も引き出せていないし、今までの会話で気になる点もある。それにアウルの前でぶっ倒れるのはごめんだ。……って、あのアウルさん? 真顔でこっちに来てどうしたんですか?
「前回といい今回といい君は本当に無茶をするな。こんなに切り傷だらけになって挙句の果てに太ももに木の枝を突き立てるなんていったい何を考えているんだか」
「私が好きで面倒ごとを引き起こしているとでも思っているんですか? 傷を負うのも面倒ごとに関わるのも心の底から嫌いなのですよ」
「……その割には随分と積極的に動いていたように思うんだが」
「気のせいでしょう」
すみません無茶した自覚あります。だって普段なら絶対にこんなことはやりません。うぅ……めっちゃズキズキする。
その時アウルが俺のそばにしゃがみ込んで俺の膝裏に手を入れてそっと持ち上げる。いろいろな意味で一番酷いであろう枝で作った刺し傷をじっと見つめた後、それはもう深々とため息を吐きカバンを俺に手渡してきた。どうせ荷物は取られるだろうからと思ってアウルに持っていてもらったのだ。この中には前回のことがよほど堪えたらしいサリクスが薬や包帯その他諸々を詰め込んだのである。できれば使いたくなかったなぁ……。
「まったく。……その中に傷薬は入っているか?」
「ええ、嫌味なほどに」
ゴソゴソとカバンを漁り、傷薬を取り出す。治療用の魔法薬だ。これは傷を塞ぐというよりも本人の魔力を利用して治癒の力に変換するというものであるため、魔力量の少ない人間には効果が薄いという欠点がある。まあ怪我の程度にもよるんだけどね。
俺は瓶の蓋を開けて一番深傷を負っている太ももにかける。これまた超~痛いんだけど。残りの傷は……うん、ちまちまかけるの面倒だし頭からぶっかけちゃえ。
「ア、アクナイト公子……」
「うわぁ~……」
問答無用で次々と頭から流していく様を見えていたアウルとヌカヅキが何やら引いている気がしたが、俺の知ったことではない。傷の手当ての方が大事だ。頭から伝っていった液体は傷口に染み込んでいきかなりの痛みと魔力を消費をもって傷口を癒していく。なんで怪我の治療でこんな痛みを経験しないといけないのか心の底から物申したいところだけど。……これでよし。
「あの魔法薬を頭からぶっかけるとか……アクナイトのお坊ちゃまって実は異常者?」
「……」
ほんとに口が減らねえ野郎だな! そんでもってなんで静かに目を逸らすのかなアウルさんよ。はあ……まあいいや。
それにしてもサリクスは本当に優秀だな。体内浄化用の魔法薬も入っているとは。これは言ってしまえば万能解毒薬みたいなものだ。ついでにこれも飲んでおこう。
「そんなものまで用意してあるとか……なるほどそれがあるからあんなイカれ行動をとったわけだ」
「ふん、騒々しい平民だな」
人のことをあーだこーだ言っている場合かよ。ぶっちゃけこの中で一番危ないのはこいつだというのに。暗殺なんて引き受けるんだから失敗した際の末路なんて承知しているんだろうけど、生まれ変わっても利用されるなんてさすがに哀れだ。だけど前世については知る必要はないとも思う。『少年と嘘』の真実はヌカヅキが言った通りとして、その真実の中でもさらにとびきりの悪党、諸悪の根源である真の嘘つきは——
だが、それとこれと話は別だ。
「そんなに喋りたいのならせめて有益な情報でも話してもらおう」
「いいよ。ぶっちゃけ俺守秘義務とか知ったことじゃねえし、つーか計画をぶっ壊された時点でなにもかもどう~でもいいし」
やけに素直だな。だけどその前にやらなきゃならないことがある。
「その前に君が依頼主から借り受けた無属性魔法が付与された物があるはずだ。それを出せ」
「なんで?」
「いいから早くしろ」
「……わかったよ。でも今体動かないからアンタが取り出してよ。ネックレスになっているからさ」
「……いいだろう。オルニス公子は下がっていてください。先ほどは前に出させてしまいましたが、貴方は他国の人間です。我が国の民に手出しさせるわけにはいきません」
「だが君も危険だろう。俺は問題ないが?」
「そういうわけにはいきません。お下がりください」
「……はあ、君は一度言い出したら聞かないからな」
呆れ笑いを浮かべながらアウルは俺から数歩下がった。たぶん俺の顔を立てる意味も踏まえて引いてくれたんだろう。よかった、これ以上アウルの前で無様は晒したくないし。
静かにヌカヅキへ歩み寄り首から見える紐に手をかけたその時、
——駄目だよ——
「……は?」
どこからともなく声が聞こえた。ほぼ条件反射だったと思う。即座に紐から手を離しヌカヅキから距離を取った。……結果としてそれはこの上ないほどの英断だったと知る。
「ぐっあ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!!!!」
