やがて神Sランクとなる無能召喚士の黙示録~追放された僕は唯一無二の最強スキルを覚醒。つきましては、反撃ついでに世界も救えたらいいなと~

きょろ

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第52召喚 無事退院しましたが…

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 大笑いしていた母親が、不意にアーサーを見て静かに呟いた。

「私の治療なんていつ止めてもいいんだからね。もっと自分を大事にしな。折角元気に産んだんだから」
「ハハハ、ありがとう。でも大丈夫だよ。そのお陰でやっとまともなハンターになれたんだ。これからは危険を犯さず今までの100倍稼げるから心配いらないよ! 母さんの治療費も余裕で払えるしエレインと毎日バイキングに行ける! なんならシェリルとモルナを養う事も出来ちゃうかも」

 母親はずっとアーサーの事が気掛かりだった。
 早くして亡くした父親がアーサーと同じハンターだった事もあり、母親はその大変さがよく分かっていた。大事な子供達に負担を掛けさせてしまっている。それも自分のせいで。

 母親はずっとその負い目を感じており、アーサーには「無茶をするな」「いつでも治療を止めていい」と見舞いに来る度に再三伝えていた。それでも優しく強いアーサーには治療を止めるという選択肢はなかった。妹のエレインだってそれは望んでいない。

 根本的に不可能な状況となれば話は別であったが、毎日雑草ばかりの貧乏暮らし程度では、アーサーもエレインも母親の治療を止めるという理由には全くならなかったのだ。

「へぇ。アンタがそこまでのハンターになったのかい? そりゃあんなに可愛い美女を連れて浮かれる訳だね。お金は人を変えるものだよ、全く」
「だからそんなんじゃないって言ってるじゃないか! それに僕はどれだけ大金を稼ごうとそんな嫌味な人間にはならないぞ!」

 金の力で物を言わす嫌な人間をアーサーは知っている。
 ある意味その人物の経験が、大金を手にしてもアーサーを変える事はないだろう。

 そしてそんな親子水入らずの会話中、彼女は突如現れたのだった――。

「ギルド設立は無事済んだようだねぇ。明日“退院”したら早く荷造りしな」
「うわ! イ、イヴさんッ!? 一体何処から……!」

 そう。突如病室に現れたのはイヴ。勿論また思念体だが。

「って、ん……荷造り? しかも明日退院?」
「そうさ。怪我が大した事ないんだから病院にいる必要ないだろう。もうアンタの退院手続きは済ませておいたよ。それに“引っ越し先”もねぇ」

 突然現れたイヴからの突然の報告にまるで理解が追い付かないアーサー。簡単に言うのなら、用はイヴが全部済ませてくれたという事だ。

「あら、何か息子の事を色々見てくれているみたいですね。ありがとうございます。決して出来が良いとは言えませんが、今後とも宜しくお願い致しますね」
「いえいえとんでもない。息子さんにはこれから世界を救ってもらわなければいけませんので、私が出来る限りのサポートをさせていただいております。息子さんをもうちょっとお借りしても?」
「全然構いませんよ! どうぞどうぞ。うちの息子が役に立つならお好きに使って下さい」
「ありがとうございますお母様。では“遠慮なく”世界の為に活躍してもらいます。元気になられるまでは私が責任持って息子さんを見届けますので」

 秒で仲良く――そして信頼関係を築いたアーサーの母親とイヴ。
 その光景を間近で見ていたアーサーはただただ呆然と眺める事しか出来なかった。

 そして翌日アーサーは無事に退院となる。

**

「誰も迎えに来てくれないとは」
「甘ったれるんじゃないよ男のくせに」
「しかも本当に誰もいない……と言うか“何もない”」

 退院したアーサーはイヴと共に帰宅。
 だが病院からここに来るまでの道中でイヴから聞かされていた通り、既にイヴの好意(勝手に)でアーサー達は新たな“新居”へと引っ越しが決まっていた。

 しかもイヴからその事を一足先に告げられたエレイン、シェリル、モルナの3人は速攻で引っ越しを承認。挙句に速攻で荷造りを済ませてもう新居とやらにいるらしい。

 アーサー達がずっと暮らしていた小さな部屋はもぬけの殻。
 部屋の真ん中にはアーサーの私物が入った箱がポツンと1つだけ置かれていた。

「いざ離れるとなると少し寂しい気もするなぁ」
「浸ってる場合じゃない。早く行くよ」

 こうして、ちょっとだけ名残惜しい中アーサーは暮らしていた小さな借間から引っ越し、新たな新居へと向かうのであった――。
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