魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~

きょろ

文字の大きさ
上 下
100 / 112
第六章 ~ロックロスの序曲~

99 それぞれの道

しおりを挟む
 ドーランの案で、個々のレベルアップを図るべくそれぞれの道を進むことにしたレイ、ローラ、ランベル、リエンナの四人。

 ランベルは正式に騎士団に入団するべく、遂に騎士団入団試験を受ける事を決意。騎士団入団後の一年間の任務と共に、実力者の集まる騎士団で日々己と剣を磨くつもりだ。

 ローラはウィッチとしての能力を今より更に引き出すべく、同じウィッチであり元Sランクハンターであったドロン婆さんの元へ行く事を決めた。ドーランが既にドロン婆さんは相当な実力者であると言っていた事と、ウィッチの魔力の高さをより引き出すには、やはりドロン婆さんが一番最適だと思ったからである。

 リエンナもまたドーランの勧めによって、あの妖精王フェアリー・イヴのいるツインヴァルトへと向かう事になったのだ。リエンナが希少な結界魔法の使い手である事が分かり、偶然にもその道のスペシャリストであったイヴの元で経験を積むのが最良である。魔力の高いエルフをはじめ、モンスターの多いツインヴァルトならば修行にも最適だ。


 そしてかくなるレイはというと――。


♢♦♢


~とある空~

「――俺はどこ行くんだ?」

ヨハネ達との戦いから既に半日が経った。
話し合いの末、ローラとランベルと別れたレイとリエンナは、イヴに事情を話すべく一緒にツインヴァルトにへと来ていた。

そして、かくかくしかじか説明をすると、レイ達がポセイドンと戦っていた時とほぼ同時刻に、イヴ達の所にもヨハネの刺客が現れたと聞いた。

レイは驚き、迷惑を掛けてしまったイヴやエルフ達に謝っていた。

話を聞いたイヴは快く快諾してくれ、「私の特訓は厳しいよ」と冗談交じりに言ったイヴであったが、目が本気であった。それをみたレイとリエンナは変な汗を掻いたという――。

そんなこんなで、リエンナとも別れを告げたレイとドーランは“ある場所”へと向かっていた。

<レイの事は特に決めておらぬぞ>

ドーランは何の迷いもなしにそう言い放った。冗談ではなく、本当に何も案がないらしい。

「おい。じゃあ俺はどうすればいいんだ。一人でクエストでも受けまくれってか?」

<人間、本気でやればどうにでもなる。死ぬ以外はな>

「お前ドラゴンだろ」

まるで人間かの如く言ったドーランに対しレイがツッコんだ。

<レイが一番レベルアップしてもらわねば困るんだが、何も思いつかぬな。どうする?>

「言い出したのドーランだろ。無責任だなぁ。だったら俺もイヴのとこで修行でもした方がマシだろ」

<それは解せぬ。あんなのと長期間過ごすのはストレスだ>

「何だその理由は……」

<ん~……一つだけあると言えばあるがな>

ドーランのその言葉にレイの表情が一気に明るくなった。

「そうなのかよ! だったら勿体ぶらずに早く言えよ」

そう言うレイであったが、ドーランはどこか乗り気ではない様子。

<“そこ”に行けば、“運が良ければ”かなり強くなれる>

「そんなとこあるのか? じゃあ早くそこに行こうぜ。その運が良ければってのが気になるけどさ。ちなみに運が悪かった場合は……?」

誰もが気になるであろうその意味深な答え。

レイが何気なく聞いたその答えは、予想していた範囲を一瞬で超えた。

<――“死ぬ”>

「……」

ドーランの答えに、レイは暫しの沈黙が続いた。そして一呼吸置いた後、再び口を開く。

「どういう事?」

<そのままの意味だ。運が良ければ確実に強くなれるが、運が悪ければ着いた時点で死ぬ>

「だから全く意味が分からねぇって! 何だよそれ! 場所は?」

<――“黒龍の巣穴ブラックホール”。我々ドラゴンの住処だ>

「――⁉⁉」

聞いたレイはとても驚いた。
まさかドラゴンの住処なんてものが本当にこの世界にあるのかと。

「ブラックホールって……そこにはドーランみたいに黒龍が一杯いるって事か?」

<そう呼ばれ始めた何万年も昔は確かにそうであったらしいが、我の時代では既に数多の種類のドラゴンが生息していた。黒龍以外の龍も、小型のものから大型のものまでな>

「すっげぇ……聞いただけでワクワクしてきた」

<レイが思っている様な場所ではないぞ>

「そう言えばドーランってドラゴンの中の“王”何だろ? そのブラックホールって所でトップって事なのか⁉」

<勘違いも甚だしい。ブラックホールはあくまでドラゴンが多く生息していると言うだけだ。そんな狭い範囲ではなく、我はこの世界の全ドラゴンの頂点に君臨しておるのだ>

物凄いドヤ顔でドーランはそう言い放った。

「はいはい。ドーランがトップだって事はもう分かったから、早く行こうぜそこに。確かにドラゴンだらけなら毎日かなりの特訓になりそうだ」

<やっぱり止めよう>

レイの気合いに水を差すドーラン。

「は? 何でだよ!」

<王である我がこんな姿で言ったら笑い者だ>

「くだらねぇ~……」

これがトップであるドーランのプライド。全ドラゴンの中の王に君臨するドーランとしては、こんな奇妙な姿でドラゴン達の前に行くなど言語道断であった。

最強と謳われた黒龍がまさか魔力0の、それも人間の少年と一体化しているなど前代未聞――。

「ほら行くぞドーラン! ブラックホールの場所教えろよ」

<嫌だ>

「ガキかお前」

<恥を晒すなら死んだ方がマシだ>

「俺と一緒なのが恥だって言うのかコラ!」

<兎に角嫌だぞ我は>

雲一つない晴天の青空の中、レイとドーランの言い争いはその後一時間近く続いた――。


そして……遂にそのどうでもいい話にピリオドが打たれる。


「――ハァ……ハァ……ハァ……。全く、何て頑固な野郎だ」

<ハァ……ハァ……それはお互い様であろう……しつこい奴だ>

「もういいよ。何にせよ……これで“決まり”だ」

<好きにしろ……死んでも知らぬからな>

「どの道強くならなきゃいけないんだ。死んだらその程度の実力だったってだけだろ」

<相変わらず自信だけは凄まじいな>

そんな事を言いながらも、レイとドーランは遂に気持ちを固めた。

「よし。それじゃ行こうか。ブラックホールへ!」

<行くからには絶対に強くなれ。負けは許さん――>



こうしてレイとドーランは勢いよく飛び立った。


レイ、ローラ、ランベル、リエンナ……それぞれがそれぞれのレベルアップの為、進むべき道へと歩み始める。


これからレイ達が立ち向かう強大な敵の数々。


陰謀、真実、権力、富……様々なものが入り混じるこの世界を相手に、レイ達は真っ向から勝負を挑む事を決めるのであった――。















【【 第一部 完 】】
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...