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第二章 ~仲間~
39 ローラ&ランベルside③
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目の前には沢山の開いたお皿。
一度積み重ねられたお皿を片付けてもらっているのでこれで実質二度目。
あれから追加注文をしたローラとランベルの支払額は10,000Gを超えていた―。
「――やばいやばいやばいやばい……!」
怒りのまま注文したローラは料理を食べ終えると、改めて自らが犯している過ちに焦りを感じている。
お金が足りない事にテンパりやけ食いした結果、状況は更に悪くなってしまった。
頭を抱えるローラ。
騎士団の男達を追っていた筈が何故こうなってしまったんだ?……と振り返ってみてももう遅い。
成す術なく、無情にも時間だけが経っていく。
ランベルはお腹いっぱい幸せな気分で今にも寝落ちしそうであった。
ローラとランベルの姿はまさに天国と地獄。
二度目の注文をして食べ終わってから数十分は経つ―。
食べ終わったのに中々店を出ない二人に対し、飯屋の人達の視線が次第に多くなっている。
ローラの頭に浮かんでいる案は二択。
一つ目は、何とかレイと合流しお金を集める事。
そもそもレイがいくら持ってるかも分からない為、万事解決と至るかどうかは定かじゃない。しかしこの状況を変えられる可能性がある。
二つ目は、取り敢えずランベルを残しお金を稼ぎ行く事。
数多あるクエストなら、短時間でそこそこ報酬を得られるものが多い。簡単なものを上手く二、三同時に受ければ一時間ほどで稼いで来られる。
しかしこれを実行するには店の人に事情を話すしかない。だから店の人が払えない者の言い分を聞いてくれるかどうか賭けである。
下手したらそのまま通報でゲームオーバーだ。
「――まだご注文はありますか?」
ローラがそんな事を考えていると、店の人に声を掛けられた。
自分達に負い目があるせいか店の人が自分達を疑っているのではないかと思ってしまうローラ。
「まぁそれはそれで正解なんだけど」とはとても言えない。
「あっ、す、すいません。どうしようかなぁ~て悩んでいた所で……ハハハハ……!」
「そうでしたか。それではまたお決まりになりましたら声を掛けて下さい。」
少しも疑っていない、ニコリと笑う優しい対応の店の人に、申し訳なくてとても本当の事を言い出せないローラだった。
目の前でうたた寝しているランベルに、ローラはめちゃくちゃ火力を抑えた小さいF・ショットを一粒放った。
「――アチっ⁉⁉」
ランベルの額に命中したF・ショットは直ぐに消え去り、食らったランベルは驚きながらローラを見た。
「今何が起きた?」
「知らないわよ。寝ぼけてたんじゃない?」
「あ~夢か……。それよりどうするかこの状況……見た感じ行き詰まってんだろ?俺に案があるぜ!」
思いがけないランベルの言葉に、絶望していたローラの表情がパッと明るくなった。
「ホント⁉ 何々?」
「いいか?まず支払う為に出入り口に近づくだろ?そうしたら、俺が魔法で外から店目掛けて強めの突風を吹かせる。勿論店が壊れない程度、ガタガタ震えるくらいだ!そこで一瞬皆が気を取られた内に俺達も突風の如く逃げッ――「アホかお前ッ!!」
魔力、魔法一切なしのシンプルなゲンコツをランベルの脳天に決めるローラ。
こうしてランベルの案は突風の如く消え去った―。
飯屋に来て約一時間が経過―。
ここに来る前までにあちこち回って、そこでもおよそ一時間程使っている為、レイと別れてからかれこれ二時間以上が経っていた。
策が付きたローラとランベルはもう諦めて店の人に謝罪しようと席を立つ。
きっとちゃんと事情を話せば分かってもらえるはずだと……。
その上で突風の如くクエストをこなし、きちんと足りない分を払いにこようと……。
(はぁ~……ホントに災難ばかりで嫌になるわ……。どうしよう……これで通報されたりしたら……)
支払いを済ませる場所までのその数歩が、二人の人生の中で一番重い足取りとなった―。
その重い足よりも更に重くなった口を何とか開けて、二人は店の人に謝罪をする。
「――すいません…………実は…………」
カランカランッ……!
