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最終章~真の勇者~
5-1 スタンピード阻止作戦を引寄せ・前編
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♢♦♢
~王都・城~
グレイとの決闘も無事(?)に終えた僕達は、これからの事について作戦を練る為にレイモンド様の計らいで城へと招待された。
「お久しぶりですね、イェルメス殿」
「城に来るのは魔王を倒した時以来か。まだ少年だった君が今や国王とは、月日が流れるのはとても早い」
城の長い廊下をレイモンド様とイェルメスさんが昔話をしながら歩き、僕達もそのすぐ後ろを付いていく。
少し歩くと大きなテーブルと何十個ものイスがある部屋に着き、僕達は皆それぞれイスに腰を掛けた。
「ふぅ……それにしても、久々に魔法使ったものだから体が重いな。流石に運動不足と歳には勝てぬようだ」
イェルメスさんは独り言のように呟きながらイスに座る。
「あ、そうだ。まだ薬草が残っていなかったかなレベッカ」
「確かありましたよ。直ぐに出しますね」
そう言ったレベッカは『空間魔法』のスキルで閉まってあった薬草を取り出してイェルメスさんに渡した。
「イェルメスさん、宜しければどうぞ」
「体力回復の薬草か。これは有り難いね、頂くよ。レベッカ君の空間魔法は本当に秀逸だね」
「いえ、全然。私は物を閉まっておくぐらいしか出来ませんから」
謙遜しているがレベッカのスキルには本当に助けられている。イェルメスさんの言葉もお世辞とかではないだろう。
「では早速本題に入ろうか――」
一先ず皆が席に着いたところでレイモンド様が話を切り出す。
「現状の問題は大きく分けて2つ。1つは以前から追っていた魔王軍団の元幹部であるというゲノムの行方。そしてもう1つはそのゲノムが関わっているかもしれないというスタンピードですよね、イェルメス殿」
「ああ。まぁあのスタンピードはほぼ確実にゲノムの仕業だろう。ざっくりと見ただけでも5万はモンスターがいたね」
サラっと言い放った5万という数字。
それを聞いただけではまだピンとこないけど、絶対にヤバいという事だけは確かだ。
イェルメスさんとルルカとミラーナ、それに王国中の騎士団員や冒険者を集めても対等に渡り合えるとは思えない。仮に全て最弱のスライムやゴブリンだったとしてもその数は異常。
そんな大群をどうやって止める?
何かいい方法がないかな……。
しかも肝心のゲノムを見つけない事には根本の解決にならない。奴がいる以上またスタンピードを起こすかもしれないし、奴と姿を消してしまったグレイの事も少なからず気に掛かる。
皆で話し合いをしてもこれと言った解決策が出てこなかった。
「手の打ちようがないんよ」
「せめて数だけも一気に減らせればいいんだけど」
「数を減らした所で元々が多過ぎだけどな」
「どうにかしないと国中がパニックになってしまいますね……」
「う~ん」
皆が頭を悩ませていると、徐にイェルメスさんが口を開いた。
「物は試しだが、1つだけ方法がある」
「本当ですか⁉」
「ああ。でも先ずはそれが出来るか確認しないといけないね。だから協力頼めるかな、レベッカ君――」
「え、私ですか……?」
まさかの展開に皆が驚く中、イェルメスさんだけが落ち着いた笑顔を見せていた。
♢♦♢
翌日――。
スタンピードが止まる事なく真っ直ぐ王都へと向かっている頃、昨日練った作戦を実行する為に僕達は王都から離れた荒地に来ていた。
万が一に備え、レイモンド様が既に王国中にスタンピードの事を伝えて避難をしてもらっている。
でもここで失敗する訳にはいかない。
何が何でもスタンピードは止めなければ。
そんな事を思っていると、僕は自然と握る拳に力が入っていた。
「どうかねジーク君、モンスター達の動きは」
「はい。まだ僕の感知出来る範囲には来ていないです。もう少しですかね」
「上手くいくでしょうか……。とても不安になってきました」
「大丈夫だよ。レベッカ君1人ではなく皆がついているからね」
嵐の前の静けさと言おうか。
人気のない荒地には僕達以外の人がいなく、辺りはとても静かだ。レベッカの緊張が僕にも伝わってくる。
そんなレベッカを見た僕は無意識に彼女の手を握っていた。
「そんなに不安がらなくても大丈夫だよレベッカ。イェルメスさんが言ったように1人じゃないから」
「ジーク様……」
「レベッカ。全てが終わったら探しに行こうよ。君の家族を。それに僕はまだまだ色んな世界を見たいしやってみたい事も沢山ある。だから絶対にスタンピードを止めて、また皆で楽しい日々を過ごそう」
僕がレベッカにそう告げると、彼女は優しく微笑みながらギュっと強く握り返してきた。
そして。
遂にその時が訪れた。
「来た――!」
僕の一言で場に一気に緊張に包まれる。
感知スキルの範囲内にモンスター達が現れた。
「よし、作戦通りにいこう。それぞれ配置について準備を」
「失敗しないでよね」
「やる時はやる男なんよ俺は」
僕達はこの時の為に練った作戦を実行する為に各々配置へと着く。
それから数分後、荒地の奥の方から一帯に砂煙が上がるのが見え始め、徐々に大きくなる地響きと共に大量のモンスター軍の姿を確認した。
「凄い数だな……」
事前に聞いてはいたけど、こうして目の当たりにすると更に迫力が凄い。
「準備はいいかい? レベッカ」
「はい……!」
僕は大きな岩の上からモンスター軍の動きを確認し、来るべきタイミングでレベッカとイェルメスさんに合図を出した。
「今だ――!」
僕の合図でレベッカが『空間魔法』のスキルを発動。
それによって異空間へと繋がる直径30㎝程の黒い円がレベッカ達の足元へ現れる。
これまでは武器や薬草などの出し入れに使用していたが今回は特殊。
いや、レベッカの空間魔法は使い方によってこんな事も可能なのだとイェルメスさん教えられた。
「私がサポートしているから安心してくれ。レベッカ君は昨日と同じ様に空間を“広げる”事だけに集中していれば大丈夫だよ」
「はい、ありがとうございます!」
レベッカはイェルメスさんに教わった通り、空間を自分で操作し始めた。隣ではイェルメスさんが魔力増幅のバフをレベッカに施している。
イェルメスさんの強力なバフ効果もあって、レベッカが発動している空間の円がどんどんと大地を侵食するかの如く広がっていた。
「いいぞ。その調子だ」
「はい。でも今の私ではここが限界みたいです」
「そうか。上出来だよ。ジーク君!」
レベッカの黒い空間の円が直径200m程にまで広がった所で、イェルメスさんが次の合図を僕を出す。それを見た僕は前方に配置しているルルカとミラーナに更に合図を送った。
「お、やっと出番か」
「ちゃんとやりなさいよルルカ。失敗したら皆に迷惑がかかるんだから」
「そういうミラーナちゃんも頼むんよ」
ルルカとミラーナは僕の合図を見て、向かって来るモンスター軍の群れに対してルルカは右端、ミラーナは左端にそれぞれ勢いよく突っ込んで行った。
風に乗るルルカとベヒーモス化したミラーナは2人共凄まじい速さでモンスター軍と距離を詰める。そして一定の距離まで寄ったルルカとミラーナはモンスターに攻撃を仕掛け、モンスター達の注意を自分達へと引き寄せた。
『ギギャァ!』
『グオオオ!』
「よし、そのまま来い!」
「こっちに来なさい馬鹿なモンスター達」
ルルカとミラーナを追うモンスター軍の両端は徐々に中央へと寄っていく。
この先に何があるのかも知らずに――。
~王都・城~
グレイとの決闘も無事(?)に終えた僕達は、これからの事について作戦を練る為にレイモンド様の計らいで城へと招待された。
「お久しぶりですね、イェルメス殿」
「城に来るのは魔王を倒した時以来か。まだ少年だった君が今や国王とは、月日が流れるのはとても早い」
城の長い廊下をレイモンド様とイェルメスさんが昔話をしながら歩き、僕達もそのすぐ後ろを付いていく。
少し歩くと大きなテーブルと何十個ものイスがある部屋に着き、僕達は皆それぞれイスに腰を掛けた。
「ふぅ……それにしても、久々に魔法使ったものだから体が重いな。流石に運動不足と歳には勝てぬようだ」
イェルメスさんは独り言のように呟きながらイスに座る。
「あ、そうだ。まだ薬草が残っていなかったかなレベッカ」
「確かありましたよ。直ぐに出しますね」
そう言ったレベッカは『空間魔法』のスキルで閉まってあった薬草を取り出してイェルメスさんに渡した。
「イェルメスさん、宜しければどうぞ」
「体力回復の薬草か。これは有り難いね、頂くよ。レベッカ君の空間魔法は本当に秀逸だね」
「いえ、全然。私は物を閉まっておくぐらいしか出来ませんから」
謙遜しているがレベッカのスキルには本当に助けられている。イェルメスさんの言葉もお世辞とかではないだろう。
「では早速本題に入ろうか――」
一先ず皆が席に着いたところでレイモンド様が話を切り出す。
「現状の問題は大きく分けて2つ。1つは以前から追っていた魔王軍団の元幹部であるというゲノムの行方。そしてもう1つはそのゲノムが関わっているかもしれないというスタンピードですよね、イェルメス殿」
「ああ。まぁあのスタンピードはほぼ確実にゲノムの仕業だろう。ざっくりと見ただけでも5万はモンスターがいたね」
サラっと言い放った5万という数字。
それを聞いただけではまだピンとこないけど、絶対にヤバいという事だけは確かだ。
イェルメスさんとルルカとミラーナ、それに王国中の騎士団員や冒険者を集めても対等に渡り合えるとは思えない。仮に全て最弱のスライムやゴブリンだったとしてもその数は異常。
そんな大群をどうやって止める?
何かいい方法がないかな……。
しかも肝心のゲノムを見つけない事には根本の解決にならない。奴がいる以上またスタンピードを起こすかもしれないし、奴と姿を消してしまったグレイの事も少なからず気に掛かる。
皆で話し合いをしてもこれと言った解決策が出てこなかった。
「手の打ちようがないんよ」
「せめて数だけも一気に減らせればいいんだけど」
「数を減らした所で元々が多過ぎだけどな」
「どうにかしないと国中がパニックになってしまいますね……」
「う~ん」
皆が頭を悩ませていると、徐にイェルメスさんが口を開いた。
「物は試しだが、1つだけ方法がある」
「本当ですか⁉」
「ああ。でも先ずはそれが出来るか確認しないといけないね。だから協力頼めるかな、レベッカ君――」
「え、私ですか……?」
まさかの展開に皆が驚く中、イェルメスさんだけが落ち着いた笑顔を見せていた。
♢♦♢
翌日――。
スタンピードが止まる事なく真っ直ぐ王都へと向かっている頃、昨日練った作戦を実行する為に僕達は王都から離れた荒地に来ていた。
万が一に備え、レイモンド様が既に王国中にスタンピードの事を伝えて避難をしてもらっている。
でもここで失敗する訳にはいかない。
何が何でもスタンピードは止めなければ。
そんな事を思っていると、僕は自然と握る拳に力が入っていた。
「どうかねジーク君、モンスター達の動きは」
「はい。まだ僕の感知出来る範囲には来ていないです。もう少しですかね」
「上手くいくでしょうか……。とても不安になってきました」
「大丈夫だよ。レベッカ君1人ではなく皆がついているからね」
嵐の前の静けさと言おうか。
人気のない荒地には僕達以外の人がいなく、辺りはとても静かだ。レベッカの緊張が僕にも伝わってくる。
そんなレベッカを見た僕は無意識に彼女の手を握っていた。
「そんなに不安がらなくても大丈夫だよレベッカ。イェルメスさんが言ったように1人じゃないから」
「ジーク様……」
「レベッカ。全てが終わったら探しに行こうよ。君の家族を。それに僕はまだまだ色んな世界を見たいしやってみたい事も沢山ある。だから絶対にスタンピードを止めて、また皆で楽しい日々を過ごそう」
僕がレベッカにそう告げると、彼女は優しく微笑みながらギュっと強く握り返してきた。
そして。
遂にその時が訪れた。
「来た――!」
僕の一言で場に一気に緊張に包まれる。
感知スキルの範囲内にモンスター達が現れた。
「よし、作戦通りにいこう。それぞれ配置について準備を」
「失敗しないでよね」
「やる時はやる男なんよ俺は」
僕達はこの時の為に練った作戦を実行する為に各々配置へと着く。
それから数分後、荒地の奥の方から一帯に砂煙が上がるのが見え始め、徐々に大きくなる地響きと共に大量のモンスター軍の姿を確認した。
「凄い数だな……」
事前に聞いてはいたけど、こうして目の当たりにすると更に迫力が凄い。
「準備はいいかい? レベッカ」
「はい……!」
僕は大きな岩の上からモンスター軍の動きを確認し、来るべきタイミングでレベッカとイェルメスさんに合図を出した。
「今だ――!」
僕の合図でレベッカが『空間魔法』のスキルを発動。
それによって異空間へと繋がる直径30㎝程の黒い円がレベッカ達の足元へ現れる。
これまでは武器や薬草などの出し入れに使用していたが今回は特殊。
いや、レベッカの空間魔法は使い方によってこんな事も可能なのだとイェルメスさん教えられた。
「私がサポートしているから安心してくれ。レベッカ君は昨日と同じ様に空間を“広げる”事だけに集中していれば大丈夫だよ」
「はい、ありがとうございます!」
レベッカはイェルメスさんに教わった通り、空間を自分で操作し始めた。隣ではイェルメスさんが魔力増幅のバフをレベッカに施している。
イェルメスさんの強力なバフ効果もあって、レベッカが発動している空間の円がどんどんと大地を侵食するかの如く広がっていた。
「いいぞ。その調子だ」
「はい。でも今の私ではここが限界みたいです」
「そうか。上出来だよ。ジーク君!」
レベッカの黒い空間の円が直径200m程にまで広がった所で、イェルメスさんが次の合図を僕を出す。それを見た僕は前方に配置しているルルカとミラーナに更に合図を送った。
「お、やっと出番か」
「ちゃんとやりなさいよルルカ。失敗したら皆に迷惑がかかるんだから」
「そういうミラーナちゃんも頼むんよ」
ルルカとミラーナは僕の合図を見て、向かって来るモンスター軍の群れに対してルルカは右端、ミラーナは左端にそれぞれ勢いよく突っ込んで行った。
風に乗るルルカとベヒーモス化したミラーナは2人共凄まじい速さでモンスター軍と距離を詰める。そして一定の距離まで寄ったルルカとミラーナはモンスターに攻撃を仕掛け、モンスター達の注意を自分達へと引き寄せた。
『ギギャァ!』
『グオオオ!』
「よし、そのまま来い!」
「こっちに来なさい馬鹿なモンスター達」
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