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~第2章 門出と仲間~
32 国王の策略1セット
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「大丈夫だよニクス。国王は何か考えがある筈なんだ。俺もまだ聞いていないけど、ニクスの事は絶対に俺が守る。だから一緒に行こう」
「私もついてるよニクス!」
ニクスは余程嫌なのか黙り込んでしまった。
「彼女に更に重荷を与える様で申し上げにくいのですが……。
イディアナ王国からの要望では、何としてでもフェニックスをヨーハン遺跡に戻してくれとの事です。
彼女が行方不明となってから、フェニックスの長がイディアナ王国に使いを向かわせたらしく、直ぐにニクスをヨーハン遺跡に戻せと言っ要求されたそうですよ。もし従わなければ王国を焼き払うとまで……。
イディアナ王国からした寝耳に水でしたが、必死に探してやっとの思いでここにいる事を突き止めたと、私と同じ諜報員をしている彼が泣いて知らせてくれたのです」
思った以上に凄い事になってるな……。そりゃいきなり王国焼くなんて言われたら焦るよな。
「分かりました……」
「え?」
聞き間違いじゃなければ、今言葉を発したのはニクス。
「正直……何時かはこの日が来るだろうと思っていました……。自分でもケジメを着けなければいけないと思いながら、このままうやむやに時が過ぎ去ってくれればラッキーだなとも思っていました……」
「ニクス……」
「でも、これ以上ルカさん達に迷惑を掛けたくありません。ただ……自分の事なのに、私だけで行く勇気も覚悟もありません。
迷惑と分かっていながら、情けないと分かっていながら、それでもまだ負担を掛けてしまいますが、私と一緒に来てくれませんかッ……ルカさん、レベッカさん!お願い致します!勿論我が儘を言ってる事は分かってます!でも……どうかお願い致します!」
声を震わせながらニクスは深々と頭を下げていた。
小刻みに震える体から、様々な感情がヒシヒシと伝わってくる。
ニクス……。
俺達はもう仲間だ。家族同然のな。だから我が儘を言ってもいいし、迷惑を掛けたっていい。そもそもお前は何も悪くないんだから。
「当たり前でしょニクス! 寧ろ私がその馬鹿にしたフェニックス達をやっつけてやるわ!」
「おいおい……それはそれで大問題になるぞ」
まぁレベッカと気持ちは同じだけどな。
「ありがとうございます……!レベッカさん」
「それじゃあ取り敢えず行く事で決定だな。バロさん、俺達もニクスと一緒にヨーハン遺跡に向かいますよ」
「分かりました。ありがとうございます。この事はしかと国王に伝えさせて頂きます。では――」
そう言ってバロさんは瞬く間に消え去ってしまった。
「もう泣くなニクス。何が合っても俺達が着いてる。明日に備えて今日はもう休むぞ」
「は、はい!」
こうして、明日ヨーハン遺跡に向かう事が決まった。
♢♦♢
~ヨーハン遺跡~
「――確かに連れてきましたからね」
念を押す様に言ったのはイディアナ王国の諜報員。
彼とバロさんは、ニクスがしっかりとヨーハン遺跡に来た事を確認する為の互いにとっての見届け人的役割。
目の前には長からイディアナ王国への使いに出された1匹のフェニックスもいる。そしてコイツがニクスを置き去りにした全ての始まりの奴。今すぐ丸焼きにでもしてやりたいコイツの名前はザックと言うらしい。どうでもいいがな。
「いいですか? しっかりと貴方達の長に伝えて下さいね!王国を焼き払うなんて2度と言わないで下さい!では私は帰ります!」