離れた直後ヌカヅキの体が激しい炎に包まれたことを考えたら。
「何笑っているわけ? そんな状態でまだ何かあるっていうの?」
それではみなさんお待ちかね! ネタばらしといこうか。
「君の計画を知ったとき、私とオルニス公子で阻止するための算段を立てた」
「はあ?」
「君の標的は私と町だ。暗殺するなら町が混乱しているときが一番動きやすいだろうことは明白。それならば私自身を囮にしている間に魔法術式を書き換えればいい。場所は手伝いをしたときにおおよその検討はつけられた。術式の書き換えはそれほど難しいものでもないからな」
「嘘だ! そんなにうまくいくものか! ほんとうに術式を書き換えたのならなんで燃えているんだよ!」
「それは魔術師に頼んだのだ。彼にこのことを話したら真っ青になりながら協力してくれてな。だが魔術師はその際、施した魔術が書き換えられた痕跡があると言っていた」
「術式を元に戻し、音と光の魔術を追加させた。……君が上手くいったと勝手に思い違いをしてくれるように。もちろんそれなりに時間が必要になる。だからあえて君の手に堕ち、意識を向けさせたということだ」
あり得ないものを見るような目で俺とアウルを交互に目を動かした。
「はあぁぁぁっ!!??? 自ら囮になったわけ? 馬鹿じゃねえの!?」
「俺も囮になる作戦は反対したんだが、アクナイト公子は意見を変えなかったものでな」
そのほうが手間が省けるんだからいいじゃん。刃物向けられるのは怖いけど町が燃えるのはごめんだし、なによりもホオズキをそんなことに使われるのは我慢ならない。どうせ狙われているんだ。ホオズキを守るためなら多少の不利益くらいなんてことないんだよ。ついでに町にも被害を出すのも後が面倒だしね。町のためとか国のためとか、そんなもの現代日本の一般市民の意識が強く残っている人間に期待されても困る。
俺とアウルの解説という名の刃にヌカヅキの顔色が面白いくらい変わった。
「じゃあ、町は…………」
「傷一つついていないし怪我人一人いない」
途端ヌカヅキは傷を負うのも気に留めずアウルに体当たりを食らわせ一瞬の隙をついて俺たちから距離を取った。その顔は憤怒と憎悪に染まっている。
「ほんっとに………………ムカつくなぁアンタらは! この程度で勝った気でいるんじゃねえよ!」
感情に呼応するようにヌカヅキの体から膨大な魔力が膨れ上がるのを感じた。あ~まずいな、暴走しかけているのかもしれない。魔力は自然エネルギーそのものだ。たとえ生物に宿っていようとそれは変わらない。そして人間の体はそのエネルギーに耐えられるほどの強度はない。だから制御する方法を学ぶ必要があるのだ。人間が生存本能によって無意識に力を制限しているのと同じように魔力も無意識にリミッターをかけている。魔力量と属性には個人差があるけど魔力量が多い人ほど制御が難しい。そして魔力の暴走はそのリミッターが外れることを意味する。その先に迎える末路は——死。
だけどこの段階ならほんの少し意識を逸らしてやれば制圧は可能だ。この状況で意識を逸らす一番手っ取り早い方法は、一発殴ること。脳筋と思われるかもしれないが呑気な事言っていられない……っていうか早いところ手当てしないと俺の傷口が大変なことになるし、さっさと終わらせましょうか。
「俺が相手をしよう。君はそこにいてくれ。そんな状態で動いてはいけない」
あ、はーい。今の自分では役立たずであることは百も承知です。それに今この中で一番体力残っているのはおそらくアウルだろう。
ヌカヅキから奪った武器をちゃっかり俺に預けてさっさとヌカヅキを制圧しに行った。多分相手が丸腰だからっていう理由だと思うけど向こうは暴走しかかっているんだから武器持っていても問題ないと思うけど……律儀なことで。
暴走する魔力を自分の魔法で相殺しながらあっさりとヌカヅキの間合いに入り込み奴の腹に躊躇いなく拳を叩きこんだ。ヌカヅキはまたもや木にぶつかり、暴走はあっさりと収まる。だけどやっぱアウルって強いよね。ちょっとばかり嫉妬してしまいそうだ。
「ぐはっ……!? ゲホゴホッ……! はあっ……はあっ……アンタ、ほんとに手加減なさすぎでしょ」
「生憎とあのまま暴走させて死なせるわけにはいかないからな」
「君にはまだ吐いてもらわないといけないこともある。それに暴走しかけた以上しばらく動けないのだから大人しくしていろ」
「ちっ……わかったよ。めっちゃ体重いし指一本まともに動かせないわ。これじゃあ反撃したくてもできないからなぁ。大人しくしておくよ」
本当に動けないのか地面に仰向けになった。ヌカヅキが動かないとわかったらなんか俺も気が抜けてきた。でもまた倒れるわけにはいかない。肝心な情報も引き出せていないし、今までの会話で気になる点もある。それにアウルの前でぶっ倒れるのはごめんだ。……って、あのアウルさん? 真顔でこっちに来てどうしたんですか?
