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黒の捜査線
22 黒の直感・序曲
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碧木には本当に驚かされる。
この状況でもう彼女なりに覚悟を決めているのだから。
「ちなみにどっち選んだ?」
「内緒です。特に黒野さんには」
「何だそれ」
俺の直感では“黒”。一真の時と同じだ。
黒を切れば俺の方が爆破する。あの時もそう思って黒だと言ったのに、一真には裏をかかれた。
今度はどっちだ?
碧木は当時の事を全て知っている。俺が話したから。最後に黒と白のコードどちらを切ったかも。どういう経緯で一真が白を切ったのかも全て。
どっちが正解だ……?
黒だと答えて碧木が素直に黒を切るだろうか?
いつもの感じなら俺に反発して白を切る可能性も大いにある。だが、意外と先輩の言う事を素直に聞き入れる所もあるんだよな。
どっちだろ。
どう言えば碧木を助けられる?
こういう面では俺の役立たずな直感が働かないんだ。
もし見てるなら教えてくれよ……一真。後輩が死なない様にさ。
「黒野さん。ひょっとして自分が犠牲になる方を考えてます?」
こういう時の勘は女の人の方が鋭い。一瞬藍沢さんの顔までチラついた。
「だったら何だよ。俺がどっち答えても、お前もう決めてるんだろ?」
「はい。なので余計な説得とかはしないで下さい」
本当に可愛げがない。それとも、強がって可愛いとでも思うべきなのかな。後輩を持つのも結構大変だぜ一真。お前はそういうのも得意そうだよな。俺と違って後輩の面倒も自然と見られるんだろうな。
「元からそんなつもりはないが……強いて言うなら俺の直感は“黒”だ」
「――⁉ もう! 何で今言うんですか! あり得ないですよホントにッ!」
お。初めて動揺を見せてくれたな。
「何だ? もう決めてるんだから俺がどっち言おうと関係ないだろ」
「性格悪いですね。だから彼女いないんですよ」
「モテるから急いでないだけだ。お前の方こそ全く男っ気が感じられないけど気のせいか?」
「最低。セクハラですよ」
もう残り時間が僅かしかないのに、俺と碧木はそんな会話をしていた。
一真と爆弾解除している時も、何かくだらない事話してたなそういえば。碧木のお母さんもよくこんな所に一緒にいたよ本当に。
「お母さん譲りか? その度胸は」
「母は強い人でした。言い方を変えれば少し頑固。私もそれを譲り受けたせいで、母とはよく言い合いになってましたよ。仲は良いですけどね」
「だろうな。お前のお母さんも最後まで頑固だったから」
「でもその頑固なお陰で、母は白石刑事と会って、私に警察という新たな道を残してくれました。初めは勿論、ソサエティを捕まえる事だけが目的でしたが、色々な日々を送る中で、今では警察の務めにとてもやりがいを感じています。私にこの道を示してくれた母と白石刑事にはずっと感謝していますから」
初めは最悪な始まりだったかもしれないが、彼女が今そう思えているのならば、それが彼女にとって正解だったという事だろう。
でも、この状況は明らかに不正解。何が何でもコイツだけは守らないと。
爆破まで残り4分――。
「――シン、聞こえるか?」
「ああ。どうした」
本部は未だにバタバタしている音が聞こえていた。当たり前か。爆破までもう時間がない。
一旦碧木との会話を止め、俺はシンに話しかけた。
「残りの1人見つかりそうか?」
「いや……手掛かりがまるでない。何処までもイラつかせる奴らだよ本当に」