その瞬間、誰かが店へと入って来た―。
一度積み重ねられたお皿を片付けてもらっているのでこれで実質二度目。
あれから追加注文をしたローラとランベルの支払額は10,000Gを超えていた―。
「――やばいやばいやばいやばい……!」
怒りのまま注文したローラは料理を食べ終えると、改めて自らが犯している過ちに焦りを感じている。
お金が足りない事にテンパりやけ食いした結果、状況は更に悪くなってしまった。
頭を抱えるローラ。
騎士団の男達を追っていた筈が何故こうなってしまったんだ?……と振り返ってみてももう遅い。
成す術なく、無情にも時間だけが経っていく。
ランベルはお腹いっぱい幸せな気分で今にも寝落ちしそうであった。
ローラとランベルの姿はまさに天国と地獄。
二度目の注文をして食べ終わってから数十分は経つ―。
食べ終わったのに中々店を出ない二人に対し、飯屋の人達の視線が次第に多くなっている。
ローラの頭に浮かんでいる案は二択。
一つ目は、何とかレイと合流しお金を集める事。
そもそもレイがいくら持ってるかも分からない為、万事解決と至るかどうかは定かじゃない。しかしこの状況を変えられる可能性がある。
二つ目は、取り敢えずランベルを残しお金を稼ぎ行く事。
数多あるクエストなら、短時間でそこそこ報酬を得られるものが多い。簡単なものを上手く二、三同時に受ければ一時間ほどで稼いで来られる。
しかしこれを実行するには店の人に事情を話すしかない。だから店の人が払えない者の言い分を聞いてくれるかどうか賭けである。
下手したらそのまま通報でゲームオーバーだ。
「――まだご注文はありますか?」
ローラがそんな事を考えていると、店の人に声を掛けられた。
自分達に負い目があるせいか店の人が自分達を疑っているのではないかと思ってしまうローラ。
「まぁそれはそれで正解なんだけど」とはとても言えない。
「あっ、す、すいません。どうしようかなぁ~て悩んでいた所で……ハハハハ……!」
「そうでしたか。それではまたお決まりになりましたら声を掛けて下さい。」
少しも疑っていない、ニコリと笑う優しい対応の店の人に、申し訳なくてとても本当の事を言い出せないローラだった。
目の前でうたた寝しているランベルに、ローラはめちゃくちゃ火力を抑えた小さいF・ショットを一粒放った。
「――アチっ⁉⁉」
ランベルの額に命中したF・ショットは直ぐに消え去り、食らったランベルは驚きながらローラを見た。
「今何が起きた?」
「知らないわよ。寝ぼけてたんじゃない?」
「あ~夢か……。それよりどうするかこの状況……見た感じ行き詰まってんだろ?俺に案があるぜ!」
思いがけないランベルの言葉に、絶望していたローラの表情がパッと明るくなった。
「ホント⁉ 何々?」
「いいか?まず支払う為に出入り口に近づくだろ?そうしたら、俺が魔法で外から店目掛けて強めの突風を吹かせる。勿論店が壊れない程度、ガタガタ震えるくらいだ!そこで一瞬皆が気を取られた内に俺達も突風の如く逃げッ――「アホかお前ッ!!」
魔力、魔法一切なしのシンプルなゲンコツをランベルの脳天に決めるローラ。
こうしてランベルの案は突風の如く消え去った―。
飯屋に来て約一時間が経過―。
ここに来る前までにあちこち回って、そこでもおよそ一時間程使っている為、レイと別れてからかれこれ二時間以上が経っていた。
策が付きたローラとランベルはもう諦めて店の人に謝罪しようと席を立つ。
きっとちゃんと事情を話せば分かってもらえるはずだと……。
その上で突風の如くクエストをこなし、きちんと足りない分を払いにこようと……。
(はぁ~……ホントに災難ばかりで嫌になるわ……。どうしよう……これで通報されたりしたら……)
支払いを済ませる場所までのその数歩が、二人の人生の中で一番重い足取りとなった―。
その重い足よりも更に重くなった口を何とか開けて、二人は店の人に謝罪をする。
「――すいません…………実は…………」
カランカランッ……!
その瞬間、誰かが店へと入って来た―。
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