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~第3章 元凶と秘密~
44 失意の先に
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『本当に……。君達リルガーデンの人間には驚かされるよ。まさかやっとの思いで封印が解けたと思ったら、信じられない事にジークリートが人間の中に入っちゃうんだから無理もないよね! ハッハッハッハッ!
君の母親を見くびったよ。狙い通りジークリートの封印は解かせたけど、事もあろうか自分を助ける為じゃなく、息子である“君”と王国の人々を守る為だったからね。人間と言うのは何を考えているのか分からない。あれは本当に驚いた。自分がもう死ぬ寸前にも関わず他の者を優先するなんてさ――』
何で……?
ジークの封印を解いたのは母さんだったのか?
あんな大怪我で大量の血を流していたのに?
しかも俺や皆を助ける為?
そもそもリルガーデンが封印をしてきた一族っていうのは?
だったら俺の召喚でジークの封印が解けたのは嘘?
それに、ジークは今のを全部知っていたって事か?
「母さんは……俺を守る為にジークを……」
『本当に何も知らないみたいだね。ある意味すごいよ。それだけ母親や
ジークや多くの人に守られてきたんだ。大切にされているね。フフフ』
今の俺にはもうオロチの言葉が耳に入ってこなかった。
「だったら……もしかして母さんは……俺のせいで死んだ……? 自分じゃなくて……俺を助けたから……」
<それは断じて違うぞルカ!しっかりしろッ! 主の母親……エミリオは我の封印を解いた時に既に助からなかったのだ!>
そうか……。
やっぱりジークは俺の知らない事を知っていたんだな……。
……って事は、ジークの封印を解いたのも俺じゃなくて母さん……。
今ジークもそうハッキリ言ったよな……。
だったらやっぱり……俺なんかを助けようとしたから……母さんは……。
「お前知っていたんだなジーク……。何がどうなってるんだよ……」
<すまないルカ。今はただそれしか言えぬ。全てが終わったら主に全部話そうだから気を保つのだ!>
ジークにそう言われ改めて実感する。
今の自分は心にポカンと穴が空いた気分だ。
気持ちが全く追い付かない。
『フフフフ。私の話で楽しんでもらえたなら嬉しいよ。部外者の私は君達の詳しい事情なんて知らないが……母親が死んだのは君のせいだと思うよ』
――ズキン……ッ!
オロチのその一言が、今までのどんな強力な魔法よりも効いた。まるで心臓を鷲掴みにされ鋭い刃で突き刺された気分だ。
<黙れオロチッ! それ以上その軽い口を開くな!>
「やっぱり……母さんが死んだのは俺のせい……。だとしたら、俺は今まで何の為に何をしてきたんだ……」
<勘違いも甚だしい! ルカのせいである訳がない!
寧ろ我にだって原因はあるだろう。なにせ我の封印を続けてしまったからこそ、魔力が尽きてしまった……。だから絶対にルカのせいではない。前を向け!我らの敵は奴だぞッ!>
珍しくジークが取り乱しているな……。今まで隠していた事に負い目でも感じてるのか……?
そっか……。俺がオロチに殺されたらお前もいなくなるもんな……。そりゃ必死にもなるか……。
――シュゥゥゥ……。
<ル、ルカ……⁉>
様々な感情が一気に入り乱れ、俺は無意識の内にドラゴン化が解けていた。
『さて。愉快な話も終わって盛り上がってきたみたいだし、君も戦意喪失した様だね。大丈夫……私が直ぐに殺して母親の元へ逝かせてあげるよ。
フフフフッ……ハーハッハッハッハッ!死ね、ジークリートォォォッ!!』
不愉快な高笑いをしながら、オロチは元の姿に戻った俺を食い殺そうとその大きく鋭い牙で勢いよく飛び掛かってきた。
――シュバンッ!
