上 下
26 / 73

第26召喚 これが公開処刑ならぬ公開謝罪か

しおりを挟む
♢♦♢

~イーストリバーアカデミー~

「じゃあねお兄ちゃん!」
「ああ。一応気を付けるんだぞ」

 昨日のバット撃退から一夜明け、アーサーとエレインは普段通りにアカデミーへと登校している。

 昨日の今日だからとエレインに休みを提案したアーサーであったが、良くも悪くもそんな兄の心配を振り払うかの如く、エレインは「ここで休んだら逃げたみたいに思われるじゃん!」と寧ろ好戦的にアカデミーに行くと言い切ったのだった。

 本当に逞しく成長している。
 アーサーは再びそう思いながらエレインに手を振り、互いにそれぞれのクラスへと向かって行った。

**

「時間だぞー! 席に着きなさーい!」

 アカデミーの教官の声が慌ただしい朝のクラスに響いた。

(何だ。逆にアイツらが休みかよ)

 アーサーは空席のバットの机を見る。更に視線を動かすと他にも空席が3つ程。全てバットの金魚のフン共の席だ。アーサーがそんな事を思いながら彼らの空席を眺めていると、教官が「今日は彼らは欠席だ」と皆に告げた。

 流石のバットも顔を出せないのだろう。
 そう思ったアーサーは少しだけ口角を上げると、誰にも分からない様な小さなガッツポーズをしていた。

(あ。そういえば今日は炎Cランクの昇格テストだったな……。バタバタしていたから、リリアさんに言って日にちをズラしてもらおう)

**

「「本当にすみませんでしたッ!!」」
「お、おいッ! 止めろよこんな所で……!」

 昨日の事もあり、アーサーは予め今日は一緒に帰ろうとエレインに伝えてあった。休む事は反対されたが一緒に帰る事は承諾してくれたエレイン。アカデミーが終わったら入口で待ち合わせようと約束し、今まさにアーサーとエレインが合流した為いざ帰ろうと2人が1歩足を踏み出した瞬間、それは起こったのだった。

「「もう2度とこんな事はしません! だから許して下さい! お願いしますッ!」」
「いや、だからそっちがマジで止めてくれ……!」

 一体どこから湧いて出てきたのか。
 まるで待ってましたい言わんばかりのタイミングでアーサーとエレインの前に数人の男達が現れ、その男達は全員横一列に並んで2人の足元でいきなり土下座。

 しかも一語一句ズレる事のない完璧なまでの謝罪を披露してきたのだった。

 あまりに突発的な事に戸惑うアーサーとエレイン。謝罪をしてきた男達はバットのお仲間連中だ。どうやら昨日ぶっ飛ばされなかった連中がアーサー達に詫びを入れに来た様子。

 昨日の今日でしかと状況を理解をし、過ちを認めて謝罪をしに来たのは最低限評価しよう。まだ辛うじて救いようがある。しかし彼らの謝罪の仕方と場所が余りにも場違いだった。

 言わずもがなここはアカデミーの出入口ど真ん中。当然周りには多くのアカデミー生達がいる。そして当然の如く今皆の視線はアーサー達――人が最も行き交う出入口で土下座をしている男達に注がれていたのだった。

「「申し訳ございませんでした!」」
「わ、分かったよ。分かったからまずその土下座を止めッ……「ほんと~に反省してるのアンタ達!」
(エレイン……?)

 アーサーの言葉を勢いよく遮ったのはエレイン。
 彼女は周りの目を気にするアーサーを全く気にする事なく男達の前に仁王立ちをした。溢れんばかりの“女王感”を醸し出しながら。

「「勿論です! 心の底から馬鹿な事をしたと反省しています! 私共に出来る事でしたらなんでも致しますので何なりとお申し付けを!」」

 男達の土下座と文言が更なる女王と下僕という関係を演出していく。最早周りで見ている者達は全員がそんな事を思っているだろう。

「そう。だったらこのまま順番にアンタ達の頭を踏みつけても問題ないわね?」
「「当然です! 踏むなり叩くなりどうぞお好きなようにして下さい!」」
(もう本当に止めなさい貴方達。凄い変態プレイをしている様に見えているぞこっちは)

 アーサーの切実な願いが届いたのか、エレインは男達に2度とこんな事をしないと改めて約束させ、追加でサラへの謝罪と、もし今後エレインから何かしら指示が入った場合は最優先で彼女に力を貸すという条件の元、この公開謝罪は幕を閉じたのであった。

 何はともあれ、もうバット達に抵抗の意志がない事を再認識する事が出来たアーサーとエレイン。男達が去った後、2人も今度こそ帰路に着いた。

 そして。

 この日は更なる異常事態がアーサーを襲うのだった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

無名のレベル1高校生、覚醒して最強無双

絢乃
ファンタジー
無類の強さを誇る高校二年生・ヤスヒコ。 彼の日課は、毎週水曜日にレベル1のダンジョンを攻略すること。 そこで手に入れた魔石を売ることで生活費を立てていた。 ある日、彼の学校にTVの企画でアイドルのレイナが来る。 そこでレイナに一目惚れしたヤスヒコは、なんと生放送中に告白。 だが、レイナは最強の男にしか興味がないと言って断る。 彼女の言う最強とは、誰よりもレベルが高いことを意味していた。 レイナと付き合いたいヤスヒコはレベル上げを開始。 多くの女子と仲良くなりながら、着実にレベルを上げていく。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

処理中です...