魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~

きょろ

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第五章 ~秘宝の眠る島(トレジャーアイランド)編~

76 ズロース

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「何?私達まだお宝を探さないといけないんだけど」

指名手配犯だと気付いたローラだが、出来るだけ平静を保っていた。

「例え小娘二人でも、顔を見られたとなると話は別だ。このまま逃がす訳にはいかねぇ」

「「――⁉」」

「“ヒョロイ”、“コーデブ”!あの二人捕まえろ!」

「了解ボス!」

ボスに命令され、ひょろっとした男のヒョロイと、背の低い小太りのコーデブがローラ達の元へ走り出した。

「え⁉ 何でそうなるのよ!」

ローラとリエンナは一瞬戸惑ったが、向かってくる男達を見て気付けば走り出していた。
しかし洞窟内は足場が良くない。思い切り走りたいところだがそう上手くはいかなかった。でも条件は相手も同じだと、ローラは顔だけ振り返り追ってくる男達を確認すると、信じがたい事に凄い速さで距離を詰めていた。

「何でそんな身のこなし軽いのよ⁉」

思わず大声で突っ込んでしまうローラ。
ヒョロイとコーデブは驚くローラの声が聞こえたのか、余裕の表情でその質問に答えてくれた。

「俺達は宝専門の“トレジャーハンター”だからな!足場の悪い場所なんざ日常茶飯事」

「そうとも!こんなの屁でもねぇ」

「トレジャーハンターって、やっぱりあんた達もハンターじゃない!……リエンナ乗って!」

「「――⁉」」

ヒョロイとコーデブがすぐそこまで迫ってきたタイミングで、ローラは瞬時にホウキを出し飛び乗った。どれだけ足場が悪くとも飛んでしまえば関係ない。リエンナもホウキに乗り一気に飛び去った。

イノシ―とタヌキチは流石モンスターと言うべきか、足場の悪さなど全く関係ないかの様に走り去り、ローラ達がホウキに乗った時には既に遥か先まで逃げていた。

「あの小娘ウィッチだったか……。“ズロース”!」

ボスが呼ぶと、獣人族の男がゆっくりと動き出した。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「――逃げ切ったかしら?」

ホウキに乗って瞬く間に逃げ去ったローラ達は、男達とだいぶ距離を取る事が出来た。後を追ってくる気配も無い。
ローラとリエンナは一旦ホウキから降りた。

「危なかったですね……」

「嫌な予感が的中したわ。アイツ、この前ニュースでやってた逃亡犯よ」

「え!刑務所から逃げ出したっていう指名手配の?」

「そう。兎に角ここから離れて、早くレイ達と合りゅ……キャッ⁉⁉」

静かな洞窟内に、ローラとリエンナの叫び声が響いた。

突如何かに捕まれたローラとリエンナ。身動きが取れず、妙な浮遊感が体を襲っている。

「ちょッ……何なのよ⁉」

「誰ですかあなたは……」

ローラとリエンナの視線の先には。体の大きな獣人族の男が。名はズロース。ローラとリエンナはズロースのそのデカい両手に捕まり、鷲掴みにされていた。
ローラ達がホウキに乗って逃げた十数秒後、ズロースは獣人族の最大の特徴でもある驚異的な身体能力で、一気にローラ達に追いついていたのだ。

必死に振りほどこうとしているローラ達であったがビクともしない様子。

「離しなさいよ!」

「大人しくしていれば痛い目には合わせん」

ズロースは一言だけ口を開くと、凄まじいスピードで来た道を戻って行く。すると僅か数秒で、再びボスの所へと戻ってきてしまった。

「おかえり」

「帰ってきたくて来た訳じゃないわよ!私達をどうする気?」

またもやボスと顔を合わせる羽目になったローラは、嫌味たっぷりにボスにそう言い返すのだった。

「強気な小娘だな。ホウキで逃げた時は驚いたが、コイツには敵わんさ」

ボスはズロースを見ながら言った。「次逃げようとしたら殺す」と、ボスに釘を刺されたローラとリエンナは、仕方なく男達に着いていく事に。
ボスの命令で、ズロースは掴んでいたローラ達を離し、男達はまた洞窟の奥へと進んで行った。

「何だコイツ。便利なブタ連れてるじゃねぇか!お前が先頭歩け……よっ!」

「痛ったいな!何するんだ!しかもブタじゃないぞ!猪だ!」

火の玉で明るく照らすイノシ―を、ボスは前へと蹴飛ばす。

「ちょっと!私のイノシ―に何してるのよ!モンスター虐待よアンタ!」

「うるせぇな」

……チャキン……!

「――⁉」

「騒いでも殺すからな」

ボスは鋭利なナイフの切っ先をローラの首に当てた。そしてそれが脅しではなく本気だという事を、ボスの表情が物語っていた。

「分かったら大人しく指示に従え。目的地はすぐそこだ。行くぞ。お前達が前を歩け」

ローラ達は仕方なくボスの言う通りにした。
ここで抵抗しても勝ち目がない。
ズロースの強さを感じているローラはそう判断したのだ。

「イノシー大丈夫?ごめんね。悪いけどもう少し付き合って」

「当たり前だ!蹴られたまま終われるか!」

ボスの指示で先頭を歩かされているローラ達。
蹴られたイノシーを気遣うローラだったが、イノシーはやる気満々であった。

主導権を完全に奪われたローラ達。
しかし、タヌキチが小声でこう言った。

「レイとランベルがもう近くまで来てるよ。もう少し頑張ろう」

このタヌキチの言葉に、希望を見出すローラとリエンナ。
何とかレイ達との合流を模索しながら、ボスの言う目的地へと歩みを進めるのだった。

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