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~第1章 追放と召喚~
一方、グレイパーティは…②
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グレイ達一行はソンモンキーの生息する山の中腹まで順調に来ていた。ソンモンキーは指定ランクがAランクと強いモンスターであったが、“本来”のグレイパーティならば余裕で倒せるモンスターだ。
しかし、昨日からの不運なモンスターとの連戦に加え、睡眠もままならず夜通しスカルウルフと戦ったせいで万全の状態ではない。それでもグレイ達を突き動かしていたのは、SSSランクパーティーになるという野望と各々の目がくらんだ欲望であった――。
「準備はいいかお前ら!(俺はSSSランクパーティーのリーダーとなって全てを手にしてやる!)」
「おお、何時でもイケるぜ!(SSSランクになったら金も酒も好き放題!)」
「聞くまでもねぇだろ!(俺はSSSランクになったら世界中の女抱いてやるぜ!グハハハハ!)」
「さっさと倒すわよ!(とっととSSSランクになってこんな怠いクエストなんて行かず、毎日買い物しまくるんだから!)」
欲望のまま気の向くまま。
未だに自分達の取っている行動が的確ではないと気付かないグレイ達は、ソンモンキーとの討伐に備えていた。ソンモンキーを倒すにはそれ相応の実力が必要となる。何度も言うが、本来であれば全く苦にならない相手であるが、今のグレイ達は果たして――。
そのまま少し進んだグレイ達は、遂に目的のソンモンキーと遭遇するのだった。
「――出たぞ、ソンモンキー! 」
グレイの掛け声で、一気に緊張感が高まった。
「ラミア!炎魔法だ!」
「任せて……ファイアショット!」
続けざまのグレイの号令で、ラミアはソンモンキーの弱点である炎魔法の攻撃を放った。無数の炎の弾丸がソンモンキーに見事直撃。巻き上がった硝煙の中、ゴウキンの渾身の一撃で大ダメージを狙いに行った。
「オラァァッ!」
視界が煙で覆われて見づらいが、鈍い音が響いた事によってゴウキンの攻撃が当たったと分かった。煙の中で動きの止まるソンモンキーを更にブラハムが槍で急所を狙う。
「食らえッ!」
そして最後はグレイの剣――。
何百回と重ねて来たこの連携攻撃の流れに、一切の狂いはなかった。何時も通りグレイの攻撃でフィニッシュだ。
……かに思われたが……。
「何ッ⁉ 倒れていない……!」
確かに手応えは何時も通り。
グレイはソンモンキーが倒れるどころか、全くダメージを受けていないことに驚きを隠せずにいた。それは他のメンバーもまた然り。
「噓でしょ⁉」
「どうなってんだよッ!」
瞬く間に全員の顔が青ざめた。
「有り得ねぇ!あれだけ俺達の連携攻撃をまともに食らってダメージすら無いだとッ⁉」
『ウキキ?』
ソンモンキーはまるで「何かしたか?」とでも言いたそうな表情でグレイ達を見た。
そして、グレイがヤバいと思ったその瞬間には時すでに遅し……。グレイはソンモンキー強烈な尻尾攻撃を受け勢いよくぶっ飛ばされた。
「ぐはッ……⁉」
「「グレイ!」」
凄まじい勢いで木に叩きつけられたグレイはそのまま地に落ちた。
「……がッ……!ぐッ、クソ……。ハァ……ハァ……どうなってんだこりゃ……!」
「大丈夫かグレイ!」
思い返せばここ数年、まともに攻撃を食らった事すらなかった。そしてそれが結果仇となり、受け身もままならなかったのだ。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
歯を食いしばるグレイ。
何とか全身に力を込め、よろけながらと立ち上がった。フラフラの肉体と混乱する頭で必死に状況を整理しようとしている。
だが幾ら頭をフル回転させても到底答えが分からない。
(あの連携攻撃を受けてノーダメージは有り得ねぇだろ……! 俺達はSランクパーティだぞ。やはり可笑しいのは俺達じゃない……。そもそも昨日から既に違和感だらけなんだからよ!
だが例えその分を差し引いたとしても……。此処までの差があるか?本当にこのソンモンキーはAランクなんだよな?
