45 / 112
第二章 ~仲間~
44 リエンナの涙
しおりを挟む
「―――あ!」
レイ、ローラ、ランベルのイヤホンにリエンナの声が届く―。
「―こちらレイ。どうした?」
少し辺りを歩き回っていたリエンナが突如声を上げた。
視線の先には、城の入り口から中に入ってくる六人の騎士団員の姿が確認出来た。
気付いたリエンナは直ぐに近くに行って確認すると、新しく来た六人は皆紋章が赤色。
しかも……思いがけない事からリエンナは“目的の人物”を特定してしまった―。
「すげぇ豪華な飯!」
「おい。私語は慎め」
「今日の護衛では少しも気を抜くな」
「もう少しゆっくり歩いてくれよ」
「どうした。怪我か?」
「ああ。ちょっと痛めちまってな」
偶然聞こえた会話。
リエンナが確認すると、六人の内の一人が少しだけ体が猫背になり歩きにくそうであった。
赤い紋章に怪我……。
確定は出来ないが、この人物がレイ達の探している騎士団員である確率はとても高い。
騎士団員達はやはり交代があったのか、それぞれバラけ今いる騎士団員達と場所を変わっている。
怪我をしていた団長は部屋を抜け、中庭の方へ向かって行った。
リエンナも直ぐにその後を追いながらレイ達と連絡を取る。
「―こちらリエンナ。目的と思われる人物を見つけました」
「――⁉」
「気をつけろ!無茶だけはするなよ」
「大丈夫です。目立つような事はしません……取り敢えず彼の後を追いまッ……「―ちょっとリエンナ!」
後を追っていたリエンナの前に、再びローズとモニカが現れた。
「ローズさん、モニカさん……」
急いでいるリエンナを遮る様に立つ二人。
当然ローズとモニカはリエンナが騎士団員を追っているとは知らない為、普段通りに話しかけてきた。
「何?そのあからさまに嫌な顔」
「私達が迷惑なわけ?」
「い、いえッ……そんな事はありません……(どうしよう……折角見つけたのに……)」
「ちょっとどこ見てんのよアンタ!本当に失礼でムカつく子」
「そんな事より料理と飲み物取ってきてくれる?わざわざ行くの面倒くさくて」
「あの……私少し用がありまして……」
「はぁ?何アンタ、逆う気?“自分の立場”分かって言ってんの?図々しい!」
「こんな所でアンタに何の用があんのよ。まさか男でも引っ掛けるつもりなの?」
相変わらずリエンナへの当たりがキツイ彼女達。
今のリエンナの態度が更に勘に障った様だ。
「――さっきから何だよコイツら」
イヤホンで聞いているレイ達も不快感を抱いている。
「いえ、決してそのような事ではありません……ただ……」
「ただ何なのよッ!いいから黙って言う事だけ聞いてなさい!」
「そうよ。分かったら早く言われた通り動いて!」
一言返せば倍で返ってくる状況に、リエンナは仕方なく彼女達の指示に従う事にした。
しかし、彼女達は収まるどころか更に悪化―。
「何その嫌そうな態度!」
「ローズ姉さん!これはもう母様に報告しましょう!」
こうなってはもう何をしてもダメ。
それが分かっているリエンナは一旦追うのを諦めて、彼女達の機嫌を戻そうとする。
だが、これまた運の悪い事に、大声を出していたローズとモニカを見つけた母様がやってきた。
「―何を大声出しているの?」
「母様!」
「リエンナが私達に盾突いてきたの!」
「そうなの!言う事聞かないし男たぶらかそうとしてるのよ!」
「わ、私はそんな事ッ……「リエンナ!」
リエンナが否定しようとすると母様がそれを止めた。
まるでリエンナの意見を聞く気がないらしい。
「何度言えば分かるんだい?アンタの世話してるだけでも有難いと思いなさい!“親が死んで”私達の所に転がり込んでもう二年よ。いい加減自分の立場をわきまえて。黙ってこの子達の言う事に従いなさい!
それが嫌ならどこでも好きな所へ出ていきなッ!いつまでも辛気臭い顔でいられるこっちの身にもなって頂戴!」
賑わいをみせる部屋でも、更に目を引く母様の怒号。
一体何事かと、周囲の視線がリエンナ達に注がれていた。
「も……申し訳ございません……」
頭を下げ、蚊の鳴くような声を絞り出すリエンナの目にはうっすらと涙が―。
聞いていたレイ達も、リエンナの知らない事情を突如知り、少し困惑していた。
流石に周りの目が気になったのか、母様はそう言うと、また何処へ行ってしまった。
「何か私達が虐めてるみたいじゃん」と何の悪びれもなくモニカが言うと、ローズと共に彼女達もその場を離れて行くのであった。
リエンナは食事会が嫌だったのではない―。
この家族の所に帰りたくないから抜け出していたんだ―。
理由が分かったレイ達は、今はただただリエンナの言葉を待つしかなかった。
イヤホンから一瞬、鼻を啜る音が聞こえた。
レイ達からではリエンナが泣いているかどうか確認する事は出来ないが、その音が涙をイメージさせるには十分であった―。
レイ、ローラ、ランベルのイヤホンにリエンナの声が届く―。
「―こちらレイ。どうした?」
少し辺りを歩き回っていたリエンナが突如声を上げた。
視線の先には、城の入り口から中に入ってくる六人の騎士団員の姿が確認出来た。
気付いたリエンナは直ぐに近くに行って確認すると、新しく来た六人は皆紋章が赤色。
しかも……思いがけない事からリエンナは“目的の人物”を特定してしまった―。
「すげぇ豪華な飯!」
「おい。私語は慎め」
「今日の護衛では少しも気を抜くな」
「もう少しゆっくり歩いてくれよ」
「どうした。怪我か?」
「ああ。ちょっと痛めちまってな」
偶然聞こえた会話。
リエンナが確認すると、六人の内の一人が少しだけ体が猫背になり歩きにくそうであった。
赤い紋章に怪我……。
確定は出来ないが、この人物がレイ達の探している騎士団員である確率はとても高い。
騎士団員達はやはり交代があったのか、それぞれバラけ今いる騎士団員達と場所を変わっている。
怪我をしていた団長は部屋を抜け、中庭の方へ向かって行った。
リエンナも直ぐにその後を追いながらレイ達と連絡を取る。
「―こちらリエンナ。目的と思われる人物を見つけました」
「――⁉」
「気をつけろ!無茶だけはするなよ」
「大丈夫です。目立つような事はしません……取り敢えず彼の後を追いまッ……「―ちょっとリエンナ!」
後を追っていたリエンナの前に、再びローズとモニカが現れた。
「ローズさん、モニカさん……」
急いでいるリエンナを遮る様に立つ二人。
当然ローズとモニカはリエンナが騎士団員を追っているとは知らない為、普段通りに話しかけてきた。
「何?そのあからさまに嫌な顔」
「私達が迷惑なわけ?」
「い、いえッ……そんな事はありません……(どうしよう……折角見つけたのに……)」
「ちょっとどこ見てんのよアンタ!本当に失礼でムカつく子」
「そんな事より料理と飲み物取ってきてくれる?わざわざ行くの面倒くさくて」
「あの……私少し用がありまして……」
「はぁ?何アンタ、逆う気?“自分の立場”分かって言ってんの?図々しい!」
「こんな所でアンタに何の用があんのよ。まさか男でも引っ掛けるつもりなの?」
相変わらずリエンナへの当たりがキツイ彼女達。
今のリエンナの態度が更に勘に障った様だ。
「――さっきから何だよコイツら」
イヤホンで聞いているレイ達も不快感を抱いている。
「いえ、決してそのような事ではありません……ただ……」
「ただ何なのよッ!いいから黙って言う事だけ聞いてなさい!」
「そうよ。分かったら早く言われた通り動いて!」
一言返せば倍で返ってくる状況に、リエンナは仕方なく彼女達の指示に従う事にした。
しかし、彼女達は収まるどころか更に悪化―。
「何その嫌そうな態度!」
「ローズ姉さん!これはもう母様に報告しましょう!」
こうなってはもう何をしてもダメ。
それが分かっているリエンナは一旦追うのを諦めて、彼女達の機嫌を戻そうとする。
だが、これまた運の悪い事に、大声を出していたローズとモニカを見つけた母様がやってきた。
「―何を大声出しているの?」
「母様!」
「リエンナが私達に盾突いてきたの!」
「そうなの!言う事聞かないし男たぶらかそうとしてるのよ!」
「わ、私はそんな事ッ……「リエンナ!」
リエンナが否定しようとすると母様がそれを止めた。
まるでリエンナの意見を聞く気がないらしい。
「何度言えば分かるんだい?アンタの世話してるだけでも有難いと思いなさい!“親が死んで”私達の所に転がり込んでもう二年よ。いい加減自分の立場をわきまえて。黙ってこの子達の言う事に従いなさい!
それが嫌ならどこでも好きな所へ出ていきなッ!いつまでも辛気臭い顔でいられるこっちの身にもなって頂戴!」
賑わいをみせる部屋でも、更に目を引く母様の怒号。
一体何事かと、周囲の視線がリエンナ達に注がれていた。
「も……申し訳ございません……」
頭を下げ、蚊の鳴くような声を絞り出すリエンナの目にはうっすらと涙が―。
聞いていたレイ達も、リエンナの知らない事情を突如知り、少し困惑していた。
流石に周りの目が気になったのか、母様はそう言うと、また何処へ行ってしまった。
「何か私達が虐めてるみたいじゃん」と何の悪びれもなくモニカが言うと、ローズと共に彼女達もその場を離れて行くのであった。
リエンナは食事会が嫌だったのではない―。
この家族の所に帰りたくないから抜け出していたんだ―。
理由が分かったレイ達は、今はただただリエンナの言葉を待つしかなかった。
イヤホンから一瞬、鼻を啜る音が聞こえた。
レイ達からではリエンナが泣いているかどうか確認する事は出来ないが、その音が涙をイメージさせるには十分であった―。
0
お気に入りに追加
1,377
あなたにおすすめの小説

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる