召喚出来ない『召喚士』は既に召喚している~ドラゴンの王を召喚したが誰にも信用されず追放されたので、ちょっと思い知らせてやるわ~

きょろ

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~第2章 門出と仲間~

33 レベッカ絶好調

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~ドクロシーフの拠点~

「――ここだな」
「如何にもって感じだよね」
 
 ドラシエル王国とイディアナ王国の国境付近の森の奥。バロさんから貰った地図の通り、奴らドクロシーフの拠点と思われる、趣味の悪い1つの建物が建っていた。

 外観にデカデカとドクロマークが描かれているし、その建物の周りにいる奴らも出入りしてい奴らも皆ドクロのマークを付けているから確定だ。これ以上無いほど確定。こんな森の奥を拠点にしているのに、あのセンスのない拠点。隠れたいのか目立ちたいのかもう訳分からん。

「クソの集まりか……よし。派手にかましてくれレベッカ」
「え、いいの? よ~し。じゃあいきなり高火力の攻撃魔法出しちゃおうっと!」
<なんだ雑魚ばかりか。我は今回パスだ。寝る>

 レベッカはやる気満々。ジークはサボり。
 ギガントオークからまともにレベッカの戦いも見ていなかったから、またどこまで成長したか少し楽しみだ。

「“アイスド・メテオール”――!」

 次の瞬間、レベッカが杖を振り下ろすや否や、無数の氷塊が流星の如く拠点一帯に降り注いだ。

 ――ズガガガガガガガガガガガッ!
「ぐはッ……!」
「な、何だ⁉」
「うわぁぁぁッ!」

 静かだった辺りは一気に叫び声に包まれた。レベッカの放った氷塊はただ降り注ぐだけでなく、落下した氷塊が更に周囲を凍らせていった。

「凄いなレベッカ」
「フフフフ!」

 クレーグが特注で改造してくれたらしい杖によって、魔法の威力も上がってるみたい。これは氷魔法だけで見ればSSSランク並みの威力だぞ。やるな……。もう半壊はしてるんじゃないか?

「よし。そろそろ中に乗り込もう」
「今ので凄いスッキリ!」

 こんな状況なのに、その可愛い笑顔に一瞬見惚れてしまった。
 ……って、何考えてんだ俺。集中しろ。

「さて……“どこだ”?」

 俺は抜いたゼロフリードに雷を纏わせながら匂いを追っていた。狙うは勿論ニクスを酷い目に遭わせた奴らだ。あの時ニクスと首輪に残っていた僅かな匂いを俺はしっかりと覚えている。何時か出会った時に為にとな――。

 数は全部で4人……。
 建物の中はレベッカの奇襲で大いに混乱中。俺を敵だと認識して攻撃してくる奴も多くいるがそんな連中は一先ず無視。何よりも先ず目的の4人を見つける。

「ここだ――」

 不意に漂ってきた目的の匂い。俺はそれを逃さなかった。

 匂いを辿って行きついたのはとある部屋。そこだけ一部が異様に暗く、扉も頑丈な鉄格子だ。更に奥から幾つもの匂いや魔力を感じた。

「早くズラかるぞ!」
「おい待て、こいつらどうするんだよッ⁉」
「知らねぇよ!それより自分達の命が優先だろうが普通!」
「どこの組織の敵襲だ?早くしないと此処も見つかッ……「――よお、なんか盛り上がってるな」
「「……⁉」」

 鉄格子の扉を開けて中に入ると、そこには幾つもの牢屋があった。逃げようとしていた男達を呼び止め何気なく牢屋を見渡すと、そこには何十体ものモンスターが捕まえられていた。

