やがて神Sランクとなる無能召喚士の黙示録~追放された僕は唯一無二の最強スキルを覚醒。つきましては、反撃ついでに世界も救えたらいいなと~

きょろ

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第10召喚 どうやら思った以上に下衆な連中でした

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♢♦♢

~イーストリバーアカデミー~

 アーサーとエレインが夢のバイキングを経験した翌日。
 通い慣れた道を歩き、多くの若者達がアカデミーへと向かって行く。当たり前の日常の光景だ。

 真っ青な快晴な空を見上げ、アーサーはアカデミーよりも早くダンジョンに行きたいなと思いながら歩いていた。学年が1つ違うエレインと別れを済ませたアーサーは自分のクラスに向かう。するとそこにはまさかの連日のバットの姿が。
 
 アーサーに気が付いたバットは他の生徒には一切目もくれず、そのまま真っ直ぐアーサーに近づく。

(うわ、またコイツかよ。朝から何なんだ)

 バットの姿が視界に入った瞬間、自然と全身から嫌悪感が溢れ出たアーサー。同じクラスの為ほぼ毎日顔は合わせていたが、追放されてからはまともに話す事なんてなかった。しかしそんなアーサーとは対照的になにやら機嫌でもいいのか、バットは笑いながら声を掛けてきたのだった。

「おう、アーサー。昨日ぶりだな」
「……何か用?」

 アーサーは明らかに嫌そうな態度で返事を返す。こんな態度を取れば、短気で傲慢でプライドの高いバットは昨日の様に高圧的な態度を取るだろう。

 そんな事は百も承知のアーサーであったが、やはり彼の前では作り笑いの1つもしたくない。また面倒くさい絡みをしてくるのだろうとアーサーは思ったが、バットの行動は予想外のものだった。

「クックックッ。また妹と楽しく飯食えるといいな、ひもじい貧乏人」

 不敵な笑みでそれだけ言ったバットは直ぐに自分の席に戻って行った。

「それだけ……?」

 席に戻ったバットはいつもの仲間連中とアーサーの方を見てニヤニヤと笑っている。その光景を訝しく思いながらアーサーが自分の席に向かうと、そこでバット達の“低レベル”な所業に気が付く。

(おいおい、マジか)

 自分の席の机に視線を落として固まるアーサー。それを見たバット達は更にゲラゲラと笑い出している。

 机の上には1枚の紙。そしてそこには黒い文字で紙一杯に“死ね”、“ボケカス”、“貧乏人”などのなんとも語彙力のない悪口が書けるだけ書いてあった。

 怒りを通り越して呆れるアーサー。
 ダルそうに溜息を付きながら紙を捨てようとしたが、何気なく裏返した紙の反対側を見たアーサーは呆れを通り越して怒りが沸点に達した。

「――!?」

 そこに写されてたもの。
 それは何時かエレインが野良ハンターの仕事を無自覚に受けてしまっていた時の、心無い男達に襲われてしまった瞬間が写し出されていた。

「ギャーハッハッハッハッ! お前の妹は誰とでも寝るクソビッチらしいな! 今度俺が買ってやるよ! いくらだ貧乏人!」

 バット達の下衆な笑い声と発言に怒るアーサー。

 何故こんなものが?
 この写真を何処でどうやって手に入れた?
 あれはバットが絡んでいたのか?

 アーサーの頭には一瞬であらゆる憶測が駆け巡る。そしてそれとほぼ同時、反射的に体が動き出していたアーサーは乱雑に紙をグシャグシャに丸めてバットに詰め寄った。

「おい、バット! 僕の事は別に構わない。だがエレインの事を言うのは絶対に許さないぞ!」

 クラス中にアーサーの怒号が響き、彼は怒る感情のままバットの胸ぐらを掴んだ。

「触るんじゃねぇよ。離せコラ! お前誰に向かって盾突いてんだよ。しかもそれだけキレるって事はやっぱりお前の妹は簡単に股開く尻軽みてぇだな! ハッハッハッ!」
「いい加減にしろ! そんな事する訳ないだろうが!」
「なぁに、恥ずかしがる事はねぇさ。そりゃ誰だって毎日雑草ばっか食う人生なんてみっともなくて嫌だもんな。体売れば簡単に金稼げるんだからお前の妹は賢いぜ!」

