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第二章 ~仲間~

34 レイside①

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~水の王国・レイside~

「――水の王国すっげ~!美味そうな食べ物もいっぱいあるし、皆何か乗ってるよ!俺も乗りてぇ!」

水が魅力であるこの王国では、国中道の代わりに用水路に水が流れている。
その為移動する際には歩きや馬車よりもボートを使うのが水の王国では一般的だ。
一人乗りから家族や大人数で乗れるものまで色も形も様々な種類があり、カラフルに街を彩っていた。

<またはしゃぎ過ぎだぞレイ……>

「そんなにはしゃいでないって……見ろドーラン!なんか凄そうなのあるぜ!」

<ダメだなこれは>

言っても聞きそうにないレイを放っておき、ドーランは暫しのお昼寝タイムに入った。

相も変わらずはしゃいでいるレイはその後も視界に入る気になったものを全て見て回り、気が付くと二時間ほど経っていた。
どこから登ったか、見晴らしの良い高い建物の上にいたレイは王国を見渡す様に何かを探している。

「いないなぁ~。ローラもランベルもどこ行ったんだ……?この歳で迷子とか恥ずかしいから止めてくれよホントに」

思いがけないとばっちりを受けているローラとランベル。
一人暴走したレイはやっと興奮が収まってきた為、逸れた二人を探していた。
だが、広い水の王国。いくら見渡せどこれだけ人が多いと簡単には見つからない。

辺りを見渡すレイ。
するとある所で目が止まった。人通りの少ない路地裏。いかにも怪しそうな男達が何やら抵抗する女の子の腕を無理矢理掴んでいる様に見える。

「何かヤバそうだよな……。ドーラン起きろ!あそこまで飛んでくれ!」

<……何だ急に……早く自分で飛べるようになれ>

前と比べるとだいぶ魔力を扱えるようにはなっているレイだが、飛行はかなり難しいらしくまだ一人では出来なかった。
ドーランを叩き起こしレイは直ぐに女の子の元へ飛んでいく。


「――キャッ!離してくださいッ!」

「抵抗せずに大人しく来い!」
「“ご令嬢様”はどれぐらいの価値があるんだろうな?」

男達に捕まれた腕を必死に振り払おうとする女の子。しかし男の力には到底かなわず簡単に抑え込まれてしまう。
女の子は恐怖で今にも目から涙が溢れそうだ。そんな女の子の顔を見ながら男達はニヤニヤと笑い、無理矢理何処かへ連れて行こうとした。

「――おい!何してるんだ!その子嫌がってるじゃねぇか」

突如空から現れたレイに驚く男達。
騎士団の男達同様、一瞬困惑した表情を見せるも子供のレイを見るや否や男達に余裕さが伺えた。
相手が子供だと思い舐めている時の顔。レイは直ぐに分かった。

「何だこのコイツ」
「関係ねぇガキはすっこんでろ!」

似たようなシチュエーションに似たような捨て台詞。まだ半日ぐらいしか経っていないが、これはデジャヴか?と数時間前を思い出すレイ。
はたまた水の王国が“そういう”国なのかとさえ思えてくる。

下らない事が頭を過っている内に会話はどんどん進んでいった。

「ビビッて固まってるじゃねぇか!」
「ヒーロー気取りは家でやりな!へっへっへっ」

「たッ……助けて下さいッ……!!」

見た感じレイと同じぐらいの歳の女の子。金色のブロンド髪が抵抗でバサバサと靡く。
青い瞳にうっすらと涙を浮かばせ、震える声でレイに助けを求めている。

理由は分からないが明らかに困っている彼女を放ってはおけない。
こういう奴らを見るとどうしてもレイにはキャバルの顔が頭に浮かぶ。男達を追い払う為レイは魔力を高めた―。

騎士団の男達と対峙した時よりは冷静。
だが目の前の胸糞悪い連中に対する怒りがどんどん魔力へと変化していく。

今度は意識的に魔力をコントロールしているレイ。練り上げられた魔力が静かに男達を威圧していた。

油断していた男達も自然と戦闘モードとなり魔力を高める。
どうやらハンターらしく魔力がそこそこある連中だ。

だがレイは何だかとても楽しそうな顔をしていた。

「へへへ!ポロン村での戦いで“新技”思いついちゃったもんね!」

<もうやめてくれ……>

ドーランの思い空しく、レイは新技を放つ態勢に入った―。
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