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第二章 ~仲間~
44 リエンナの涙
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「―――あ!」
レイ、ローラ、ランベルのイヤホンにリエンナの声が届く―。
「―こちらレイ。どうした?」
少し辺りを歩き回っていたリエンナが突如声を上げた。
視線の先には、城の入り口から中に入ってくる六人の騎士団員の姿が確認出来た。
気付いたリエンナは直ぐに近くに行って確認すると、新しく来た六人は皆紋章が赤色。
しかも……思いがけない事からリエンナは“目的の人物”を特定してしまった―。
「すげぇ豪華な飯!」
「おい。私語は慎め」
「今日の護衛では少しも気を抜くな」
「もう少しゆっくり歩いてくれよ」
「どうした。怪我か?」
「ああ。ちょっと痛めちまってな」
偶然聞こえた会話。
リエンナが確認すると、六人の内の一人が少しだけ体が猫背になり歩きにくそうであった。
赤い紋章に怪我……。
確定は出来ないが、この人物がレイ達の探している騎士団員である確率はとても高い。
騎士団員達はやはり交代があったのか、それぞれバラけ今いる騎士団員達と場所を変わっている。
怪我をしていた団長は部屋を抜け、中庭の方へ向かって行った。
リエンナも直ぐにその後を追いながらレイ達と連絡を取る。
「―こちらリエンナ。目的と思われる人物を見つけました」
「――⁉」
「気をつけろ!無茶だけはするなよ」
「大丈夫です。目立つような事はしません……取り敢えず彼の後を追いまッ……「―ちょっとリエンナ!」
後を追っていたリエンナの前に、再びローズとモニカが現れた。
「ローズさん、モニカさん……」
急いでいるリエンナを遮る様に立つ二人。
当然ローズとモニカはリエンナが騎士団員を追っているとは知らない為、普段通りに話しかけてきた。
「何?そのあからさまに嫌な顔」
「私達が迷惑なわけ?」
「い、いえッ……そんな事はありません……(どうしよう……折角見つけたのに……)」
「ちょっとどこ見てんのよアンタ!本当に失礼でムカつく子」
「そんな事より料理と飲み物取ってきてくれる?わざわざ行くの面倒くさくて」
「あの……私少し用がありまして……」
「はぁ?何アンタ、逆う気?“自分の立場”分かって言ってんの?図々しい!」
「こんな所でアンタに何の用があんのよ。まさか男でも引っ掛けるつもりなの?」
相変わらずリエンナへの当たりがキツイ彼女達。
今のリエンナの態度が更に勘に障った様だ。
「――さっきから何だよコイツら」
イヤホンで聞いているレイ達も不快感を抱いている。
「いえ、決してそのような事ではありません……ただ……」
「ただ何なのよッ!いいから黙って言う事だけ聞いてなさい!」
「そうよ。分かったら早く言われた通り動いて!」
一言返せば倍で返ってくる状況に、リエンナは仕方なく彼女達の指示に従う事にした。
しかし、彼女達は収まるどころか更に悪化―。
「何その嫌そうな態度!」
「ローズ姉さん!これはもう母様に報告しましょう!」
こうなってはもう何をしてもダメ。
それが分かっているリエンナは一旦追うのを諦めて、彼女達の機嫌を戻そうとする。
だが、これまた運の悪い事に、大声を出していたローズとモニカを見つけた母様がやってきた。
「―何を大声出しているの?」
「母様!」
「リエンナが私達に盾突いてきたの!」
「そうなの!言う事聞かないし男たぶらかそうとしてるのよ!」
「わ、私はそんな事ッ……「リエンナ!」
リエンナが否定しようとすると母様がそれを止めた。
まるでリエンナの意見を聞く気がないらしい。
「何度言えば分かるんだい?アンタの世話してるだけでも有難いと思いなさい!“親が死んで”私達の所に転がり込んでもう二年よ。いい加減自分の立場をわきまえて。黙ってこの子達の言う事に従いなさい!