そう言ってイディアナ王国の諜報員の人は帰って行った。
「じゃあ私も国王に報告しに戻りますね。後は任せますねルカ君」
「はい」
バロさんもそう言って王国に戻って行った。
「お前……本当にニクスか……⁉ 人化出来たのかよ……」
「だから何? 今はもう飛べるし魔法も使えるわよ」
「なッ……⁉」
ザックとか言う奴は平然とニクスに話し掛けていたが、ニクスは目も合わせずあしらう様に言葉を帰していた。そして不死鳥だからよく感情が分からないが、何処となくこのザックと言う奴は機嫌が悪そうだ。
「おい、早く長のところへ案内しろ下っ端」
「何⁉ ムカつく人間だ…… チッ、こっちに来い」
自然と俺の態度も悪くなっていたが、コイツがした事を踏まえれば当然だろう。生きてるだけ有難いと思え。
そう思いながらコイツの後に付いて行くと、広く空けた場所に出た。そしてその奥にニクスの何倍も大きいフェニックスの姿があった――。
「戻って来たようですねニクス」
これがフェニックスの長である“バーレーン”か……。
ニクスの赤い毛の翼と違い、バーレーンの翼はユラユラと炎が纏われていた。初めて見たが凄い……しかも何か神秘的だ。ちょっと近づき過ぎると熱いけどな。ここでも熱波が熱い。
「お言葉ですがバーレーン様……私はここに戻ったのではありません!自分なりにケジメをつけに来たのです!」
「……」
ニクスはバーレーンにハッキリと意思表明をした。こんなに堂々としているニクスの姿に驚いたが、更に驚かされたのはバーレーン。暫し沈黙した後、静かに口を開いてこう言った。
「――そうですか。後ろにいる彼らが貴方の仲間ですかニクス」
「はい!ルカさんとレベッカさんは私の命の恩人であり、私にとってかけがえのない存在です!」
「分かりました。ニクス、貴方がここを旅立つというのなら止めません。ですが、貴方の仲間がそれに値するかどうか……私に証明してみせなさい」
バーレーンはそう言いながら俺達の方を向いた。
おっと。何故急に矛先が俺達にきた?
「証明とは……?」
「貴方達がニクスの仲間に相応しいと分かる為に、ある者達を倒してほしいのです」
「ある者達?」
「彼らの名は“ドクロシーフ”。
イディアナ王国の冒険者と呼ばれる者達で、モンスターや人間の非道な討伐や売買を繰り返している愚か者集団。私の可愛いニクスをモンスターの餌にもした、非常に許しがたい者達です――」
これは話が一気にまとまった。思いがけない偶然が重なり過ぎて何と言っていいか分からないが、一言で言うなら“賛成”です。はい。
「ハハハハ、なぁんだ。何かと思えばそんな事かよ。こりゃ願ってもない展開だ。俺も丁度ソイツらに用があるんだよな」
「では頼みましたよルカ、レベッカ。本来であれば、私自ら制裁を加えたいのですが、イディアナ王国の民に手を出してはならないと言う制約が私には課せられています」
なんだその制約は……? バーレーンもバーレーンで訳ありって事か?
「そうなんだな……。でもイディアナ王国を焼き払うって……」
「ええ。制約は民ですので、別に“王国”は焼けます」
ほぉ~。これはまた恐ろしい。物は言いようって訳ね。
「まぁ分かったよ。取り敢えず今から直ぐドクロシーフとかいう奴らを全員潰してッ……「――ルカ君、国王から新たな伝言です」
うわッ! ビックリして声が出なかった。
突如姿を現したのはバロさん。バロさんは何時もこうして突如気配もなく現れる。秘密裏に動く事が多いからという理由らしいが、如何せん毎回心臓に悪い。これは何度経験しても慣れないんだよな……。しかもこのタイミングじゃないとダメかな?
