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3杯目~悪酒~

42 ど~~~しても後数秒だけ

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♢♦♢

~特別禁止区域・ヘクセンリーパーの城前~


「――いくら何でも無茶苦茶過ぎるんよ」
「まぁ結果オーライだろ」

 幕切れは何とも呆気ない。

 ルルカとヘクセンリーパーの攻撃を掻き消したリフェルの一撃が天へと消えたかと思いきや、再び空から舞い戻り、そのままヘクセンリーパーを襲ったのである。

 そして今俺達の足元には完全に気を失ったヘクセンリーパーが倒れていた。

「これでも一応待っていたのですヨ。ですが余りに戦闘が長く効率が悪いと判断したので、こうして私が修正しましタ」

 これがリフェルの言い分だ。 

 順を追って説明すると、まずルルカの持つ魔具というのは1つ1つに特殊な効果があるアイテムの事。

 俺も勿論その存在は知っているし見た事もあるが、これは魔草と同じで、魔具にも物によってかなり貴重で効果の高い物が存在する。子供が遊び用から人の命を奪うものまでな。

 ここは流石盗賊団だと褒めていいのか複雑ではあるが、ルルカ達は珍しい物や入手困難な物を狙う筋金入りの盗賊。今回の魔具は、ヘクセンリーパーを倒す為……今日という日の為だけにルルカが入手した超希少な魔具であった。

 その効果は、“魔具を使用した場所から半径50m以内全ての魔術を無効化”――。

 つまり、この島に張られていたヘクセンリーパーの結界効果が消され、通常通り魔力を扱える様になったのだ。

 そしてその恩恵を受けたのは使用者であるルルカのみならず、ついでに彼から半径50m以内にいた俺達全員も対象になっていたらしい。

 魔具の効果を発動させたのはルルカとヘクセンリーパーが対峙した時から。リフェル達は直ぐに気付いたとの事だが……これは残念。魔力の無い俺には分からなかった。

 ある意味この魔具は、魔法ではなく魔術を扱う“対魔女”としては絶大な効果を誇る。当然それ目的でルルカは手に入れた訳だろうが、所詮は1つのアイテム。魔具は効果が高ければ高いほど、強ければ強い程、回数や時間に制限がある。

 ルルカの使用した魔具の制限回数は1回。そして効力はたったの10分。

 これまでの状況を整理した上で、ここからが本題だ――。
 
 ルルカとヘクセンリーパーの目まぐるしい激闘が始まって直後、図らずもその効力を受けたリフェルの言い分では、彼女は極めて効率的で現実主義な為、全くメリットのないルルカ達の戦闘を直ぐに強制終了させようとしたらしい。

 だが、これはいい意味で誤算だったのだが、“ルルカのお陰で魔力が通常通り使える様になった”というリフェルなりの“思いやり”が芽生えていた瞬間でもあった。

 今しがたリフェル本人の口からそれを聞いた時は本当に驚いたぜ。今まで情の欠片も感じられなかったからな。特に俺に対しては。

 まぁ理由はどうであれ、思いがけない形でリフェルに変化が起きた。これは良い事でしかない。

 確かに良い事でしかないし、言ってもアンドロイドなのだから徐々にという事は分かっている。Dr.カガクも言っていたし、想定よりも早く人間らしくなっていると俺は常々思っていた。

 だがしかしリフェルよ。

 後ほんの少しだけ待てなかったか? それが我慢の限界だったのかお前の。

 ルルカの魔具のタイムリミットは10分。激しい攻防の連続で正確な時間は分からないが、今思い返せば多分7~8分。感覚だけど、奴が最後の力を振り絞った事を踏まえれば大きなズレがあるとは思えねぇ。

 逆を言えば、あの一撃で少なからず勝敗が着いていたと思う。仮にそうじゃなかったとしても、魔具の効力もどの道1~2分ぐらいだろ。

 も~~うちょっと待ってやれよ。後ホントにちょっとだけだったぞ。

 5分以上待ったならたかが数分大目に見てやれなかったか? リフェルよ。

 俺達も確かにヘクセンリーパーから重要な手掛かりを求めてやってきたし、ルルカとは会ったばかりで何も知らねぇけどよ、アイツがかなり気持ち入れ込んでたって事を少しぐらい汲み取ってやっても良かっただろうに。

 アクルは勿論、悪いがエマでさえ、ルルカの並々ならぬ事情に横槍入れちゃいけないなと思っていたと思うぞ。殺しの事しか考えていないエマでもな……。

 分かるよ。
 最初からお前を見てきた俺なら、お前に芽生えてきた“感情”という名の小さな功績を褒め称えたい。いや、本来なら皆で酒でも飲みながら祝ってもいいぐらいの出来事だ。正直俺はそれぐらい、リフェルに感情が生まれた事が嬉しかった。

 でも、だからこそ複雑なんだ。多くを求めてはいけない。まずは出来たという偉大な1歩を認めたい。認めているし誇らしく思うが、ど~~~しても後数秒だけでいいから待って欲しかったぜ。

 これが俺の正直な本音です。はい。

 長々とどうでもいい事を語って悪かったな。
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