それが嫌ならどこでも好きな所へ出ていきなッ!いつまでも辛気臭い顔でいられるこっちの身にもなって頂戴!」
賑わいをみせる部屋でも、更に目を引く母様の怒号。
一体何事かと、周囲の視線がリエンナ達に注がれていた。
「も……申し訳ございません……」
頭を下げ、蚊の鳴くような声を絞り出すリエンナの目にはうっすらと涙が―。
聞いていたレイ達も、リエンナの知らない事情を突如知り、少し困惑していた。
流石に周りの目が気になったのか、母様はそう言うと、また何処へ行ってしまった。
「何か私達が虐めてるみたいじゃん」と何の悪びれもなくモニカが言うと、ローズと共に彼女達もその場を離れて行くのであった。
リエンナは食事会が嫌だったのではない―。
この家族の所に帰りたくないから抜け出していたんだ―。
理由が分かったレイ達は、今はただただリエンナの言葉を待つしかなかった。
イヤホンから一瞬、鼻を啜る音が聞こえた。
レイ達からではリエンナが泣いているかどうか確認する事は出来ないが、その音が涙をイメージさせるには十分であった―。
レイ、ローラ、ランベルのイヤホンにリエンナの声が届く―。
「―こちらレイ。どうした?」
少し辺りを歩き回っていたリエンナが突如声を上げた。
視線の先には、城の入り口から中に入ってくる六人の騎士団員の姿が確認出来た。
気付いたリエンナは直ぐに近くに行って確認すると、新しく来た六人は皆紋章が赤色。
しかも……思いがけない事からリエンナは“目的の人物”を特定してしまった―。
「すげぇ豪華な飯!」
「おい。私語は慎め」
「今日の護衛では少しも気を抜くな」
「もう少しゆっくり歩いてくれよ」
「どうした。怪我か?」
「ああ。ちょっと痛めちまってな」
偶然聞こえた会話。
リエンナが確認すると、六人の内の一人が少しだけ体が猫背になり歩きにくそうであった。
赤い紋章に怪我……。
確定は出来ないが、この人物がレイ達の探している騎士団員である確率はとても高い。
騎士団員達はやはり交代があったのか、それぞれバラけ今いる騎士団員達と場所を変わっている。
怪我をしていた団長は部屋を抜け、中庭の方へ向かって行った。
リエンナも直ぐにその後を追いながらレイ達と連絡を取る。
「―こちらリエンナ。目的と思われる人物を見つけました」
「――⁉」
「気をつけろ!無茶だけはするなよ」
「大丈夫です。目立つような事はしません……取り敢えず彼の後を追いまッ……「―ちょっとリエンナ!」
後を追っていたリエンナの前に、再びローズとモニカが現れた。
「ローズさん、モニカさん……」
急いでいるリエンナを遮る様に立つ二人。
当然ローズとモニカはリエンナが騎士団員を追っているとは知らない為、普段通りに話しかけてきた。
「何?そのあからさまに嫌な顔」
「私達が迷惑なわけ?」
「い、いえッ……そんな事はありません……(どうしよう……折角見つけたのに……)」
「ちょっとどこ見てんのよアンタ!本当に失礼でムカつく子」
「そんな事より料理と飲み物取ってきてくれる?わざわざ行くの面倒くさくて」
「あの……私少し用がありまして……」
「はぁ?何アンタ、逆う気?“自分の立場”分かって言ってんの?図々しい!」
「こんな所でアンタに何の用があんのよ。まさか男でも引っ掛けるつもりなの?」
相変わらずリエンナへの当たりがキツイ彼女達。
今のリエンナの態度が更に勘に障った様だ。
「――さっきから何だよコイツら」
イヤホンで聞いているレイ達も不快感を抱いている。
「いえ、決してそのような事ではありません……ただ……」
「ただ何なのよッ!いいから黙って言う事だけ聞いてなさい!」
「そうよ。分かったら早く言われた通り動いて!」
一言返せば倍で返ってくる状況に、リエンナは仕方なく彼女達の指示に従う事にした。
しかし、彼女達は収まるどころか更に悪化―。
「何その嫌そうな態度!」
「ローズ姉さん!これはもう母様に報告しましょう!」
こうなってはもう何をしてもダメ。
それが分かっているリエンナは一旦追うのを諦めて、彼女達の機嫌を戻そうとする。
だが、これまた運の悪い事に、大声を出していたローズとモニカを見つけた母様がやってきた。
「―何を大声出しているの?」
「母様!」
「リエンナが私達に盾突いてきたの!」
「そうなの!言う事聞かないし男たぶらかそうとしてるのよ!」
「わ、私はそんな事ッ……「リエンナ!」
リエンナが否定しようとすると母様がそれを止めた。
まるでリエンナの意見を聞く気がないらしい。
「何度言えば分かるんだい?アンタの世話してるだけでも有難いと思いなさい!“親が死んで”私達の所に転がり込んでもう二年よ。いい加減自分の立場をわきまえて。黙ってこの子達の言う事に従いなさい!
それが嫌ならどこでも好きな所へ出ていきなッ!いつまでも辛気臭い顔でいられるこっちの身にもなって頂戴!」
賑わいをみせる部屋でも、更に目を引く母様の怒号。
一体何事かと、周囲の視線がリエンナ達に注がれていた。
「も……申し訳ございません……」
頭を下げ、蚊の鳴くような声を絞り出すリエンナの目にはうっすらと涙が―。
聞いていたレイ達も、リエンナの知らない事情を突如知り、少し困惑していた。
流石に周りの目が気になったのか、母様はそう言うと、また何処へ行ってしまった。
「何か私達が虐めてるみたいじゃん」と何の悪びれもなくモニカが言うと、ローズと共に彼女達もその場を離れて行くのであった。
リエンナは食事会が嫌だったのではない―。
この家族の所に帰りたくないから抜け出していたんだ―。
理由が分かったレイ達は、今はただただリエンナの言葉を待つしかなかった。
イヤホンから一瞬、鼻を啜る音が聞こえた。
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