 ニクスに付いていた首輪と同じものがモンスター達にも付けられているから、やっぱコイツらだな。それにしても……。

 俺は思わず自分の目を疑った。
 何故なら……牢屋に閉じ込められたモンスターの他に、あろう事か“人”まで入れられていたのだ――。

「これが冒険者の……いや、人のする行為か……?」

 刹那、俺の中で何かがキレた――。

「なんだテメェは!」
「驚かせやがって!こんなガキなら俺達で片付けるぞ!」
「ああ、そうしよう!まだ入り口の方が騒がしいから、他の敵が来る前に逃げるぞ!」

 体の奥底から湧き上がってきたドス黒い衝動を、俺はそのまま覇気で飛ばした。

 ――ビクンッ……!
「<動くんじゃねぇ>」

 ジークの覇気で動けなくった男達に、俺は目の前まで近寄った。

「あッ……あが……ッ……!」

 男達は4人共ただただ震えるばかりで何も動けない。

「<お前ら、前にフェニックスを捕まえて餌にしたか? >」
「は、はい……」

 覇気によって本能的に逆らえない男達は、自分の意志に反して出た言葉に対し慌てて口を塞いだ。だがそんなの意味はない。

「<この牢屋にいる人やモンスターは何だ? 何してやがる>」
「こ、これは商品でして……」
「裏オークションで売買するんです……」
「全部“ボス”の命令で……」

 ボス?
 成程、そりゃ組織なんだから頭がいるか。こんな末端じゃ何人倒しても解決にならないもんな。

「<そのボスとやらは何処だ>」
「う、上です……!」
「1番上の階の、奥の部屋です……」
「<そうか。じゃあくたばれ――>」

 ボスの場所を聞き出し、俺はゼロフリードを男達に軽く当てた。

 ――バチバチバチバチッ!
「「ぐあぁぁぁッ……!!」」

 雷を食らった男達は感電し倒れ込む。ニクスにした事をお前らも味わえ。勿論俺の怒りも加わってるから威力は増してるけどな。だが致命的なダメージではないだろう。加減したから暫く感電を味わっていろクソ共が。

「――大丈夫か? 直ぐにここから出してやるからな皆。少しだけ待っててくれ。ボスを倒して安全になったらまた戻ってくるよ」
「分かりました……ありがとうございます……!」

 俺は牢屋に囚われていた人達にそう言い残し、最上階にいるボスの元へと向かった。

 本当に胸糞悪い連中だ……。早くぶっ飛ばして皆を出してあげないと。

「ルカ!」
「お、レベッカか」

 最上階を目指し階段を駆け上っていると、上の階に既にレベッカがいた。周りはそこかしこに倒れている者達がおり、所々凍り漬けにもなっていた。レベッカが攻撃したことは一目瞭然だな。

「全部1人でやったの?」
「勿論! 久々の解放感」
「そうか。俺今から上にいるボスのところに行くけど」
「そうなんだね。やっぱり親玉がいたんだ。じゃあもうここには敵がいないみたいだし、私は下に戻って足止めしておく!」
「分かった、ありがとう。でも無茶はするなよ。何かあったらすぐ呼んでくれ」
「うん!」

 レベッカは元気よく返事をして、階段を下って行った。余程調子がいいらしい。一切困った様子もなかったし傷1つ付いていなかったな。やはり心配しなくて大丈夫みたいだ。俺もさっさと終わらせよう。

 再び階段を駆け上がり、一気に最上階まで登った。すると廊下の1番奥の部屋から、明らかに異質な空気を纏った魔力を感じた。

「いるな……」

 ゆっくりと部屋の扉に近付き、バッと扉を開けた。

「ヒャハハハ!」

 ――ガキィィィン!
 扉を開けて1歩部屋に踏み込んだ瞬間、不気味な笑い声と共に鋭利な刃物が俺を襲ってきたが、手にしていたゼロフリードでその攻撃を受け止め武器ごと奴を弾き返した。

「こりゃ珍しく強いのが現れたなぁ! ヒャハハハ」
「お前がボスか」
「あぁ?それがどうした?」

 ドクロのマークが描かれたマントの様なものを羽織り、男は手に短剣を握っている。見るからにイカれた風貌だが、速さも威力もそこそこあったな。こんな組織とはいえ、腐ってもトップか。

「長居する気分じゃないからな……。直ぐにお前を倒してこんなところ潰してやるよ」
「なんだテメェはよ。ヒャハハハ、頭可笑しいのか?」

 それはお前だろと思いながら、俺は間髪入れず奴に炎魔法を放った。

「“プロメテウス”」

 ――シュゥゥン。
「ん……?」
「ヒャハハハ! 変わった魔力してるなぁお前!」

 俺は今確かに奴目掛けて炎を飛ばした。だがその炎は奴が向けた掌に吸い込まれる様にして消えてしまった。前にクレーグと戦った時ととても似ている。だけど奴は武器じゃなく、確実に手で吸収した……?

「魔法か?」
「もうビビったか! そうさ、これは空間魔法。どんな魔力も攻撃も封じ込めるのさ。ヒャハハハ!」
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