「全くだ。ちなみにハッキングで爆弾を止めるなんて無理だよな?」
「それは無理だろ。爆弾はセンサーで繋がっているだけだ。ハッキングなんて出来る筈がない」
「だよな」
「でもそう遠くない筈なんだ。奴らの仲間なら何処かしらで見ているだろう。それに爆弾の製造者なら、万が一の為に絶対にスイッチを持ってる。いくら遠隔操作出来ても範囲なんてたかが知れてるんだ」
「理屈は分かるけどさ。結局見つけられないんじゃアイツらの思うッ――!」
一瞬で全身に鳥肌が立った。
「どうした千歳?」
そうか……もしかして――。
この時程、俺は自分の直感を好きになった事はない。
何故俺は“気が付かなかった”んだ――。
いや、気付ける筈がない“こんな事”。自分でもこの直感に“恐怖”さえ感じている。
まさかとしか思えない。
だが……もし本当に、こんな馬鹿げた事が起きているとしたら――。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<……本日付で、こちらの捜査一課に配属される事になりました、白石一真です! 宜しくお願い致します!……>
<……自分の手の届く範囲なんてたかが知れてるけど、そこに救える人がいるなら俺は充分だと思ってる……>
<……至急、至急!こちら本部長の服部!本部より周辺警察皆へ告ぐ! たった今、警察本部に『ソサエティ』と名乗るテログループから爆破予告が届いた!……>
<……それにしても、よく当たりますよね。黒野さんのその“直感”……>
<……市民を守る警察の諸君。限られた時間の中で見事市民を避難させている様だな。……さぁ。ゲームの始まりだ……>
<……“お互い”大変な事に巻き込まれたな……>
<……山本さんが来てくれてとても心強いです。“親子共々”ご迷惑をお掛けますが、お願い致します!……>
<……我々ソサエティはここにいる3人ともう1人存在する……>
<……あの若い刑事さんの様に、人を思える、強くて優しい人間になってほしいわ……>
<……千歳、教えてくれよ。……お前の“直感”ならどっちだ?……>
<……今回は大分優秀だな。前に死んだ刑事と違って残り時間が20分近くもあるじゃないか……>
<……我々ソサエティはこれで全員ではないぞ……>
<……どの道生きるか死ぬかです。刑事さんとはいえ、私より若いあなた1人に全てを背負わせたくありません!……>
<……もう1人の仲間も勿論、ずっとこのゲームに参加して貴様らを見ている!……>
<……ハァァァァハッハッハッ!……>
<――ありがとな千歳。お前と出会えて楽しかった。絶対アイツら捕まえてくれよ――>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そう言う事か――」
この状況でもう彼女なりに覚悟を決めているのだから。
「ちなみにどっち選んだ?」
「内緒です。特に黒野さんには」
「何だそれ」
俺の直感では“黒”。一真の時と同じだ。
黒を切れば俺の方が爆破する。あの時もそう思って黒だと言ったのに、一真には裏をかかれた。
今度はどっちだ?
碧木は当時の事を全て知っている。俺が話したから。最後に黒と白のコードどちらを切ったかも。どういう経緯で一真が白を切ったのかも全て。
どっちが正解だ……?
黒だと答えて碧木が素直に黒を切るだろうか?
いつもの感じなら俺に反発して白を切る可能性も大いにある。だが、意外と先輩の言う事を素直に聞き入れる所もあるんだよな。
どっちだろ。
どう言えば碧木を助けられる?
こういう面では俺の役立たずな直感が働かないんだ。
もし見てるなら教えてくれよ……一真。後輩が死なない様にさ。
「黒野さん。ひょっとして自分が犠牲になる方を考えてます?」
こういう時の勘は女の人の方が鋭い。一瞬藍沢さんの顔までチラついた。
「だったら何だよ。俺がどっち答えても、お前もう決めてるんだろ?」
「はい。なので余計な説得とかはしないで下さい」
本当に可愛げがない。それとも、強がって可愛いとでも思うべきなのかな。後輩を持つのも結構大変だぜ一真。お前はそういうのも得意そうだよな。俺と違って後輩の面倒も自然と見られるんだろうな。
「元からそんなつもりはないが……強いて言うなら俺の直感は“黒”だ」
「――⁉ もう! 何で今言うんですか! あり得ないですよホントにッ!」
お。初めて動揺を見せてくれたな。
「何だ? もう決めてるんだから俺がどっち言おうと関係ないだろ」
「性格悪いですね。だから彼女いないんですよ」
「モテるから急いでないだけだ。お前の方こそ全く男っ気が感じられないけど気のせいか?」
「最低。セクハラですよ」
もう残り時間が僅かしかないのに、俺と碧木はそんな会話をしていた。
一真と爆弾解除している時も、何かくだらない事話してたなそういえば。碧木のお母さんもよくこんな所に一緒にいたよ本当に。
「お母さん譲りか? その度胸は」
「母は強い人でした。言い方を変えれば少し頑固。私もそれを譲り受けたせいで、母とはよく言い合いになってましたよ。仲は良いですけどね」
「だろうな。お前のお母さんも最後まで頑固だったから」
「でもその頑固なお陰で、母は白石刑事と会って、私に警察という新たな道を残してくれました。初めは勿論、ソサエティを捕まえる事だけが目的でしたが、色々な日々を送る中で、今では警察の務めにとてもやりがいを感じています。私にこの道を示してくれた母と白石刑事にはずっと感謝していますから」
初めは最悪な始まりだったかもしれないが、彼女が今そう思えているのならば、それが彼女にとって正解だったという事だろう。
でも、この状況は明らかに不正解。何が何でもコイツだけは守らないと。
爆破まで残り4分――。
「――シン、聞こえるか?」
「ああ。どうした」
本部は未だにバタバタしている音が聞こえていた。当たり前か。爆破までもう時間がない。
一旦碧木との会話を止め、俺はシンに話しかけた。
「残りの1人見つかりそうか?」
「いや……手掛かりがまるでない。何処までもイラつかせる奴らだよ本当に」
「全くだ。ちなみにハッキングで爆弾を止めるなんて無理だよな?」
「それは無理だろ。爆弾はセンサーで繋がっているだけだ。ハッキングなんて出来る筈がない」
「だよな」
「でもそう遠くない筈なんだ。奴らの仲間なら何処かしらで見ているだろう。それに爆弾の製造者なら、万が一の為に絶対にスイッチを持ってる。いくら遠隔操作出来ても範囲なんてたかが知れてるんだ」
「理屈は分かるけどさ。結局見つけられないんじゃアイツらの思うッ――!」
一瞬で全身に鳥肌が立った。
「どうした千歳?」
そうか……もしかして――。
この時程、俺は自分の直感を好きになった事はない。
何故俺は“気が付かなかった”んだ――。
いや、気付ける筈がない“こんな事”。自分でもこの直感に“恐怖”さえ感じている。
まさかとしか思えない。
だが……もし本当に、こんな馬鹿げた事が起きているとしたら――。
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<……本日付で、こちらの捜査一課に配属される事になりました、白石一真です! 宜しくお願い致します!……>
<……自分の手の届く範囲なんてたかが知れてるけど、そこに救える人がいるなら俺は充分だと思ってる……>
<……至急、至急!こちら本部長の服部!本部より周辺警察皆へ告ぐ! たった今、警察本部に『ソサエティ』と名乗るテログループから爆破予告が届いた!……>
<……それにしても、よく当たりますよね。黒野さんのその“直感”……>
<……市民を守る警察の諸君。限られた時間の中で見事市民を避難させている様だな。……さぁ。ゲームの始まりだ……>
<……“お互い”大変な事に巻き込まれたな……>
<……山本さんが来てくれてとても心強いです。“親子共々”ご迷惑をお掛けますが、お願い致します!……>
<……我々ソサエティはここにいる3人ともう1人存在する……>
<……あの若い刑事さんの様に、人を思える、強くて優しい人間になってほしいわ……>
<……千歳、教えてくれよ。……お前の“直感”ならどっちだ?……>
<……今回は大分優秀だな。前に死んだ刑事と違って残り時間が20分近くもあるじゃないか……>
<……我々ソサエティはこれで全員ではないぞ……>
<……どの道生きるか死ぬかです。刑事さんとはいえ、私より若いあなた1人に全てを背負わせたくありません!……>
<……もう1人の仲間も勿論、ずっとこのゲームに参加して貴様らを見ている!……>
<……ハァァァァハッハッハッ!……>
<――ありがとな千歳。お前と出会えて楽しかった。絶対アイツら捕まえてくれよ――>
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「そう言う事か――」
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