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第二章 ~仲間~
42 聞き込み
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~水の王国お城内~
使用人に呼ばれたリエンナは、食事会が準備された広い部屋へと向かって行く。
部屋には多くの王家やその関係者。テーブルには豪華な料理やお酒がズラリと並んでいる。
部屋の奥にある一際立派な椅子には水の国の国王が座っており、椅子の両側には家来や武器を持った護衛が何人もいた。
食事会という名だけあって、イメージしていたものよりも大分フランクな雰囲気であった。
国王を始め、その場にいた者達も上品に賑わいながら他愛もない事で談笑している。
こういった、いわゆる“パーティー”が好きな者は良いのかもしれないが、当然苦手な者もいる。
レイも何度かこの食事会に参加した事はあるが、子供からしてみると、ただ大人が集まって詰まらない話をしているぐらいにしか思わなかった。
リエンナもその雰囲気や口調から分かる通り、あまり賑やかな場所が似合うタイプではない。
どちらかといえば控え目で謙虚だろう。とてもパーティー好きとは思えない。
そんなリエンナも、取り敢えず会う人達に軽く会釈をしたり当たり障りない会話を繰り返している。
きっとこういうのも苦手だから食事会が嫌なのであろうと、レイ達は何の疑いもなく思っていた。
しかし……
レイ達のこの考えは根本から違っていたと気付かされる―。
一通り挨拶を済ませたリエンナは、テーブルに置いてあった飲み物を手に取り一口飲む。
すると、そこへ二人の女が現れた。
「――アナタ一体どこにいたのリエンナ」
「またコソコソ逃げ出してたんじゃない?」
明らかな嫌味口調で現れたその女達を見たリエンナの表情がまた暗くなった。
歳はリエンナと同じぐらいか少し上。
派手なドレスに身を包んだ姿は間違いなく王家のご令嬢だ。
「ローズさん……モニカさん……」
小さな声で口にしたのは女達の名前であろう。
ローズとモニカと呼ばれた彼女達に対し、どことなくリエンナは態度がぎこちなかった。
「母様ッ!リエンナがいましたよ」
少し年が上とみられるローズが、離れた所にいた一人の女性を母様と呼んだ。
呼ばれた母様はリエンナ達の方へ歩み始めると、ニコニコと笑っていた顔が急変―。
リエンナを見るや否や明らかに不満そうな顔つきに変わった。
「全く……。お前はどこまで迷惑を掛ける気だい?」
「も、申し訳ございませんッ……。」
「ホントに役立たずだね。そんなに家が嫌ならいつでも出ていってくれて構わないよ!」
吐き捨てる様にそう言った母様は、スタスタとどこかへ行ってしまい、それに続くようにローズとモニカもそそくさと行ってしまった。
零れるような溜息を付くリエンナ。
通信機で会話を聞いていたレイ達が声を掛けた。
「――こちらローラ。リエンナ大丈夫?」
「え、ええ。大丈夫、いつもの事ですので……」
「こちらレイ。今話していたのお前の家族なのか?感じ悪い奴らだなぁ~」
「人の家の家族を悪く言うなよお前は!」
「いえ……別に大丈夫ですよ……。家族といえば家族なのですが……本当の家族ではないんです」
リエンナの思いがけない発言にレイ達は少し戸惑った。
それと同時に、リエンナが拒んでいた本当の理由が垣間見えた気がした。
「……それってどういう事だよリエンナ」
レイがそう聞いたが、リエンナは気を遣わせない様に話題を変えた。
「そんな事よりもミッションが大事です!食事会が始まったおかげでさっきよりは自由に動くことが出来ます。それに私見つけてしまいました」
「―何を?」
「国王の護衛に数人騎士団の方がいます。あの方達から何か情報を探ってみますね」
「おッ、おい!リエンナ!」
イヤリングに付けているイヤホン越しからでも、一瞬変な空気になってしまった事に気付いたリエンナ。
もうその話題に触れないでと言わんばかりに、本来の目的であったミッションを進めていく。
「――あの~、すいません。お仕事ご苦労様です。良かったらどうですか?」
リエンナは新しく飲み物が入ったグラスを一つ持ち、騎士団員の一人に話しかけながらそのグラスを渡した。
「これはこれは。お嬢様にお気遣いいただき大変ご光栄です」
王家の食事会の護衛なだけあって、騎士団員の者達も最低限の挨拶やマナーが出来る者を選んでいるのか、子供のリエンナに対しても丁寧且つ紳士的であった。
それ以上に、たまたま話しかけたこの騎士団員は何か雰囲気がある様にリエンナは感じていた。
「騎士団員様。すこしお聞きしたいのですが……」
「私にお応え出来る事であれば何なりと」
「ありがとうございます。実は、私も将来騎士団に入りたいのですが、やはりなるのは難しいのでしょうか?」
勿論リエンナにそんな気はなく、ミッションの為とは言え嘘を付くのは心苦しいが仕方がなかった。
いきなり核心に迫る訳にもいかない為、少しづつ情報を聞き出す作戦だ。
「なんと。お嬢様は騎士団を目指しておられるのですか!確かに……騎士団になるのは簡単な事ではありませんが、どんな事にも諦めず自分の意志を持って進めば、必ずその目標に近づけると私は思います」
「――いい事言うなぁ~」
通信機で聞いていたランベルの声が思わず漏れた。
どうやら大団長を目指しているランベルが一番、騎士団員の言葉が響いている様だ。
そして、その何気ない騎士団員の言葉はリエンナにも届いていた。
「諦めずに進む……そうですね。素敵なご意見ありがとうございます。
ちなみに騎士団の皆様は、普段どのような事をしているのでしょうか?」
「普段は色々と役割がありますが……騎士団の一番の任務は何と言っても国と人々を守る事。これが何より大切であります。後はやはり日頃から魔法や剣術を鍛えておかねばなりません。いざという時に動けなくては騎士団の意味がないですから」
「やはり凄いですね!騎士団の方々は。今日の様な食事会でも護衛が必要なのですか?」
「勿論です。国王様と王家の皆様がこれだけ一堂に会されるとなると、どこで誰が悪事を働かせても可笑しくありませんからね。我々騎士団も“総員”で護衛に当たります」
「――⁉⁉」
騎士団員の言葉にリエンナは勿論、通信機で聞いているレイ達もハッと顔を合わせていた。
“総員”……。
この言葉通りならいる筈だ―。
ポロン村にオーガを放ち、レイ達と対峙したあの騎士団の男達が―。
~水の王国お城内~
使用人に呼ばれたリエンナは、食事会が準備された広い部屋へと向かって行く。
部屋には多くの王家やその関係者。テーブルには豪華な料理やお酒がズラリと並んでいる。
部屋の奥にある一際立派な椅子には水の国の国王が座っており、椅子の両側には家来や武器を持った護衛が何人もいた。
食事会という名だけあって、イメージしていたものよりも大分フランクな雰囲気であった。
国王を始め、その場にいた者達も上品に賑わいながら他愛もない事で談笑している。
こういった、いわゆる“パーティー”が好きな者は良いのかもしれないが、当然苦手な者もいる。
レイも何度かこの食事会に参加した事はあるが、子供からしてみると、ただ大人が集まって詰まらない話をしているぐらいにしか思わなかった。
リエンナもその雰囲気や口調から分かる通り、あまり賑やかな場所が似合うタイプではない。
どちらかといえば控え目で謙虚だろう。とてもパーティー好きとは思えない。
そんなリエンナも、取り敢えず会う人達に軽く会釈をしたり当たり障りない会話を繰り返している。
きっとこういうのも苦手だから食事会が嫌なのであろうと、レイ達は何の疑いもなく思っていた。
しかし……
レイ達のこの考えは根本から違っていたと気付かされる―。
一通り挨拶を済ませたリエンナは、テーブルに置いてあった飲み物を手に取り一口飲む。
すると、そこへ二人の女が現れた。
「――アナタ一体どこにいたのリエンナ」
「またコソコソ逃げ出してたんじゃない?」
明らかな嫌味口調で現れたその女達を見たリエンナの表情がまた暗くなった。
歳はリエンナと同じぐらいか少し上。
派手なドレスに身を包んだ姿は間違いなく王家のご令嬢だ。
「ローズさん……モニカさん……」
小さな声で口にしたのは女達の名前であろう。
ローズとモニカと呼ばれた彼女達に対し、どことなくリエンナは態度がぎこちなかった。
「母様ッ!リエンナがいましたよ」
少し年が上とみられるローズが、離れた所にいた一人の女性を母様と呼んだ。
呼ばれた母様はリエンナ達の方へ歩み始めると、ニコニコと笑っていた顔が急変―。
リエンナを見るや否や明らかに不満そうな顔つきに変わった。
「全く……。お前はどこまで迷惑を掛ける気だい?」
「も、申し訳ございませんッ……。」
「ホントに役立たずだね。そんなに家が嫌ならいつでも出ていってくれて構わないよ!」
吐き捨てる様にそう言った母様は、スタスタとどこかへ行ってしまい、それに続くようにローズとモニカもそそくさと行ってしまった。
零れるような溜息を付くリエンナ。
通信機で会話を聞いていたレイ達が声を掛けた。
「――こちらローラ。リエンナ大丈夫?」
「え、ええ。大丈夫、いつもの事ですので……」
「こちらレイ。今話していたのお前の家族なのか?感じ悪い奴らだなぁ~」
「人の家の家族を悪く言うなよお前は!」
「いえ……別に大丈夫ですよ……。家族といえば家族なのですが……本当の家族ではないんです」
リエンナの思いがけない発言にレイ達は少し戸惑った。
それと同時に、リエンナが拒んでいた本当の理由が垣間見えた気がした。
「……それってどういう事だよリエンナ」
レイがそう聞いたが、リエンナは気を遣わせない様に話題を変えた。
「そんな事よりもミッションが大事です!食事会が始まったおかげでさっきよりは自由に動くことが出来ます。それに私見つけてしまいました」
「―何を?」
「国王の護衛に数人騎士団の方がいます。あの方達から何か情報を探ってみますね」
「おッ、おい!リエンナ!」
イヤリングに付けているイヤホン越しからでも、一瞬変な空気になってしまった事に気付いたリエンナ。
もうその話題に触れないでと言わんばかりに、本来の目的であったミッションを進めていく。
「――あの~、すいません。お仕事ご苦労様です。良かったらどうですか?」
リエンナは新しく飲み物が入ったグラスを一つ持ち、騎士団員の一人に話しかけながらそのグラスを渡した。
「これはこれは。お嬢様にお気遣いいただき大変ご光栄です」
王家の食事会の護衛なだけあって、騎士団員の者達も最低限の挨拶やマナーが出来る者を選んでいるのか、子供のリエンナに対しても丁寧且つ紳士的であった。
それ以上に、たまたま話しかけたこの騎士団員は何か雰囲気がある様にリエンナは感じていた。
「騎士団員様。すこしお聞きしたいのですが……」
「私にお応え出来る事であれば何なりと」
「ありがとうございます。実は、私も将来騎士団に入りたいのですが、やはりなるのは難しいのでしょうか?」
勿論リエンナにそんな気はなく、ミッションの為とは言え嘘を付くのは心苦しいが仕方がなかった。
いきなり核心に迫る訳にもいかない為、少しづつ情報を聞き出す作戦だ。
「なんと。お嬢様は騎士団を目指しておられるのですか!確かに……騎士団になるのは簡単な事ではありませんが、どんな事にも諦めず自分の意志を持って進めば、必ずその目標に近づけると私は思います」
「――いい事言うなぁ~」
通信機で聞いていたランベルの声が思わず漏れた。
どうやら大団長を目指しているランベルが一番、騎士団員の言葉が響いている様だ。
そして、その何気ない騎士団員の言葉はリエンナにも届いていた。
「諦めずに進む……そうですね。素敵なご意見ありがとうございます。
ちなみに騎士団の皆様は、普段どのような事をしているのでしょうか?」
「普段は色々と役割がありますが……騎士団の一番の任務は何と言っても国と人々を守る事。これが何より大切であります。後はやはり日頃から魔法や剣術を鍛えておかねばなりません。いざという時に動けなくては騎士団の意味がないですから」
「やはり凄いですね!騎士団の方々は。今日の様な食事会でも護衛が必要なのですか?」
「勿論です。国王様と王家の皆様がこれだけ一堂に会されるとなると、どこで誰が悪事を働かせても可笑しくありませんからね。我々騎士団も“総員”で護衛に当たります」
「――⁉⁉」
騎士団員の言葉にリエンナは勿論、通信機で聞いているレイ達もハッと顔を合わせていた。
“総員”……。
この言葉通りならいる筈だ―。
ポロン村にオーガを放ち、レイ達と対峙したあの騎士団の男達が―。
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