でもだったら何故倒せない……。俺達の実力なら余裕で倒せるモンスターだぞ。それが何故ダメージすらまともに食らっていないんだ。……待てよ。もしかしてギルドの指定ランクが間違ってんじゃねぇかコレ……?)
「グレイ、これ飲んで!」
駆け寄ったラミアがグレイに回復薬を飲ませた。だがグレイの胸中はそれどころではない。今浮かんだまさかの可能性に、全身に鳥肌が立っていた。
「退くぞ――」
「……え?」
もしかしたらコイツはAランクより上かもしれない。もしSなら俺達でもギリギリだ。だがここまで攻撃が通じない事を踏まえれば、突然変異の個体でもっと危険かもしれない。だとすれば余計に早く逃げないとヤバい。
「おい……撤退だ!」
「は? いきなり何言ってんだよ」
「いいから逃げるぞ!全員撤退しろ!」
「冗談でしょ?ここまで来てのに」
「冗談じゃねぇ!見れば分かるだろ!俺達の攻撃でノーダメージなんて有り得ねぇ!あのモンスターAランクじゃないんだよ!早くギルドに戻って報告だ!」
グレイの鬼気迫る言葉で、全員の顔が一気に青ざめた。
グレイ達は確かにSランクパーティー。だが個人の能力はそこまで高くない。得意の連携攻撃でダメージが与えられないとなるとこれ以上戦う手段は残されていなかった。
「早くしろ!逃げるぞ!」
グレイ達は全力でその場から走り去った。後ろから響くソンモンキーの声に恐怖を煽られたが、振り向きもせず全員が必死に山を下った。
♢♦♢
~冒険者ギルド~
「ハァ……ハァ……ハァ……」
あれから全力で帰ったグレイ達は、必死の思いでギルドに戻った。既に夜も更け日付が変わろうとしている。
ロック山脈の下山中もモンスターに襲われたが、必要最低限だけ相手にし、ひたすら走って逃げた。
この時間帯、ギルドはSランク冒険者が担当している。今日の当番はジャックであった。
「――おいッ!!」
グレイはギルドに着くなり荒い息遣いの中声を荒げて受付のジャックを呼んだ。怠そうに足を組んで頬杖をつくジャックに、余計グレイは腹が立っていた。
「一体どうなってやがる!ロック山脈のソンモンキー、あれ絶対Aランクじゃねぇだろ! Sランクか突然変異のモンスターじゃないか⁉ あぁ?」
何やら必死なのは分かる。
だがジャックもまた、余りに傲慢で偉そうな物言いのグレイが癇に障った様だ。
「なんだお前……。1人で賑やかみたいだが、酔っ払ってんのか?」
「酔っ払ってなんかねぇッ! いいからソンモンキーのランク調べ直せよ!」
(マジでこのアホなんだ……?ソンモンキーがSランクなんて言う冒険者初めて見たぞ。って、どっかで見かけた面だと思ったら、確かコイツはルカと一緒だったグレイとか言う奴じゃねぇか)
ジャックは既に昨日の追放を知っていた。その為今このパーティにルカがいない事が分かったのだ。それも相まって余計にジャックとグレイの間に温度差が生まれていた。
「じゃあ逆に聞くけどよ、ソンモンキーがSランクだったという証拠は?」
「Sランクパーティーの俺達の攻撃が全く効かなかった! あんなの絶対Aランクじゃねぇ!」
「それだけ?(ぶっちゃけSランク冒険者の話ならまともに取り合うが、コイツ金色だからAランクか……。どうしよっかな~、聞いた感じめっちゃ微妙。確かにごく稀に突然変異で強くなるモンスターがいるんだよな)」
ジャックの中で判定は際どかった。だが、ソンモンキーが突然変異してないと言い切れないが、少なからずSランク冒険者のジャックには、目の前のグレイがそもそも強いと感じられなかったのだ。
「それだけで十分だろう! 俺達Sランクパーティなんだぞ!」
「分かった分かった。調べ直しておくよ」
「頼むぞ! こっちは命懸けだったんだからな!」
そう吐き捨て、グレイはギルドを出て行った。
そしてやはりジャックは確信した。
グレイの何気ない一連の動作や癖、動きがまるで隙だらけである事に――。
(アイツあれでAランクなのか……? 隙だらけで何時でも攻撃出来たぞ。……後で奴の調査も頼んでおくか――)
こうして、グレイ達はソンモンキーの討伐は失敗に終わった。
しかし、昨日からの不運なモンスターとの連戦に加え、睡眠もままならず夜通しスカルウルフと戦ったせいで万全の状態ではない。それでもグレイ達を突き動かしていたのは、SSSランクパーティーになるという野望と各々の目がくらんだ欲望であった――。
「準備はいいかお前ら!(俺はSSSランクパーティーのリーダーとなって全てを手にしてやる!)」
「おお、何時でもイケるぜ!(SSSランクになったら金も酒も好き放題!)」
「聞くまでもねぇだろ!(俺はSSSランクになったら世界中の女抱いてやるぜ!グハハハハ!)」
「さっさと倒すわよ!(とっととSSSランクになってこんな怠いクエストなんて行かず、毎日買い物しまくるんだから!)」
欲望のまま気の向くまま。
未だに自分達の取っている行動が的確ではないと気付かないグレイ達は、ソンモンキーとの討伐に備えていた。ソンモンキーを倒すにはそれ相応の実力が必要となる。何度も言うが、本来であれば全く苦にならない相手であるが、今のグレイ達は果たして――。
そのまま少し進んだグレイ達は、遂に目的のソンモンキーと遭遇するのだった。
「――出たぞ、ソンモンキー! 」
グレイの掛け声で、一気に緊張感が高まった。
「ラミア!炎魔法だ!」
「任せて……ファイアショット!」
続けざまのグレイの号令で、ラミアはソンモンキーの弱点である炎魔法の攻撃を放った。無数の炎の弾丸がソンモンキーに見事直撃。巻き上がった硝煙の中、ゴウキンの渾身の一撃で大ダメージを狙いに行った。
「オラァァッ!」
視界が煙で覆われて見づらいが、鈍い音が響いた事によってゴウキンの攻撃が当たったと分かった。煙の中で動きの止まるソンモンキーを更にブラハムが槍で急所を狙う。
「食らえッ!」
そして最後はグレイの剣――。
何百回と重ねて来たこの連携攻撃の流れに、一切の狂いはなかった。何時も通りグレイの攻撃でフィニッシュだ。
……かに思われたが……。
「何ッ⁉ 倒れていない……!」
確かに手応えは何時も通り。
グレイはソンモンキーが倒れるどころか、全くダメージを受けていないことに驚きを隠せずにいた。それは他のメンバーもまた然り。
「噓でしょ⁉」
「どうなってんだよッ!」
瞬く間に全員の顔が青ざめた。
「有り得ねぇ!あれだけ俺達の連携攻撃をまともに食らってダメージすら無いだとッ⁉」
『ウキキ?』
ソンモンキーはまるで「何かしたか?」とでも言いたそうな表情でグレイ達を見た。
そして、グレイがヤバいと思ったその瞬間には時すでに遅し……。グレイはソンモンキー強烈な尻尾攻撃を受け勢いよくぶっ飛ばされた。
「ぐはッ……⁉」
「「グレイ!」」
凄まじい勢いで木に叩きつけられたグレイはそのまま地に落ちた。
「……がッ……!ぐッ、クソ……。ハァ……ハァ……どうなってんだこりゃ……!」
「大丈夫かグレイ!」
思い返せばここ数年、まともに攻撃を食らった事すらなかった。そしてそれが結果仇となり、受け身もままならなかったのだ。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
歯を食いしばるグレイ。
何とか全身に力を込め、よろけながらと立ち上がった。フラフラの肉体と混乱する頭で必死に状況を整理しようとしている。
だが幾ら頭をフル回転させても到底答えが分からない。
(あの連携攻撃を受けてノーダメージは有り得ねぇだろ……! 俺達はSランクパーティだぞ。やはり可笑しいのは俺達じゃない……。そもそも昨日から既に違和感だらけなんだからよ!
だが例えその分を差し引いたとしても……。此処までの差があるか?本当にこのソンモンキーはAランクなんだよな?
でもだったら何故倒せない……。俺達の実力なら余裕で倒せるモンスターだぞ。それが何故ダメージすらまともに食らっていないんだ。……待てよ。もしかしてギルドの指定ランクが間違ってんじゃねぇかコレ……?)
