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第58召喚 家族と仲間と絆。そして前へ ~前編~
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♢♦♢
~ビッグイーストタワー~
話を聞き終えたアーサーはいつの間にかシェリルを抱き締めていた。
「私が……私があの時、パパに言われた通りに゛直ぐ動けてい゛れば、あん゛な事には……ロイを助けられていたかも゛しれないのに……ッ」
体を震わせ、涙声で語る彼女はもういつものシェリルではなかった。アーサーがシェリルに出会った時から彼女はどこか人と壁を作っている印象であった。感情もあまり読み取れず、常に冷静で無表情。
だが今のシェリルは違う。
アーサーの目の前には感情や人としての温もりが伝わってくるごく普通の少女の姿があった。彼女の震える言葉にはちゃんと気持ちが詰まっている。
「それ゛に……私が斬った跡は壁や゛強盗犯達だけではな゛く、パパやママやロ゛イにまで……ッ! 無意識の゛内に私が……私が全て傷付けてしま゛ったのよきっと」
シェリルの言葉からは深い悲しみと懺悔の気持ちが溢れ出ていた。
(極度の恐怖と混乱で記憶が曖昧になっている部分があるんだろう……。まだ子供の女の子がいきなり勇者の力をコントロール出来る筈もない。シェリルは無我夢中で恐怖に立ち向かっていただけなんだ……)
アーサーは直ぐには言葉を掛けられなかった。
だが彼はシェリルに大丈夫だ言わんばかりにただだ抱き締めていた。力強くも優しい温もりがシェリルを包んでいる。
「全部私が悪い……。パパ達は絶対私に怒ってる……」
「そんな事ない。シェリルの家族は誰も君を責めたりしていないよ」
「どうしてそんな事が分かるの……! 私は皆を助けるどころか傷付けてしまった。私を恨んでるに違いない……ごめんなさいッ……!」
10歳の少女が背負った過去は余りに重すぎる。
そして彼女は一体どれだけ辛い思いを背負ったまま今日まで生きてきたのだろうか。
震え泣く彼女を抱き締めるアーサーは不意にリバースフロアでの出来事を思い出す。
突如パニック状態となったシェリル。
恐らく彼女は怪我を負った血塗れのアーサーの姿を見て、彼とこの辛い過去の光景が重なってしまったのだ。
全ての原因に納得したアーサーは徐に自分のウォッチを操作し始める。そして優しい声でシェリルに声を掛けた。
「シェリル。確かに僕には君の家族がどう思っているのか分からない。でも、それはきっと誰にも分からないんじゃないかな? その“本人”を除いては」
「え……?」
「実はね、イヴさんから預かっているものがあるんだ」
**
『シェリルがもし過去と向き合ったら、これをアンタからあの子に渡してくれ。頼んだよ――』
**
アーサーがイヴから預かった物。
それは1つの特殊なアーティファクト。しかも見た目はただの紙切れ1枚だが、そこには魔法陣のようなものが描かれていた。
“死人の念話”――。
これはイヴがまだ魔術師の力を失う前、イヴはダンジョンで特殊なアーティファクトを手に入れた。それがこの『会話の紙(E):Lv1』であり、このアーティファクトはこれ以上レベルもランクが上がらない装備だが、特殊効果で誰とでも1回だけ会話が出来るという少し変わったアーティファクトであった。
数多あるアーティファクトの中にはこういった類の戦闘では到底使えないような物も多く存在する。
しかし、これもまた運命だったのだろうか。
この会話の紙には更に「魔術師スキルによって“死者”との会話も可能になる」という特殊効果が備わっていたのだ。ただし条件回数は変わらず1回。
それもEランクアーティファクトなのにもかかわらず、この会話の紙は滅多に入手出来ない稀なアーティファクトであった。当時のイヴは特に使う予定もなく、その後に魔眼の力で未来を視て力を失った。そしてこのアーティファクトはいつかシェリルに使おうと取っておいたのだ。