「前回といい今回といい君は本当に無茶をするな。こんなに切り傷だらけになって挙句の果てに太ももに木の枝を突き立てるなんていったい何を考えているんだか」
「私が好きで面倒ごとを引き起こしているとでも思っているんですか? 傷を負うのも面倒ごとに関わるのも心の底から嫌いなのですよ」
「……その割には随分と積極的に動いていたように思うんだが」
「気のせいでしょう」
すみません無茶した自覚あります。だって普段なら絶対にこんなことはやりません。うぅ……めっちゃズキズキする。
その時アウルが俺のそばにしゃがみ込んで俺の膝裏に手を入れてそっと持ち上げる。いろいろな意味で一番酷いであろう枝で作った刺し傷をじっと見つめた後、それはもう深々とため息を吐きカバンを俺に手渡してきた。どうせ荷物は取られるだろうからと思ってアウルに持っていてもらったのだ。この中には前回のことがよほど堪えたらしいサリクスが薬や包帯その他諸々を詰め込んだのである。できれば使いたくなかったなぁ……。
「まったく。……その中に傷薬は入っているか?」
「ええ、嫌味なほどに」
ゴソゴソとカバンを漁り、傷薬を取り出す。治療用の魔法薬だ。これは傷を塞ぐというよりも本人の魔力を利用して治癒の力に変換するというものであるため、魔力量の少ない人間には効果が薄いという欠点がある。まあ怪我の程度にもよるんだけどね。
俺は瓶の蓋を開けて一番深傷を負っている太ももにかける。これまた超~痛いんだけど。残りの傷は……うん、ちまちまかけるの面倒だし頭からぶっかけちゃえ。
「ア、アクナイト公子……」
「うわぁ~……」
問答無用で次々と頭から流していく様を見えていたアウルとヌカヅキが何やら引いている気がしたが、俺の知ったことではない。傷の手当ての方が大事だ。頭から伝っていった液体は傷口に染み込んでいきかなりの痛みと魔力を消費をもって傷口を癒していく。なんで怪我の治療でこんな痛みを経験しないといけないのか心の底から物申したいところだけど。……これでよし。
「あの魔法薬を頭からぶっかけるとか……アクナイトのお坊ちゃまって実は異常者?」
「……」
ほんとに口が減らねえ野郎だな! そんでもってなんで静かに目を逸らすのかなアウルさんよ。はあ……まあいいや。
それにしてもサリクスは本当に優秀だな。体内浄化用の魔法薬も入っているとは。これは言ってしまえば万能解毒薬みたいなものだ。ついでにこれも飲んでおこう。
「そんなものまで用意してあるとか……なるほどそれがあるからあんなイカれ行動をとったわけだ」
「ふん、騒々しい平民だな」
人のことをあーだこーだ言っている場合かよ。ぶっちゃけこの中で一番危ないのはこいつだというのに。暗殺なんて引き受けるんだから失敗した際の末路なんて承知しているんだろうけど、生まれ変わっても利用されるなんてさすがに哀れだ。だけど前世については知る必要はないとも思う。『少年と嘘』の真実はヌカヅキが言った通りとして、その真実の中でもさらにとびきりの悪党、諸悪の根源である真の嘘つきは——
だが、それとこれと話は別だ。
「そんなに喋りたいのならせめて有益な情報でも話してもらおう」
「いいよ。ぶっちゃけ俺守秘義務とか知ったことじゃねえし、つーか計画をぶっ壊された時点でなにもかもどう~でもいいし」
やけに素直だな。だけどその前にやらなきゃならないことがある。
「その前に君が依頼主から借り受けた無属性魔法が付与された物があるはずだ。それを出せ」
「なんで?」
「いいから早くしろ」
「……わかったよ。でも今体動かないからアンタが取り出してよ。ネックレスになっているからさ」
「……いいだろう。オルニス公子は下がっていてください。先ほどは前に出させてしまいましたが、貴方は他国の人間です。我が国の民に手出しさせるわけにはいきません」
「だが君も危険だろう。俺は問題ないが?」
「そういうわけにはいきません。お下がりください」
「……はあ、君は一度言い出したら聞かないからな」
呆れ笑いを浮かべながらアウルは俺から数歩下がった。たぶん俺の顔を立てる意味も踏まえて引いてくれたんだろう。よかった、これ以上アウルの前で無様は晒したくないし。
静かにヌカヅキへ歩み寄り首から見える紐に手をかけたその時、
——駄目だよ——
「……は?」
どこからともなく声が聞こえた。ほぼ条件反射だったと思う。即座に紐から手を離しヌカヅキから距離を取った。……結果としてそれはこの上ないほどの英断だったと知る。
「ぐっあ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!!!!」
離れた直後ヌカヅキの体が激しい炎に包まれたことを考えたら。
1,117
お気に入りに追加
2,033
あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる