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3杯目~悪酒~
39 つかめない男
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「……って、下手こいて死にかけた奴が言ってもね」
そう自虐交じりに言う彼は直ぐに元の雰囲気に戻った。
コイツも訳ありって事か……。
「確かに説得力がねぇな。お前の強さは知らんがまた怪我するぞ」
「心配ありがと。でも大丈夫なんよ。後“1時間”も経てばね」
「は? そりゃどういう意ッ……「――来る」
エマが言った直後、再び大量のモンスターが現れた。先頭切って突っ込んでくる狼や猪のモンスターを筆頭に、その後ろからも次々と出現していた。
「やべぇな。一先ず逃げるか」
「何故ですカ? あの程度のモンスターなら何体いようと私が一撃でッ……「止めろ」
リフェルを遮る様にルルカが言った。
「ここは完全に奴のテリトリー。この結界内では魔力操作が難しくなっている」
「魔力操作が……?」
「成程。それで私の魔法も安定せず、皆がバラバラになったのですネ」
「その説明は後! 今は旦那が言った通りこの場を離れよう」
ルルカの後に続き俺達もこの場から退く。最低限のモンスターを倒しながら暫く逃げていると、いつの間にかモンスター達も消え、また不気味な静けさが広がる密林に戻った。
そして物語は“今”に戻る――。
「――いや~、“旦那達”面白いね! いつもこんな賑やかなの?」
俺達が今言い争っている原因の1つは“コイツ”でもあるかも知れない。
「うるせぇ。そんな事より続きを教えろ。どうなってるんだよこの島と魔女は」
「ヒャハハ。それはさっきも言ったけど、ここは完全に奴のテリトリーなんよ。島全てがね。この結界は奴の魔術で生み出されているから普通の方法では入る事が出来ない。お姉さんの言い方だと、旦那達も特殊な魔法か何かで侵入したんじゃないの? この島に」
「そうでス。私の移動魔法で来ましタ」
「やっぱりね。この結界内では侵入者を察知するとモンスターが出現し襲い掛かって来るんよ。奴からの警告みたいなもんさ。そして侵入者はここでの魔力操作が著しく低下してしまう。
発動したい魔法が出せなかったり、思っていた魔法と違うものが出たり。そもそも魔力を練り上げられなくなる事もね」
随分と詳しいな……。
いまいち掴めない奴だが余程魔女と因縁があるみたいだ。
「成程な。それで肝心のヘクセンリーパーは何処にいる?」
「う~ん、教えてもいいけど今度はこっちの番。俺ばっか言ってフェアじゃないでしょ。旦那達は何の用なの? アイツに」
「私達は満月龍を探しているのでス」
「満月龍を……?」
「この島にいるヘクセンリーパーという魔女が何か知っている可能性があってな。オラ達はそれを聞きに来た」
こちらの言い分を聞いたルルカは沈黙した。そして数秒後、大きな笑い声が響いた。
「ヒャハハハハッ! やっぱり面白過ぎるんよ旦那達。満月龍を探す為に魔女と話をしに来たって? どういう冗談なのそれ!」
何かツボに入ったらしいルルカは腹を抱えて笑い転げている。
だが、一切冗談ではないという俺達4人の視線を感じ取ったのか急に笑うのを止め、「嘘でしょ?」と言いながら何度も何度も俺達の顔を見比べていた。
「ふぅ……。いや、何というか~、まぁアレなんよ。マジで満月龍探してるって事でいいだよな?」
「ああ。やっと分かってくれたらしいな。だから早くヘクセンリーパーの居場所教えてくれ」
「そっかぁ。旦那達には助けてもらった借りがあるから協力したいけどさ……仮に奴が満月龍の情報を持っていたとしても、絶対旦那達には教えないよ」
「だろうな。友達でもない侵入者だし」
「良く分かってるね。だったら諦めてもう帰んなよ。 ワーホルムにはもっと観光に向いた場所が沢山あるし」
「それはまた話が別だ。ヘクセンリーパーがどんな奴なのか知らねぇが、僅かな可能性があるなら俺達は行く。観光にきた訳じゃねぇ」
「え~。絶対に?」
「絶対だ」
「そうか~、困ったなぁ……」
ルルカはバツが悪い様子で頭を抱えている。
「何が困るんだよ。お前も何か穏やかじゃねぇ理由があるみてぇだが、ヘクセンリーパーと俺達が話をするだけでもそれと関係してくるのか」
「大アリだね」
食い気味に言い放ってきたルルカの雰囲気からまた殺意が感じられた。
「 ……! お、“やっと時間がきた”。旦那達、悪いけどやっぱり諦めてよ。今から俺あの魔女殺すからさ――」
「何?……って、おいッ! 」
ルルカの殺意が更に膨れ上がった刹那、彼は一瞬にして姿を消した。
“今から俺があの魔女殺すからさ――。”
やべぇ。
アイツまさか本当にッ……!
