上 下
63 / 112
第四章 ~幽霊屋敷(ゴーストハウス)編~

62 家族の写真

しおりを挟む
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

~ゴーストハウス・一階~


「――取り敢えず何か手掛かりになりそうなのを探すか。そういえばさ……“ルーク”、“ネル”!お前らランベルとリエンナ見なかったか?」

「レイのお友達?僕達は見てないよ」

「この屋敷でいなくなったって事は“皆と同じ”だよ」

レイが呼んだ名前は子供達の名。
男の子がルークで女の子がネルという名前らしい。

聞いたところによると、歳は二人共七歳。ルークとネルは双子との事。
家族はパパ、ママ、一番上のお兄ちゃんと、その下にお姉ちゃんが二人。ルークとネルを合わせて五人兄妹……全部で七人家族だと言う。

この屋敷にずっと住んでいたらしいが、気が付いたらルークとネルの二人だけになっており、他の家族はいなくなってしまって行方も分からない。
こうなる前の記憶も曖昧で、“その日”は確かに家族全員がこの屋敷にいたそうだ。

唯一分かる事としては、ルークとネルも自覚しているが、自分達の姿が普通の人達には視えない事。

これまでに何度もこの屋敷に足を踏み入れた人達がいたらしいが、ルークとネルが皆の前に行ったり、大声を出しても誰にも気づかれなかったらしい。
自分達の姿が見えて会話をしたのはレイ達が初めてだと。

それと、ルークとネルには記憶を失う前の最後の記憶が共通して一つのあるらしく、その記憶によると今の様な状態になる前に不気味な“黒い影”の様なものを見た気がすると言っていた。

話を聞けば聞く程摩訶不思議な現状に、レイとローラもどうしていいか悩んだ末、当初の目的通り取り敢えずこの屋敷を調べる事にしたのだった。

「僕達が案内してあげるよ」とルークとネルが屋敷の中を順番に案内してくれた。


「……ねぇレイ……ひょっとしてあの子達……」

「ああ。信じ難いけど、俺もまさかと思ってるよ……」

ローラとレイは、ルーク達に聞こえない様に小声で話している。
ルーク達の話を聞いたレイとローラには、まさかと思う一つの答えが浮かんでいた。

それは……

ルークとネルが、本物の霊やお化けと言われる類の存在であるという事―。

にわかにはとても信じがたい話だが、実際に自分達が目で見て会話までしている以上、最早気のせいなんていうレベルではない事は分かっている。
受け入れるのに時間が掛かるかもしれないが、起きてる事は間違いなく現実だ―。


しかし仮にこれが現実で、ルークとネルの存在も理解出来るとしても、他にも多々疑問があった。


恐らく、ルークとネルが言った、この屋敷に足を踏み入れた人達は、調査や依頼で来たハンターや騎士団員達であろう。
そして普通の人ではルーク達の存在には気付かない。だが何故かレイ達にはルークとネルの姿が視えた―。
それに加え、“何度もこの屋敷に足を踏み入れた人達がいた”との発言から、少なくともルーク達は今の姿になってから最低でも二年は経っている事になる。

レイ達が今回のクエストを受注した時に、このゴーストハウスの最終調査は“二年前”と依頼に記されていたからだ。

何故ルーク達が視えるのか?
何故今の様な状態になってしまったのか?
いなくなった他の家族達はどうしたのか?
ランベルとリエンナは無事なのか?
記憶にある黒い影とは何なのか?
それがこうなった原因と関係があるのか?

レイとローラは今自分達に起こっている余りに不思議で不可解な珍現象に、頭の中が?マークで溢れ返っていた。

目の前に確かに存在するお化けと言っても過言ではない存在。
本来なら、お化けが苦手なローラにとっては気絶しても可笑しくない状況にも関わらず、非現実的過ぎるこの状況が良くも悪くもローラの恐怖心を麻痺させていた。

「……ダメだ。とても少し考えただけじゃ答えが出ない」

「そうね……でも取り敢えずあの子達も放っておけないし、ランベルとリエンナも探さなくちゃ。考えるのは後にしましょう」

ルークとネルに案内されながらレイ達は屋敷を調べた。
ある部屋で、レイが何かを見つけたのかそれを手に持ち眺めていた。

「写真だ……」

埃まみれの写真。
写真立てに入れられてあったその写真は、とても古そうでガラスの部分は全て割れていた。少し汚れていたものの、暖かい家族を感じられる一枚だった。
そこに写る人物を見て、レイは少しだけ驚いた。

「ルーク、ネル……。コレがお前達の家族か」

そこには七人の家族の姿が―。
他の人達は分からないが、その写真には“今と変わらない”ルークとネルの姿も写っている。

ローラもその写真を見て驚いた。

「これって……」

「そう。これが僕の家族だよ。パパ、ママ、お兄ちゃんとお姉ちゃん達」

「皆どこに行っちゃったの?私早く会いたいなぁ」

レイは何気なく写真の裏を見た。

すると、そこには写真を撮った日であろうか……“日付”が書かれていた。
それを見て再び驚くレイとローラ。

「噓……ちょっと待って……」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無属性魔術師、最強パーティの一員でしたが去りました。

ぽてさら
ファンタジー
 ヴェルダレア帝国に所属する最強冒険者パーティ『永遠の色調《カラーズ・ネスト》』は強者が揃った世界的にも有名なパーティで、その名を知らぬ者はいないとも言われるほど。ある事情により心に傷を負ってしまった無属性魔術師エーヤ・クリアノートがそのパーティを去っておよそ三年。エーヤは【エリディアル王国】を拠点として暮らしていた。  それからダンジョン探索を避けていたが、ある日相棒である契約精霊リルからダンジョン探索を提案される。渋々ダンジョンを探索しているとたった一人で魔物を相手にしている美少女と出会う。『盾の守護者』だと名乗る少女にはある目的があって―――。  個の色を持たない「無」属性魔術師。されど「万能の力」と定義し無限の可能性を創造するその魔術は彼だけにしか扱えない。実力者でありながら凡人だと自称する青年は唯一無二の無属性の力と仲間の想いを胸に再び戦場へと身を投げ出す。  青年が扱うのは無属性魔術と『罪』の力。それらを用いて目指すのは『七大迷宮』の真の踏破。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

追放された美少女を助けた底辺おっさんが、実は元”特級冒険者”だった件について。

いちまる
ファンタジー
【毎週木曜日更新!】 採取クエストしか受けない地味なおっさん冒険者、ダンテ。 ある日彼は、ひょんなことからA級冒険者のパーティーを追放された猫耳族の少女、セレナとリンの面倒を見る羽目になってしまう。 最初は乗り気でなかったダンテだが、ふたりの夢を聞き、彼女達の力になると決意した。 ――そして、『特級冒険者』としての実力を隠すのをやめた。 おっさんの正体は戦闘と殺戮のプロ! しかも猫耳少女達も実は才能の塊だった!? モンスターと悪党を物理でぶちのめす、王道冒険譚が始まる――! ※本作はカクヨム、小説家になろうでも掲載しています。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...