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第18話 ヘルサターンデス
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ベルックスの街は小城以外、完全に崩壊していた為、人はもう住めない状態だった。これを何とか復興せねばならない。
ゴブリンを撃退した翌日の朝、俺はハンク戦士長と町長と共に、復興計画について話し合いをしていた。
だが、丁度その時、ルートガー伯爵に仕える騎士一名が、俺達の元へとやって来た。ルートガー伯爵は、ゴブリン達が全滅した事を知っている様だ。
恐らく斥候を放っていたのだろう。
「ルートガー卿より伝令! ベルックスの街の再建は不可能と判断。町民は東か西の村へ向かう様にとの事! 繰り返す!」
ルーベンス伯爵は、ベルックスの街の他にも小さな村を二つ持っている。
しかし、本当に小規模な農村なので、三百人近い人数を受け入れられるとは思えないが。
「我々の住居はあるのですか?」
町長が尋ねる。
「いや、ない。暫くは野営をして暮らす事になるだろう」
「しょ、食料は……?」
「仕事はありますか!?」
他の町民が矢継ぎ早に質問をする。
「静かにしろ、ルートガー卿のご命令なのだ。黙って従え!」
そう言うと、騎士は馬の方向を変え、場から去って行った。
「い、一体我々はどうすれば……」
町長が青ざめた表情を浮かべた。ルートガー伯爵の命に従っても、まともに生活出来るとは思えない。だが、かといって他の街へ逃げれば罪になる。
領民は領主の資産とされるので、領主の許可なく引っ越す事は出来ないのだ。
「邪神様はどうされるおつもりでしょうか」
皆が当たり前の様に俺を邪神と呼ぶので、諦めて受け入れる事にした。
「俺はここで本当の邪神を討つつもりだ。だからこの街に残る」
ハンク戦士長と町長は、互いに顔を見合わせて頷いた。
「分かりました。邪神様、暫しお待ち下され」
二人は皆が集まっている場所に向かい、話し合いを始めた。暫くすると、全員が俺の元に集まって来る。
「邪神様、我ら一向、邪神王陛下の民となりまする!」
「……は?」
急な申し出に俺がポカンと口を開けていると、それを他所に、とんとん拍子で話が進んで行く。勝手に俺を邪神王と祭り上げた挙句、国の名前まで考え出したではないか。
当然、俺は今この話し合いに一切参加していない。真横にいるのに蚊帳の外だ。奴らで勝手に盛り上がっているだけ。
遂に話でもまとまったのか、弟子達が町人達の前に立ち、どアホが一歩前に出た。
「人間どもよ、聞くが良い! この時を持って、この地に『ルルカ邪神王国』を建国する!」
「「うおおおおおおッ!」」
「邪神王陛下、万歳ぁぁぁぁい!」
小城は、それはもう熱狂的な空気に包まれた。
「おいおい、勘弁してくれよ。俺が国王なんて無理だ。というか、俺の名前を勝手に国名にもするなよ。自己主張の強過ぎる痛い奴だと思われるじゃないか」
俺の呟きは誰も聞いてくれない。轟く万歳の声に、完全に掻き消されている。
「尚、この地を首都とし、邪神王国に相応しい名に変更する。その名も『ヘルサターンデス』だ!」
「「うおおおおおおッ!」」
「ヘルサターンデス、万歳ぁぁぁぁい!」
待て待て待て、どう聞いても“地獄の悪魔”が牛耳っている国名じゃあないか。もしかして「デス=です」の一言だけで丁寧と謙虚さを示している訳ではないよな。
「そうと決まれば、この地を邪神王陛下に相応しい国としようではないか! 皆の者、直ちに復興開始だ!」
「「うおおおおッ!」」
「復興、万歳ぁぁぁぁい!」
