やがて神Sランクとなる無能召喚士の黙示録~追放された僕は唯一無二の最強スキルを覚醒。つきましては、反撃ついでに世界も救えたらいいなと~

きょろ

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第32召喚 バットside~①~

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 時は遡る事、バットがエレイン達を誘拐しアーサーに敗北した日――。

♢♦♢

「ん……ここは……ぐッ!?」

 意識を取り戻したバット・エディングは病院のベッドの上にいた。

「無理に動くな。傷が開くぞ」
「え、親父……!? なんでこんな所に。って、そういやアーサーの野郎は……!」
「バット、お前は何をしているのだ」

 全身に巻かれた包帯と痛みによって、徐々にバットは起こった出来事を思い出していった。病室にはバットと彼の父親である“オーバト・エディング”の姿が。

 オーバトは重傷な息子を心配するどころか、何故かとても冷たい視線を彼に向けていた。

「べ、別に何もしてねぇよ。その……ギルドメンバーの奴が他のギルドとちょっと揉めてたんだ。だからそれを止めようとしただけだよ」

 父親に真実を話さないバット。これが彼と父親との距離感なのだろう。

「いい加減下らない遊びは止めるのだバットよ。お前は我がエディング装備商会の跡継ぎだ。暇を持て余しているのなら早く勉強をしろ。いつでも商会の即戦力となれる様にな」
「わ、分かってるよそんな事……。あ、そうだ親父ッ! それよりも俺に“Bランクアーティファクト”を用意してくれ! そろそろもっと上を目指さないといけないんだ」
「……分かった。用意しておいておこう」

 父親の承諾の返事に、バットは思い切りガッツポーズした。彼が今考えているのは勿論“アーサーへの復讐”。

 最弱のスライム召喚士と馬鹿にされていたアーサーが何故あそこまでの力を手に入れたのかは定かじゃない。いや、最早バットにとってそこはどうでもいい。ただ今以上に強いアーティファクトを手に入れられれば余裕でアーサーなど越せるからだ。

 そして彼はいとも簡単にそれが叶ってしまう。金の力で。バットは包帯まみれの下で確かにその口元を緩ませていたのだった。

(クハハハ。よしよしよし! これでアーサーの野郎をぶっ殺せる! あの野郎、調子こいてこの俺をぶん殴りやがって。ふざけんじゃねぇぞコラ。どんなせこい真似してアーティファクトを手に入れたか知らねぇが、次会った時がお前の最後だアーサー!)

 バットが1人ベッドの上で復讐の炎を滾らせていると、病室を出て行く直前でオーバトが動きを止めてバットの方へ振り返った。

「言っておくが、余計な尻拭いはこれで最後だぞバット。私はお前の下らん遊びに時間を割いている暇はない。次また問題を起こしたのなら、その時は自らの力で解決しろ。甘えるな。もう手助けはしない。分かったな?」

 オーバトは物凄く冷酷な目でバットを見ながら言った。
 バットはこれが冗談ではないと瞬時に理解し、生唾を呑みながらコクリと静かに頷いたのだった。

**

 1週間後――。

「ちっ。何で誰も通話に出ねぇんだよクソが! メッセージの返信もないじゃねぇか!」

 退院したバットは何故か苛立っていた。
 無事体力も回復した様子であるが、まだ体の一部には包帯が巻かれて松葉杖をついて歩いている状態。そんなバットは自らのウォッチを何度も確かめながら相当苛立っている。

 理由は明白。
 それはバットが入院してからのこの1週間というもの、彼がどれだけ連絡をしようと仲間達からの連絡が一切返ってきていないからだ。理由が全く分からないバットはこの1週間ひたすらイライラを募らせており、退院と同時にそれが爆発している状況。

 逆を言えば、知らないのはバットのみであった――。
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