呪われた勇者~呪いのスキル『引寄せ』を授かった俺は、災いを引寄せると一族を追放。だが気が付けば災いどころか最強スキルばかり引寄せて最強に~

きょろ

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第2章~獣人国と刺客~

2-1 ミラーナの弟が引寄せられた

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~クラフト村・冒険者ギルド~

「――いやー、最近どうもポーションの入荷が悪いらしい」
「そうみたいだな。なんでもポーションの原料となる“魔草”がめっきり取れなくなっちまったそうだ」
「そりゃ困ったな。ここらの他の冒険者達も手に入れるのに苦労しているらしいし。何で急に魔草が取れなくなったんだ?」
「詳しくは分からない。でも聞いた話によると、今まで魔草が取れていた南の渓谷に“サラマンダー”が住み着いちまったらしくてな。奴の炎の影響で渓谷一帯が干からびてるらしいぞ」
「何ッ、サラマンダーだって⁉ アレは確かSランクモンスターだろ! 本物なのか⁉」
「さぁな、それは俺も分からない――」

 昨日の修羅場から一夜明け、クラフト村はすっかり落ち着きを取り戻していた。

 起きた事が事なだけに町長さんは村の人達に「ゆっくり休んで下さい」と呼び掛けていたが、皆思った以上に元気であっという間に日常に戻ったんだ。

 まぁ色々慌ただしかったけど、僕も晴れて冒険者となった。だからこれから新しい依頼を受けようとサラさんがいる冒険者ギルドに来たのだが、話はここからまた急展開を迎える事になった――。

「ジーク君、君達はこれからどうするんだい?」

 僕にそう聞いてきたのはイェルメスさん。
 レベッカは当然ながら、もう当たり前の様にルルカとミラーナも隣にいる。

「そうですね……特に決めてはいませんが、これからは冒険者として1つ1つ依頼をこなしていきたいなとは思っています。生活もありますので」
「ハハハ、そうかそうか。ごもっともな意見だね」
「なんか流れでイェルメスさんにも同行させてしまいましたけど、イェルメスさんはもう戻るんですか?」
「本当はそのつもりだったのだがね。んー、どうもジーク君に見せてもらったあの赤い結晶に気になる事があるのでな。少し調べようと思っているんだ」

 イェルメスさんは少し険しい顔をしてそう言った。
 やっぱりアレは何か特殊な物なんだな。

「そう言えばまだ君にお礼を言っていなかったね。このクラフト村は私も昔に世話になった事がある大事な村だったんだ。町長を始め、村を救ってくれ本当にありがとうジーク君」
「そ、そんな! お礼を言うのは寧ろ僕ですよ! 急に押し掛けたにも関わらず色々教えて助けてもらって、本当にありがとうございました!」

 イェルメスさんに感謝してるのは僕の方だ。
 皆は村を救ってくれた勇者なんて言ってくれているけど、僕1人の力なんてとても小さい。レベッカ、ルルカ、ミラーナ、そしてイェルメスさんがいたからこそ結果この村を助ける事が出来た。

 そもそもミラーナの件も今回の件も、元はと言えば全ては“僕のせい”なのかもしれない。

 僕のこの『引寄せ』の力が、少なからず皆を困らせた可能性がある……。

 でもイェルメスさんはこの力が世界を救える力だとも言ってくれた。魔王を倒した本物の勇者にはきっと足元にも及ばないだろうけど、それでも僕のこの力で救えるものがあるのなら、僕はこの力を人の為に使いたい――。

「イェルメスさん! 良かったらその調べるの手伝わせてもらえませんか? 僕もずっと気になっていて」

 イェルメスさんがそれを調べると言うなら当然僕も力になりたい。大した事は出来ないけど。

「ジーク様、次のご依頼は決まりましたか?」
「ああ。決まったと言うか、イェルメスさんと一緒にこの結晶を調べようと思うんだ。って、いいですかねイェルメスさん?」
「勿論だとも」
「レベッカはどうかな?」
「私はジーク様がお決めになった事なら何処までもお供します」

 この異様な赤い結晶の正体を知りたい。
 初めて見た時から何となく胸がザワつく“嫌な予感”みたいなものを感じていたんだ。まぁ気のせいならいいんだけど。

 と、そんな事を話していた瞬間、突如ギルドの扉が勢いよく開けられた。

 ――バンッ!
 勢いよく開けられたドアが壁にぶつかり、ギルドにいた人達が一斉に入り口へと視線を向ける。するとそこには僕よりも少し幼そうな顔付きをした1人の男の子が立っていた。

「ハァ……ハァ……やっと見つけた! “お姉ちゃん”!」
「あら、“ジャック”じゃない。どうしてこんな所に――?」

 男の子がお姉ちゃんと呼んだ視線の先にはミラーナが。
 そしてミラーナもまたその男の子をジャックと呼んだ。

 この2人にはごく自然な会話なのかもしれない。
 だが状況がさっぱり分からない僕は困惑する他なかった。

「お、お姉ちゃん? もしかしてミラーナの……」

 そう。
 目の前にいる男の子は普通の男の子ではない。
 ミラーナ同様、こげ茶色の毛を靡かせながら獣耳と尾を生やした彼は間違いなく獣人族。

 そしてミラーナは僕達の戸惑いを一掃するかの如く、その男の子の肩に手をポンと乗せながら「私の“弟”」と言ったのだった。

「そ、そうだったのか。弟がいたんだねミラーナ」
「ええ。別にそんな驚く事じゃないと思うけど。って、何で貴方がこんな所にいるのよジャック」

 弟がいた事にそこまで驚きはない。
 寧ろそれよりも気になったのは今ミラーナが言った様に、何故こんな所に来たのだろうという率直な疑問と、何故か弟のジャックという子が息を切らしながらとても不安そうな表情をしている事だ。

「お、お姉ちゃん! 渓谷が……皆が……国が大変なんだッ!」
「「……⁉」」

 ジャック君の声がギルド中に響き、場はしんと静まり返った――。 
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