弟子達と民は、完全にキマった目つきで、瓦礫だらけの街に散って行った。
三百人にも満たない人数で、一つの街を復興させるなど到底無理な話だ。今のこの瓦礫や死体の処理などだけで、冬が訪れるだろう。
弟子達は復興の時だけでいいので、魔法の使用を許可して欲しいと言ってきた。確かにその方が効率が良さそうだ。
弟子達はもう努力こそが真の武である事は完全に理解しているので、今更スキルや魔法に溺れる事もないだろう。
寧ろ、ここで改めて一度、魔法やスキルを使ってみる事で、いかに軟弱なものであったのかを、再認識出来るかもしれないな。
「よし、スキルと魔法の使用を許可する」
その結果、何の役にも立たないだろうと思っていた弟子達が、予想を裏切る様な活躍を見せた。
「ヴゴォ……!」
骨の死霊術で操られた町人の死体が起き上がり、街の外れに集まって行く。そこでは、どアホが既に待ち受け、何やらアクションを起こそうとしていた。
「地獄炎!」
地獄の炎で、死体が一瞬で火葬。これで遺体の処理は終了だ。十分と掛からずに終了してしまった。しかも町人や遺族達も「ご丁重にありがとうございます」と涙を流して感謝している。
いや、これは丁重……ではないと思うが、まぁ遺族が感謝してるのならば、それが正解なのだろう。
それとほぼ同時、街の中央に次元の門が開いた。瓦礫が次々に吸い寄せられていく。
「おお、チャン・クリス様の神の力で、瓦礫が一瞬でなくなったぞ!」
倒壊していた建物が全て消滅した。後に残るのは、道や井戸だけ。更に直後、夥しい程の蠅の群れが、森から丸太を運んでくる。森では、鳥が手刀で木を伐採しているた。
「どエロ様、見事な腕前ですね!」
「おほほほ、私、オス風呂の銭湯を建てる為に大工の修業をしてましたのよ」
恐ろしい早さで職人芸を披露するどエロを見て、街の本職大工達が感嘆の声を上げていた。
「相変わらず器用な奴だな。さて、では行くぞ」
「はっ、邪神王陛下!」
俺は元農家の男達を連れ、街の外へと向かう。今から畑を作るつもりだ。以外にも初めての農業体験。密かにワクワクしている。
ゴブリンを撃退した翌日の朝、俺はハンク戦士長と町長と共に、復興計画について話し合いをしていた。
だが、丁度その時、ルートガー伯爵に仕える騎士一名が、俺達の元へとやって来た。ルートガー伯爵は、ゴブリン達が全滅した事を知っている様だ。
恐らく斥候を放っていたのだろう。
「ルートガー卿より伝令! ベルックスの街の再建は不可能と判断。町民は東か西の村へ向かう様にとの事! 繰り返す!」
ルーベンス伯爵は、ベルックスの街の他にも小さな村を二つ持っている。
しかし、本当に小規模な農村なので、三百人近い人数を受け入れられるとは思えないが。
「我々の住居はあるのですか?」
町長が尋ねる。
「いや、ない。暫くは野営をして暮らす事になるだろう」
「しょ、食料は……?」
「仕事はありますか!?」
他の町民が矢継ぎ早に質問をする。
「静かにしろ、ルートガー卿のご命令なのだ。黙って従え!」
そう言うと、騎士は馬の方向を変え、場から去って行った。
「い、一体我々はどうすれば……」
町長が青ざめた表情を浮かべた。ルートガー伯爵の命に従っても、まともに生活出来るとは思えない。だが、かといって他の街へ逃げれば罪になる。
領民は領主の資産とされるので、領主の許可なく引っ越す事は出来ないのだ。
「邪神様はどうされるおつもりでしょうか」
皆が当たり前の様に俺を邪神と呼ぶので、諦めて受け入れる事にした。
「俺はここで本当の邪神を討つつもりだ。だからこの街に残る」
ハンク戦士長と町長は、互いに顔を見合わせて頷いた。
「分かりました。邪神様、暫しお待ち下され」