「ドクロシーフの拠点が此処との事です。そして、一切の手加減をせずぶっ飛ばせと――」
俺が驚いている事や目の前いるバーレーンに全く構うことなく、バロさんは俺に拠点の位置が記された紙と物騒なメッセージを残すなりまた消え去った。
成程……。
段々繋がってきたぞ……。
余りにタイミングが良すぎる上に全く無駄もない。しかも流れる様に事が進んでいる……。これは恐らく国王が元から計算していた事だな……。
聞いた感じドクロシーフとやらは結構悪名高いから、何時か潰そうと思っていたところにタイミング良く俺が紛れ込んでしまったのか――。
くそ……。ここまでが国王の策略の1セットか……。
まぁいいや。どの道ニクスに酷い事した奴らだからな。寧ろ俺が直接仕返し出来るならラッキーだ。まんまと国王にハメられたが結果オーライ。逆に言えば俺が美味しいとこ取りだぜ。
「よし。そうと分かれば全開で行こうじゃないかレベッカ」
「そうだね! 最近ずっと繊細なコントロールばかりでストレス溜まってたから、今日は全部発散させちゃう!」
<空回りだけは止めろよ……>
「了解ジークちゃん!」
こうして、俺達は直ぐに紙に記されたドクロシーフの拠点へと向かった――。
「私もついてるよニクス!」
ニクスは余程嫌なのか黙り込んでしまった。
「彼女に更に重荷を与える様で申し上げにくいのですが……。
イディアナ王国からの要望では、何としてでもフェニックスをヨーハン遺跡に戻してくれとの事です。
彼女が行方不明となってから、フェニックスの長がイディアナ王国に使いを向かわせたらしく、直ぐにニクスをヨーハン遺跡に戻せと言っ要求されたそうですよ。もし従わなければ王国を焼き払うとまで……。
イディアナ王国からした寝耳に水でしたが、必死に探してやっとの思いでここにいる事を突き止めたと、私と同じ諜報員をしている彼が泣いて知らせてくれたのです」
思った以上に凄い事になってるな……。そりゃいきなり王国焼くなんて言われたら焦るよな。
「分かりました……」
「え?」
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「正直……何時かはこの日が来るだろうと思っていました……。自分でもケジメを着けなければいけないと思いながら、このままうやむやに時が過ぎ去ってくれればラッキーだなとも思っていました……」
「ニクス……」
「でも、これ以上ルカさん達に迷惑を掛けたくありません。ただ……自分の事なのに、私だけで行く勇気も覚悟もありません。
迷惑と分かっていながら、情けないと分かっていながら、それでもまだ負担を掛けてしまいますが、私と一緒に来てくれませんかッ……ルカさん、レベッカさん!お願い致します!勿論我が儘を言ってる事は分かってます!でも……どうかお願い致します!」
声を震わせながらニクスは深々と頭を下げていた。
小刻みに震える体から、様々な感情がヒシヒシと伝わってくる。
ニクス……。
俺達はもう仲間だ。家族同然のな。だから我が儘を言ってもいいし、迷惑を掛けたっていい。そもそもお前は何も悪くないんだから。
「当たり前でしょニクス! 寧ろ私がその馬鹿にしたフェニックス達をやっつけてやるわ!」
「おいおい……それはそれで大問題になるぞ」
まぁレベッカと気持ちは同じだけどな。
「ありがとうございます……!レベッカさん」
「それじゃあ取り敢えず行く事で決定だな。バロさん、俺達もニクスと一緒にヨーハン遺跡に向かいますよ」
「分かりました。ありがとうございます。この事はしかと国王に伝えさせて頂きます。では――」
そう言ってバロさんは瞬く間に消え去ってしまった。
「もう泣くなニクス。何が合っても俺達が着いてる。明日に備えて今日はもう休むぞ」
「は、はい!」
こうして、明日ヨーハン遺跡に向かう事が決まった。
♢♦♢
~ヨーハン遺跡~
「――確かに連れてきましたからね」
念を押す様に言ったのはイディアナ王国の諜報員。
彼とバロさんは、ニクスがしっかりとヨーハン遺跡に来た事を確認する為の互いにとっての見届け人的役割。
目の前には長からイディアナ王国への使いに出された1匹のフェニックスもいる。そしてコイツがニクスを置き去りにした全ての始まりの奴。今すぐ丸焼きにでもしてやりたいコイツの名前はザックと言うらしい。どうでもいいがな。
「いいですか? しっかりと貴方達の長に伝えて下さいね!王国を焼き払うなんて2度と言わないで下さい!では私は帰ります!」
そう言ってイディアナ王国の諜報員の人は帰って行った。
「じゃあ私も国王に報告しに戻りますね。後は任せますねルカ君」
「はい」
バロさんもそう言って王国に戻って行った。
