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第1章~呪いの勇者降臨~
1-6 クラフト村で宴を引寄せ
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♢♦♢
~クラフト村~
「ジークさん――!」
「おお、無事であったか!」
村から離れた所に避難していた皆を、レベッカが呼び戻してくれた。心配してくれていたであろうサラさんや村長さんは、僕達を見るなりとても安堵していた。他の村人達も皆お礼を言ってくれている。
「まぁまぁ落ち着けよ皆。兎も角ベヒーモスはこのジークが討伐してくれた! もう襲ってくる不安もねぇから安心していいんよ」
「おおー、なんて事だ! まさかあのベヒーモスを倒しただって⁉」
「信じられん……。Sランクのモンスターなんて倒すどころか遭遇するのも珍しい伝説のモンスター。それを倒してしまうなんて……!」
村の皆は感謝と共に驚きも生まれていた。
まだ皆がざわつく中、村長さんが1歩前に出て僕に話し掛けてくる。
「ジーク君、本当にありがとう! いやはやこれは何とお礼を言ったらいいか」
「そんなの気にしないで下さいよ。皆が無事で僕もホッとしました」
「いやいや、こんなのでは私の気が済みません! 大事なクラフト村を守っていただいたんですから。王都への要請が何の音沙汰も無いので、私はここ数日間ずっと気が気がじゃなかったんですよ」
話す町長さんからこれまでの不安と感謝がこれでもかと伝わってくる。ここまで感謝される事でもないけど、王都の奴らが要請を無視しているのは本当に許せない。
「皆さんに喜んでもらえたなら僕も嬉しいです。自分が出来る事をしたまでなので。それと町長さん……実は1つご報告がありまして」
「はて、何かまだ問題がありましたか?」
「ほらミラーナ。ちゃんと言わないと――」
断りを入れた僕は皆の前に出る様ミラーナを促す。
彼女は恥ずかしそうに不安な顔をしながらもゆっくりと口を開いた。
「ま、まぁ、小さな村にしては野菜が新鮮で美味であったわ……。私の口でも満足出来る物だったわよ」
「それは……ありがとうございます……?」
「こらこら、違うだろミラーナ。言う事はそこじゃない」
ミラーナは「分かってるわよ! もー!」と何故か僕に文句を言った後、町長さんと村の皆に勢いよく頭を垂らした。
「村の畑を荒らして、皆を怖がらせてしまってごめんなさいッ! もう絶対にしないわ。って言うか、私だって好きでやったんじゃないかわよ」
素直じゃないなぁもう。でも反省はしてるから大丈夫だろう。
謝るミラーナを横目に、村の人達や町長さんはキョトンとした表情を浮かべて僕に尋ねてきた。
「あのー、ジーク君。彼女は一体……? どういう事かね?」
「実はですね――」
僕は皆に事の経緯を全て報告した。
ミラーナがベヒーモスだったという事、彼女が畑を荒らしてしまった事、でも彼女に悪気はなく一応事情があったという事。
全てをきちんと伝えると、町長さん達は頷いて納得してくれた。
「凄いですよジークさん! ベヒーモスを討伐するだけでなく仲間にしてしまうなんて!」
「え、いや、そういう訳じゃ……」
なんか受け取り方のニュアンスが若干ズレているサラさんだったが、この一言で完全にそういう事になってしまった。
「ベヒーモスを従えるなんて最早勇者じゃないか!」
「君達はクラフト村のヒーローだ!」
「本当にありがとう! 好きなだけ村に滞在して下さいね!」
「今日は勇者誕生の宴といこうぜ皆ぁ!」
「「おおー!!」」
思った以上に盛り上がりを見せる村の人々。
正直こんな盛り上がりをされてしまうと何と言っていいのか全然分からない。
「ヒャハハ。こりゃ今日はいい酒が飲めるんよ。しかも美女付きで」
「流石ジーク様です」
一件落着……って事でいいのかな、これは。
どう反応していいか分からない僕は「ハハハ」と苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
そして皆が盛り上がる中、僕が徐にブロンズの腕輪に視線を落とすと、今のミラーナとの戦闘のせいか、またも新しいスキルが刻まれていた。
『分解』――。
勿論これがどういった効果は分からない。
新たなスキルの事も然ることながら、村は早くも宴モード。皆が外にテーブルやイスを出し、多くの食べ物や飲み物を持ち寄り始めた。
「さあさあ“勇者御一行様”! 好きなだけ召し上がって下さい! これからまだまだ出しますので、遠慮なくくつろいで下さいよッ!」
「あら、それは嬉しいわね。めでたく元に戻れた事だし、遠慮なく貰うとするわ」
「サラさーん! 俺も酒貰える?」
「しょうがないですね。今日は特別ですよ。ジークさんもレベッカさんもどうぞ!」
どんどん賑わうクラフト村の皆。
相変わらず感謝の言葉を矢継ぎ早に受け取っている上に、こんな厚いおもてなしをされると本当にどうしていいか戸惑っちゃう。
皆が喜んでくれているのは当然嬉しいけど勇者なんて褒め過ぎだし、ルルカは百歩譲って分かるとして、事の発端である君が何故真っ先にご飯を頂いているんだミラーナ……。
「私達も行きましょうかジーク様」
「う、うん。そうだね。なんかもう逆に断れない雰囲気だし」
レベッカに促され、僕達も皆の有り難い好意に甘えさせてもらった。
何はともあれ皆本当に無事で良かったな。
レベッカも楽しそうにしているし。
僕は貰った飲み物をグイっと飲みながら、賑わうクラフト村の人達の笑顔を見てふとある事を思い出した。
あれ。
そう言えば僕……。
ちゃんと冒険者登録してもらったんだっけ――?