「死者と会話……。それはもしかして――」
~ビッグイーストタワー~
話を聞き終えたアーサーはいつの間にかシェリルを抱き締めていた。
「私が……私があの時、パパに言われた通りに゛直ぐ動けてい゛れば、あん゛な事には……ロイを助けられていたかも゛しれないのに……ッ」
体を震わせ、涙声で語る彼女はもういつものシェリルではなかった。アーサーがシェリルに出会った時から彼女はどこか人と壁を作っている印象であった。感情もあまり読み取れず、常に冷静で無表情。
だが今のシェリルは違う。
アーサーの目の前には感情や人としての温もりが伝わってくるごく普通の少女の姿があった。彼女の震える言葉にはちゃんと気持ちが詰まっている。
「それ゛に……私が斬った跡は壁や゛強盗犯達だけではな゛く、パパやママやロ゛イにまで……ッ! 無意識の゛内に私が……私が全て傷付けてしま゛ったのよきっと」
シェリルの言葉からは深い悲しみと懺悔の気持ちが溢れ出ていた。
(極度の恐怖と混乱で記憶が曖昧になっている部分があるんだろう……。まだ子供の女の子がいきなり勇者の力をコントロール出来る筈もない。シェリルは無我夢中で恐怖に立ち向かっていただけなんだ……)
アーサーは直ぐには言葉を掛けられなかった。
だが彼はシェリルに大丈夫だ言わんばかりにただだ抱き締めていた。力強くも優しい温もりがシェリルを包んでいる。
「全部私が悪い……。パパ達は絶対私に怒ってる……」
「そんな事ない。シェリルの家族は誰も君を責めたりしていないよ」
「どうしてそんな事が分かるの……! 私は皆を助けるどころか傷付けてしまった。私を恨んでるに違いない……ごめんなさいッ……!」
10歳の少女が背負った過去は余りに重すぎる。
そして彼女は一体どれだけ辛い思いを背負ったまま今日まで生きてきたのだろうか。
震え泣く彼女を抱き締めるアーサーは不意にリバースフロアでの出来事を思い出す。
突如パニック状態となったシェリル。
恐らく彼女は怪我を負った血塗れのアーサーの姿を見て、彼とこの辛い過去の光景が重なってしまったのだ。
全ての原因に納得したアーサーは徐に自分のウォッチを操作し始める。そして優しい声でシェリルに声を掛けた。
「シェリル。確かに僕には君の家族がどう思っているのか分からない。でも、それはきっと誰にも分からないんじゃないかな? その“本人”を除いては」
「え……?」
「実はね、イヴさんから預かっているものがあるんだ」
**
『シェリルがもし過去と向き合ったら、これをアンタからあの子に渡してくれ。頼んだよ――』
**
アーサーがイヴから預かった物。
それは1つの特殊なアーティファクト。しかも見た目はただの紙切れ1枚だが、そこには魔法陣のようなものが描かれていた。
“死人の念話”――。
これはイヴがまだ魔術師の力を失う前、イヴはダンジョンで特殊なアーティファクトを手に入れた。それがこの『会話の紙(E):Lv1』であり、このアーティファクトはこれ以上レベルもランクが上がらない装備だが、特殊効果で誰とでも1回だけ会話が出来るという少し変わったアーティファクトであった。
数多あるアーティファクトの中にはこういった類の戦闘では到底使えないような物も多く存在する。
しかし、これもまた運命だったのだろうか。
この会話の紙には更に「魔術師スキルによって“死者”との会話も可能になる」という特殊効果が備わっていたのだ。ただし条件回数は変わらず1回。
それもEランクアーティファクトなのにもかかわらず、この会話の紙は滅多に入手出来ない稀なアーティファクトであった。当時のイヴは特に使う予定もなく、その後に魔眼の力で未来を視て力を失った。そしてこのアーティファクトはいつかシェリルに使おうと取っておいたのだ。
「死者と会話……。それはもしかして――」
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