 次の瞬間、アーサーは無意識に握り締めた拳をバットの顔面に向け放っていた。だがギリギリの所で反応したバットがアーサーの拳を躱し、逆に体勢を崩して隙が生まれたアーサーは勢いよくバットに殴り飛ばされてしまった。

「がッ!?」
「調子こいてんじゃねぇぞクソ! 三流の無能召喚士如きが馴れ馴れしく俺に触れるんじゃねぇッ!」

 アーサーとバットの力の差は歴然。装備しているアーティファクトの効果はなにもダンジョンにいる時だけではない。ウォッチに登録してあれば日常生活でも同等の効果を受けられる。つまり全ての装備をCランクのオーガアーティファクトで揃えているバット相手に、最近やっとDランクを手に入れたアーサー如きが当然勝てる筈もないのだ。

「いいなぁ~。確かアーサーの妹ってめちゃ可愛いんだよな!」
「そうなのか? それ最高じゃん。俺もヤりたい」
「だったら黒の終焉専属のビッチにでなってもらうか!」
「「ギャハハハハッ!」」

 バットの周りの取り巻き達も加わり、皆で過剰にアーサーを挑発する。

「ふざけるなぁぁぁぁ!」

 立ち上がったアーサーは再び殴りかかったが結果は同じ。追放された日の再現と言わんばかりに、殴られたアーサーの鼻からは血が滴り落ちていた。

「ちくしょう……ちくしょう……ちくしょうッ……!」

 自分の無力さに涙が零れるアーサー。自分のせいでエレインまで馬鹿にされるのが悔しくて苛立つ。歯を食いしばって爪が食い込む程拳を握り締める事しか出来ない。

「ここまで無様な姿を晒されると流石に引くな。なんか一気に醒めたわ」

 バットがそんな事を口にした瞬間、クラスの扉が開いてアカデミーの教官が入ってきた。そしてそれが合図と言わんばかりにクラスの者達も皆自分の席へ。

 何事もなかったかの様に席に着く者達。
 バツが悪そうにアーサーを見つめる者達。
 ヘラヘラと笑みを浮かべるバットと連れ達。

 クラスの他の人達は何も悪くない。全ての元凶はバット達のせい。力の無い自分のせいだ。アーサーは今にも爆発しそうな怒りを懸命に自分のエネルギーに変えようとする。

 全てはダンジョンで発散する為。

 全ては己が強くなる為。

 全ては生活に困らない程の大金を稼ぐ為。

 そして。

 全ては何時か“バットを思い切りぶっ飛ばす為”に――。 

**

~ダンジョン・メインフロア~

 アーサーはアカデミーが終わって直ぐにダンジョンへと足を運んだ。日中ずっと怒りを堪えてやっと今日という長い1日が終わった。いつものように受付でリリアと手続きを済ませたアーサーは溢れる闘志を全面に出してダンジョンへと入る。

「待っていろよバット。絶対にお前を越してやるからな――!」

 改めて決意を口に出したアーサーはウォッチでステータスを確認。


====================

アーサー・リルガーデン

【スキル】召喚士(D): Lv10
・アーティファクト召喚(10/10)
・ランクアップ召喚(3/3)
・スキルP:222

【装備アーティファクト】
・スロット1:『良質な剣(D):Lv9』
・スロット2:空き
・スロット3:『ゴブリンアーマー(D):Lv3』
・スロット4:『ゴブリンのグローブ(D):Lv2』
・スロット5:『ゴブリンの草履(D):Lv2』

【能力値】
・ATK:15『+230』
・DEF:18『+90』
・SPD:21『+80』
・MP:25『+0』

====================


(貧乏人の強さを舐めるなよ。先ずはDランクのゴブリンアーティファクトを全て揃えてレベルMAXに。それにスキルPを大量に稼ごう。スキルレベルは上げればきっとCランクへのランクアップ召喚も可能になる筈だ――)

 アーサーはステータスの“詳細”をウォッチで確認。するとそこにちゃんと表示がされていた。

==========
スキル:召喚士(D) Lv10
次レベルまでの必要P:1100P
========== 

 召喚士のスキルレベルがどこまで上げられるのかは当然アーサー自身も分からない。だがアーサーちゃんと感じていた。自分の未知なるスキルへの可能性を。

 深々と深呼吸をしたアーサー。
 彼は揺るぎない信念を抱いてひたすらフロア周回と召喚をやりまくるのだった――。
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