上 下
18 / 112
第一章 ~追放と出会い~

17 トワイライト

しおりを挟む
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

~火の王国・トワイライト~

冒険者ギルドを後にしたレイとローラ。
空を飛ぶこと数分…目的地であるトワイライトの町へ着いた。

王都フレイムから少し離れた静かで自然豊かな町。
そんなイメージのあるトワイライトで、例えEランクとはいえ討伐の依頼を出すとは珍しいなと思うローラ。
二人は街に降り立ち依頼主の元へと向かった。

少し歩くと依頼主の家が見えてきた。
ローラのイメージ通り町は静かで辺りは自然が豊かである。

農作物を営んでいる家が多いトワイライトではあちこちで牛や豚を飼育したり、様々な野菜や果物を育てている畑や農園が多く見られ、静かで自然豊かな街だが人々に活気がある。
間違いなく火の王国の食を支えているとても魅力ある町だ。

のどかな景色を見ながら歩いているうちにレイとローラは依頼主の家に着いた。

「こんにちはー!」と大きな声でレイが呼びかけると、家のすぐ横にある広い畑から依頼主と思われる男の人が歩いてきた。

畑で何か作業していたであろうその男の人は、首にかけていたタオルで顔の汗を拭き持っていた鍬を止めてある作業車に立て掛けた。

「――見かけない子達だね。何かご用かな?」

「俺はレイ!こっちはローラ!俺達ハンターなんですけど、ゴブリンの討伐依頼で来ました!」

「おお!そうだったのかい。それはわざわざありがとう。私はその依頼を出したトワイライトの町長です。宜しくね若いハンターさん!」

町長さんは二人にそう言うと、事情を詳しく話すので中へどうぞとレイとローラを家に入れお茶を出した。
頂きますと二人がお茶を飲み町長さんも自分のお茶を一口飲むと、今回のクエストの依頼について話し始めた。

「―ここまで足を運んでくれてありがとう。早速依頼の事だけど……ここ二ヵ月程、すぐ横にある畑は勿論トワイライト全体で畑がゴブリンに荒らされるというのが何度かあってね……。
この町にも何人かハンターの者がおるからゴブリンを追い払うようにお願いしていたんだが、ここにおるハンター達もメインは農業の者が多くてね。討伐の経験は少なくていくらゴブリンといえども数や荒らしが増えてきてしまって手に負えないんだ……」

「じゃあそのゴブリン達を一掃すればいいんですね?俺に任せて下さい!」

レイはドンと胸を叩きやる気満々だったが、一つ気になる事があったローラは町長さんに聞いた。

「お話は分かりました。ゴブリンなら私達に任せて下さい。ただ一つ気になった事が……」

この先のローラの言葉を町長さんは分かっていたらしく確認するように聞いてきた。

「“何故急にゴブリンが来るようになったか”……だね?」

「はい。何かあったのでしょうか?」

「実はそこが私達も気になっていてね……。今までこんな事はなかったから理由が分からないんだ。だからもし可能であれば、ゴブリンの討伐とその出所を調べてもらえるととても助かるんだが……」

「分かりました!その原因も私達が調べてみます!」

ローラも困っている町長さんを見て助けたいと強く思った。
レイとローラは顔を合わせ「よし」と頷くと、町長さんにゴブリンが出てくる場所や数、時間帯などを聞き作戦を練った。

ゴブリンを待ち伏せたいが場所がバラバラで特定できない為、どちらか一人が飛んで上から見張り、もう一人は下で畑を見て回ろうという事になった。上と下からなら普通よりも早く見つけ出せるだろうと考えた二人は直ぐに行動に移した。

空担当になったローラはホウキでトワイライトを見渡せる程の高さまで上昇していき、下に残ったレイは町長さんに貰ったトワイライトの地図で近くにある畑から順に見て回る。

町長さんの話では朝、昼、晩と荒らされる時間帯はバラバラで、人がいるいないに関わらず急に現れて畑の農作物を食べたり奪っていくという。
いつ現れるかも分からないゴブリン達にレイとローラは警戒しつつも気長に待とうと話していたが、タイミングが良いのか悪いのか早くも動きが見られた―。