「リフェル! ヘクセンリーパーの居場所は⁉」
「妙な結界のせいで100%とは言い切れせんガ、1つだけ怪しい魔力がありまス」
「それだ。早くそこまで飛ばせ! あのタヌキがヘクセンリーパー殺しちまうぞ!」
「ホントに面倒ばっか」
「ですが上手く移動魔法を使えるか分かりませんヨ」
「いいから早くやれ! そして絶対失敗するな!」
「無茶苦茶だなお前……」
「もうどうなっても知りませんからネ」
投げやりになりながらもリフェルは魔法を発動した。淡い光が俺達の体をどんどん包み込んでいく。そして視界が明るくなった瞬間、俺達は何処かへ飛んだ――。
そう自虐交じりに言う彼は直ぐに元の雰囲気に戻った。
コイツも訳ありって事か……。
「確かに説得力がねぇな。お前の強さは知らんがまた怪我するぞ」
「心配ありがと。でも大丈夫なんよ。後“1時間”も経てばね」
「は? そりゃどういう意ッ……「――来る」
エマが言った直後、再び大量のモンスターが現れた。先頭切って突っ込んでくる狼や猪のモンスターを筆頭に、その後ろからも次々と出現していた。
「やべぇな。一先ず逃げるか」
「何故ですカ? あの程度のモンスターなら何体いようと私が一撃でッ……「止めろ」
リフェルを遮る様にルルカが言った。
「ここは完全に奴のテリトリー。この結界内では魔力操作が難しくなっている」
「魔力操作が……?」
「成程。それで私の魔法も安定せず、皆がバラバラになったのですネ」
「その説明は後! 今は旦那が言った通りこの場を離れよう」
ルルカの後に続き俺達もこの場から退く。最低限のモンスターを倒しながら暫く逃げていると、いつの間にかモンスター達も消え、また不気味な静けさが広がる密林に戻った。
そして物語は“今”に戻る――。
「――いや~、“旦那達”面白いね! いつもこんな賑やかなの?」
俺達が今言い争っている原因の1つは“コイツ”でもあるかも知れない。
「うるせぇ。そんな事より続きを教えろ。どうなってるんだよこの島と魔女は」
「ヒャハハ。それはさっきも言ったけど、ここは完全に奴のテリトリーなんよ。島全てがね。この結界は奴の魔術で生み出されているから普通の方法では入る事が出来ない。お姉さんの言い方だと、旦那達も特殊な魔法か何かで侵入したんじゃないの? この島に」
「そうでス。私の移動魔法で来ましタ」
「やっぱりね。この結界内では侵入者を察知するとモンスターが出現し襲い掛かって来るんよ。奴からの警告みたいなもんさ。そして侵入者はここでの魔力操作が著しく低下してしまう。
発動したい魔法が出せなかったり、思っていた魔法と違うものが出たり。そもそも魔力を練り上げられなくなる事もね」
随分と詳しいな……。
いまいち掴めない奴だが余程魔女と因縁があるみたいだ。
「成程な。それで肝心のヘクセンリーパーは何処にいる?」
「う~ん、教えてもいいけど今度はこっちの番。俺ばっか言ってフェアじゃないでしょ。旦那達は何の用なの? アイツに」
「私達は満月龍を探しているのでス」
「満月龍を……?」
「この島にいるヘクセンリーパーという魔女が何か知っている可能性があってな。オラ達はそれを聞きに来た」
こちらの言い分を聞いたルルカは沈黙した。そして数秒後、大きな笑い声が響いた。
「ヒャハハハハッ! やっぱり面白過ぎるんよ旦那達。満月龍を探す為に魔女と話をしに来たって? どういう冗談なのそれ!」
何かツボに入ったらしいルルカは腹を抱えて笑い転げている。
だが、一切冗談ではないという俺達4人の視線を感じ取ったのか急に笑うのを止め、「嘘でしょ?」と言いながら何度も何度も俺達の顔を見比べていた。
「ふぅ……。いや、何というか~、まぁアレなんよ。マジで満月龍探してるって事でいいだよな?」
「ああ。やっと分かってくれたらしいな。だから早くヘクセンリーパーの居場所教えてくれ」
「そっかぁ。旦那達には助けてもらった借りがあるから協力したいけどさ……仮に奴が満月龍の情報を持っていたとしても、絶対旦那達には教えないよ」
「だろうな。友達でもない侵入者だし」
「良く分かってるね。だったら諦めてもう帰んなよ。 ワーホルムにはもっと観光に向いた場所が沢山あるし」
「それはまた話が別だ。ヘクセンリーパーがどんな奴なのか知らねぇが、僅かな可能性があるなら俺達は行く。観光にきた訳じゃねぇ」
「え~。絶対に?」
「絶対だ」
「そうか~、困ったなぁ……」
ルルカはバツが悪い様子で頭を抱えている。
「何が困るんだよ。お前も何か穏やかじゃねぇ理由があるみてぇだが、ヘクセンリーパーと俺達が話をするだけでもそれと関係してくるのか」
「大アリだね」
食い気味に言い放ってきたルルカの雰囲気からまた殺意が感じられた。
「 ……! お、“やっと時間がきた”。旦那達、悪いけどやっぱり諦めてよ。今から俺あの魔女殺すからさ――」
「何?……って、おいッ! 」
ルルカの殺意が更に膨れ上がった刹那、彼は一瞬にして姿を消した。
“今から俺があの魔女殺すからさ――。”
やべぇ。
アイツまさか本当にッ……!
「リフェル! ヘクセンリーパーの居場所は⁉」
「妙な結界のせいで100%とは言い切れせんガ、1つだけ怪しい魔力がありまス」
「それだ。早くそこまで飛ばせ! あのタヌキがヘクセンリーパー殺しちまうぞ!」
「ホントに面倒ばっか」
「ですが上手く移動魔法を使えるか分かりませんヨ」
「いいから早くやれ! そして絶対失敗するな!」
「無茶苦茶だなお前……」
「もうどうなっても知りませんからネ」
投げやりになりながらもリフェルは魔法を発動した。淡い光が俺達の体をどんどん包み込んでいく。そして視界が明るくなった瞬間、俺達は何処かへ飛んだ――。
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