「グレイ、これ飲んで!」
駆け寄ったラミアがグレイに回復薬を飲ませた。だがグレイの胸中はそれどころではない。今浮かんだまさかの可能性に、全身に鳥肌が立っていた。
「退くぞ――」
「……え?」
もしかしたらコイツはAランクより上かもしれない。もしSなら俺達でもギリギリだ。だがここまで攻撃が通じない事を踏まえれば、突然変異の個体でもっと危険かもしれない。だとすれば余計に早く逃げないとヤバい。
「おい……撤退だ!」
「は? いきなり何言ってんだよ」
「いいから逃げるぞ!全員撤退しろ!」
「冗談でしょ?ここまで来てのに」
「冗談じゃねぇ!見れば分かるだろ!俺達の攻撃でノーダメージなんて有り得ねぇ!あのモンスターAランクじゃないんだよ!早くギルドに戻って報告だ!」
グレイの鬼気迫る言葉で、全員の顔が一気に青ざめた。
グレイ達は確かにSランクパーティー。だが個人の能力はそこまで高くない。得意の連携攻撃でダメージが与えられないとなるとこれ以上戦う手段は残されていなかった。
「早くしろ!逃げるぞ!」
グレイ達は全力でその場から走り去った。後ろから響くソンモンキーの声に恐怖を煽られたが、振り向きもせず全員が必死に山を下った。
♢♦♢
~冒険者ギルド~
「ハァ……ハァ……ハァ……」
あれから全力で帰ったグレイ達は、必死の思いでギルドに戻った。既に夜も更け日付が変わろうとしている。
ロック山脈の下山中もモンスターに襲われたが、必要最低限だけ相手にし、ひたすら走って逃げた。
この時間帯、ギルドはSランク冒険者が担当している。今日の当番はジャックであった。
「――おいッ!!」
グレイはギルドに着くなり荒い息遣いの中声を荒げて受付のジャックを呼んだ。怠そうに足を組んで頬杖をつくジャックに、余計グレイは腹が立っていた。
「一体どうなってやがる!ロック山脈のソンモンキー、あれ絶対Aランクじゃねぇだろ! Sランクか突然変異のモンスターじゃないか⁉ あぁ?」
何やら必死なのは分かる。
だがジャックもまた、余りに傲慢で偉そうな物言いのグレイが癇に障った様だ。
「なんだお前……。1人で賑やかみたいだが、酔っ払ってんのか?」
「酔っ払ってなんかねぇッ! いいからソンモンキーのランク調べ直せよ!」
(マジでこのアホなんだ……?ソンモンキーがSランクなんて言う冒険者初めて見たぞ。って、どっかで見かけた面だと思ったら、確かコイツはルカと一緒だったグレイとか言う奴じゃねぇか)
ジャックは既に昨日の追放を知っていた。その為今このパーティにルカがいない事が分かったのだ。それも相まって余計にジャックとグレイの間に温度差が生まれていた。
「じゃあ逆に聞くけどよ、ソンモンキーがSランクだったという証拠は?」
「Sランクパーティーの俺達の攻撃が全く効かなかった! あんなの絶対Aランクじゃねぇ!」
「それだけ?(ぶっちゃけSランク冒険者の話ならまともに取り合うが、コイツ金色だからAランクか……。どうしよっかな~、聞いた感じめっちゃ微妙。確かにごく稀に突然変異で強くなるモンスターがいるんだよな)」
ジャックの中で判定は際どかった。だが、ソンモンキーが突然変異してないと言い切れないが、少なからずSランク冒険者のジャックには、目の前のグレイがそもそも強いと感じられなかったのだ。
「それだけで十分だろう! 俺達Sランクパーティなんだぞ!」
「分かった分かった。調べ直しておくよ」
「頼むぞ! こっちは命懸けだったんだからな!」
そう吐き捨て、グレイはギルドを出て行った。
そしてやはりジャックは確信した。
グレイの何気ない一連の動作や癖、動きがまるで隙だらけである事に――。
(アイツあれでAランクなのか……? 隙だらけで何時でも攻撃出来たぞ。……後で奴の調査も頼んでおくか――)
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