「――こちらローラ。東の方向にある雑木林で何か動いているのを発見直ぐに向かって!」

「――こちらレイ!了解した!すぐ現場に向かう!」

二人は耳に小型のイヤホンとマイクが付いた無線機で連絡を取り合っている。

常にお互いを確認できる程の距離と高さだったので大声で叫ぶなり魔力で合図するなり方法あったのだが、レイがまず形から入るのも大事だと警察やスパイのマネをした小型の無線機にしようと如何にも男の子な意見を出した。

直ぐに却下したローラだが、魔色0のレイではそもそも簡単な合図さえ魔法で出せないという結論にいたり仕方なく今回のスタイルを受け入れたのだ。
呆れた様子でローラは無線機を二人分魔法で創り出し一つをレイに渡した。
本来なら魔力を使えない自分を恥じるところだが、レイは警察やスパイにでもなりきったのか一人テンションが高かった。

取り敢えずその事はさて置いて、何やら動くものを見つけたローラとレイは雑木林の一番近くにある畑へと向かった。

雑木林の西から東へ動いているいくつかの影……。
高度を下げ“標的”をしっかり確認したローラが再び無線でレイに報告する。

「――こちらローラ…標的を確認!動いてそっちに向かっているのは三体の“ゴブリン”。私が飛んでいる真下の位置から真っ直ぐトワイライトへ向かっているわ!」

「――こちらレイ!報告感謝だローラ!ゴブリン達の先回りをする!雑木林を抜けた畑で落ち合おう!」

ゴブリンを確認したローラはスピードを上げレイの言った畑に降りる。
その数秒後に色々やる気満々でノリに乗っているレイも到着した。
二人はゴブリン達が抜けてくる雑木林の数十メートル手前で待ち構える。

「足早いわねアンタ。」

「運動神経はいいからな!しかも今はやる気も満ちているから更に速ぇ!」

「訳分かんない体の仕組みね……。一番はドラゴン食べて平気な所だけど。」

<どうでもいいがもうくるぞ>

くだらない会話をしている二人にゴブリンの魔力を感知していたドーランが言う。
それとほぼ同時にゴブリン三体が勢いよく雑木林を抜けレイ達の前に現れた―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜

かむら
ファンタジー
 剣持匠真は生来の不幸体質により、地球で命を落としてしまった。  その後、その不幸体質が神様によるミスだったことを告げられ、それの詫びも含めて匠真は異世界へと転生することとなった。  思ったよりも有能な能力ももらい、様々な人と出会い、匠真は今度こそ幸せになるために異世界での暮らしを始めるのであった。 ☆ゆるゆると話が進んでいきます。 主人公サイドの登場人物が死んだりなどの大きなシリアス展開はないのでご安心を。 ※感想などの応援はいつでもウェルカムです! いいねやエール機能での応援もめちゃくちゃ助かります! 逆に否定的な意見などはわざわざ送ったりするのは控えてください。 誤字報告もなるべくやさしーく教えてくださると助かります! #80くらいまでは執筆済みなので、その辺りまでは毎日投稿。

無属性魔術師、最強パーティの一員でしたが去りました。

ぽてさら
ファンタジー
 ヴェルダレア帝国に所属する最強冒険者パーティ『永遠の色調《カラーズ・ネスト》』は強者が揃った世界的にも有名なパーティで、その名を知らぬ者はいないとも言われるほど。ある事情により心に傷を負ってしまった無属性魔術師エーヤ・クリアノートがそのパーティを去っておよそ三年。エーヤは【エリディアル王国】を拠点として暮らしていた。  それからダンジョン探索を避けていたが、ある日相棒である契約精霊リルからダンジョン探索を提案される。渋々ダンジョンを探索しているとたった一人で魔物を相手にしている美少女と出会う。『盾の守護者』だと名乗る少女にはある目的があって―――。  個の色を持たない「無」属性魔術師。されど「万能の力」と定義し無限の可能性を創造するその魔術は彼だけにしか扱えない。実力者でありながら凡人だと自称する青年は唯一無二の無属性の力と仲間の想いを胸に再び戦場へと身を投げ出す。  青年が扱うのは無属性魔術と『罪』の力。それらを用いて目指すのは『七大迷宮』の真の踏破。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~

荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。 ========================= <<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>> 参加時325位 → 現在5位! 応援よろしくお願いします!(´▽`) =========================  S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。  ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。  崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。  そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。  今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。  そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。  それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。  ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。  他サイトでも掲載しています。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...