~クラフト村~
「ジークさん――!」
「おお、無事であったか!」
村から離れた所に避難していた皆を、レベッカが呼び戻してくれた。心配してくれていたであろうサラさんや村長さんは、僕達を見るなりとても安堵していた。他の村人達も皆お礼を言ってくれている。
「まぁまぁ落ち着けよ皆。兎も角ベヒーモスはこのジークが討伐してくれた! もう襲ってくる不安もねぇから安心していいんよ」
「おおー、なんて事だ! まさかあのベヒーモスを倒しただって⁉」
「信じられん……。Sランクのモンスターなんて倒すどころか遭遇するのも珍しい伝説のモンスター。それを倒してしまうなんて……!」
村の皆は感謝と共に驚きも生まれていた。
まだ皆がざわつく中、村長さんが1歩前に出て僕に話し掛けてくる。
「ジーク君、本当にありがとう! いやはやこれは何とお礼を言ったらいいか」
「そんなの気にしないで下さいよ。皆が無事で僕もホッとしました」
「いやいや、こんなのでは私の気が済みません! 大事なクラフト村を守っていただいたんですから。王都への要請が何の音沙汰も無いので、私はここ数日間ずっと気が気がじゃなかったんですよ」
話す町長さんからこれまでの不安と感謝がこれでもかと伝わってくる。ここまで感謝される事でもないけど、王都の奴らが要請を無視しているのは本当に許せない。
「皆さんに喜んでもらえたなら僕も嬉しいです。自分が出来る事をしたまでなので。それと町長さん……実は1つご報告がありまして」
「はて、何かまだ問題がありましたか?」
「ほらミラーナ。ちゃんと言わないと――」
断りを入れた僕は皆の前に出る様ミラーナを促す。
彼女は恥ずかしそうに不安な顔をしながらもゆっくりと口を開いた。
「ま、まぁ、小さな村にしては野菜が新鮮で美味であったわ……。私の口でも満足出来る物だったわよ」
「それは……ありがとうございます……?」
「こらこら、違うだろミラーナ。言う事はそこじゃない」
ミラーナは「分かってるわよ! もー!」と何故か僕に文句を言った後、町長さんと村の皆に勢いよく頭を垂らした。
「村の畑を荒らして、皆を怖がらせてしまってごめんなさいッ! もう絶対にしないわ。って言うか、私だって好きでやったんじゃないかわよ」
素直じゃないなぁもう。でも反省はしてるから大丈夫だろう。
謝るミラーナを横目に、村の人達や町長さんはキョトンとした表情を浮かべて僕に尋ねてきた。
「あのー、ジーク君。彼女は一体……? どういう事かね?」
「実はですね――」
僕は皆に事の経緯を全て報告した。
ミラーナがベヒーモスだったという事、彼女が畑を荒らしてしまった事、でも彼女に悪気はなく一応事情があったという事。
全てをきちんと伝えると、町長さん達は頷いて納得してくれた。
「凄いですよジークさん! ベヒーモスを討伐するだけでなく仲間にしてしまうなんて!」
「え、いや、そういう訳じゃ……」
なんか受け取り方のニュアンスが若干ズレているサラさんだったが、この一言で完全にそういう事になってしまった。
「ベヒーモスを従えるなんて最早勇者じゃないか!」
「君達はクラフト村のヒーローだ!」
「本当にありがとう! 好きなだけ村に滞在して下さいね!」
「今日は勇者誕生の宴といこうぜ皆ぁ!」
「「おおー!!」」
思った以上に盛り上がりを見せる村の人々。
正直こんな盛り上がりをされてしまうと何と言っていいのか全然分からない。
「ヒャハハ。こりゃ今日はいい酒が飲めるんよ。しかも美女付きで」
「流石ジーク様です」
一件落着……って事でいいのかな、これは。
どう反応していいか分からない僕は「ハハハ」と苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
そして皆が盛り上がる中、僕が徐にブロンズの腕輪に視線を落とすと、今のミラーナとの戦闘のせいか、またも新しいスキルが刻まれていた。
『分解』――。
勿論これがどういった効果は分からない。
新たなスキルの事も然ることながら、村は早くも宴モード。皆が外にテーブルやイスを出し、多くの食べ物や飲み物を持ち寄り始めた。
「さあさあ“勇者御一行様”! 好きなだけ召し上がって下さい! これからまだまだ出しますので、遠慮なくくつろいで下さいよッ!」
「あら、それは嬉しいわね。めでたく元に戻れた事だし、遠慮なく貰うとするわ」
「サラさーん! 俺も酒貰える?」
「しょうがないですね。今日は特別ですよ。ジークさんもレベッカさんもどうぞ!」
どんどん賑わうクラフト村の皆。
相変わらず感謝の言葉を矢継ぎ早に受け取っている上に、こんな厚いおもてなしをされると本当にどうしていいか戸惑っちゃう。
皆が喜んでくれているのは当然嬉しいけど勇者なんて褒め過ぎだし、ルルカは百歩譲って分かるとして、事の発端である君が何故真っ先にご飯を頂いているんだミラーナ……。
「私達も行きましょうかジーク様」
「う、うん。そうだね。なんかもう逆に断れない雰囲気だし」
レベッカに促され、僕達も皆の有り難い好意に甘えさせてもらった。
何はともあれ皆本当に無事で良かったな。
レベッカも楽しそうにしているし。
僕は貰った飲み物をグイっと飲みながら、賑わうクラフト村の人達の笑顔を見てふとある事を思い出した。
あれ。
そう言えば僕……。
ちゃんと冒険者登録してもらったんだっけ――?
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