全身の力が抜け、全てがどうでもよくなっていた俺は、向かってくるオロチの大きな口で嚙み殺された。
……かと思ったが、オロチの鋭い牙が俺に当たる刹那、突如“何か”が俺を庇う様に目の前に現れ、無残にもその何かが真っ二つに引き裂かれ地面に散った――。
「……ニ、ニクス……?」
俺の足元に落ちた何かが“ニクスだと”理解した瞬間……全ての時間が止まった錯覚に陥った――。
だが無論……。
1秒として時が止まる事など有り得ないのだ――。
<ニクスッ!>
「ニ、クス……ッ! なんで……⁉ 何してんだよお前ッ!!」
オロチの攻撃から俺を庇ったニクスは、体が真っ二つに引き裂かれ地面に落ちていた。
辛うじて僅かな意識を保ちながら、ニクスは小さな声で口を開いた。
「ルカ……さん……。無事で……良かった。大丈夫……ルカさんは悪く……ない……。オロチを倒して……全て……を……終わら……せ――」
切断されたニクスの体から僅かに炎が揺らめいていたが、それも風前の灯火……。最後に一瞬強く燃え上がった炎は、次の瞬間には輝きを失い灰と化した――。
「嘘だ……ろ……ッ。 ニク……ス……ッ!」
『邪魔が入ったな。自ら死ぬなど何たる愚かさだ。今度こそ……』
体勢を立て直したオロチは次こそ俺を殺そうと再び食いついてきた。
『死ねッ!』
「――“アイスマジック”!」
オロチの大きな口が再度俺に向かって来た瞬間、突如辺りが凍える様な寒さに包まれたと同時、俺の後ろから勢いよく無数の氷の槍が通過していき、その氷の槍は次々にオロチを襲った。
『雑魚の分際でちょろちょろと……』
凄まじく威力のある攻撃魔法だったが、オロチの頭1つとして傷が付いていなかった。
攻撃を放ったのは他でもないレベッカ。ただ呆然と立ち尽くしている俺の前に現れ、初めて見るであろう怒った表情と荒っぽい声で俺に怒鳴った。
「何してるのよルカッ! アイツに何言われたのか知らないけど、ちゃんとしなさいよ! 今は目の前の事だけ集中して!だから……ニクスがッ……!」
大きな瞳を涙で滲ませながら、震える声でレベッカはそう言った。
「レベッカ……すまないッ……! ち、違うんだ……俺はただッ……「――いい訳なんて聞きたくない! 約束したでしょ、皆で一緒に帰るって! なのにッ……なのに何で!……ゔゔッ……」
何をしているんだ俺は……。一体何がしたいんだ俺は……。俺のせいでニクスが……。レベッカもこんなに泣いているぞ……。そうだ。皆で約束した筈じゃないか……。生きて帰ると。それなのに何だコレは?俺は何をしている――。
『――ルカ。貴方は優しくて強い。冒険者になるというなら母さんと約束して……。どんな状況でも諦めない、大切なものを守れる真の強さを持った人間になると――」
母さん……。
俺の脳裏に、何時かの母さんとの思い出が駆け巡った。
そうだよな……。
今更どうしようもない事を何グダグダ考えているんだ俺は。これじゃあ全てを終わらせても、堂々と母さんに顔向け出来ないじゃないか。不甲斐ない俺のせいでニクスもいなくなってしまった……。レベッカが怒るのも当然だ。
本当にごめんニクス……。お前は命懸けで俺に伝えようとしてくれたんだよな……。ごめんな――。
「悪かった……ジーク、レベッカ!」
「ルカ……」
<やっとか馬鹿者>
ニクスと母さんのお陰で正気を取り戻した俺は、目の前のレベッカを自分の後ろに引っ張った。
「ありがとうレベッカ。お陰で目が覚めた。ごめんな心配かけて。もう大丈夫だ――」
「ゔゔ……ルカぁ……」
『ん? なんか元に戻った? あーあ、折角面白い顔していたのに残念だね』
俺がやるべきことはただ1つ。
「ジーク、絶対にオロチ倒すぞ」
<当たり前だ>
『なんだ、本当に立ち直ったのか。フフフフ。それなら“コレ”はどうかな――?』
「「……⁉」」
突如、オロチは再び美しい青年の姿に戻ったかと思いきや、直後にまたグニャグニャと体を変形させると、次の瞬間“奴”が現れた。
「グ、グレイ……⁉」
君の母親を見くびったよ。狙い通りジークリートの封印は解かせたけど、事もあろうか自分を助ける為じゃなく、息子である“君”と王国の人々を守る為だったからね。人間と言うのは何を考えているのか分からない。あれは本当に驚いた。自分がもう死ぬ寸前にも関わず他の者を優先するなんてさ――』
何で……?
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あんな大怪我で大量の血を流していたのに?
しかも俺や皆を助ける為?
そもそもリルガーデンが封印をしてきた一族っていうのは?
だったら俺の召喚でジークの封印が解けたのは嘘?
それに、ジークは今のを全部知っていたって事か?
「母さんは……俺を守る為にジークを……」
『本当に何も知らないみたいだね。ある意味すごいよ。それだけ母親や
ジークや多くの人に守られてきたんだ。大切にされているね。フフフ』
今の俺にはもうオロチの言葉が耳に入ってこなかった。
「だったら……もしかして母さんは……俺のせいで死んだ……? 自分じゃなくて……俺を助けたから……」
<それは断じて違うぞルカ!しっかりしろッ! 主の母親……エミリオは我の封印を解いた時に既に助からなかったのだ!>
そうか……。
やっぱりジークは俺の知らない事を知っていたんだな……。
……って事は、ジークの封印を解いたのも俺じゃなくて母さん……。
今ジークもそうハッキリ言ったよな……。
だったらやっぱり……俺なんかを助けようとしたから……母さんは……。
「お前知っていたんだなジーク……。何がどうなってるんだよ……」
<すまないルカ。今はただそれしか言えぬ。全てが終わったら主に全部話そうだから気を保つのだ!>
ジークにそう言われ改めて実感する。
今の自分は心にポカンと穴が空いた気分だ。
気持ちが全く追い付かない。
『フフフフ。私の話で楽しんでもらえたなら嬉しいよ。部外者の私は君達の詳しい事情なんて知らないが……母親が死んだのは君のせいだと思うよ』
――ズキン……ッ!
オロチのその一言が、今までのどんな強力な魔法よりも効いた。まるで心臓を鷲掴みにされ鋭い刃で突き刺された気分だ。
<黙れオロチッ! それ以上その軽い口を開くな!>
「やっぱり……母さんが死んだのは俺のせい……。だとしたら、俺は今まで何の為に何をしてきたんだ……」
<勘違いも甚だしい! ルカのせいである訳がない!
寧ろ我にだって原因はあるだろう。なにせ我の封印を続けてしまったからこそ、魔力が尽きてしまった……。だから絶対にルカのせいではない。前を向け!我らの敵は奴だぞッ!>
珍しくジークが取り乱しているな……。今まで隠していた事に負い目でも感じてるのか……?
そっか……。俺がオロチに殺されたらお前もいなくなるもんな……。そりゃ必死にもなるか……。
――シュゥゥゥ……。
<ル、ルカ……⁉>
様々な感情が一気に入り乱れ、俺は無意識の内にドラゴン化が解けていた。
『さて。愉快な話も終わって盛り上がってきたみたいだし、君も戦意喪失した様だね。大丈夫……私が直ぐに殺して母親の元へ逝かせてあげるよ。
フフフフッ……ハーハッハッハッハッ!死ね、ジークリートォォォッ!!』
不愉快な高笑いをしながら、オロチは元の姿に戻った俺を食い殺そうとその大きく鋭い牙で勢いよく飛び掛かってきた。
――シュバンッ!
全身の力が抜け、全てがどうでもよくなっていた俺は、向かってくるオロチの大きな口で嚙み殺された。
……かと思ったが、オロチの鋭い牙が俺に当たる刹那、突如“何か”が俺を庇う様に目の前に現れ、無残にもその何かが真っ二つに引き裂かれ地面に散った――。
「……ニ、ニクス……?」
俺の足元に落ちた何かが“ニクスだと”理解した瞬間……全ての時間が止まった錯覚に陥った――。
だが無論……。
1秒として時が止まる事など有り得ないのだ――。
<ニクスッ!>
「ニ、クス……ッ! なんで……⁉ 何してんだよお前ッ!!」
オロチの攻撃から俺を庇ったニクスは、体が真っ二つに引き裂かれ地面に落ちていた。
辛うじて僅かな意識を保ちながら、ニクスは小さな声で口を開いた。
「ルカ……さん……。無事で……良かった。大丈夫……ルカさんは悪く……ない……。オロチを倒して……全て……を……終わら……せ――」
切断されたニクスの体から僅かに炎が揺らめいていたが、それも風前の灯火……。最後に一瞬強く燃え上がった炎は、次の瞬間には輝きを失い灰と化した――。
「嘘だ……ろ……ッ。 ニク……ス……ッ!」
『邪魔が入ったな。自ら死ぬなど何たる愚かさだ。今度こそ……』
体勢を立て直したオロチは次こそ俺を殺そうと再び食いついてきた。
『死ねッ!』
「――“アイスマジック”!」
オロチの大きな口が再度俺に向かって来た瞬間、突如辺りが凍える様な寒さに包まれたと同時、俺の後ろから勢いよく無数の氷の槍が通過していき、その氷の槍は次々にオロチを襲った。
『雑魚の分際でちょろちょろと……』
凄まじく威力のある攻撃魔法だったが、オロチの頭1つとして傷が付いていなかった。
攻撃を放ったのは他でもないレベッカ。ただ呆然と立ち尽くしている俺の前に現れ、初めて見るであろう怒った表情と荒っぽい声で俺に怒鳴った。
「何してるのよルカッ! アイツに何言われたのか知らないけど、ちゃんとしなさいよ! 今は目の前の事だけ集中して!だから……ニクスがッ……!」
大きな瞳を涙で滲ませながら、震える声でレベッカはそう言った。
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そうだよな……。
今更どうしようもない事を何グダグダ考えているんだ俺は。これじゃあ全てを終わらせても、堂々と母さんに顔向け出来ないじゃないか。不甲斐ない俺のせいでニクスもいなくなってしまった……。レベッカが怒るのも当然だ。
本当にごめんニクス……。お前は命懸けで俺に伝えようとしてくれたんだよな……。ごめんな――。
「悪かった……ジーク、レベッカ!」
「ルカ……」
<やっとか馬鹿者>
ニクスと母さんのお陰で正気を取り戻した俺は、目の前のレベッカを自分の後ろに引っ張った。
「ありがとうレベッカ。お陰で目が覚めた。ごめんな心配かけて。もう大丈夫だ――」
「ゔゔ……ルカぁ……」
『ん? なんか元に戻った? あーあ、折角面白い顔していたのに残念だね』
俺がやるべきことはただ1つ。
「ジーク、絶対にオロチ倒すぞ」
<当たり前だ>
『なんだ、本当に立ち直ったのか。フフフフ。それなら“コレ”はどうかな――?』
「「……⁉」」
突如、オロチは再び美しい青年の姿に戻ったかと思いきや、直後にまたグニャグニャと体を変形させると、次の瞬間“奴”が現れた。
「グ、グレイ……⁉」
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