「お前……本当にニクスか……⁉ 人化出来たのかよ……」
「だから何? 今はもう飛べるし魔法も使えるわよ」
「なッ……⁉」
ザックとか言う奴は平然とニクスに話し掛けていたが、ニクスは目も合わせずあしらう様に言葉を帰していた。そして不死鳥だからよく感情が分からないが、何処となくこのザックと言う奴は機嫌が悪そうだ。
「おい、早く長のところへ案内しろ下っ端」
「何⁉ ムカつく人間だ…… チッ、こっちに来い」
自然と俺の態度も悪くなっていたが、コイツがした事を踏まえれば当然だろう。生きてるだけ有難いと思え。
そう思いながらコイツの後に付いて行くと、広く空けた場所に出た。そしてその奥にニクスの何倍も大きいフェニックスの姿があった――。
「戻って来たようですねニクス」
これがフェニックスの長である“バーレーン”か……。
ニクスの赤い毛の翼と違い、バーレーンの翼はユラユラと炎が纏われていた。初めて見たが凄い……しかも何か神秘的だ。ちょっと近づき過ぎると熱いけどな。ここでも熱波が熱い。
「お言葉ですがバーレーン様……私はここに戻ったのではありません!自分なりにケジメをつけに来たのです!」
「……」
ニクスはバーレーンにハッキリと意思表明をした。こんなに堂々としているニクスの姿に驚いたが、更に驚かされたのはバーレーン。暫し沈黙した後、静かに口を開いてこう言った。
「――そうですか。後ろにいる彼らが貴方の仲間ですかニクス」
「はい!ルカさんとレベッカさんは私の命の恩人であり、私にとってかけがえのない存在です!」
「分かりました。ニクス、貴方がここを旅立つというのなら止めません。ですが、貴方の仲間がそれに値するかどうか……私に証明してみせなさい」
バーレーンはそう言いながら俺達の方を向いた。
おっと。何故急に矛先が俺達にきた?
「証明とは……?」
「貴方達がニクスの仲間に相応しいと分かる為に、ある者達を倒してほしいのです」
「ある者達?」
「彼らの名は“ドクロシーフ”。
イディアナ王国の冒険者と呼ばれる者達で、モンスターや人間の非道な討伐や売買を繰り返している愚か者集団。私の可愛いニクスをモンスターの餌にもした、非常に許しがたい者達です――」
これは話が一気にまとまった。思いがけない偶然が重なり過ぎて何と言っていいか分からないが、一言で言うなら“賛成”です。はい。
「ハハハハ、なぁんだ。何かと思えばそんな事かよ。こりゃ願ってもない展開だ。俺も丁度ソイツらに用があるんだよな」
「では頼みましたよルカ、レベッカ。本来であれば、私自ら制裁を加えたいのですが、イディアナ王国の民に手を出してはならないと言う制約が私には課せられています」
なんだその制約は……? バーレーンもバーレーンで訳ありって事か?
「そうなんだな……。でもイディアナ王国を焼き払うって……」
「ええ。制約は民ですので、別に“王国”は焼けます」
ほぉ~。これはまた恐ろしい。物は言いようって訳ね。
「まぁ分かったよ。取り敢えず今から直ぐドクロシーフとかいう奴らを全員潰してッ……「――ルカ君、国王から新たな伝言です」
うわッ! ビックリして声が出なかった。
突如姿を現したのはバロさん。バロさんは何時もこうして突如気配もなく現れる。秘密裏に動く事が多いからという理由らしいが、如何せん毎回心臓に悪い。これは何度経験しても慣れないんだよな……。しかもこのタイミングじゃないとダメかな?
「ドクロシーフの拠点が此処との事です。そして、一切の手加減をせずぶっ飛ばせと――」
俺が驚いている事や目の前いるバーレーンに全く構うことなく、バロさんは俺に拠点の位置が記された紙と物騒なメッセージを残すなりまた消え去った。
成程……。
段々繋がってきたぞ……。
余りにタイミングが良すぎる上に全く無駄もない。しかも流れる様に事が進んでいる……。これは恐らく国王が元から計算していた事だな……。
聞いた感じドクロシーフとやらは結構悪名高いから、何時か潰そうと思っていたところにタイミング良く俺が紛れ込んでしまったのか――。
くそ……。ここまでが国王の策略の1セットか……。
まぁいいや。どの道ニクスに酷い事した奴らだからな。寧ろ俺が直接仕返し出来るならラッキーだ。まんまと国王にハメられたが結果オーライ。逆に言えば俺が美味しいとこ取りだぜ。
「よし。そうと分かれば全開で行こうじゃないかレベッカ」
「そうだね! 最近ずっと繊細なコントロールばかりでストレス溜まってたから、今日は全部発散させちゃう!」
<空回りだけは止めろよ……>
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