二人は皆が集まっている場所に向かい、話し合いを始めた。暫くすると、全員が俺の元に集まって来る。
「邪神様、我ら一向、邪神王陛下の民となりまする!」
「……は?」
急な申し出に俺がポカンと口を開けていると、それを他所に、とんとん拍子で話が進んで行く。勝手に俺を邪神王と祭り上げた挙句、国の名前まで考え出したではないか。
当然、俺は今この話し合いに一切参加していない。真横にいるのに蚊帳の外だ。奴らで勝手に盛り上がっているだけ。
遂に話でもまとまったのか、弟子達が町人達の前に立ち、どアホが一歩前に出た。
「人間どもよ、聞くが良い! この時を持って、この地に『ルルカ邪神王国』を建国する!」
「「うおおおおおおッ!」」
「邪神王陛下、万歳ぁぁぁぁい!」
小城は、それはもう熱狂的な空気に包まれた。
「おいおい、勘弁してくれよ。俺が国王なんて無理だ。というか、俺の名前を勝手に国名にもするなよ。自己主張の強過ぎる痛い奴だと思われるじゃないか」
俺の呟きは誰も聞いてくれない。轟く万歳の声に、完全に掻き消されている。
「尚、この地を首都とし、邪神王国に相応しい名に変更する。その名も『ヘルサターンデス』だ!」
「「うおおおおおおッ!」」
「ヘルサターンデス、万歳ぁぁぁぁい!」
待て待て待て、どう聞いても“地獄の悪魔”が牛耳っている国名じゃあないか。もしかして「デス=です」の一言だけで丁寧と謙虚さを示している訳ではないよな。
「そうと決まれば、この地を邪神王陛下に相応しい国としようではないか! 皆の者、直ちに復興開始だ!」
「「うおおおおッ!」」
「復興、万歳ぁぁぁぁい!」
弟子達と民は、完全にキマった目つきで、瓦礫だらけの街に散って行った。
三百人にも満たない人数で、一つの街を復興させるなど到底無理な話だ。今のこの瓦礫や死体の処理などだけで、冬が訪れるだろう。
弟子達は復興の時だけでいいので、魔法の使用を許可して欲しいと言ってきた。確かにその方が効率が良さそうだ。
弟子達はもう努力こそが真の武である事は完全に理解しているので、今更スキルや魔法に溺れる事もないだろう。
寧ろ、ここで改めて一度、魔法やスキルを使ってみる事で、いかに軟弱なものであったのかを、再認識出来るかもしれないな。
「よし、スキルと魔法の使用を許可する」
その結果、何の役にも立たないだろうと思っていた弟子達が、予想を裏切る様な活躍を見せた。
「ヴゴォ……!」
骨の死霊術で操られた町人の死体が起き上がり、街の外れに集まって行く。そこでは、どアホが既に待ち受け、何やらアクションを起こそうとしていた。
「地獄炎!」
地獄の炎で、死体が一瞬で火葬。これで遺体の処理は終了だ。十分と掛からずに終了してしまった。しかも町人や遺族達も「ご丁重にありがとうございます」と涙を流して感謝している。
いや、これは丁重……ではないと思うが、まぁ遺族が感謝してるのならば、それが正解なのだろう。
それとほぼ同時、街の中央に次元の門が開いた。瓦礫が次々に吸い寄せられていく。
「おお、チャン・クリス様の神の力で、瓦礫が一瞬でなくなったぞ!」
倒壊していた建物が全て消滅した。後に残るのは、道や井戸だけ。更に直後、夥しい程の蠅の群れが、森から丸太を運んでくる。森では、鳥が手刀で木を伐採しているた。
「どエロ様、見事な腕前ですね!」
「おほほほ、私、オス風呂の銭湯を建てる為に大工の修業をしてましたのよ」
恐ろしい早さで職人芸を披露するどエロを見て、街の本職大工達が感嘆の声を上げていた。
「相変わらず器用な奴だな。さて、では行くぞ」
「はっ、邪神王陛下!」
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