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第四章 ~幽霊屋敷(ゴーストハウス)編~

60 見てはいけないもの

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「――すいませ~ん!あの、ちょっとお伺いしたいんですけど……」

ローラは今見つけたクエストの詳細を聞いた。
数分話し合った後、話が終わったのかローラがレイ達の元へ戻って来た。

「何だって?」

「やっぱり間違いじゃないみたい。Eランクハンターでも受けられる特殊なAランククエストだって」

「滅茶苦茶ラッキーじゃねぇか!なら早く受けようぜ!誰かに取られちゃう前に」

レイの言葉に、ランベルもリエンナも同意見と言った表情をしていた。

しかしこれを遮るのはローラだった。

「でもこのクエストね……場所がヤバいのよ……」

「場所……?どこなんだよ」

「あの幽霊で有名な……“ゴーストハウス”なのよ!私絶対行きたくないわ!」

態度が一変し、急にへそを曲げだすローラ。

「はッ⁉ せっかく受けられるAランククエスト何だぞ!お前もしかしてお化け怖いのかよ」

「当たり前でしょ!お化けとか幽霊はNG!無理よ!」

「ふざけるな!Aランクなんて受けたくても受けれないんだぞ!お化け何かにビビってる場合じゃねぇだろ!」

「お化けなんかって何よ!じゃあアンタお化けにどうやって対抗するつもり⁉ いくらドーランの魔力でも攻撃なんか無意味よ!」

「別に無理して攻撃する必要ないだろ!何でお化けぶっ飛ばそうとしてんだよお前」

「と・に・か・く!!私はあのゴーストハウスに行くなんて絶対嫌だからね!」

「なんて強情な奴だ……」

一歩も引かないローラに呆れるレイだが、みすみすこんな滅多にないチャンスを逃す訳にはいかないと、レイも何とかローラを説得させようと試みた。

そして数十分の口論の末……遂にその言い争いに終止符が打たれた。


「……あぁーもう!分かったわよ!そこまで言うなら受ければいいんでしょ?このクエストを!」

「やっと分かったか。子供みたいに駄々こねやがって」

「その代わり……今言った通り、行くのは日が昇ってる真っ昼間!少しでも日が沈んだら帰るからね!しかも一回限定!クリア出来なくても再度挑戦は無し!いいわね!」

「うるせ~なぁ。もう分かったからそれで行こうぜ」

こうしてローラは渋々承諾し、条件付きでこのクエストを受けることにした。



~幽霊屋敷~

時刻はまだ午前中の九時過ぎ―。
幽霊屋敷に着いたレイ達は、敷地の門の前にいた。

「ここがゴーストハウスか!」

「流石、噂通りと言うか……こんな明るい昼間なのに不気味に見えやがる」

「実際に見るとまた雰囲気がありますね……」

レイ、ランベル、リエンナの三人は屋敷や敷地内などを見渡しながら言った。

「――ちょっと!」

ローラはまともに屋敷を見るのが怖い為、手で目元を隠している。

「お前何してるんだよ」

「だってこれで何か見えたらヤバいでしょうが!」

「急にキレるなよ……。ローラ霊感強いの?」

「いや全く」

この時、ローラを除く皆が「何だそれ!」とツッコみたかったが、本気でビビっている様なので止めてあげた。

恐る恐る手を広げ、指と指の隙間からゴーストハウスを見るローラ。
こんな調子じゃいつまで経っても進まないからと、レイ達は門を開け敷地内へと入っていった。

広い庭は草や花が無造作に生えている。
誰の手入れも施されていないのが直ぐに分かる程好き放題に雑草が伸びている。
門から数十メートルの長い道を歩きやっと屋敷の前に着く。

レイが、ギルドから預かった鍵で屋敷の扉を開けようとした瞬間―。


「――キャァァァァァ!!!」

ローラが突然叫び声を上げた。

「何だよ急に!ビックリするじゃねぇか!」

「あ、あそ……あそこっ!今上の窓の所に“誰か”いたっ!!」

そう言うローラが指差す窓を見るが、人影どころか小動物一匹見られない。

「誰もいないじゃん」

「ローラちょっとビビり過ぎだぞ」

「違うわよっ!今絶対そこにいたってば!」

ローラも再びそこの窓を見たが誰もいない。

「え……嘘……」

「気にしすぎだよ」

「ローラさん。私で良ければ手を握っていますわ。少しは気が紛れるかも」

「ありがとうリエンナ……っていうかリエンナは怖くないの?」

「不気味な感じはしますが、ローラさんの程ではないですよ」

そんな会話をしながら、改めてレイ達は屋敷の扉を開け、中へと入って行く。

ゴーストハウスと呼ばれるその屋敷の中は、普通よりも少し豪華な屋敷であることは外観からも分かっていたが、中もそれ相応に高そうな絵や家具があちこちに置かれていた。

扉を開けるとすぐに広い間と大きな階段が正面に見え、そこを真ん中に右にも左にも……更にその奥までと部屋がいくつもある様だ。

「デカい屋敷だな~」

「そうか?割と小さい方だと思うぞ」

「王家のお前と比べるな」

レイとランベルが話しながら正面の階段の方へと歩いて行く。
ローラはリエンナの腕をギュっと掴みながら後ろに隠れて歩いている。

「こんな所に住んでいた人ってどんな感じなのかしら?」

「もう長年使われていないようですね」

レイとランベルに続き、リエンナとローラも階段の方へ二、三歩足を踏み出した刹那―。

――――――バタンッ!!

「キャァァァァァッッ!!なになになにッ⁉ 何なのよ⁉」

開けっぱなしだった屋敷の扉が閉まった。

「大丈夫だよ。風だろ」

「風⁉ ホントに⁉ 扉が閉まる様な風吹いてた⁉」

「いちいち大袈裟だぞホントに……」

「やっぱヤバいわよここ……!さっきも絶対誰か窓から見てたし……!私きっと見てはいけないものを見ちゃったんだわ……!」



「……じゃあそれを見たお前だけが霊に連れて行かれるかもな……ローラァ……」

「ギャァァァァァァァァァァ!!!!!」

ランベルがふざけてローラの背後からお化けのマネで驚かせたら、想像を絶する程の悲鳴と共に、ローラは奥の部屋の方へと走って行ってしまった―。

「あ、ローラさん!……ちょっとランベルさん!ふざけないで下さいよ!」

「わりぃわりぃ。まさかあそこまで驚くとは思わなくて」

「全然調査が進まないじゃねぇかよ……。何処まで行ったんだアイツは」

走り去ったローラを、レイ達は追いかけるのであった。
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