邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~

きょろ

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第32話 会議

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 魔物保護団体への制裁の翌日。会議の間にて。
 俺達は緊急反省会を行う事となった。今の俺は、相当苦い顔をしている事だろう。

「流石にちょっとやりすぎたか」

 保護団体の連中を皆殺しにしたのは、別に良い。
 だが向こうの街で暴れに暴れた挙句、領主の館の庭にアンデッド化させた奴らをぶっ刺してしまったのだ。
 これはどう見ても、レオナルド王国への苛烈な敵対行為である。

「いえ、かなり寛容なご処置かと思いますが。何の心配がございますか?」

 骨はキョトンとした感じをしている。無論、他の連中も同じリアクションだ。

「我らはまだ数百人の戦力しかないのだ。個々は多少強いのかもしれぬが、王国は数十万の兵力を持っている上に、上級冒険者や英雄を何十人も抱えている。俺達の様なな弱小国は、一瞬で踏み潰されてしまうだろう」

 一瞬間が空く。

「踏み潰される……とは、レオナルド王国の事ですか?」
「何を言っているのだ! 我ら邪神王国の事に決まっておろう!」

 会議の間に沈黙が生まれる。弟子や幹部達は、暫し互いの顔を見合わせた後、大爆笑した。

「わははは、流石は大王様! 重たい雰囲気を醸し出してからの、最高の冗談! これは一本取られましたわい」
「ピピピッ、御師様の緊張と緩和の作り方は神業です!」
「おほほほ! 『緊急会議を開きたい』と仰った時から、振りが始まっていたのですわね!」
「馬鹿者共、何を笑っているのだ!」

 俺はドンッ、と机を叩いた。全員が一斉に押し黙る。
 全く、コイツらはどこまでふざけているのだ。蟻と山の比較すら出来ない馬鹿だな。

「レオナルド王国に使者を送る必要があるな。今回の一件は保護団体へのみの報復であり、王国には一切敵対する意思がない事を表明しよう」

 骨が頷いた。すっかり元のテンションに戻っている様だ。

「かしこまりました。それと同時に、ルルカ邪神王国を正式に認めさせるのはいかがでしょうか。行商人の話では、邪神王国はベルックスを不法占拠した邪教徒の一団という事になっているそうですから」

 骨の言う通りだな。正式な国家として認めてもらわねば、外交や貿易が出来ない。

「よし、では使節団を編成しよう。当然俺は行くが、随伴したい者はいるかな」

 その場にいる全員が手を挙げる。

「うむ、やはり使者とするのならば、相手に威圧感を与えるような奴は駄目だな。よってどアホと鳥はアウト」
「なんとぉ!」
「王国は死霊術禁止してるぐらいだから、骨もダメだな」
「えぇ……!」

 死霊術が禁止なのは、保護団体制裁への終わった後、帰路に就いた時に新米騎兵から聞いた情報だ。あの時は流石に早く言えよ、と思い切り突っ込んだ。
 まぁスケルトンキングが、街の中も外もうろついている時点でアウトなのだが。

「動物は城内に入れないだろうし、チャン・クリスも留守番な」

 留守番組にされた者達は、これでもかと落胆している。ただ少し出かけるだけの用だというのに大袈裟な。

「蠅は、その頭に付いている触角とかをどうにかできないのか」
「無理です。これは私の象徴でもありますので」
「って事は、俺とどエロ、ハンク戦士長、後ミルクの少女で行くとしよう」
「お任せて下さいまし!」
「待って下さい! 今、省庁を引き千切りますから!」

 蠅は触角を掴み、ググッと引っ張った。根元から血が滲んでいる。

「やめよ!」
「お願いします!」

 蠅は本気だ。

「分かった分かった、ならお前は帽子を被れ! そうすれば同行を許す」
「ありがとうございます!」

 こうして、ルルカ邪神王国使節団が編成された。

**

 一方その頃、王宮の会議の間には、国王とその側近、名立たる諸侯たちが集っていた。

「諸君、お集まりいただいたのは他でもない。邪神王国と名乗る狂信者達についてだ――」

 彼らは皆、優れた能力を持つ者達。
 ルートガー伯爵の領地ベルックスが、ゴブリンの襲撃を受けた事。謎の集団がゴブリンを退けた後、ベルックスを占拠して邪神王国と名乗った事。ルートガー伯爵が差し向けた、悪名高いイリーガル傭兵団を破った事。彼らが、魔物保護団体の一味を処刑した事、全てを把握していた。

「斥候の話によれば、ベルックスは邪神王国首都ヘルサターンデスに改名されたそうです。かの地では、最上級の小麦が生産され、日増しに商業の中心地へとなっているとの事であります」

 この場にいる者達は、その事を既に知っている。その小麦は、東西の村で収穫されたものではなく、ヘルサターンデスで作られたものであるという事も、ベルックスには畑などなかった、という事も。

「ルシフェル伯爵、農作物の成長を促進させる様な魔法はあるのかね」

 国王は、その場にいる宮廷魔術師に問い掛ける。

 ルシフェル伯爵――。
 そう。彼はルルカの実の父親であり、この国最高の魔術師。

「いえ、その様な魔法は見た事も聞いた事もありません」

 全員が頭を悩ませ唸る。
 ルシフェル伯爵が「あるかもしれません」と答えてくれれば、まだ魔法によるものと思える事が出来た。
 だが、そうでないのであれば、本当に邪神の力によるものと考えるしかない。

「更に東西の村には強固な城壁に覆われ、付近の街道ではスケルトンが巡回しておるそうです」
「何度聞いても信じられぬ……」

 邪教徒の数は数百人程度。使役したスケルトンを用いたとしても、一月もしない内に、どうやって城壁を築けたというのか。

「四千のゴブリンを退け、イリーガル傭兵団を殲滅し、チュロス伯爵の私兵を手玉にとった邪神王国なる者達。極めて危険な存在かと。ルートガー卿を暗殺したのも、彼らで間違いないでしょう」

 側近達は同意の意を表し、頷いている。

「諸君らに問いたい。我々は、邪神王国を今すぐ討つべきだろうか」

 この投げ掛けに、意見は割れた。

 今すぐ討つべきと声を荒げる者。まずは使者を送るべき、と毅然とした態度で言い放つ者。偵察だけ行い、静観するだけに留めるのが吉を訴える者。意見は全くまとまらなかった。
 そんな時、会議の間に近衛兵が飛び込んで来た。

「た、大変でございます! 東の空に、悪魔の大軍勢が……!」

 王達は大慌てで塔へを駆け上った。
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